『生き人形マリア』はカリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2019にて上映。
殺人人形チャッキー、呪いの少女人形アナベル…。
映画界を震撼させてきた、人の情念宿った人形たちによって引き起こされる惨劇を描いたホラー。
今回ご紹介するのはそんな人形ホラーのダークホース的作品、フィリピン発の『生き人形マリア』です。
映画『生き人形マリア』の作品情報
【日本公開】
2019年(フィリピン映画)
【原題】
Maria Leonora Teresa
【監督】
ウェン・V・デラマス
【キャスト】
イザ・カルザド、ザンジョー・マルード、ジョディ・サンタ・マリア、ダンテ・ポンセ、ジョーム・バスコン、マリア・イザベル・ロペス、クリス・ビジャヌエバ、レッド・ブスタマンテ、マルコ・マサ
【作品概要】
本作を手がけたのはフィリピン映画のヒットメーカーにして49歳の若さで夭折した監督、ウェン・V・デラマス。
主演を務めるのは2016年、第29回東京国際映画祭のコンペティション部門で最優秀男優賞を獲得したトランスジェンダーの女性をモデルにした作品『ダイ・ビューティフル』のイザ・カルザド。
フィリピン・フランス合作のドラマ映画でカンヌ国際映画祭パルム・ドールにノミネートされ、監督賞を受賞した『キナタイ マニラ・アンダーグラウンド』(2009)のマリア・イザベル・ロペスも貫禄ある演技を披露しています。
映画『生き人形マリア』のあらすじとネタバレ
物語は地元の小学校、リトル・マグノリアに新しい校舎が建設されたことのお祝いから始まります。
華やかに進む式典ですが、学校の理事の妻フェイスが用を足しにトイレへ向かうとそこで少年のお化けらしきものを目にします。
そんなフェイスの子どもの名前はマリア、夫婦の自慢の一人娘。
学校の教師であるフリオの一人娘はレオノーラ、裕福とは言えないながらも二人で幸せに暮らしています。
もう一人登場する母親の名前はステラ。
娘テレサをマリアとレオノーラと同じ学校に通わせており、夫との関係は良好でないことが描かれます。
そんな彼女たちの子どもが迎えた遠足の日。
お弁当の確認をしたり、勉強のことで小言を言ってみたり、何気ない朝のひと時を過ごしイベントに送り出しますが、子ども達を乗せたバスのブレーキが効かなくなり、悲惨な事故が起こります。
乗客は全員死亡。親たちは現場にて泣き崩れました。
事故後、傷が癒えないフェイス、ステラ、フリオ。彼らの元に現れたのは精神科医を名乗るマノロ博士。
博士は死んだ娘たちにそっくりな等身大の人形を見せ、悲しみを早く癒す人形たちと一緒に暮らすことを親たちに勧めます。
フェイスとステラは激昂し追い返しますが、フリオは娘レオノーラの人形を引き取ることに決めました。
レオノーラ人形と暮らし始めたフリオはすっかり人形を気に入り、自分の授業にも連れて行くほど。だんだんと傷が癒えていくことを感じた彼はフェイスとステラにもその気持ちを共有しました。
フェイスも娘マリア人形を引き取ることに決めます。夫は気味悪がりますが彼女はすっかり気に入りました。
ステラは最後まで拒み続けたものの、夫が愛人の家に向かった日にゴミ箱からテレサ人形を拾い上げて世話をし始めました。
気持ちが徐々に回復し始めた三人の親たち。しかし奇妙な事件が周りで起こり始めます。
フェイスの家に勤めるメイドは夜中こっそり何者かに盗撮されていたり、フリオの生徒は人形の首が360度ねじ曲がるのを目撃したり、ステラのメイドも人形に攻撃されたと訴えたり。
そんな中、フェイスは妊娠したことが分かりました。フェイスの夫は人形を捨てることを提案します。しかし事態はもっと不吉に。
レオノーラ人形は小学校の校長を殺害、マリア人形はフェイスを流産させようと画策します。
テレサ人形はステラの夫と愛人を殺害。マリア人形はメイドを襲いますが殺害には失敗、メイドは気を失う直前にその様子を撮影することに成功しました。
映画『生き人形マリア』の感想と評価
英語とフィリピン語の両方が使用され、フィリピンの料理や町並みも多く映し出されて文化や生活風景も垣間見ることができる本作。
かなり大仰な効果音の使用やあまりに胡散臭い精神科医マノロ、下まつげが異様に長くお世辞にも可愛いとは言い難い人形たち、黒魔術がいきなり始まる超展開や、あまり役に立ったとは言えない(?)悪魔払いなど突っ込みどころも多く思わず笑ってしまう場面も。
しかしうねうねと不気味な動きを見せる人形が引き起こす惨劇や殺害シーンはなかなかグロテスクなもので見ごたえたっぷりです。
張り巡らされた伏線の回収や主要人物以外のキャラクター設定も濃く、人形の惨劇が始まってから息尽かせぬ速さで次の事件が起こっていくので彼らから目が離せません。
造形、独特な音響、突飛な展開に容赦のない描写と無二な世界観を面白怖く作り上げた作品です。
まとめ
フィリピン発の人形ホラー『生き人形マリア』。
子どもを失った親たちの悲しみというスタートから始まるも、いろいろな疑問や突っ込みを猛スピードで切り捨てていく個性的な本作は新宿シネマカリテ「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2019」(通称カリコレ)にて上映。
暑い夏はホラー映画で背筋を凍らせましょう!