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Entry 2018/11/24
Update

映画『裸の島』あらすじネタバレと感想。新藤兼人の代表作は世界が認めた邦画

  • Writer :
  • もりのちこ

1961年、モスクワ映画祭グランプリを受賞。世界60ヵ国以上で上映され絶賛された、新藤兼人監督の代表作『裸の島』


映画『裸の島』近代映画協会

電気もガスも水道も通っていない、瀬戸内海の孤島。その名の通り『裸の島』で暮らす、家族の生活を描いた作品です。

島の1年を通して、自然の厳しさ、家族の在り方、死生観にまで迫る内容は、セリフが一切ありません。

笑い声や歌声、泣き声などは聞こえるがセリフが一切ないという、サイレント映画ともひと味違う、実験的な映画でしたが、その演出は映画界に多大な影響を与えました。

セリフのない、音楽とモノクロ映像のみで、見る者に語り掛けてくる映画『裸の島』をご紹介します。

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映画『裸の島』の作品情報

【公開】
1960年(日本)

【製作・監督・脚本・美術】
新藤兼人

【キャスト】
乙羽信子、殿山泰司、田中伸二、堀本正紀

【作品概要】
モスクワ映画祭グランプリを始め、国際映画祭で多くの賞を受賞し、世界60ヵ国以上で上映された、新藤兼人監督の代表作です。

セリフが一切ない音楽と映像のみで、瀬戸内海の孤島で暮らす家族の生活を描いた作品です。

主演の夫婦役には、のちに新藤監督と結婚をした乙羽信子が妻・トヨを演じています。

夫・千太には、新藤監督の盟友でもあり、のちの新藤監督作品『三文役者』のモデルにもなった殿山泰司が演じています。

映画『裸の島』のあらすじとネタバレ

「耕して天に至る 乾いた土 限られた土地」

瀬戸内海に浮かぶ孤島には、千太(殿山泰司)と、トヨ(乙羽信子)夫婦、息子の太郎と次郎の4人家族が暮らしていました。

島は平地がほとんどなく、急斜面の乾燥した土地に田畑を作り、ヤギやアヒルを飼い、自給自足での生活です。

何よりも水がないため、夫婦は生活用水の補充と畑の水やりのため、隣島まで小舟を漕いで水を汲みに行きます。

天秤棒に吊らされた2つの桶を担ぎ、島と島とを何度も往復します。

朝早く水を汲みに舟を出す夫婦。子供たちは、ヤギとアヒルに餌をやり、湯を沸かし、食卓の準備をし、親の帰りを待ちます。

天秤棒でバランスを取りながら、急斜面を1歩1歩登り、小屋にたどり着く夫婦。

皆揃ったところで朝食です。

兄の太郎は、食事が終わると急斜面を走り降り、隣島の小学校へと通う準備です。送り迎えは、母が子舟で行ないます。その時も、水汲みは欠かしません。

島に残った父は、畑の水やり。弟の次郎は、海で魚捕りです。

母が島に戻ってきました。天秤棒でバランスを取りながら畑まで水を運びます。

ザッザッザッ。乾いた土を踏みしめる音が響きます。足元は砂埃が立ち、夏の乾燥の厳しさを物語っています。

ある日、トヨは誤って片方の桶をひっくり返してしまいます。水をまけ呆然とするトヨに、千太は平手打ちをします。

それほど水は、家族にとって大切なものでした。

さて、日が暮れようとしています。トヨが、隣島に太郎を迎えに行きます。水汲みも欠かしません。

島では、次郎が家畜を小屋に入れ、ドラム缶にお湯を沸かし、お風呂の準備です。

千太は帰ってきた小舟の掃除です。

風呂に入る子供たち。次は父の千太。皆で夕食を済ませた後、千太は石臼で豆を挽き、トヨは海を眺めながらゆっくりと風呂へ。

こうして孤島の一日は過ぎて行きます。

一日一日の積み重ねが一年に。秋には隣島で祭りが行われ、冬は土を耕し、種を蒔く。春には麦を収穫し、地主に収め、また暑い夏がやってきます。

そんな日常の中で、少しの贅沢もあります。

兄弟が海で鯛を釣り上げました。

家族は、よそ行きの衣装に着替え巡航船に乗り市街へ。家族の笑い声が響きます。

鯛を売ったお金でカレーライスを食べ、子供服を買いました。ロープウェイに乗り、自分たちの住む島を見ます。

キラキラ輝く海が見えました。

以下、『裸の島』ネタバレ・結末の記載がございます。『裸の島』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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それは、暑い日でした。

次郎が小屋を飛び出します。水を汲みに出た両親を探しています。

次郎の様子に気付いた千太とトヨは、舟をこぐスピードをあげ駆けつけます。

小屋には高熱に苦しむ太郎の姿がありました。ぐったりと意識のない太郎。

千太は急いで、隣島に医者を呼びに向かいます。

ようやく医者を連れて戻った千太。しかし、太郎はすでに亡くなっていました。

夜空には、隣島の花火大会の花火が上がっています。孤島からも綺麗に見えていました。

隣島から、お坊さんと太郎の同級生たちが船でやってきます。

太郎の埋葬のためです。

毎日、天秤棒で水を担ぎ運んでいる夫婦が、今日は息子の棺を担いでいます。

島の上の眺めの良い場所に、穴を掘り、棺を入れます。お花を捧げる子供達。最後は、棺の上に木を乗せ、火を放ちます。

島から遠ざかる船。孤島の頂上からは煙が上っていました。葬儀は終わりました。

太郎を失っても、生活は続きます。

隣島まで水を汲みに行き、急斜面を登り、畑に水を撒く。

畑に着いたトヨは、自ら水の入った桶をひっくり返します。まるで狂ったように、畑の作物を引き抜き、土の上に倒れ込み声をあげ号泣します。

以前、誤って水をこぼしたトヨに平手打ちをした千太も、今回は何も言いません。黙々と畑に水を撒く千太。

トヨも立ち上がり、また畑に水を撒いていきます。

何があっても、この孤島で暮らしていくしかない。泣いても叫んでも、今日も明日も、この孤島で暮らしていくしかない。

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映画『裸の島』の感想と評価

乾いた孤島の急斜面を、天秤棒で桶に入った水を担ぎ運ぶ夫婦の姿が、何度も何度も繰り返されます

孤島は海に囲まれ、穏やかな波が押し寄せているのに、その水は畑や飲み水には使えない。その対比が渇きをいっそう増長させます。

来る日も来る日も水を運ぶ。気の遠くなる作業は、見る者に果てしない恐怖を与えます。

しかし、そこには家族の真の姿がありました。家族が一丸となって、生きていくために協力し合う姿です。

時には自己を犠牲にして、家族のことを想い、少しの贅沢を共有し、それぞれが我慢強く生きるということ。

「雨ニモマケズ風ニモマケズ雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ丈夫ナカラダヲモチ・・」

時代は変わっても、おごらず生きる精神は、日本人として持ち合わせていたいものです。

まとめ

モスクワ映画祭グランプリを始め、国際映画祭で多くの賞を受賞し、世界60ヵ国以上で上映された、新藤兼人監督の代表作『裸の島』を紹介しました。

映画『裸の島』は、今の広島県三原市の佐木島(さぎしま)と宿禰島(すくねじま)で撮影されました。

新藤兼人監督と、監督の妻でトヨを演じた乙羽信子が亡くなった際には、遺骨の一部がこの島に散骨されました。それほど2人にとっても、思い入れのある作品でした。

セリフが一切ない映画『裸の島』。

作品を観た後は、セリフがない分、子供たちの笑い声や、合唱、祭りの音頭、そして母親の泣き声が鮮明に耳に残ることでしょう。

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