Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ラブストーリー映画

オムニバス映画『おかざき恋愛四鏡』感想レビューと評価。川井田育美監督の「はちみつイズム」で描いた“恋愛の厳しさ”

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

映画『おかざき恋愛四鏡』は2020年1月24日(金)イオンシネマ名古屋茶屋ほか全国順次公開
若手の監督とキャストによる、4つの恋愛ストーリーを描いた、映画『おかざき恋愛四鏡』。

それぞれ違う作風を持つ個性豊かな4つの物語の中から、今回は、現実の恋愛「リアキュン」を求める、夢見がちな女の子の物語『はちみつイズム』をご紹介します。

映画『おかざき恋愛四鏡』とは


(C)おかざき恋愛四鏡

4人の若手監督が、全てのロケを愛知県岡崎市で敢行した、テーマも作風も違う4つの恋愛ストーリー。出演者には、オーディションで選ばれた7名の女優や、ファッションモデル、アイドル、ベテラン俳優など、さまざまな才能が集結しています。

また、不思議な鏡で、それぞれの物語を繋ぐブリッジドラマに、名古屋・栄を拠点とするアイドルグループ「SKE48」の熊崎晴香と松本慈子が出演。双子ユニット「HANA&MOMO」の大崎ハナと大崎モモと、コミカルな演技を披露しています。

映画『おかざき恋愛四鏡』作品情報

【公開】
2020年 (日本映画)

【エグゼクティブプロデューサー】
渡辺未生

『はちみつイズム』

【『はちみつイズム』監督・脚本】
川井田育美

【『はちみつイズム』キャスト】
越智ゆらの、織田唯愛、内海啓貴、神保悟志、茜結、新井花菜

【『はちみつイズム』作品概要】
少女漫画を目指す女の子、雛子が「生きた恋心」を描く為、一目ぼれしたイケメン男性の智樹との、リアルでキュンキュンする恋愛「リアキュン」を求めて奮闘するラブストーリー。

主演に、ツイッターのフォロワー数が約43万人以上の、人気モデル越智ゆらの、ミュージカル『テニスの王子様』などに出演し活躍している内海啓貴。

雛子を支える喫茶店のマスターを「相棒」シリーズや、大河ドラマに多く出演している、ベテラン俳優の神保悟志が演じています。

監督は「相棒」シリーズの制作に携わって来た、 川井田育美。

映画『はちみつイズム』の主な登場人物


(C)おかざき恋愛四鏡

横山雛子

喫茶店でアルバイトをしながら、少女漫画家デビューを目指す、少し夢見がちな女の子。

持ち込んだ作品が、いつもボツにされてしまう為、担当の編集長から、リアルでキュンキュンな恋愛「リアキュン」を経験し、「生きた恋心」を漫画にする事を提案されます。

若杉太郎

雛子がアルバイトをしている、喫茶店のマスター。

優しくて穏やかな雰囲気を持っていますが、喫茶店のマスターなのにコーヒー嫌いだったり、営業中に趣味の筋トレをしたり、少し変わった部分があります。

田中智樹

建築を専攻している大学院生。

頭が良くてスポーツが万能な、文字通り少女漫画から抜け出てきたようなイケメン。

雛子は一目ぼれしますが、彼との「リアキュン」の行方は?

松田みなみ

雛子の高校時代からの親友で相談相手。

雛子とは真逆で、冷静で現実主義的な性格です。

伊藤絵梨

雛子が持ち込みをしている「プリズム出版」の編集長。

雛子の一生懸命さは評価しており、漫画の完成度を高くする為「リアキュン」を提案します。

映画『はちみつイズム』のあらすじ


(C)おかざき恋愛四鏡
少女漫画デビューを目指す女の子、横山雛子は「プリズム出版」へ作品を持ち込みますが、編集長の伊藤絵梨の反応はイマイチです。

雛子は絵梨に「実際に恋愛をしているか?」と聞かれ、「はい」と答えた事から、そのリアルでキュンキュンする恋愛「リアキュン」を、漫画にする事を提案されます。

しかし、実際に雛子の周囲にいる男性は、バイト先の喫茶店のマスターだけ。

「少女漫画のような恋愛をして、それを漫画にする」という、雛子の理想から、現実はかけ離れていました。

そんな雛子の前に、雛子が描いた漫画に登場する生徒会長と、瓜二つの外見を持つイケメン大学院生、田中智樹が現れます。

智樹に一目ぼれした雛子は「現実は甘くない」という、親友の松田みなみの忠告も聞かず、智樹との「リアキュン」を追い求め、ある事がキッカケで、智樹と親密になっていきます。

自身に訪れた「リアキュン」を漫画にしていく雛子は、絵梨からデビューのチャンスが掴める「新人漫画大賞」に、作品を応募する事を提案されます。

「新人漫画大賞」への応募を決めた雛子は、無事に作品を完成させる事ができるのでしょうか?

そして、智樹との「リアキュン」の行方は?

『はちみつイズム』感想と評価


(C)おかざき恋愛四鏡
夢見がちな女の子の雛子が、自身の漫画を完成させる為に、リアルな恋愛「リアキュン」を追い求める『はちみつイズム』。

「リアキュン」の事ばかり考えている雛子と、お客さんが来なくて廃業寸前なのに、筋トレに力を入れている、優しいけどマイペースな喫茶店のマスターをメインにした、ほのぼのした雰囲気の楽しい作品です。

雛子を演じた、主演の越智ゆらのは「夢見がちな女の子の雛子は、自分に近い」と語っており、とにかく可愛さが爆発しています。

また、ベテラン俳優の神保悟志が、変わり者でマイペースな喫茶店のマスターを演じており、雛子との脱力した会話が、ほのぼのした作風を際立たせています。

ただ、本作は終始ほのぼのした作品ではありません。

雛子が智樹と経験する「リアキュン」の、現実だからこその恋愛の厳しさを描いています

この厳しさの部分が、小さな事のように見えて、実は大問題という、実際に男女の間に起きる問題としては、一番多いのではないかという部分です。

全体的に可愛らしく、ほのぼのした作風だからこそ、この厳しさの部分が一層際立っています。

また、雛子が追い求めているのは「リアキュン」であり、誰かを好きになったから恋愛が始まったのではなく、恋愛をする為に、人を好きになっているようで、本末転倒のように見えます。

恋愛する事は素晴らしいですが、恋心を向けるべき相手と、目的を見失った恋愛は、果たして幸せなのでしょうか?

本作は、そんな厳しい部分もありますが、全体的に可愛らしく癒される作風となっており、『おかざき恋愛四鏡』の最後のエピソードとして、観終わった後には、清々しい気持ちになれる作品でした。

まとめ


(C)おかざき恋愛四鏡
本作の作品の冒頭が「パンをくわえて走る、遅刻寸前の女の子」という場面から始まるあたり、昨今の邦画に多い、少女コミックの実写化作品を意識した作風となっています。

「少女コミックの実写化作品を意識した作風」といっても、そういった映画の輪郭をなぞっただけの「それっぽい映画」ではありません。

雛子が自分の作品の主人公、安藤沙羅と会話をしながら、自身の気持ちを語るなどの、いわゆる「メタ要素」が含まれており、「キラキラ系」とも呼ばれる、少女コミックを実写化した作品への、風刺的な部分を作品から感じました。

川井田育美監督の意向は違うかもしれませんが、作中でも雛子の親友、松田みなみの「リアルはそんなに甘くないぞ」という言葉がありますが、決して甘くない、リアルな恋愛の厳しさを描いた本作だからこそ、「キラキラ系」への風刺的な部分を取り入れた、独特の作風になっていると感じます。

4つのラブストーリから構成されている、オムニバス映画『おかざき恋愛四鏡』は、それぞれが独自の世界観を持っており、同じ恋愛をテーマにした作品でも、いろいろな切り口があり、どれも見応えのある作品ばかりです。

映画『おかざき恋愛四鏡』は2020年1月24日(金)から、イオンシネマ名古屋茶屋ほかで、全国順次公開です。



関連記事

ラブストーリー映画

映画『日の名残り』ネタバレあらすじ考察と結末の感想評価。カズオ・イシグロ原作の“大人のラブストーリー”をジェームズ・アイボリー監督が描く

カズオ・イシグロ原作の老執事の半生を映画化した『日の名残り』 イギリスの貴族に人生を捧げてきた老執事が自らの過去を回想するカズオ・イシグロのベストセラー小説『日の名残り』。 『眺めのいい部屋』(198 …

ラブストーリー映画

『アイスクリームフィーバー』原作ネタバレ結末とあらすじ感想評価。川上未映子映画化で綴る“淡い初恋と心の痛み”

川上未映子の短編『アイスクリーム熱』が『アイスクリームフィーバー』として映画化決定! 2008年『乳と卵』で芥川賞を受賞した川上未映子。2013年出版された短編集『愛の夢とか』の中に収録された『アイス …

ラブストーリー映画

『麗しのサブリナ』ネタバレあらすじ感想と結末の解説評価。オードリーヘプバーンをファッション・アイコンに決定づけた名作映画

ファッションの最先端となった永遠のアイコン・サブリナ 『ローマの休日』(1954)の銀幕の妖精オードリー・ヘプバーン主演のロマンティックコメディ。 『アパートの鍵貸します』(1960)『お熱いのがお好 …

ラブストーリー映画

韓流ドラマ【トッケビ】動画を無料視聴する方法!日本語字幕も吹き替えも

韓流(韓国)ドラマ『トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜』のフル動画を無料視聴する方法を分かりやすくご紹介していきます! ↓今すぐ『トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜』の動画を無料で見るならU-NEXT!↓ …

ラブストーリー映画

映画『パリの恋人たち』ネタバレ感想とレビュー評価。大人のラブストーリーはヌーヴェル・ヴァーグの香り

ホットワインやココアが似合う季節になると、夏よりもなんだか心がそわそわするように感じられるのは気のせいでしょうか。 愛の言葉が似合う言語の国、誰もが恋をする街パリからロマンティックでビターな大人の愛の …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学