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Entry 2019/03/19
Update

『台北セブンラブ』感想レビュー。台湾式恋愛映画には首都の街並みさながらにデザインされたキャラクターたちが登場⁈

  • Writer :
  • 石井夏子

虚構と現実のはざまで

クラウドファンディングによって日本公開が決まった台湾映画『台北セブンラブ』。

台湾巨匠傑作選2019~恋する台湾~@K’s cinemaにて日本初上映、その後2019年5月25日(土)よりアップリンク吉祥寺ほかでも上映されます。

虚実をない交ぜにして描きあげられた本作は、鑑賞後に様々な感情を呼び起こさせました。

張り巡らされた伏線に気付いたときは、すでに誰かの“デザイン”の中なのかも知れません。

映画『台北セブンラブ』の作品情報


©Red Society Films

【日本公開】
2019年(台湾映画)

【原題】
相愛的七種設計 Design 7 Love

【監督・脚本】
陳宏一(チェン・ホンイー)

【キャスト】
アン・シュー、モー・ズーイー、ホアン・ルー、ダレン・ワン、チウ・イェンシャン、トム・プライス、チェン・ユーアン

【作品概要】
キャストには『目撃者 闇の中の瞳』(2018)のアン・シュー、『台北に舞う雪』(2010)のモー・ズーイー、『ブラインド・マッサージ』(2017)のホアン・ルー、『私の少女時代-OUR TIMES-』(2015)のダレン・ワン、『あの頃、君を追いかけた』(2018)のチウ・イェンシャンらが名を連ねています。

監督は、CM・MV 監督としても知られ、現代台北を撮り続けるチェン・ホンイーです。

本作は第51回金馬奨で最優秀新人賞と最優秀視覚効果賞にノミネートされ、第48回ワールドフェスト・ヒューストン国際映画祭で最優秀作品賞を受賞。

映画『台北セブンラブ』のあらすじ


©Red Society Films

2014年、台北市のデザイン事務所。

台北は“2016年世界デザイン首都”に選ばれており、デザイン業界は沸き立っていましたが、顧客から要求されるデザインはどこかで見たようなものばかり。

事務所のベテランデザイナー・エマは、自分の作りたいデザインと顧客のニーズの間でいつも戦っています。

彼女のご機嫌を取るのは、営業のバーズ。

バーズは、デザイナーであり元恋人のドロシーを、上海から引き抜いてきます。

フランスに住む遠距離恋愛の彼氏のことをいつも気にかけているドロシーですが、バーズはそんなことお構いなしに未練タラタラ。

それを知ったエマは嫉妬し、ドロシーにライバル心を燃やします。

若手デザイナーのアーチャンと、アシスタントのチーズに、ドロシーを見張れと命じるエマ。

ですが、アーチャンとチーズもどうやらただならぬ関係のようです。

©Red Society Films

事務所では、デザインホテルのリノベーションというビッグプロジェクトを抱え、会議を重ねていました。

ホテルの御曹司マークを納得させられる案を出そうと励む一同。

マークはドロシーを気に入り口説こうとしますが、バーズが間に入って遮ります。

ドロシーを利用し、プロジェクトを優位に進めようと企む事務所の所長アンドリュー。

一筋縄では行かない、7人の男女が織りなす恋愛模様と、デザインの行方は…。

映画『台北セブンラブ』の感想と評価


©Red Society Films

観客を出演者に仕立て上げる

本作冒頭、台北の喧騒が映し出されます。

渋滞する道路、危険な運転をする車、構わず歩き続ける人々、様々なデザインの建築物が混在する街並み…。

そして病室に寝ている包帯で顔を覆われた人物のアップが。

おそらく女性であろうその人物は、驚いたように息を飲んで目を見開き、荒い呼吸を繰り返します。

目線は観客を捉えて離しません。

この一連で、本作はただの恋愛映画では無いと気付かされます。

その後も観客に違和感を与える演出が続き、それによって、本作がフィクションであると再確認させられると同時に、まるで自分がキャストのひとりになったかのように画面に吸い込まれて行きます。

本作の原題は「相愛的七種設計」で、直訳すると「七種類の愛形(デザイン)」。

“設計”という中国語には、“デザイン”のほかに“罠を仕掛ける”という意味も含まれているそうです。

仕掛けられた罠に、冒頭数分ですっかり心が奪われました。

前述の怪我人が誰かはすぐわかるものの、なぜこのような状態になってしまったのかが全く読めないまま、映画は進行。

その後も予想を裏切る仕掛けは続き、ジェットコースターのように高速で落ちたり、一回転したり、じわじわと坂を登ったりと観客を振り回して行きます。

誰が“設計”したのか


©Red Society Films

7人の男女ひとりずつにフォーカスを当てて進む本作。

エマから始まった物語は、バーズ、ドロシーと主人公を変えて行き、誰が誰を想っているのかが説明されなくても痛切に伝わってきます。

デザイン事務所の中での入り乱れた恋愛関係でさえ、デザイナーの彼らにとってはアイデアの糧。

大人の振る舞いとは思えないほど、彼らは他人がいようがお構いなしに感情を発露し、自己を主張します。

そして主人公が切り替わるタイミングで、インタビュー動画のように、カメラに目を向けて話し始めるキャストたち。

ドラマに魅入っていた観客は、このメタ的表現に少し驚かされます。

そのような、本作における数々の“不自然さ”。

なぜこんなにも不自然なのかと言うと、すべて“設計”されたものだから。

本作のヒロイン・ドロシーと同じ名前を持つキャラクターに、児童文学を原作とした映画『オズの魔法使』(1939)のドロシーがいます。

竜巻によって不思議な世界に迷い込んでしまった彼女は、もとの世界に帰るために大魔法使いオズに会いに行きます。

しかしオズは魔法を使えない、ただの人間でした。

まわりの者によって大魔法使いに“設計”されてしまったオズと、その“設計”に気付いたドロシー。

『オズの魔法使』のドロシーは無事に大好きな家に帰りつくことができましたが、本作のドロシーはどうなってしまうのでしょう。

本作はたくさんの選択肢を提示し、観客にこの物語を“設計”させようと試みた、台湾映画ならではの意欲作なのです。

まとめ


©Red Society Films

作中で象徴的に映し出される台北のランドマーク、“台北101”。

近代的なデザインと、八つの節が重なった竹のイメージから、台北の多様性と伝統を感じさせます。

2004年の開業から2007年まで世界最高層のビルであった台北101ですが、2007年にドバイのブルジュ・ハリファにその記録を抜かれました。

バーズが語るように、あっという間に新しいものが出来、古いものは淘汰されて行きます。

しかし、様々な文化、人種が入り混じった国際都市台北だからこそ生まれるものがあり、失われずに引き継がれていくものは確かに存在するんです。

美味しそうな食事の場面もあり、鑑賞後に台湾グルメに舌鼓を打ちながら、本作について誰かと語り合いたくなります。

映画『台北セブンラブ』は、2019年4月20日(土)から5月10日(金)に、東京・新宿のK’s cinemaにて上映される特集“台湾巨匠傑作選2019~恋する台湾~”のうちの1本。

台湾映画における恋愛映画の系譜をテーマにした特集上映で、台湾ニューシネマから現代に連なる古びないポップな21作品が一挙上映されます。

また、2019年5月25日(土)よりアップリンク吉祥寺ほかでも上映。

ぜひ本作を劇場でご覧になり、台北を身近に感じてください。

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