映画『恐解釈 花咲か爺さん』は2023年11月3日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、シネマート新宿、アップリンク吉祥寺ほかで全国ロードショー!
大人が子どもに読み聞かせる多種多様な昔話。
昔話のラインナップは今も昔も大きくは変わりなく、それゆえにタイトルを聞くだけで多くの人が、その物語の全容を頭に思い浮かべられると思います。
しかし、2023年に突如現れた怪作『恐解釈 花咲か爺さん』(2023)では、あの有名な名作昔話『花咲か爺さん』を恐怖と血肉に満ちた全く想像のつかない物語にアレンジ。
今回は、そんな誰もが知っているはずなのに誰にも想像がつかない物語と化した『恐解釈 花咲か爺さん』の魅力をご紹介させていただきます。
CONTENTS
映画『恐解釈 花咲か爺さん』の作品情報
【日本公開】
2023年(日本映画)
【監督】
浦崎恭平
【脚本】
浦崎恭平、川崎一真
【プロデューサー】
叶井俊太郎、星野和子
【キャスト】
森みはる、西川風花、五十嵐涼、リアン、下東久美子、都丸亜華梨、飯塚大、川松尚良、海老原正美、森羅万象
【作品概要】
第5回学生残酷映画祭でグランプリを受賞した映画監督・浦崎恭平が手がけた、日本の昔話を現代のバイオレンス・ホラーの物語へとアレンジする「恐解釈」シリーズ第1弾作品。
「26時のマスカレイド」の元メンバーである森みはる、映画『桜の園』などの西川風花が出演するほか、“いじわる爺さん”を『HANA-BI』(1998)『極道大戦争』(2015)の森羅万象が、“正直爺さん”を『騙し絵の牙』(2021)の海老原正美が演じました。
映画『恐解釈 花咲か爺さん』のあらすじ
借りたものを返さないいじわる爺さんと、近所の家に住む心優しい老夫婦。
ある日、いじわる爺さんの娘が婚約者を連れて実家に戻ると、昔とは似ても似つかぬ姿となった家がありました。
娘が戻ったと聞き、いじわる爺さんにも笑顔が戻ると思っていた老夫婦のもとに現れたいじわる爺さんは、“ある目的”から老夫婦が家族の一員として可愛がる愛犬ハルを借ります。
しかし、いじわる爺さんの家の中ではその凶悪な本性により、惨劇が繰り広げられていて……。
映画『恐解釈 花咲か爺さん』の感想と評価
子どもには見せられない“現代の残酷昔話”
現代では主に子ども向けの絵本を通じて語り継がれることの多い「昔話」ですが、実はその内容はかなり過激な物語であるケースもあります。
婆さんを殺害し爺さんに食べさせた狸への復讐劇を描いた『かちかち山』が有名ですが、近年では残酷な描写が「子ども向けでない」として、物語が改変される場合も。
昔話の残酷性は『かちかち山』の狸や『さるかに合戦』で母蟹を殺めた猿の最期のように、悪逆な行為に対する因果応報の意味合いが強く、物語を読む子どもたちに悪の道を進ませないようにする意図もありました。
しかし、昔話の大定番『花咲か爺さん』を現代を舞台にリメイクした『恐解釈 花咲か爺さん』は、そんな昔話に込められた因果応報の意味合いを圧倒的に超越する「やりすぎ」なほどの過激な物語に生まれ変わっていました。
これは子どもに読み聞かせする物語とはとても言えない、残虐非道に生まれ変わったバイオレンス『花咲か爺さん』という、多くの人が元の物語を知っているからこそ驚愕しっぱなしの映画となっています。
何より恐ろしい“自覚のない悪”
『花咲か爺さん』の物語のキーパーソンは、主人公にあたる“正直爺さん”と彼の家族ともいえる愛犬を殺害する“いじわる爺さん”の二人。
本作では特に“いじわる爺さん”の凶行に焦点が当てられており、“いじわる爺さん”は身の毛もよだつような行為を繰り返していきます。その凶行は実在の事件を基に描かれた猟奇映画『冷たい熱帯魚』(2011)をも彷彿とさせ、狂気的行為を平然と行う“いじわる爺さん”に戸惑い恐怖する周囲という構図が成り立っていました。
そんな初登場の瞬間から全く共感のできない悪事を行う“いじわる爺さん”ですが、その真の恐ろしさは“いじわる爺さん”に「悪いことをしている」という自覚がない点にあります。
自分に降りかかる因果応報な出来事を理解できず、ただただ困惑するさまには「スッキリ」を通り越して恐怖すら覚えます。
あまりに不快指数の高い“いじわる爺さん”と、誰に対しても心優しく接する聖人のような“正直爺さん”。そんな二人の織り成す『恐解釈 花咲か爺さん』はやがておぞましすぎる「花」を咲かせることになります。
映画を締めくくるおぞましすぎる「花」
『花咲か爺さん』の物語では、“いじわる爺さん”に殺害された愛犬の遺灰が美しい「花」を咲かせ、“正直爺さん”は大名によって多くの褒美を与えられます。
本作でも“正直爺さん”は物語のメインである「花」を咲かせることになるのですが、その「花」はあまりにも衝撃的なものになっていました。
その「花」は見るもおぞましく目を逸らしてしまうこと間違いなしでありながら、それでいてその世界観には強く惹きつけられ、脳内にこびりつくような強い印象を残します。
それは『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』(2009)のラストに登場する殺人鬼が作った像のようであり、『飢えた侵略者』(2017)でゾンビたちが家具を使って作った不気味なモニュメントのようであり、映画史に残るような印象的かつ残虐的な「花」となっています。
耐性のある人にはこの「花」だけでも観てほしいと思える
ような、「恐解釈」な『花咲か爺さん』のにふさわしい、おぞまし過ぎる代物となっていました。
まとめ
本作をホラー専門サイト「オソレゾーン」とともに配給した映画配給会社「エクストリーム」は「恐解釈」シリーズの第2弾として、『恐解釈 桃太郎』の2023年12月8日(金)公開を電撃発表。
2020年代の和製ホラーのシリーズとして注目を集めている『犬鳴村』(2020)を始めとした「恐怖の村」シリーズに対抗し得る存在として、「恐解釈」シリーズが名を連ねる日も近いとすら思える勢いを感じさせる『恐解釈 花咲か爺さん』。
記憶に焼き付くこと間違いなしの血と肉に満ちたバイオレンスな『花咲か爺さん』を、ぜひその目に焼き付けてみてください。
映画『恐解釈 花咲か爺さん』は2023年11月3日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、シネマート新宿、アップリンク吉祥寺ほかで全国ロードショー!