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Entry 2020/06/08
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映画『テロルンとルンルン』感想レビューと内容考察。恋愛ラブストーリーで岡山天音×小野莉奈が演じた“窓越しの初めて恋”

  • Writer :
  • 星野しげみ

映画『テロルンとルンルン』は、孤独な青年と女子高生の切ないラブストーリー

広島県竹原市忠海を舞台に制作された映画『テロルンとルンルン』。2020年8月14日(金)より広島・八丁座、8月21日(金)よりアップリンク吉祥寺にて劇場公開されます。

実家のガレージに引きこもる青年類と聴覚障害を持つ女子高生瑠海。社会からも学校からも孤立した生活を送る2人がふとしたことから出会いますが、次第に2人の静かな日常が乱されていくことに……。孤立と淡いラブを描いたほろ苦さの残る青春ラブストーリー。

本作が監督二作目となる新鋭・宮川博至が手掛けています。主演には、第32回高崎映画祭最優秀新人男優賞を受賞し、その演技力と稀有な存在感で今最も注目を集める若手俳優・岡山天音。

共演に、繊細な感情演技で鮮烈な印象を残している新進女優・小野莉奈。実力派の川上麻衣子と西尾まりが脇を固めます。

映画『テロルンとルンルン』の作品情報

(c)HIROYUKI MIYAGAWA

【公開】
2020年(日本映画)

【脚本】
川之上智子

【監督】
宮川博至

【キャスト】
岡山天音、小野莉奈、川上麻衣子、西尾まり、橘紗希、中川晴樹ほか

【作品概要】
広島県竹原市忠海を舞台に制作された映画『テロルンとルンルン』は、米国カリフォルニア州の「Poppy Jasper International Film Festival」で、最優秀長編映画と映画祭ディレクターが選ぶ優秀作品賞の2つの賞を受賞。

監督は、本作が2作目となる新鋭・宮川博至です。主演に『ポエトリーエンジェル』(2017)で第32回高崎映画祭最優秀新人男優賞を受賞し、その演技力と稀有な存在感で今最も注目を集める若手俳優・岡山天音。

共演には、台詞のない繊細な感情演技で鮮烈な印象を残している新進女優・小野莉奈。さらにそれぞれの母親役として物語を牽引する2人の実力派・川上麻衣子、西尾まり。そして演技派・中川晴樹、橘紗希など多彩な俳優たちが集結しました。

主題歌は、独自の歌詞と唯一無二の声で人間の弱さと強さを表現する日食なつこの「vapor」、エンディングテーマは、おとぎ話「少年少女」。美術を日本アカデミー賞最優秀美術賞に二度輝き2016年に紫綬褒章を受賞した部谷京子が手掛けています。

映画『テロルンとルンルン』のあらすじ

広島県竹原市のある町でのこと。聴覚に障害を持つ女子高生・上田瑠海が学校帰りに歩いていると、紙飛行機が飛んできて頭に当たりました。

「イタッ」。思わず辺りを見渡すと、飛んできたと思われる方向にガレージがあり、小さな窓が閉まるのが見えました。

瑠海は飛行機を持ってその窓をドンドン叩きます。ガレージには引きこもりをする青年・朝比奈類がいました。

音に驚いて類が窓におろしたカーテンを開けると、怒った顔の瑠海が紙飛行機を差し出しました。

類は窓を開けて紙飛行機を受け取るとすぐに窓もカーテンを閉めてしまいました。

次の日、瑠海はまたそのガレージの窓へ行き、ドンドン叩きました。

今度は何? といった様子で類がカーテンを開けると、瑠海が壊れた猿のオモチャと「これ直せ」と書いたメモを窓ガラスの向こうで見せます。

類が知らん顔を決め込み窓を閉めると、またもやドンドン、ドンドン。

しぶしぶ類がカーテンを開けると、窓の向こうで瑠海が頭に飛行機が当たって痛かったというジェスチャーをし、再びオモチャとメモを差し出していました。

仕方がないという感じで、類は窓を開けてオモチャとメモを受け取りました。

類はわけあって引きこもり、社会から孤立しています。聴覚障害者の瑠海はクラスでいじめられ、学校が面白くありません。

住む世界から孤立している2人は、次第に窓越しに交流を深めていくのですが……。

映画『テロルンとルンルン』の感想と評価

(c)HIROYUKI MIYAGAWA

映画『テロルンとルンルン』は、社会から孤立する青年と聴覚障害を持ち同級生からいじめを受ける女子高生の物語です。

孤独で無気力な引きこもり青年・類を演じるのは、演技力と稀有な存在感を持つ若手俳優の岡山天音。

映画『ライチ☆光クラブ』(2016)や『帝一の國』『氷菓』(2017)、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』など多数の作品に出演し、若手きってのバイプレイヤーとして、注目が高まっています。

類は世間からテロリストという汚名を着せられて、実家のガレージに引き込もっています。母親に食事を運んでもらい、徹底して人との付き合いを断っている類ですが、唯一気にかかる存在が瑠海でした。

聴覚障害を持つ瑠海は小野莉奈が好演。セリフがほとんどない役を、瞳と表情だけで繊細に演じています。

孤立する類に自分との接点を感じるのでしょうか。瑠海は、ほぼ毎日のように類の住むガレージを訪れ、ドンドンと窓を叩いて窓越しの触れ合いを続けます。

ぼそぼそしゃべる類と耳が不自由なのでほとんど口をきかない瑠海。自分の気持ちをどういう風に出せばいいのかわからない不器用な者同士です。

部屋と外を仕切る一枚の窓ガラスが、そのまま近くて遠い2人の距離を表していました。

類と瑠海のセリフのない触れ合いの反面、川上麻衣子と西尾まりが演じるそれぞれの母親たちは、子供たちや世間に対して葛藤します。

類が世間に迷惑をかけていると思いながらもひたすら彼をかばう類の母と、聴覚障害を持つ娘の身を案じて類から遠ざけようとする瑠海の母。

セリフが少ないこの映画で、我が子を思う母親たちの心からの叫びが、とても印象深いものとなりました。

言葉というツールがなくても、気持ちは通じるものと思いがちですが、それでもわかり切れない部分がある……。

類と瑠海の2人の辿り着く結末に、どうしようもないやりきれなさが残りますが、瀬戸内海の美しい景色とポップなエンディング曲『少年少女』によって、希望も感じられるラストとなっています。

まとめ

引きこもりの青年にはそれなりの理由があり、障害をもつ少女は同級生たちから特別な目で見られます。

映画『テロルンとルンルン』では、厳しく残酷な社会の一面を匂わせながら、それでもピュアな気持ちで心を通わせはじめる類と瑠海を描いています。

瑠海は、補聴器を外すと聞こえてくる音が全てゆがんで耳に届くので、人と接するのは苦痛もあるのでしょう。

引きこもりから脱するべき、類は瑠海の笑顔を取り戻そうとオモチャを一生懸命に直します。

言葉で伝えられない思いを、瑠海から託された仕事をやり遂げることで、彼女に伝えようとしているのです。

こんな2人を見ていると、気持を伝えるのにもっと他に方法はないのかともどかしくなります。しかし、この苛立ちはファーストラブを見守る大人が持つ特別なものなのかもしれません。

エンディングテーマであるおとぎ話の『少年少女』の曲が流れて、映画『テロルンとルンルン』はラストを迎えます。

ラブストーリーといえるかどうかもわからないピュアな物語です。しかし、ご覧になった方は、ほろ苦い余韻を残したまま、明るい前途を想像させるラストシーンに胸をなでおろすことでしょう。

映画『テロルンとルンルン』は2020年8月14日(金)より広島・八丁座、8月21日(金)よりアップリンク吉祥寺にて劇場公開





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