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映画『旅愁』呉沁遥(ゴ・シンヨウ)監督インタビュー|自分自身が持つ悩みを広げて描いた世界観

  • Writer :
  • 桂伸也

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019にて呉沁遥監督作品『旅愁』が7月14日に上映

埼玉県・川口市にある映像拠点の一つ、SKIPシティにて行われるデジタルシネマの祭典「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」が、2019年も開幕。今年で第16回を迎えました。

そこで上映された作品の一つが、中国の呉沁遥(ゴ・シンヨウ)監督が手掛けた長編映画『旅愁』


(c)Cinemarche

中国人の男女三人が日本で繰り広げる、美しくも切ない恋愛関係を描いたヒューマンストーリーです。

映画祭には、作品を手掛けた呉監督が、メインキャストとともに登場しました。今回は呉監督にインタビューを行い、映画に描きたかったテーマや、自身の映像に向けた思いなどを語っていただきました

【連載コラム】『2019SKIPシティ映画祭』記事一覧はこちら

自身の迷いをもとに描いた物語


(c)旅愁2019 /(c)2019 SKIP CITY NTERNATIONAL D-Cinema FESTIVAL Committee.All right reserved.

──独特の雰囲気を感じる作品ですが、もともと本や映画などからの影響もあったのでしょうか?

呉沁遥監督:(以下、)私がこれまで見たいろいろな映画の影響はあると思います。たとえば撮影のスタイルですが、ワンシーン、ワンショットのスタイルが好きなんです。

またフランスの映画が好きですし、一方では立教大学大学院の万田教授のゼミで勉強したことの影響もありと、そういう要素がいろいろ合わさって、この映画の雰囲気になっただと思います。

──作品のテーマを生み出すまでの過程は、どのようなものだったのでしょう?

今回脚本を書く際に、まず自分の迷いを考えました。

今、私は20代ですが、この年齢における人生や愛情に対するいろんな迷いというもの、たとえば「私はこの人が好きだけど、本当に好きなんだろうか?」と、何か自分に疑問を感じることとか。私自身は普段からいろんな考えとともに、そんな迷いも持っていますので。

真実の愛に迫る


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──本作ではテーマとして、ジェンダーという点に大きく切り込んでいますね。

呉:私自身、ジェンダーということ自体をあまり意識せずに生きています。私の中で男女という区別はありませんし、私自身もLGBTの性質を持っているからです。

だから今回こういう映画にしたのは、あくまで自分の中でそういう要素があったので、それに従い作品を作った、自分の思いを中心に書き上げました。敢えてそういうテーマを取り上げようとしたとか、何らかの意図があったわけではありません。

私自身が映像として描きたいと思っているものは、ただ自分が普段見ている世界、それを真実のままに表現したいというそれだけなんです。つまり、私のとる映像は、私の思いの世界みたいなところを、ありのままに出しているだけなんです。

また、たとえば私自身も留学中に寂しいと思ったこともあります。やっぱり留学中というのは、志を持ってきたけど、けっこう辛いと思うときもありましたし。

──上映後のQ&Aで「自分なりに真実の愛ということを悩んだ」とおっしゃいましたが、もう少し詳しく教えていただけますか?

呉:世の中にはいろんな愛があります、たとえばものが好きとか、人が好きとか。

そんな中で、私の考えでは年齢、性別とか、いろんな条件をすべて外したところに、真実の愛があると思っています。私は男性、女性という区別がありませんので、それは余計にそういうものがあると考えます。

日本と中国の違い


(c)旅愁2019 /(c)2019 SKIP CITY NTERNATIONAL D-Cinema FESTIVAL Committee.All right reserved.

──ではこのストーリーは、ご自身のことを書いている、というところもあるのでしょうか?

呉:基本的には全く想像で書き上げたもので、あくまで自分のことではありません。ただ、自分の感覚で感じるものは入っていると思います。また日本人の友達の影響もあったりします。彼女はロリータをやっていたりしたので、彼女からもいろいろなロリータの情報も聞きました。

映画でジェニー役を務めた呉(味子)さんは、ロリータは全然やったことが無いので、演じる前に脚本と一緒に、いろんなロリータ―の情報を送って「見ておいてほしい」とお願いしていました。まあ文句は…多分言われなかったと思いますが(笑)

──明確に日本人と中国人の違いを感じることはありますか?

呉:あります。たとえば中国人と日本人は、もともとの性格の違いというものも明確にあって、日本人が真面目で細かく、中国人がおおざっぱだとか(笑)

また、日本の人はわりと何らかの仕事を進める際に、一つの方法を貫き通す傾向がありますが、中国の人はどちらかというといろいろなやり方を考えだそうとするような傾向があります。その意味では、私はそれぞれ2種類の人々みたいだという印象を持っています。

だから、今では日本に長く住んでいる中国の方もたくさんいるけど、ちゃんと区別はつくし、彼ら自身も自分の国じゃないと感じているところはあると思うんです。

マイノリティへの創作意欲


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──作品の登場人物をそれぞれどのように考えついたのでしょうか?

呉監督:まず主人公・李風の仕事についてですが、いろんなリサーチをした上で民泊という職業が、かなり孤独で特殊な職業だと思いました。

たとえば仕事上ではいろんな外国人にも会う一方で、最終的にはみんな国に帰り別れてしまい、寂しくなる面もある。だからその職業は面白いと思い、そこから李風のキャラクターを決めました。

そして周りの中国人を観察し、友達とかいろんなことを考えて王洋を決定、さらにロリータをやっている友達もいたことでジェニーのキャラクターも決まって、とそんなふうにいろんなリサーチ結果からさまざまなことを考えて、三人のキャラクターを構築しました。

──今回の役者の方々は、演技初体験だったそうですが、出演にはかなりハードルが高かったのではないかと思いました。

呉:でも今回の様々な演出に対して、皆さんNGとは言わなかったです。またこれはQ&Aでも言いましたが、撮る前に三人をずっと一緒にいさせていました。

一緒にしていろんなところに行かせ、お互いの家にも遊びに行かせたり。それでお互いの関係を密にしたというところがあり、撮影に対してもその効果は現れたと思います。

──次に何らか書いてみたい題材などはありますか?

呉:やっぱり社会の少数派、マイノリティを描いてみたいと思います。あまり社会的にちゃんと認められていないような人。たとえばかつて犯罪に手を染めてしまった過去のある人とか、レズビアン、歌舞伎町の人とか。

普段の生活があまり見えない人、みたいな人物を描いてみたいと考えています。

呉沁遥監督のプロフィール


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中国四川省生まれ。2015年に来日し2017年立教大学大学院に入学、映像身体学を専攻されました。

在籍時は映画監督である万田邦敏教授のもとで映画演出を学び、教授の指導のもと修了作品として本作を製作されました。

2019年に立教大学を卒業され現在は本国・中国で、フリーランスとして映像関係の仕事をされています。

インタビュー・撮影/桂伸也

映画『旅愁』の作品情報

【上映】
2019年(中国・日本合作映画)

【英題】
Travel Nostalgia

【監督】
呉沁遥

【キャスト】
朱賀、王一博、呉味子

【作品概要】
異国の地で巡り合う男二人と、女一人。三人の美しくもはかなげな恋愛模様を、彼らの故郷・中国から遠く離れた日本という異国で、どこか哀愁味を帯びたカラーで描きます。

監督を務めた中国出身の呉沁遥監督は、2019年の3月まで立教大学大学院に在籍。その卒業制作としてこの作品を完成させました。

出演しているのは完全にアマチュアの俳優たちですが、まるで本当に実在する人々であるかのような自然な演技を見せ、映画の世界観を色濃いものとしています。

映画『旅愁』のあらすじ


(c)旅愁2019 /(c)2019 SKIP CITY NTERNATIONAL D-Cinema FESTIVAL Committee.All right reserved.

東京で、一人で民泊を営む中国人・李風。肉親である母親は日本人の男性と再婚し、離れて生活をしていました。

李風は近所に個展を開いている絵画のギャラリーを発見、そこでホストを務める画家の王洋を見つけます。気になった彼は時々そのギャラリーの前を訪れていました。

ある日、李風の存在に気付いた王洋は、李風をギャラリーに招き意気投合。そして李風は、王洋に民泊で絵を飾ることと接客の手伝いを提案します。

こうして二人の同居生活が始まりますが、ある日、王洋の元カノ・ジェニーが来日し民泊に訪れることに。王洋の存在が気になっていた李風はジェニーの登場に、ひそかに胸騒ぎを覚えるのですが……。

【連載コラム】『2019SKIPシティ映画祭』記事一覧はこちら

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