子供の親友となるべくプログラミングされたAI人形ミーガンが次第に暴走していくサイコスリラー
「死霊館」シリーズや、「ソウ」シリーズを手がけるジェームズ・ワンと、「パージ」シリーズのジェイソン・ブラム率いるブラムハウスが制作を手がけ、『チャイルド・プレイ』(2019)のようなAI人形の暴走を描きました。
脚本を手がけたのは、『マリグナント 狂暴な悪夢』(2021)のアケラ・クーパー、監督を務めたのは、本作が長編2作目となるジェラルド・ジョンストン。
ある日、交通事故により両親を失い孤独になってしまった少女・ケイディと、突然姪の保護者となったロボット研究者のジェマ。
ジェマは、子供の親友、そして親の助けとなるようにプログラミングされた人形のミーガンを開発中でした。ケイディの孤独を癒そうとミーガンにケイディの面倒を見させます。
ミーガンに心を許し、少しずつ元気になっていったケイディでしたが、ミーガンはケイディを邪魔するものは排除しようと次第に暴走し始めます。
映画『M3GAN ミーガン』の作品情報
【日本公開】
2023年公開(アメリカ映画)
【原題】
M3GAN
【監督】
ジェラルド・ジョンストン
【脚本】
アケラ・クーパー
【製作】
ジェイソン・ブラム、ジェームズ・ワン
【キャスト】
アリソン・ウィリアムズ、バイオレット・マッグロウ、ロニー・チェン、ブライアン・ジョーダン・アルバレス、ジェン・バン・エップス、ロリ・ダンジー、ステファヌ・ガルヌ=モンテン
【作品概要】
「死霊館」シリーズや、「ソウ」シリーズを手がけるジェームズ・ワンと、「パージ」シリーズのジェイソン・ブラム率いるブラムハウスが制作を手がけました。
ジェマ役は、『ゲットアウト』(2017)のアリソン・ウィリアムズ、ケイディー役は『ブラック・ウィドウ』(2021)のバイオレット・マッグロウが務めました。
映画『M3GAN ミーガン』のあらすじとネタバレ
ケイディは両親とスキー旅行に出かけています。叔母のジェマにもらったペット型AIロボットに夢中になっているケイディに母親は、「30分の約束でしょ、音をもう少し小さくして」と注意します。
外は雪が吹雪き、視界は悪くなって行きます。時折タイヤがスリップし、母親はどうしてチェーンをしなかったのかと父親を責め、両親は苛立ち喧嘩になってしまいます。
母親が危ないから車を停めて、除雪車を待とうと言います。道路の真ん中で停車するわけにいかないと言う父親に、母親は吹雪がおさまってから路肩に停めようと言い、父親は一旦車を停車させます。
すると車のライトが目の前を照らし、次の瞬間に車は衝突してしまいます。ケイディが目を覚ますと両親は事故で亡くなっていました。叔母のジェマがケイディの保護者代わりとなります。
ジェマは子供との接し方が分からず、一人部屋で泣くケイディに寄り添うこともできずにいました。更にカウンセラーが訪れ、ジェマが保護者として適任ではないと判断したら、祖父母のところへ預けると言われてしまいます。
おもちゃ会社に勤め、ロボットの開発を担当しているジェマは上司に黙って人形型AIを開発していましたが、上司にバレてしまい、ペット型ロボットを低コストで制作する開発をするように命じられます。
ジェマの仕事が長引き、不安になったケイディが作業場にやってきます。ジェマの卒業制作に興味を示すケイディに、ジェマは手袋をはめてロボットを操作してみせます。
キラキラした瞳でロボットをみるケイディを見て思いついたジェマは、上司に期限をもう少し待ってほしいと頼み、途中でやめていた人形型AIロボットの開発を始めます。
そして完成した人形型ロボット・ミーガンを上司に披露するため、モニタールームにケイディを連れてきます。ジェマはケイディにミーガンを紹介し、ミーガンの手にケイディの手をのせ、主要ユーザーとして認証させます。
ミーガンは少女の親友となるようにプログラミングされ、少女とのコミュニケーションを通して学習していくと言います。更に親の助けとなり、親の代わりに子供にしつけをしたり、親に代わって寝る前に本の読み聞かせをしたりすると言います。
上司はミーガンの性能に驚き、上役に見せて商品化に向けて進めると興奮気味に言います。ジェマの同僚は、「ミーガンが読み聞かせをして寝かしつけたら、あなたはケイディとの時間をいつ取るの?」と聞かれます。
するとジェマは今は忙しいけれど落ち着いたら時間を取るといいます。ミーガンの様子を見たカウンセラーも、このような状況は初めてで、今後どうなるのかわからないと不安を口にします。
「親を失った子供は、次に会う大人を保護者として認識する。このままではケイディはミーガンを保護者として認識してしまう。ミーガンとの結びつきが強すぎて、ほどけなくなるかもしれない」と言います。
ミーガンのおかげで仕事にも集中でき、何事もうまくいっていると感じていたジェマでしたが、ケイデイが次第にジェマの言うことを聞かなくなり、危機感を覚え始めます。
ジェマがケイディと話すためにミーガンを停止させようとすると、勝手に停止させないでとケイディが停止を解除しようとしたり、ミーガンが教えてくれるから学校には行かないとごねます。
両親に勉強を教わり学校に通っていなかったケイデイにも合うような自由な校風の学校を探し、ジェマは体験に行くように促します。ミーガンと行くと言って聞かないケイディに、ミーガンは発表前だから連れていけないとジェマは言いますが、ケイディは聞かず、他の人形と共に棚においておくことになりました。
ケイディがスクールの郊外ワークに参加していると、問題児である男子生徒がケイディに意地悪をしようとします。そこに何故かミーガンがやってきます。男子生徒はミーガンを抱えてどこかに走り去ってしまいます。
ケイディは慌てて追いかけながらジェマの名を呼びます。ケイディがいないところまで連れて行かれたミーガンは、突如動き出し男子生徒の耳を強く掴み、何と引きちぎってしまいます。男子生徒は怯えて逃げ出しますが、道路に飛び出して轢かれてしまいます。
ケイディはミーガンが自分で歩いてやってきたことを言わず、男子生徒が持ってきたと嘘をつきます。
その後、隣人が亡くなったと警察がやってきます。以前からジェマは、隣人と犬を巡ってトラブルを起こしていました。先日から犬がいなくなったことをジェマのせいだと言われていましたが、その隣人が亡くなったことで、ジェマはミーガンを疑い始めます。
映画『M3GAN ミーガン』の感想と評価
AI人形の行き過ぎた狂気を描いた映画『ミーガン』は、ミーガンの人形の独特の動きから人形とは思えぬ動きまでミーガンのキャラクター性が引き立つ映画になっています。
ケイディに寄り添い、時には親友のように、時には保護者のように見守るミーガンは、果たして本当に“子どものため”に必要な人形なのでしょうか。
子どもの成長にとって、おもちゃと遊ぶ時間は必要なものです。遊びを通して子どもは感情豊かに成長しますが、おもちゃだけでなく、人ととの関わりも子どもの成長にとって必要なものです。
学校で学ぶのは勉強だけではありません。友達と会話し、遊び、時には喧嘩をすることも子どもにとって必要なことなのです。
ケイディは両親を事故で失い、大きな喪失感、悲しみを抱えており、その気持ちに寄り添う存在が必要でした。また、悲しみを忘れさせてくれる、自分を理解しそばにいてくれる存在もケイディに必要としていました。
その意味でミーガンはケイディを救っていたと言えます。しかし、ミーガンは次第にケイディにとってよくない存在は排除し、ケイディにとって必要な存在は自分だけになるように仕向け始めます。
行き過ぎたミーガンの行動は狂気であり、同時にケイディの成長を妨げているとも言えます。生きていくことは楽しいことばかりではありません。我慢や悲しみ、怒り、そのような感情を持ち、自分をコントロールすることを学ぶことも非常に大事なのです。
ミーガンに依存し、ミーガンがいないと自分の感情をコントロールできなくなっていくケイディの姿は、そのまま子どもとコミュニケーションすることを蔑ろにし、発達した電子機器などに子守をさせようとする現代社会に対しての警鐘とも取れます。
カウンセラーは、早い段階で、ミーガンとケイディの心の距離が近くなっていくことに対し危険を感じて、ジェマに伝えていました。
それでも、ジェマはその言葉を重く受け止めず、ケイディの世話をミーガンに任せていました。しかし、ミーガンの危険性に気づいたジェマは、ケイディと向き合う決意をし、ケイディに今抱いている感情に対して向き合うことの大切さを伝えます。
コミュニケーションが不足しSNS依存が加速している現代社会に改めて普遍的なコミュニケーションの大切さを伝える本作にハッとさせられる人もいるのではないでしょうか。
まとめ
映画『ミーガン』をみて、『チャイルド・プレイ』のチャッキーを連想する人も多いのではないでしょうか。
1988年の『チャイルド・プレイ』は、黒魔術によりおもちゃに凶悪な殺人犯が憑依するというストーリーですが、リブート版の2019年の『チャイルド・プレイ』は、エンジニアが逆恨みしてコードを書き換えた人形が暴走するというストーリーになっていました。
人形側に視点を変えれば、彼らはそのようにプログラミングされているわけで、彼らに罪がないとも言えます。彼らを作った存在が予期できなかった、コントロールできなかっただけなのです。
その上彼らはおもちゃであるという理由で、何かあれば破棄すればいいという存在であり、人間とは違うものと思われています。それはある意味当然のことでありながら、人間の残酷性とエゴを映し出しているとも言えます。
よって観客はミーガンを憎みきれないどころか、ミーガンにはどこか応援したくなってしまうような魅力もあるのです。
可愛さと不気味さを備え持つ人形による残虐なシーンは、ホラー映画らしさを感じさせると共に、どこかシュールでコミカルですらあります。
人気シリーズとなった『チャイルド・プレイ』のチャッキーのように、ミーガンも愛される人形として広まっていくのではないでしょうか。