映画『ワーニング その映画を観るな』は2020年8月21日(金)より、キネカ大森・シアターセブン・シネマスコーレで開催の「夏のホラー秘宝まつり2020」にてロードショー!
毎年恒例となった、観客参加型のホラー映画祭、「夏のホラー秘宝まつり」も今年で7回目を迎えました。
今回は没後40年を迎えた、イタリアのホラー映画の巨匠、マリオ・バーヴァ作品の回顧上映などの旧作映画5本、新作映画3本のホラー映画が紹介されます。
そのオープニングを飾るのが、韓国発の新作ホラー映画『ワーニング その映画を観るな』。
呪われた映画にまつわる噂話、映画作りの舞台裏に忍び寄る怪異、特異な設定で描いた恐怖の数々に、果たしてあなたは耐えられるのか!
CONTENTS
映画『ワーニング その映画を観るな』の作品情報
【日本公開】
2020年(韓国映画)
【原題】
암전 / Warning: Do Not Play
【監督・脚本】
キム・ジンウォン
【出演】
ソ・イェジ、チン・ソンギュ、キム・ボラ
【作品概要】
『ワーニング その映画を観るな』は、かつて上映された際に観客の半数が逃げ出し、心臓麻痺で死ぬ者まで出たと噂される呪われた映画。その存在を知った映画監督に、徐々に忍び寄る恐怖を描いた韓国製ホラー映画。
監督はシッチェス・カタロニア国際映画祭で発表された拷問ホラー映画、『The Butcher』(2006)でデビューしたキム・ジンウォン。
主演は『王の運命 歴史を変えた八日間』(2015)や『キム・ソンダル 大河を売った詐欺師たち』(2016)、韓流ドラマ『無法弁護士 最高のパートナー』(2018~)のソ・イェジで、呪われた映画に翻弄される若き女流映画監督を演じます。
『犯罪都市』(2017)の演技で高い評価を獲得し、『エクストリーム・ジョブ』(2019)や『暗数殺人』(2019)に出演したチン・ソンギュ、『容疑者X 天才数学者のアリバイ』(2012)や韓流ドラマ『Touch(原題)』(2020~)のキム・ボラが共演しています。
映画『ワーニング その映画を観るな』のあらすじ
新作ホラー映画の脚本が中々完成せず、追い詰められた映画監督の卵ミジョン(ソ・イェジ)。題材を得ようと考えた彼女は、様々な都市伝説を調べ始めました。
やがて彼女は、呪われた映画にまつわる噂話を耳にします。上映すると観客が逃げ出し、恐怖のあまり死ぬ者まで出た、その映画は幽霊が撮影したという話です。
興味を持った彼女が調べると、その映画はある映画祭で上映されたと確認できました。彼女はその映像の一部を入手すると、情報を求めてネットに公開します。
するとある男がミジョンに連絡してきました。「すぐに映像の公開を止めろ」。そう告げた男こそ、問題の映画を監督したキム・ジュヒョン(チン・ソンギュ)でした。
彼と会う事に成功したミジョン。異様な雰囲気を漂わせて現れたジュヒョンは、その映画を心から恐れていました。ミジョンは彼の後を付け、ついに映画を入手します。
彼女は呪われた映画のデータを修復し、それを見ようと試みます。そして映画の撮影場所は廃墟と化した映画館だと気付きました。
呪われた映画に魅入られたミジョンは、その撮影現場に向かいます。しかし彼女の周囲には、奇妙な現象が起き始めていました。
映画『ワーニング その映画を観るな』の感想と評価
噂話の呪われた映画が実在した!
映画『リング』(1998)でお馴染みの「呪いのビデオ」など、見る者を死なせたり破滅させる映画や映像がある、というのはホラー映画のネタの1つです。
『アントラム 史上最も呪われた映画』 (2018) のような、このテーマを真正面から取り上げたホラー映画も存在します。
ホラー映画そのものが恐怖の源という物語に魅了されてしまう。ホラー映画ファンなら、この気持ちはよく理解できるでしょう。
かつて何か怖い映画や映像を見たという思い出は、時間の経過と共により印象を深め、その正体が何であったか不明であるほど、異様な記憶として心に刻まれます。
ネットの普及と共に、そういった皆が持つ記憶は共有される事になりました。知識を交換することでトラウマだった映像の正体が判り、スッキリ解決する事例も多々ありました。
一方でネットの力で奇妙な映画や映像、心霊動画といった存在の噂は拡散し、まことしやかに語られ、新たな都市伝説を続々誕生させています。
その中には都合よく編集した動画やフェイク映像、ジョークやアートなど、別の意図で作られた動画もありますが、正体が真偽不明であるからこそ、人々を引き寄せるのでしょう。
『ワーニング その映画を観るな』は、主人公は呪われた映画の存在を知り、それを探し始めるところから物語が始まります。
多くの人にとっては娯楽に過ぎない都市伝説、しかし彼女はその正体を暴こうと試みます。この謎を追求する姿は、都市伝説や心霊スポットの謎に興味を抱く人と変わりありません。
様々な恐怖に対し、半信半疑であれ好奇心であれつい引き寄せられる、好奇心旺盛なあなたと同じ様に、主人公は振る舞い始めます。
映画作りに魅せられた人々が破滅する
主人公は優れた短編映画を作った監督として、期待されて商業ホラー映画の監督を任されます。しかしその脚本すら完成させられず……と本作は、映画作りの舞台裏が背景になっています。
まだ若い主人公の周囲にも、映画を学ぶ若者たちが集まり、様々な映画談義が飛び交います。この辺りは映画ファンなら、誰もがニヤリとさせられるでしょう。
呪われた映画を監督した男も、同じように映画作りを志す人物でした。彼の周囲にもまた、共に映画を作ろうとする人物が集まっていました。
この男が本当に怖い映画を作ろうとして、目指した作品は…アレです。ホラー映画ファンなら納得のタイトルが登場します。しかし結果は、想像を越える恐怖を撮ることになりました。
恐怖と共に映画に魅入られた主人公と男の姿は、ホラー映画ファンの共感を呼ぶでしょう。しかしその熱意こそが怪異を呼び込むのです。
何重にも仕組まれたメタフィクション構造
皆さんは何故、ホラー映画が好きになったのでしょうか。
本作の主人公は過去の個人的体験が、ホラーにのめり込むきっかけとなりました。そして呪われた映画を撮った男も、自分を変えてくれたのは、あの名作ホラー映画だと告白します。
それを知った主人公は、自身と呪われた映画を撮った男を重ねます。彼の作品をヒントに自作を作ろうとした主人公は、呪われた映画の撮影現場となった場所を訪れます。
主人公が作ろうとする映画。呪われた映画を監督した男の撮影現場。呪われた映画の内容。これらが入り組んで描かれ、主人公は、男と呪われた映画に影響されていきました。
こうして彼女の日常は、呪われた映画に何重にも侵食されます。作者が創作物の世界に取り込まれる、入り組んだメタフィクションの世界で怪異が描かれるのです。
登場人物が創造された世界に取り込まれる映画には、ジョン・カーペンター監督の『マウス・オブ・マッドネス』(1994)がありました。
『マウス・オブ・マッドネス』にも、複雑な仕掛けがありました。本作の主人公はさらに入り組んだ、呪われた映画が生み出す異様な世界に絡めとられます。
観客も油断していると、この映画が描く無限地獄に墜ちるでしょう。『ワーニング その映画を観るな』、確かに警告されるべき映画です。
まとめ
ホラー映画を好む人こそが、その仕掛けにハマる映画『ワーニング その映画を観るな』。最後まで気を抜かずに見て下さい。
本作の仕掛け豊富なストーリーを中心に紹介しました。しかしホラー映画ファンならこの映画、実のところどの程度のショックシーンがあるかと、大いに気にしているでしょう。
あえて例えるなら、Jホラーテイストで描いたイタリア怪奇映画。なるほどイタリアの名作ホラー映画を紹介する、「夏のホラー秘宝まつり2020」上映作品に相応しい訳です。
映像には韓国映画風にアレンジされた、ダリオ・アルジェント的な色彩が登場します。ゴアシーンにはJホラー風にまとめた、ルチオ・フルチを思わせるシーンが登場します。
むろんゴア映画の帝王と呼ばれた、ルチオ・フルチ映画ほどの過激描写ではないのでご安心を。しかし雰囲気重視のホラー映画と油断していると……恐ろしいですよ。
本作に登場する呪われた映画、劇中では某映画祭でのみ上映された設定です。
その韓国の映画祭とは、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭と姉妹関係にある、あの映画祭と受けとって良いのでしょう。
つまり日本に置き代えると、呪われた映画はゆうばり国際ファンタスティック映画祭で上映され、観客の半分が泣いて逃げ出し、ショックで死人が出た作品となる訳です。
この例えで間違いないはず。そんな映画が実在したら、怖いというよりトンデモないの一言です。<『ワーニング その映画を観るな』、恐るべしです……。 映画『ワーニング その映画を観るな』は2020年8月21日(金)より、キネカ大森・シアターセブン・シネマスコーレで開催の「夏のホラー秘宝まつり2020」にてロードショー!