脱出不可能となった高層アパートで巻き起こる、不可解な恐怖の連続!
4年前に悪魔教団から逃げ出し、新たな場所に移住した家族が直面する恐怖の一夜を描いた『呪餐 悪魔の奴隷』。
2017年に公開された『悪魔の奴隷』の続編となる本作は、高層アパートを舞台に、悪魔の恐怖を描くだけでなく、前作で謎のままだった部分について、語られている作品でもあります。
今回は『呪餐 悪魔の奴隷』の魅力と共に、本作で明らかにされた部分も含めて、考察していきます。
CONTENTS
映画『呪餐 悪魔の奴隷』の作品情報
【日本公開】
2023年映画(インドネシア映画)
【監督・脚本】
ジョコ・アンワル
【キャスト】
タラ・バスロ、エンディ・アルフィアン、ネイサー・アヌズ、ブロント・パラレー、
【作品概要】
1980年に製作された『夜霧のジョギジョギモンスター』のリメイク作『悪魔の奴隷』の続編。
前作で母と祖母を亡くしただけでなく、蘇った死者に襲われるという恐怖を味わったリニ。今度は引っ越した先の高層アパートで、更なる悪魔の恐怖に襲われます。
『呪餐 悪魔の奴隷』は、本国インドネシアで640万人を動員、インドネシア映画の歴代興行収入3位を記録する程の、大ヒット作品となっています。
映画『呪餐 悪魔の奴隷』のあらすじとネタバレ
1955年、オカルト専門の記者であるブディマンは、インドネシア軍の高官から呼び出されます。
呼び出されたのは、教会のような場所で、死者が蘇ったと思われる痕跡が残されていました。
ブディマンは、インドネシア軍の高官に「この事を、多くの人に伝えてくれ」と依頼されます。
1988年、所持品の整理をしていたブディマンは、ある写真を発見します。
その写真から、ブディマンはかつての友人の孫で、4年前に命を救ったリニに、危険が迫っていることに気付きます。
4年前に祖母と病気の母親を不可解な形で亡くしたリニ。
リニは、過去に母親が関係していたと思われる、悪魔を崇拝する教団から逃げる為、父親と弟のトニー、ボンディと4人で高層アパートに引っ越していました。
リニは、工場で働いていましたが、工場長から薦められ大学に通うことを考えるようになります。
新たなアパートに引っ越して以降、優しく家族思いだった父親は変わってしまい、無口で不愛想になっていました。
更に、父親は自身の仕事について一切語らず、謎のケースを持って朝に出かけて、夜に戻って来る毎日を送っています。
リニの住む高層アパートは、母子家庭の少年や、水商売で生計を立てている少女、暴力的な父親に悩む家族など、決して裕福とはいえない人達が多く住んでいます。
また、最近謎の連続殺人が多発しており、リニは暗い気持ちを抱えていました。環境を変える為、リニは家を出て、大学に通う事を決意します。
ですが、その次の日に、リニが住む高層アパートでエレベーターが落下し、多くの住人が亡くなるという、悲惨な事件が起きます。
映画『呪餐 悪魔の奴隷』の感想と評価
閉鎖された高層アパートで、蘇った死者や母親の亡霊に襲われる恐怖を描いた『呪餐 悪魔の奴隷』。
本作は、2017年に公開された『悪魔の奴隷』の続編で、『悪魔の奴隷』のラストで一家が引っ越した高層アパートが新たな舞台となります。
『悪魔の奴隷』と比べると『呪餐』は全体的に画面が暗く、ジメジメとした嫌な印象を受けますが、4年前に悪魔教団に幸せを壊された、リニたち家族の暗い心情を感じることが出来ます。
『呪餐』は続編ではありますが、何も知らなくても、不可解な現象が次々に起きる心霊ホラーとして楽しめます。
ですが、前作を鑑賞済みだと間違いなく楽しめる作品となっており、そのポイントを紹介します。
人格が変わってしまった父親の秘密
前作『悪魔の奴隷』では、リニの父親は亡くなる前の病弱な母親と、子供達の為に尽くしている、明るく優しい性格でした。
ですが『悪魔の奴隷』中盤で、突然消息を絶ち、後半に戻って来ます。
「その間に何をしていたか?」は『悪魔の奴隷』本編では語られていませんでしたが、前半では神や信仰に関して否定的だった父親が、戻って来て以降、神への信仰心を語るなど、人が変わった様子を見せていました。
そして『呪餐』では完全に性格が変わってしまい、無口で不愛想な雰囲気になっています。
『呪餐』のラストで、教団との関係を断つ為に、殺人を繰り返していたことが分かりますが、おそらく『悪魔の奴隷』で姿を消していた間に、教団へ交渉に行ったのでしょうね。
アパートは悪魔教団の本拠地だった
『悪魔の奴隷』では、リニの住む一軒家が舞台になっていましたが、『呪餐』では舞台がアパートにスケールアップしています。
本作の後半では、多数の死体が放置されたアパートが停電になってしまい、それだけでも嫌な展開ですが、更に蘇った死者や亡霊が、次々にアパートの住人に襲いかかります。
ですが、本当に不気味なのは、このアパートの住人のほとんどが、悪魔教団の信者だった可能性があることです。
『呪餐』の序盤では、リニ達を監視するように、不気味な動きを見せる住人達が登場します。
もちろん、普通の人々も暮らしていますが、全員が家庭に事情があり裕福ではない人たち。
教団は、そういった「行き場の無い人たち」を利用しようとしていたのかもしれません。
『悪魔の奴隷』で、一軒家から逃げ出すリニたちに、父親が「住むところは決まっている」と言っていました。
教団は、リニたちをこのアパートに入居させることで、自らの監視下に置いたのでしょうね。
ラストに登場する2人の男女の謎
『悪魔の奴隷』『呪餐』共通のラストとして、謎の男女2人組が登場します。
この男女は、上品な雰囲気を醸している美男美女で、必ずレコードをかけて踊り出します。
会話の内容から、悪魔教団の幹部的な立場なのは間違いないですが、今後もリニたちを狙い続けるようです。
『呪餐』のラストは、シリーズ3作目を示唆させていますが、今後はリニと2人の弟、ブディマンが教団と決着をつける展開になるのでしょうか?
まとめ
『悪魔の奴隷』『呪餐』共に素晴らしいのは、ホラー演出が非常に丁寧な部分です。
ラジオから突然流れる不気味な声、テレビの砂嵐に浮かぶ母親の亡霊、ダストボックスに潜む何者かなど、新しさは無いですが、王道のホラー演出を丁寧に組み合わせている印象です。
そして、クライマックスで一気に恐怖を加速させるんですが、恐怖の連鎖は、2022年に話題になった『女神の継承』に近いかもしれません。
『呪餐』はインドネシアで大ヒットしたホラー作品ですが、今後もアジア発のホラー映画が熱いかもしれませんね。