柚木麻子の小説『早稲女、女、男』が『早乙女カナコの場合は』のタイトルで映画化に!
作家・柚木麻子の小説『早稲女、女、男』(祥伝社文庫刊)は、早稲田大学の女学生の総称「早稲女」を地でいく主人公早乙女香夏子と、早稲田大学の先輩長津田の10年に渡るつかず離れずの恋愛模様を描いた作品です。
この小説が『早乙女カナコの場合は』というタイトルで、『さくら』(2020)の矢崎仁司監督によって映画されます。
映画『早乙女カナコの場合は』は、2025年3月14日(木)に全国ロードショーされます。
映画公開に先駆けて、原作小説『早稲女、女、男』をネタバレありでご紹介します。
CONTENTS
小説『早稲女、女、男』の主な登場人物
【早乙女香夏子】
早稲田大学に通う主人公。早稲女という観念に捉われている
【長津田啓士】
早稲田大学大学生氏。香夏子の先輩であり、彼氏でもある
【吉沢洋一】
早稲田大学OB。永和出版社の編集員で、香夏子に一目ぼれ
【立石三千子】
立教大学の学生。香夏子の幼なじみ
【本田麻衣子】
日本女子大学の学生。長津田に一目ぼれしている
【早乙女習子】
学習院大学に通う、香夏子の妹
【慶野亜依子】
慶応義塾大学出身。香夏子の就職先である永和出版社の先輩、吉沢の元カノ
【青島みなみ】
青山学院大学に通う学生。旅行先で香夏子と知り合う
小説『早稲女、女、男』のあらすじとネタバレ
早稲田大学四年の早乙女香夏子。金沢の中高一貫私立女子高からの大親友の立教大学に通う立石三千子と、学習院大学の裏にある女性専用マンションで暮らして3年半になります。
今年から学習院大学に通うことになった香夏子の妹習子も同居し、賑やかに暮らしています。
香夏子には、留年を繰り返す同じ早稲田大学生の脚本家志望のダメ男・長津田という腐れ縁の彼氏がいました。ですが、喧嘩ばかりで現在は上手くいっていません。別れたのも同然の有り様です。
融通がきかない、男っぽい、闘志むき出しなど、冗談半分に言われる、早稲田大学の女子通称「早稲女」のイメージに律儀に寄り添い、化粧もオシャレもしない早稲女の香夏子。
三千子はそんな香夏子の恋にヤキモキして、つい長津田にダメ出しをしていました。
ある日、三千子は香夏子の就職内定祝いをかねたサークルの飲み会に誘われて同席します。そこには早稲田の学生ばかりか、他の大学生もゲストとして参加していました。もちろん、長津田も来ていました。
ところが長津田は、飲み会に来た日本女子大学の麻衣子とイチャイチャしています。
一方香夏子はといえば、内定をもらった出版社の先輩でもある吉沢に告白されたのですが、長津田に未練があり、良い返事をしていません。
三千子が長津田の気持ちを確認すると、長津田は「香夏子はダメな自分に尽くしてくれるけど、麻衣子は頼ってくれるから居心地が良い」と自分勝手な返事が返って来ました。
そんな長津田に「もっと気楽につきあえ」と三千子は言いますが、反対に長津田は聞いてくれません。
当の三千子はというと、別れた美容師の元カレに未練があり、それを隠して彼と友だちづきあいを続けています。
さて、話の元となった日本女子大学の麻衣子。麻衣子は日本女子大生だけど他の大学の男性からサークルに誘われ、そこで早稲田大学の長津田先輩に一目惚れしました。
ロン毛ヒゲモジャでジョニデに似ている長津田には恋人がいるらしい。けれど、化粧もしないがさつな早稲女なんかに渡さないぞ!と頑張って長津田を略奪しようとします。
三千子の元カレが勤める美容院で髪を切った長津田にちょっとガッカリし、更に香夏子が手伝っている作家の有森樹李のサイン会に行く長津田にも呆れるのですが、やっぱり長津田のことが好きだと自覚します。
長津田のカノジョと言われる香夏子と話してみて、彼女が思っていたほど嫌な女じゃないとわかったのですが、麻衣子は「長津田のことは諦めません」と宣戦布告しました。
香夏子の方は別れたはずの長津田に未練タラタラ。長津田が麻衣子とバイク旅行することにショックを受けて、妹の習子と飲みに行き、泥酔します。
香夏子から長津田との思い出の指輪を捨ててと言われ、習子は大学の沼に指輪を放り投げました。
ですが、吉沢に介抱されて帰宅した香夏子に今度は「指輪は捨てないで」と言われ、急遽、吉沢と共に指輪を探すことになりました。はた迷惑な香夏子にうんざりします。
小説『早稲女、女、男』の感想と評価
『早稲女、女、男』は、早稲田大学、立教大学、日本女子大学、学習院大学、慶応義塾大学、青山学院大学と、名だたる大学に通う女子たちとその恋愛模様を描いた作品です。
主役の早稲田大学の早乙女香夏子は、男っぽく融通がきかないがさつな「早稲女(ワセジョ)」と呼ばれる代名詞そのままの女子。
そんな香夏子の恋人は、同じく早稲田大学の学生ですが、留年を繰り返しているうだつの上がらない「早稲男(ワセダン)」です。大学入学以来の交際ですが、腐れ縁のようにずるずると引き摺って今日に至っています。
そこへ現れた恋敵、「ポン女」の麻衣子。長津田を略奪しようと彼に付き纏います。また香夏子にも、内定した就職先の永和出版社の編集員吉沢からの告白という衝撃的な出来事が起こります。
長すぎた春のような関係で、別れたはずの恋人同士の香夏子と長津田。未練タラタラな女子の気持ちを知ってか知らずか、他の大学生の友人たちが見守り、あるいは心変わりのチャンスとばかりに窺っていました。
うだつの上がらない男ですが付き合いだして10年……。どうしても忘れることのできなかった男の存在に気が付いた香夏子。早稲女が右往左往してやっと掴んだ幸せに納得せざるを得ません。
小説の女性の登場人物の名前に在学大学の一字がはいっていることや、目次が全部大学の校歌の一部から選出していることも面白い趣向でした。
また、香夏子の就職先の永和出版の小説家として、『私にふさわしいホテル』の有森樹李が再登場しています。こちらの小説も映画化され、2024年12月に公開となっています。
たくましい作家有森樹李の再登場は、柚木麻子ファンには嬉しいサービスに違いありません。
映画『早乙女カナコの場合は』の見どころ
奇抜なタイトルの『早稲女、女、男』が、『さくら』(2020)の矢崎仁司監督の手腕で、『早乙女カナコの場合は』と意味深なタイトルの映画になりました。
早乙女カナコを演じるのは、『さよならドビュッシー』(2013)『熱のあとに』(2024)の橋本愛。
カナコと付かず離れずの関係を続けているうだつが上がらない脚本家志望の学生・長津田役には、『犬部!』(2021)『碁盤斬り』(2024)など、幅広く活躍をしている若手実力派俳優・中川大志。
橋本愛と中川大志の共演は本作が初となるそうですが、凸凹な恋人たちの腐れ縁のような関係を、切なくかつ美しく演じてくれることでしょう。
小説の「香夏子」という漢字名は、映画では「カナコ」のカタカナ名に変わっています。この辺りにも監督の思惑が潜んでいるようで、2人のロマンスの結末に期待は膨らみます。
映画『早乙女カナコの場合は』の作品情報
【日本公開】
2025年(日本映画)
【原作】
柚木麻子:『早稲女、女、男』(祥伝社文庫版)
【監督】
矢崎仁司
【脚本】
朝西真砂、知愛
【キャスト】
橋本愛、中川大志、山田杏奈、臼田あさ美、中村蒼
まとめ
柚木麻子の小説『早稲女、女、男』をネタバレ有りでご紹介しました。本作は春に『早乙女カナコの場合』というタイトルで映画化されます。
「早稲女(ワセジョ)」とは、早稲田大学在学中もしくは卒業生の女性を指す言葉で、主に「女性らしさを武器にしない(できない)元気な人たち」という意味があります。
良い意味で社会に出て男性に負けずにバリバリ仕事をするイメージがありますが、ラブの方はいかがなものでしょう。
小説『早稲女、女、男』では主人公の香夏子が、苦節10年をかけて本当の愛を貫きました。登場人物の多い原作と比べて、映画の方はもう少し周囲の環境を簡素化しているようですが、果たしてその結末はどうなるのでしょう。
映画『早乙女カナコの場合は』は2025年3月14日(木)に全国ロードショー!
香夏子と長津田を演じる、橋本愛と中川大志のラブストーリーが楽しみです。