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Entry 2019/10/18
Update

映画『ザ・ゴーレム』あらすじと感想レビュー。救世主なのか怪物か?忠実さと暴走する破壊者の二面性

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

スペイン・バルセロナ近郊のリゾート地シッチェスで毎年10月に開催されている映画祭「シッチェス映画祭」。

「シッチェス映画祭」で上映された、選りすぐりの作品を日本で上映する「シッチェス映画祭」公認の映画祭「シッチェス映画祭ファンタステック・セレクション」が、東京と名古屋、大阪で開催されます。

今回は「シッチェス映画祭ファンタステック・セレクション」上映作品となる、ユダヤ教の伝承に登場する「ゴーレム伝説」をモチーフに、母親の悲劇を描いたホラー映画『ザ・ゴーレム』をご紹介します。

映画『ザ・ゴーレム』の作品情報


(C)2019 The Golem Partnership and Epic Pictures Group, Inc.

【公開】
2019年公開(イスラエル映画)

【原題】
The Golem

【監督・製作】
ドロン・パズ、ヨアブ・パズ

【脚本】
アリエル・コーエン

【キャスト】
イーシャイ・ゴーラン、ハニー・フルステンベルク

【作品概要】
世界の終末をテーマにした、2015年のパニックホラー『エルサレム』の監督、ドロン・パズとヨアブ・パズが「ゴーレム」をテーマに手掛けたホラー作品。独特の世界観を表現した撮影監督を『エルサレム』に続き、ロテム・ヤロンが担当しています。

映画『ザ・ゴーレム』あらすじ


(C)2019 The Golem Partnership and Epic Pictures Group, Inc.
17世紀中期、ユダヤ系の村で、夫のベンジャミンと暮らすハンナ。

ハンナは、7年前に息子のジョゼフを亡くしていました。

以降、ショックから現実を受け入れる事ができず、新たに子供を授かる事もできません。

ある日、ハンナと同じ村で暮らす女性、レベッカの結婚式が行われ、村人総出でレベッカを祝います。

そこへ、疫病に侵された異教徒の村から、侵略者の集団が現れます。

侵略者のリーダーである、ウラジーミルは、自身の娘が疫病で苦しんでいる中、結婚式を祝っていた事を逆恨みし「娘を助けろ、できなければ村を焼き払う」と要求し、見せしめに村人を1人射殺します。

村から逃げようとすると、侵略者の餌食になる為、村人たちは恐れ、言いなりになります。

しかし、ハンナは侵略者と戦う事を決意し、村に伝わる伝説である「ゴーレム」を作り出そうとします。

怪物である「ゴーレム」の創造に、村人たちは反対しますが、ハンナは「聖なる72文字」「創造の書」を独自に研究し、1人で儀式を行います。

儀式を行って以降、ハンナは、しばらく家の中で何者かの影を感じるようになりますが、「ゴーレム」は姿を見せません。

ある日、森へ出かけたハンナは、侵略者達に捕まってしまい、木の枝に吊るし上げられます。

絶体絶命のハンナですが、侵略者達が何者かに襲われ、次々と命を落としていきます。

救出されたハンナの前にいたのは、泥だらけの少年でした。

ハンナは自分を救ってくれた少年を「ゴーレム」と確信し、自宅に連れて行き、一緒に暮らすようになります。

しかし、ベンジャミンは「ゴーレム」の存在を、良くは思っていませんでした。

一方、村の祈祷師は、ウラジーミルの娘の為に祈りを捧げ続けますが、病気は回復しません。

次第に、ウラジーミルが設定した、タイムリミットが迫ってくるようになり…。

『ザ・ゴーレム』感想と評価


(C)2019 The Golem Partnership and Epic Pictures Group, Inc.

「ゴーレム伝説」をモチーフにした作品

ユダヤ教の伝承に登場する、泥でできた人形「ゴーレム伝説」をモチーフにした作品『ザ・ゴーレム』。

「ゴーレム伝説」を少し解説しますと、「ゴーレム」は自分の意思を持たず、主人の命令に忠実な泥のロボットのような存在です。

17世紀に、ユダヤ教において宗教的指導者を意味する「ラビ」が、強制居住区に住むユダヤ人を、反ユダヤ勢力や、政府の圧政から守る為に作り出されたとされており、本作も、この「ゴーレム伝説」を忠実に反映した物語となっています。

ここまで聞くと「ゴーレムをヒーローにした、エンターテインメント作品」と思う方もいるかもしれませんが、実はホラー映画です。

ホラー映画と言っても、ただ怖かったり、不気味だったりという映画ではありません。

伝説をモチーフに、子供を失った母親の悲しみを描いた、独特の雰囲気を持つ作品となっています。

子供を失った母親の悲しみと狂気

ゴーレムとは、ヘブライ語で「胎児」を意味しており、本作に登場するゴーレムは、少年の外見をしています。

ゴーレムを生み出した主人公のハンナは、7年前に息子のジョゼフを亡くしており、辛い現実を受け入れる事ができません。

そんな時に、ハンナの前に姿を見せた少年の姿をしたゴーレムに、ハンナは次第にジョゼフの面影を感じるようになり、自分の子供のように育てます。

しかし、ゴーレムは秘術によって生まれた異形の存在。

「怪物」とも呼べるゴーレムを、我が子のように可愛がるハンナから、母親の悲しみを超えた「狂気」を、次第に感じるようになります。

また、少年の姿をしたゴーレムも、何があっても無表情の為「何を考えているのか分からない」という不気味さを感じます。

失った家族への悲しみから、狂気に取り憑かれる主人公を描いたホラー作品という点で、S・キング原作で1989年に公開され、最近はリメイク作品も話題になっている『ペット・セメタリー』に近い恐怖があります。

異形の存在であるゴーレムを、我が子のように可愛がるハンナは、どのような結末を迎えるのでしょうか?

ゴーレムは「救世主」か「怪物」か?

村人の反対を押し切り、ハンナが作り出したゴーレムは、人間では太刀打ちできない、圧倒的な力を持った存在として描かれています。

そして、このゴーレムを、ハンナは「救世主」と信じますが、村人は「怪物」として恐れます。

この点も「ゴーレム伝説」に忠実となっており、伝説に登場するゴーレムは「ラビ」が魔法の紙切れを歯の裏に差し込むことにより動きますが、この魔法の紙切れを抜き忘れると、夜中に暴れまわり、あらゆる物を破壊したとされています。

創造主に忠実な部分と、暴走する破壊者という二面性を持ったゴーレム。

本作に登場するゴーレムは、どちらなのでしょうか?

その点も、見どころの1つとなっています。

まとめ


(C)2019 The Golem Partnership and Epic Pictures Group, Inc.
ユダヤ教の伝承である「ゴーレム伝説」をモチーフにした映画『ザ・ゴーレム』。

息子を失った、母親の悲しみを描いた作品である事は、前述した通りですが、異教徒の侵略者のリーダーである、ウラジーミルがハンナの住む村を襲った理由が「娘を救う為」である事など、いつの時代も不変とも言える、親子の絆を描いています。

また、本作は登場人物の衣装デザインが個性的で、映像に美しさを感じます。

特に、黒づくめのフードに、17世紀に使われていたカラスのような防護マスクを装着した異教徒のビジュアルは、恐ろしさの中にカッコよさを感じる、芸術的な容姿となっています。

ビジュアル的にも「神秘的」な作品なので、その点にも注目して下さい。

『ザ・ゴーレム』は「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション」にて上映される作品で、10月よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田、名古屋のシネマスコーレの3劇場で開催されます。

現代に蘇った伝説を、是非ご覧ください。



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