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Entry 2018/10/27
Update

溝口健二の映画代表作『近松物語』ネタバレ感想。結末までのあらすじ紹介も

  • Writer :
  • もりのちこ

身分が違う男女の、道ならぬ恋を描いた映画『近松物語』。

監督は、女性映画の巨匠と呼ばれた、溝口健二監督です。運命に身を焦がす男女の姿が、厳しくも美しく描かれています。

京都の大店を営む大経師の若妻と、腕利きの経師職人は、あらぬ疑いをかけられ、やむなく一緒に逃亡します。江戸の世の叶わぬ恋の結末は?

世界の映画人に多大な影響を与えた溝口健二監督の代表作の1本、『近松物語』をご紹介します。

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映画『近松物語』の作品情報

【公開】
1954年(日本映画)
*2018年に4Kデジタルリマスター版を公開

【原作】
近松門左衛門「大経師昔暦」

【監督】
溝口健二

【キャスト】
長谷川一夫、香川京子、進藤英太郎、小沢栄太郎、南田洋子、田中春男、浪花千栄子、菅井一郎、石黒達也、水野浩、十朱久雄、玉置一恵、橘公子

【作品概要】

映画『近松物語』は、近松門左衛門の人形浄瑠璃の演目「大経師昔暦」を、川口松太郎が劇化し、「忠臣蔵」の脚本家としても有名な依田義賢が脚本を担当。

監督は、映画『西鶴一代女』(1952年作品)、『雨月物語』(1953年作品)、『山椒大夫』(1954年作品)と3年連続でヴェネツィア映画祭にて銀師子賞を受賞し、世界の映画界に多大な影響を与えた溝口健二監督です。

身分が違う男女の道ならぬ恋を描いた、溝口健二監督の代表作の1本『近松物語』を、4Kデジタル復元版でお楽しみいただけます。

映画『近松物語』のあらすじとネタバレ

時は江戸時代。

朝廷御用の、経巻・仏画などを表装した職人の長「大経師」が、翌年の新暦(経師歴)の専売権を独占し、大儲けをしていました。

京都で大店を営む大経師以春は、若い後妻・おさんをもらいながら、女中のお玉にも手を出す始末。今で言うセクハラです。

お玉は、店の手代で腕利きの茂兵衛へ思いを寄せており、以春のセクハラのことを相談します。真面目な茂兵衛は、「奉公する身分をわきまえ事を荒げるな。なによりも奥さんに知れたら可愛そうだ」と相手にしてくれません。

ある日、おさんの所に兄の道善が訪ねてきました。道楽者の道善は、借金の利子の支払いに困りその返済を妹に泣きつきます。

いくら裕福な店とはいえ、金に細かい主人・以春がすんなりお金を貸してくれるはずがありません。夫にも相談できず、困ったおさんは茂兵衛に相談します。

おさんの願いを叶えたい茂兵衛は、仕方なく店のお金を一時用立てる手配をします。

しかしそれを見ていた人物がいました。番頭の助右衛門は、ことの次第を主人の以春にばらします。

怒った以春は、なぜお金を工面したのか茂兵衛を問いただしますが、茂兵衛はおさんのことは決して口にしませんでした。なおも怒り狂う以春は、茂兵衛を追い出そうとします。それを止めに入ったのは、お玉でした。

お玉は、茂兵衛がお金を用意した理由は自分にあると嘘をつき、茂兵衛を庇おうとします。お玉と茂兵衛の仲を勘違いした以春はさらにヒートアップ。茂兵衛を蔵に閉じ込めてしまいます。

そのことを知ったおさんは、すべて自分のせいで起こった事件であることを、お玉に謝りに行きます。しかし、そこで夫とお玉の関係を知ることに。

以春をこらしめようと、お玉の部屋で以春を待つ、おさん。そこにやって来たのは、蔵から逃げ出した茂兵衛でした。

店を出ていくことを決めた茂兵衛は、おさんの反対を押し切り一人逃げようとします。しかし一緒にいる現場を番頭の助右衛門に見られ、大騒ぎに。2人は不義密通の疑いをかけられ、やむなく駆け落ちすることに。

あらぬ誤解から、一緒に逃亡することになった茂兵衛とおさん。今ならまだ、おさんだけでも帰したい。おさんを説得するも、聞き入れてくれません。

追手が2人に迫ります。険しい道をボロボロになって逃げる2人。「もう、疲れた。死にたい」おさんの言葉に覚悟を決めた茂兵衛は、川に船を出します。

以下、『近松物語』ネタバレ・結末の記載がございます。『近松物語』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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船から一緒に身を投げようと決意する茂兵衛とおさん。

おさんは茂兵衛に「道連れにしてしまい、ごめんなさい」と謝ります。それを聞いた茂兵衛は、おさんに最後の告白をします。「今まで慕っておりました。私の意思で一緒に死にたいのです」と。

茂兵衛の気持ちを初めて聞いたおさんは、泣き崩れます。死にたい気持ちが、茂兵衛と共に生きたいという気持ちに変わった瞬間でした。2人は結ばれ、誤解から生じた駆け落ちは、本当の駆け落ちとなりました。

2人は心中したと噂が立ちますが、店にやって来た栗売りの目撃証言で生きていることがばれてしまいます。

命からがら逃げる2人は、茂兵衛の実家がある村にたどり着きます。しかしそこで追手に見つかり、おさんだけが連れ戻されます。

一度は引き裂かれた2人ですが、茂兵衛はおさんをあきらめきれません。おさんの元へ逢いに行きます。2人とも捕まってしまう覚悟はとうに出来ていました。逢えないより、捕まっても逢いたい。

不義密通。男女の道義に外れた関係で密かに通じ合うこと。夫がある女性が他の男性と通ずることは、お家の恥であり、罰則は死罪。馬の背に乗せられ町中をひきまわされた後、張り付けとされます。

「ひきまわしだって!」町人たちが集まります。馬の背に乗せられた茂兵衛と、おさんの姿が見えます。2人は縛られながらも両の手を握りあっていました。

その表情はどこか穏やかで幸せそうに見えます。これが、これから死に行く者の顔なのか。町人のつぶやきが聞こえてきます。

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映画『近松物語』の感想と評価

モノクロ映画といえども、4Kデジタル復元ということで映像がとても綺麗です。

むしろモノクロの明暗が、悲恋をさらに盛り上げます

駆け落ち、秘めた想い、身分の違う恋。悲恋、心中の話は近松門左衛門におまかせあれです。付き合ったり、離れたりしながら悲しい恋の結末に向かう男女の姿が、せつなくも美しく描かれています。

そして注目するのが役者陣です。64年前の作品になるので、残念ながら亡くなられた俳優さんもいますが、昭和の時代のトップスターばかりです。

茂兵衛役の長谷川一夫さんは、歌舞伎出身の映画俳優。銭形平次シリーズをはじめ多くの作品に主演され、男も女も惚れた永遠の二枚目と言われるほどの人気でした。

おさん役の香川京子さんは、日本映画全盛期のころ、どの監督からも引っ張りだこの人気女優さんでした。

最近では、テレビドラマ『この世界の片隅に】で、17年ぶりのドラマ出演と話題になりました。

所作ひとつ取っても色っぽく、艶のある演技。手を触れるだけで、見つめ合うだけで、こんなにも色気がでるものか。そんなスターの演技に注目です。

まとめ

近松門左衛門の人形浄瑠璃の演目「大経師昔暦」が原作の、映画『近松物語』をご紹介してきました。

女性映画の巨匠と呼ばれた溝口健二監督の、悲恋の中にある厳しさや美しさが存分に出ている作品です。

また、溝口監督の、ワンショットの長回しとロングショットを組み合わせてワンシーンを作り出す演出は、国内外問わず、多くの監督がお手本にしたと手法で知られています。

映画は1954年公開の作品ですが、原作は正徳5年(1715年)のものです。

300年以上前の江戸時代に、形は変われど、同じ作品を観ていた人がいるという史実。時を経て、なお愛され続ける作品の魅力を堪能ください。

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