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Entry 2019/10/08
Update

【優希美青インタビュー】映画『WALKING MAN』ANARCHY監督の作品制作への思いに応える演技を

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『WALKING MAN』は2019年10月11日(金)より全国ロードショー!

ラップ・ヒップホップ界で現在、絶大な人気を誇るアーティストANARCHYが初監督を務めた映画『WALKING MAN』は、自身の映画に対する情熱と、自身の発したいメッセージが合致して作られた、思いの強く感じられる作品です。


(C)Cinemarche

貧しい母子家庭に生まれた一人の少年が、ラップとの出会いで生きる希望を見出していく姿を描いたこの作品。主役の少年・アトム役を野村周平、ヒロインでアトムの妹・ウラン役を女優の優希美青さんが務めます。

今回、優希美青さんにインタビューをおこない、物語やANARCHY監督自身への印象、撮影のエピソードや共演者の印象などをお聞きしました。

知らなかった過酷な世界


(C) 2019 映画「WALKING MAN」製作委員会

──今回の映画の脚本を初めてご覧になった際には、どのような印象を受けましたでしょうか?

優希美青(以下、優希):登場人物たちの思い、切なくつらい思いを感じました。お金がないなど、いろんな理由で不自由に生活している人たち。私はそういった人たちのことを、本当の意味で理解したことはなかったと思うんです。

お金がないから相手にしてもらえないし、バカにされる。友達と遊びたいけど我慢しなければいけない。そしてやりたくないバイトをしてでも、今を生きるために頑張っていかなければいけない。そういったことにいろいろ考えさせられるものがありました。

現実でこんなことがあるとしたら本当に大変ですが、それでもめげずに頑張っているのであれば、それはすごいことだと思います。

ただ、この映画自体はラップや音楽を希望の一つとして描いている部分もあるし、音楽が好きな人にも受け入れられるものだと思っています。

ラップについて知識が無くても、何か一つ共感できるところはあると思いますし、いろんな方に観ていただきたいです。悩んでいる人たちがチャレンジしてみようと奮起できるよう、この作品がちょっとでも背中を押していけたらいいなと思っています。

──主人公アトムとヒロインのウランにおける“兄妹”という関係については、ご自身の中でどう捉えましたか?

優希:言いたいことも言えずに妹にバカにされていたアトムはラップに出会ったことで夢を持ち、バカにされながらも頑張っていきます。

ですが、彼がそうなれたのには、ウランの一言一言や行動も影響したところはあったんじゃないかと思うんです。妹がいたから、彼は強くなれたというか。その意味でこの兄妹という関係は、物語上でもすごく大事だと思いました。

だから私のお芝居を観てこう感じてほしいというよりは、「ウランがいたからアトムがいたんだ」という風にお客さんには感じてもらえると嬉しいです。

ANARCHY監督の真面目さと誠実さ


(C) Cinemarche

──今回、ANARCHY監督は映画製作に初挑戦しましたが、撮影時において監督はどのように振る舞われていましたか?

優希:お会いする前に監督のことをネットで調べたんですが、「怖い方なのかな」って(笑)。でも現場に入って実際にお会いしたら、とてもフレンドリーに接してくださり、不安なく現場を過ごさせていただきました。また、こんな謙虚な監督は初めてだと思えるくらいすごく謙虚な方で。

現場では「僕はこのシーンをこうしたいんです」「これがいいと思うんですが、どうでしょう?」とご自身の思いを真剣に伝えてくださり、本当に真面目な方なんだと思いました。

そしてそんな姿からは、同時に「本当にこの作品をいいものにしたい」「この作品に賭けている」という思いも伝わってきました。だからこそ、その姿を見た私も「この監督についていって頑張りたい」と感じられました。

また今回の作品では橋の上で撮影するシーンがあるんですが、そこはANARCHY監督としてこだわりがあったようで、「僕はこうしたいと思っています」とリハのときに教えてくださいました。「この作品の中で一番の見せ場だ」と。

だから、「ここはちゃんと作り上げなければいけない」というプレッシャーとかもあって、そこでの撮影は一番苦労しながらもやり遂げました。

──主題歌をはじめ、映画でも用いられているANARCHY監督の楽曲、あるいはラップやヒップホップについてはどのような印象を受けましたか?

優希:実は今回の作品に関わるまで、私はラップというものをちゃんと聴いたことがなかったんですが、お会いしたことをきっかけに聴いてみたんです。

ANARCHY監督の楽曲作品からは、この映画につながるような歌詞が見えてきました。「団地暮らしでも」「食卓があったら明るい」とか。そんな言葉を聴いて心を打たれました。

そこからはラップが好きになって毎日聴いていたんですが、そうして聴き続けたからこそ、演技の上でそのイメージを膨らませることができたところもありました。

“お兄ちゃん”野村周平の気遣い


(C) 2019 映画「WALKING MAN」製作委員会

──ご自身が演じるウランの兄であり、苦境を生きながらもラップと出会い変化してゆく主人公アトムを演じられた野村周平さんとの再共演はいかがでしたか?

優希:周平さんとは以前『ちはやふる』でご一緒したことがあったんですが、その頃から「お兄ちゃん」という感じで頼れる存在だったし、可愛がってくださっていました。

その信頼関係もあって、「周平さんだからこそ」と安心してウランを演じることができたと思います。役柄の関係だけでなく、本当に「お兄ちゃん」という感じでしたし。

また周平さんは普段から結構おしゃべりがお好きなようなんですが、今回の作品では内向的で話すことが苦手なアトムという役を演じています。その中でも、シーンの段取りが終わってある程度脚本のセリフに続けた後、カットがかかるまで時間があり、そこにアドリブを突っ込んできたりしていました。

そういうことでみんなを笑わせてくださり、現場には楽しい雰囲気がありました。周平さんはアトムという役と真摯に向き合いながらも、そうして現場に花を添えてくれる気遣いも常にされていました。

──野村さんの演技に強く影響を受けた点などはありますか?

優希:ラストのシーンでは、周平さんの演技から劇中のそれぞれのシーンが思い出される中で「お兄ちゃんがこういう風に家族を思っていてくれていたんだ」という思いを自然に感じとったんです。

そしてお兄ちゃんであるアトムという存在の大切さ、それに反して兄を避けてきた妹のウランという存在の愚かさといったものが心に染みてきて、あのシーンでは思わずホロッとしてしまいました。

テストの段階から自然に何も考えず、役作りもせず、素の状態でウランになれていたと思うんです。そして、それは周平さんの演技があってこそだとも。

“ラッパーであり映画監督”が生んだ魅力


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──現場での撮影について、改めて教えていただけないでしょうか?

優希:撮影現場は川崎が多かったと思いますが、短期間のスケジュールでしたし、11月の撮影だったので結構ハードでした。ですが、疲れているはずなのそこまで苦痛でもなかったし、むしろすごく楽しかったんです。

ANARCHY監督も本当に優しくて「よし、次のシーンも頑張ろう」と前向きになれたので、全体的に柔らかい雰囲気の現場でした。

ハードな撮影の中でピリッとした雰囲気になったときもありましたが、そんなときも監督が周平さんと一緒に柔らかい雰囲気を作ってくださいました。

──完成した映画を初めてご覧になった際は、どのような感想を抱かれましたか?

優希:もちろん自分のシーンについてもいろいろ思うところはありますが、どちらかというと私自身も映画全体、物語全体を観たくなる感覚がありました。

加えてラップの良さや楽しさといったものも、映画から伝わってきました。ラップを知らない人でも「ラップっていいな」と思えるような作品になったと思います。

また映像の編集や処理の仕方が斬新でしたね。オープニングやエンドロールだと、私の名前が日本語ではなく「MIO YUKI」と映し出されて「カッコいいな!」と思ったり(笑)。

映像の使い方といいますか、シーンの切り替え方における表現などは、ANARCHY監督の感性だからこそだとも感じました。「さすがラッパーであり映画監督のANARCHY!」と言いたくなる、本当にカッコいい、面白い作品になりました。

ヘアメイク:RYO(ROI)
スタイリスト:森宗大輔 Morimune Daisuke

優希美青(ゆうきみお)のプロフィール


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1999年生まれ。福島県出身。

2012年に「第37回ホリプロタレントスカウトキャラバン」にてグランプリを獲得しデビュー。

2013年にドラマ『雲の階段』(日本テレビ系)で女優に初挑戦、同年に公開された映画『空飛ぶ金魚と世界のひみつ』で映画初主演を務めました。また2013年のNHK連続テレビ小説『あまちゃん』にも出演しています。

さらに2015年にはNHK連続テレビ小説『マッサン』と話題作にもたびたび出演。以降、話題作などで精力的に活動を続け、女優としての基盤を築き続けています。

インタビュー・撮影/桂伸也

映画『WALKING MAN』の作品情報

【日本公開】
2019年(日本映画)

【監督】
ANARCHY

【キャスト】
野村周平、優希美青、柏原収史、伊藤ゆみ、冨樫真、星田英利、渡辺真起子、石橋蓮司

【作品概要】
ラップ、ヒップホップ界ではカリスマともいえる存在のANARCHYが映画監督に初挑戦した作品。貧しい母子家庭に生まれた一人の少年が、ラップとの出会いで生きる希望を見出していく姿を描きます。

漫画家の高橋ツトムが企画・プロデュース、女優・脚本家の梶原阿貴が脚本を担当し、ANARCHY監督の作品制作を強力にバックアップしています。また主人公・アトム役を『ちはやふる』シリーズなどの野村周平、アトムの妹であるウラン役を優希美青が務めるほか、柏原収史、渡辺真起子、石橋蓮司といった個性派・ベテランが脇を固めます。

映画『WALKING MAN』のあらすじ


(C) 2019 映画「WALKING MAN」製作委員会

川崎の工業地帯にある貧しい母子家庭で育った佐巻アトム(野村周平)は、不用品回収業のアルバイトで一家の家計を助けていました。

話すことも人とのコミュニケーションも苦手なアトムでしたが、真面目さもあって仕事場の人間には可愛がられていました。

しかしある日、母が事故に遭い重傷を負って病院に運び込まれてしまいます。母は保険料を滞納しており、アトムは入院などの支払いに関してソーシャルワーカーから心ない言葉を投げつけられてしまいます。

やりきれない日々が続く中、アトムは不用品回収の仕事のために訪れたとある家で、人生を変える出会いを果たしました。そこで見つけたのは古びたカセットプレイヤーと、ラップバトルのチラシ。

一方、物を買えない悔しさから妹・ウラン(優希美青)が万引きで補導され、警察官からは非情な言葉を受けます。

様々な想いとともに、アトムは自身の言葉を見つけるために、傷つきながらも前を向き始めたのでした。

映画『WALKING MAN』は2019年10月11日(金)より全国ロードショー

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