Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ホラー映画

『ソウX』あらすじ感想と評価考察。初代ジグソウが成敗⁈死期が迫った人間を狙う非道な詐欺

  • Writer :
  • 糸魚川悟

映画『ソウX』は2024年10月18日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開!

2004年にジェームズ・ワンによって製作された映画『ソウ』(2004)。

120万ドルと言う低予算で製作されながらも1億ドルを越すメガヒットを記録した『ソウ』は、瞬く間に世界中で人気となり2021年までの間に9作ものシリーズ作品が作られることとなりました。

そして2024年、「ソウ」シリーズの最新作であり、あの初代ジグソウにスポットを当てた異色作である『ソウX』(2024)が日本に上陸。

今回はシリーズの定番を踏襲しながらも、異質な展開とファン必見の要素を多数取り込んだ『ソウX』の魅力をご紹介させていただきます。

映画『ソウX』の作品情報


©2024 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

【日本公開】
2024年(アメリカ映画)

【原題】
Saw X

【監督】
ケヴィン・グルタート

【脚本】
ジョシュ・ストルバーグ、ピーター・ゴールドフィンガー

【キャスト】
トビン・ベル、ショウニー・スミス、シヌーヴ・マコディ・ルンド、スティーヴン・ブランド、レナータ・バカ、コスタス・マンディロア、マイケル・ビーチ、ジョシュア・オカモト

【作品概要】
2004年にジェームズ・ワンによって製作された『ソウ』から続くシリーズの10作目となる作品。

長らく「ソウ」シリーズで編集を担当し、『ソウ6』(2009)と『ソウ ザ・ファイナル 3D』(2010)では監督を務めたケヴィン・グルタートが本作で再び監督として作品に携わり、シリーズの顔役である初代ジグソウを演じるトビン・ベルが主演を務めました。

映画『ソウX』のあらすじ


©2024 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

末期がんで1年にも満たない余命を診断されたジョン・クレイマー(トビン・ベル)は、末期がん患者の集うセラピーで国に認可されていない治療方法の存在を知ります。

自身に課せられた使命のため、少しでも長い余命を手にしたいジョンは藁にも縋る思いからメキシコに拠点を置く医師を訪ねますが……。

映画『ソウX』の感想と評価


©2024 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

初代ジグゾウことジョン・クレイマーがメインとなる物語

命の価値を軽んじる人間に「命を賭けたゲーム」を強要し、その様子を最も近い場所で観察する「ジグソウ」ことジョン・クレイマー。

強烈な印象を与えた1作目の登場シーンや、その後のシリーズにおける優しさと狂気を併せ持つトビン・ベルの演技によって、初代ジグソウは「ソウ」シリーズの顔役とも言える存在となりました。

しかし、ジョンは3作目となる『ソウ3』(2006)で死亡しており、以降は回想シーンで登場することはあれど、基本的には彼の後継者たちが「ジグソウ」を務めていくことになります。

シリーズの最新作となる『ソウX』では、『ソウ』と『ソウ2』(2005)の間をつなぐ物語を描いているため、ジョンが生存しているだけでなく、シリーズでも珍しい「ジグソウ」視点での物語が展開されていました。

ジョンが他の後継者たちと全く異なっている点は、殺人を目的としてゲームを行っていない点にあります。

命の選択を成し遂げゲームをクリアしたものには生きる権利を与える、と言う「ジグソウ」の大原則はジョンが主人公となる本作だからこそ重要なファクターとなっており、大原則でありながらこれまでのシリーズではあまり見ることのなかった初心を再び感じることの出来る作品でした。

「ジグソウ」が対峙する過去最悪の相手


©2024 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

「ジグソウ」がゲームの相手として指定する人間は「命の価値を軽んじる人間」に限定されていました。

しかし、軽犯罪や薬物依存、心ない言葉を相手に投げかけた等の許されないことではあるものの、「命を賭けたゲーム」への強制参加とするには「ジグソウ」の選定条件は厳しすぎるとも感じられることもありました。

シリーズ10作目にあたる本作では社会的問題である「医療詐欺」に切り込んでおり、余命を宣告され絶望する人間に無駄な治療を施し、高額な治療費を騙し取る悪辣な詐欺師と「ジグソウ」は対峙することになります。

自身が騙されたからと言う私怨ではありながらも、結果として大儀の意味も持つ今回のゲームですが、相対する詐欺師たちは「ジグソウ」の想像すら上回るほどに悪党であり、これまでのシリーズの中でも類を見ないほどに最悪の存在。

ゲームを仕掛ける側である「ジグソウ」ことジョン・クレイマーも本作では「選択を迫られる側」に回ってしまうことになるほどに追い詰められてることになり、シリーズにおいて「ジグソウ」となった日からすべてを計算し先読みすることで全員を掌の上で操っていたジョンのイメージを覆す作品にもなっています。

「効果がありすぎて製薬会社にもみ消される」と謡い、患者たちに忍び寄る「がん免疫療法」などの詐欺は実在するものであり、本作もシリーズの根底となる社会問題を様々な意味で痛々しく描いていました。

まとめ


©2024 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

後に「ジグソウ」の後継者となるアマンダやホフマンと言った「ソウ」シリーズの登場人物も再登場し、お馴染みとなるビリー人形や「Live or die, make your choice.」と言うセリフも登場するファン歓喜の本作。

既に本国では11作目となる『Saw XI(原題)』(2025)の製作が決定しており、本作の直接的な続編に当たるとも言及されていることから、ふたたびジョン・クレイマーがメインとなる物語が期待されています。

初代ジグソウことジョン・クレイマーが「医療詐欺に遭い、私怨と己の使命から復讐を決意する」と言う字面だけでも既に面白いシリーズ最新作『ソウX』。

本作は2024年10月18日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。

本国でも絶賛評価が相次いでいる本作をぜひとも劇場でご覧になってください。


関連記事

ホラー映画

【ネタバレ】オカルトの森へようこそ|結末あらすじ感想と評価解説。白石晃士監督で描く実録ホラー撮影隊が遭遇する“不可解な現象”

祟りの森へ足を踏み入れた映画監督と助監督の運命は? 傑作を撮影する為、助監督の市川と「祟りの森」に足を踏み入れた、映画監督の黒石を不可解な現象の数々が襲う、ホラー映画『オカルトの森へようこそ THE …

ホラー映画

映画『ヒメアノ〜ル』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も【森田剛が殺人犯シリアルキラーを怪演】

森田剛の演技力が新たに開花した殺人鬼映画『ヒメアノ〜ル』 『行け!稲中卓球部』や『ヒミズ』で知られる古谷実による、同名コミックを実写化した映画『ヒメアノ〜ル』。 ジャニーズのアイドルグループ「V6」の …

ホラー映画

『イット・カムズ・アット・ナイト』ネタバレ感想。結末まで怖い“それ”の正体とは

新感覚ホラーとしてスマッシュヒットした『イット・フォローズ』の製作陣が新たに放った“外は恐怖。中は狂気。のサスペンスホラー! 映画『イット・カムズ・アット・ナイト』は、11月23日(金・祝)より新宿シ …

ホラー映画

映画『ザ・ボーイ2 残虐人形遊戯』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。ケイティホームズ演じる母親が怖いドールと対峙する

『ザ・ボーイ~残虐人形遊戯~』は『ザ・ボーイ~人形少年の館~』の続編! 2016年に10~20代の青少年を熱狂させた映画『ザ・ボーイ~人形少年の館~』のオリジナル興行チームと『IT/イット “それ”が …

ホラー映画

映画『インヘリタンス』ネタバレ結末とラスト解説の感想。どんでん返しな本格ミステリーはタイトルの意味である“遺産”という意味深な謎を受け継ぐ恐怖

父親が遺した遺産の謎の男の存在と耐え切れない真実を描く『インヘリタンス』 映画『インヘリタンス』は、ヴォーン・スタイン監督のミステリースリラーのアメリカ映画。 父親が残した遺産が地下壕に埋まっているこ …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学