映画『僕らのごはんは明日で待ってる』のあらすじネタバレと感想や評価をまとめました!
以下、あらすじやネタバレが含まれる記事となりますので、まずは『僕らのごはんは明日で待ってる』映画作品情報をどうぞ!
映画『僕らのごはんは明日で待ってる』作品情報
【公開】
2017年(日本)
【監督】
市井昌秀
【キャスト】
中島裕翔、新木優子、美山加恋、岡山天音、片桐はいり、松原智恵子
【作品概要】
瀬尾まいこのロングセラー小説を中島裕翔、新木優子のフレッシュコンビで映画化。中学生の時に兄を失った少年が、ずかずかと心の中に入ってくる同級生の女子とつきあうことで、成長していく姿を描く。
映画『僕らのごはんは明日で待ってる』あらすじとネタバレ
なれそめ
高校3年生の葉山亮太は今日も教室の窓からぼんやり空を眺めていました。中学生の時に兄を病気で亡くしてから、内にこもるようになってしまったのです。
そんな彼のもとに学級委員の上村小春が「たそがれているところ申し訳ないんだけど」と声をかけてきました。体育祭のクラス対抗リレーで米俵ジャンプに出るようにと言うのです。「パートナーは運動神経抜群の私ね」と小春。
放課後、米俵ジャンプの練習をする亮太と小春。だんだん息があってきました。青空をみながら「ちょうどこんな日だったんだ。兄貴が死んだの」と亮太が言うと「そうだね」と小春。「知ってるの?」「知ってるよ、家も近所だったし」。亮太は入院中の兄を想い出しました。「どんな時だって食べなきゃもったいない。食べろ、飲め、死は誰にでも来る。」と言っていた兄。
体育祭本番。息のあった二人はリレー優勝の立役者に。小春は亮太に「リレーで優勝したら告白するって決めてたの」と言います。「告白って誰に?」と亮太が聞くと「葉山くんだよ」と小春。まさか自分とは思わず驚く亮太。
小春の告白を断ってしまった亮太はある日、彼女が欠席していたのが気になって家を訪ねました。「どうしたのかなって」と亮太が言うと「インフルエンザだよ。今流行ってるでしょ? もしかして気付いてなかったの」と小春は呆れます。小春にポカリスエットを渡すと、亮太は言います。「好きになるのが怖いんだ。楽しい想いのあとには必ずむなしい想いが待ってると思うと怖い」。
不安な想いを告白した亮太は小春といろんな話をしました。大学には行かないつもりだという亮太に、葉山くんは大学に言ったほうがいいよ、と小春はいいます。数日後、小春が図書室で勉強しているところに亮太がやってきました。「大学に行くことにした。上村と同じ大学に行くよ」。すると突然「ええ!?」と大声を出す小春。実は小春は保育士の資格をとるために女子短大を受ける予定だったのです。
別々の大学ではありますが二人とも見事合格。亮太は大学で友達もでき、人柄の良さからなのか「イエス・キリスト」というあだ名までつきました。
交際と別れ
亮太と小春は、小春が大好物というケンタッキーフライドチキンのお店へ。小春はカーネル・サンダースの人形を見て、「ケンタッキーのお店は最初たった6席しかなかったんだよ。カーネルさんが65歳の時にフランチャイズ化したの。なんか勇気がもらえる気がする」と言い、人形と握手します。
屋上遊園地にやってきた二人。ここで初めて亮太は、小春には両親がなく、祖母と二人暮しなのを知りました。そういえば小春の泣き顔も見たことがありません。「私が泣いてる時は相当弱ってる時だから助けに来てね」と小春は冗談交じりに言います。
3年後、二人の交際は順調に続き、小春は念願の保育士として働き、亮太も就職が決まりました。亮太は小春の祖母に挨拶に行きますが、あまり良い反応を得られず気落ちします。
しばらくしてファミレスで食事をしていたときに、突然小春が別れ話を持ち出しました。理由も判然とせず、納得できない亮太でしたが、小春の意思は堅くとりつくしまもありません。
亮太はひどく落ち込み、おしぼり工場のバイトでも作業を忘れ物思いにふけり、その分友人はあたふた。しかし、大学の後輩の鈴原えみりに気に入られ、成り行きでつきあい始めます。でもやっぱり小春のことが忘れられないと悟った亮太はえみりにそのことを告げて別れます。
社会人となっても悶々としている亮太。ある日、小春が入院していることを人づてに聞きます。病院を訪ねますが、小春はつれない態度です。病名は子宮筋腫。摘出手術を受けないといけないそうです。子供時代に寂しい想いをした彼女は子どもたちと幸せな家庭を気づくのが夢だったので、とてもつらいはずです。
小春とどう接すればよいか迷っていた亮太は、二人で来たデパートの屋上の望遠鏡を覗いていました。すると、病院の屋上で一人泣きじゃくっている小春が目にはいってきました。亮太は以前彼女が言った言葉を思い出します。「私が泣いてる時は相当弱ってる時だから助けに来てね」。
行動する時
上村はつらいのに心配をかけまいとしてつれないそぶりをしていたんだ。亮太は駆け出します。ケンタッキーフライドチキンの店の前を通るとおもむろにカーネル・サンダースの人形を抱え走り続けます。小春の病室に到着し、「上村じゃなきゃだめなんだ」と叫んで、ベッドの小春に人形の手が届くように斜めに差し出しました。人形と握手する小春。笑顔になりました。
手術中、待機している祖母に亮太はあんパンを差し出します。そして兄の言葉を伝え、しっかり噛み締めて食べるのでした。手術は無事成功しました。
小春も元気になり、二人はカフェで栄養満点の食事をとっていました。祖母も二人の交際を認めてくれたし。そろそろお互いを名前で呼ぼうと、初めて「小春」「亮太」と呼び合う二人、ふいに亮太が立ち上がり、体を伸ばして向かいに座っている小春にキスをしました。
『僕らのごはんは明日で待ってる』の感想と評価
見終わって、なんとも穏やかでほっこりした気分にさせられます。主人公の亮太の性格がそのまま映画の土台となっているからでしょう。
ほぼ主役二人だけで展開し、登場人物が非常に少ないという点で『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』に似ているのですが(タイトルも少し似ています)、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』が純然たる恋愛映画だったのに対して、こちらは、恋人同士の話にもかかわらず、恋愛というよりは、バディ映画のようです。恋人同士というより、相棒に近いというのでしょうか。
どちらかといえばのんびり系の亮太に対して、ちゃきちゃきのしっかり系の小春というまったく正反対の二人が、交わす会話が実にいきいきとしていて、魅力的な会話劇となっています。
カーネル・サンダースと握手するシーンなど、どこかくすっと笑わせるユーモア感覚が絶妙で、ユーモラスな会話劇という点で、ウッディ・アレン的なセンスを感じると言ったら褒め過ぎでしょうか。
全編にほのかに流れる「きちんと生きる」という主題も好感が持てます。ただし、演出にはところどころひねった部分があり、とりわけ、オープニングの奇妙なショットには驚かされます。なんだこれ?と思った瞬間、カメラが90度回転して、展望台の望遠鏡であることがわかります。さらに中盤、同じ場面がそっくり繰り返され、クローズアップからの90度回転がもう一度観られます。同じ意味合いで、ストーブのアップから教室の全景を映していくシーンなど、ユニークなカメラワークにも注目です。
まとめ
亮太を演じる中島裕翔は行定勲監督の『ピンクとグレー』でも主演しており、石原裕次郎や加山雄三ら、往年のスターを彷彿とさせる大物感があります。
小春を演じる新木優子もいくつかの作品に出ていますが、ちょい役ながら『聖の青春』の古本屋の店員役が非常に印象的でした。今回は、とてもさばさばした女性を演じ、これが地の性格?と思わせるぐらいのはまり役です。
『箱入り息子の恋』などで知られる市井昌秀監督は、映画監督になる前はお笑い芸人としても活躍されていた経歴の持ち主で、テンポのいいやりとりや、そこはかとない可笑しみを醸し出す会話は、その経験がいかされているのかもしれません。