終わりに向かって動き始めた陰謀、壮大な逆転劇を見逃すな!
全世界で累計発行部数が8000万部を越えるヒットとなった、2001年連載開始の人気漫画『鋼の錬金術師』。
伏線を無駄にすることなく、全巻で作り上げられた壮大なスケールの物語が人気の『鋼の錬金術師』は、張り巡らされた伏線の多さゆえに尺が限定される映画化での完全再現は難しいと言われていました。
今回はそんな困難とされた映画化で物語をラストまで描き切った実写化シリーズ完結作『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』(2022)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
CONTENTS
映画『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』の作品情報
【公開】
2022年(日本映画)
【監督】
曽利文彦
【脚本】
曽利文彦、宮本武史
【キャスト】
山田涼介、本田翼、ディーン・フジオカ、蓮佛美沙子、本郷奏多、黒島結菜、渡邊圭祐、水石亜飛夢、山田裕貴、舘ひろし、藤木直人、山本耕史、栗山千明、佐藤隆太、仲間由紀恵、新田真剣佑、内野聖陽
【作品概要】
荒川弘による漫画『鋼の錬金術師』を『ピンポン』(2002)の曽利文彦が実写映画化したシリーズ第3作。
山田涼介やディーン・フジオカなどのレギュラーキャストと前作からシリーズに参加した山本耕史や舘ひろしに加えて、本作には『バトル・ロワイアル』(2000)の栗山千明や「TRICK」や「ごくせん」シリーズで人気の仲間由紀恵が出演しました。
映画『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』のあらすじとネタバレ
アメストリスを旅するホーエンハイムはエドとアルの師匠であるイズミと出会います。
イズミは過去に流産してしまった自身の子供を人体錬成してしまったことで「真理の扉」を開いてしまい、複数の内蔵を代償として失っていました。
イズミが「真理の扉」を開いた過去を持っていると知ったホーエンハイムは彼女が「人柱」候補となっていると言うと、「約束の日」にアメストリスの全ての人間が死亡すると言いました。
グラトニーの体内の空間に入ってしまったエドとリンは変身したエンヴィーと戦いますが、エドがこの空間から出る方法に気づき休戦となります。
生きている自分自身を外の世界に人体錬成すると言う手法でグラトニーの世界の外に出たエドとリンとエンヴィー。
アルは「お父様」の言いつけを破ってしまい怯えるグラトニーの案内で、大総統府地下にある「お父様」のアジトを訪れており、外に出たエドたちと再会します。
「お父様」はホーエンハイムと同じ顔をしていましたが同一人物ではなく、エドとアルがホーエンハイムの息子と知ると二人に身体を大事にするようにと言いつけます。
しかし、「お父様」はリンには興味がなく、エンヴィーに捕まえさせたリンに自分の中の「賢者の石」を埋め込みます。
リンは強い精神力で死を免れますが、リンの中に「お父様」の感情の一部であり「ホムンクルス」の源である「グリード」が侵入し、精神が乗っ取られてしまいます。
リンを救うためエドは反撃を試みますが錬金術が発動せず、駆けつけたスカーの錬金術とメイの錬丹術のみが発動しました。
スカーの機転によって逃げ果せた4人は、スカーの兄が調べていた文献に何かが残されていないかを調べます。
スカーの兄の文献に残された暗号を解くと、過去にアメストリスで内乱や虐殺のあった場所を繋いでいくと巨大な「賢者の石」の錬成陣が出来上がることが分かります。
「お父様」は建国以来、この「国土錬成陣」の完成のために行動しており、「約束の日」とはこの「国土錬成陣」が完成する日のことでした。
途方もない量の「賢者の石」の錬成のためにアメストリスに住む全員の命が失われることに気づいた4人は、「お父様」の野望を打ち砕くために行動を始めます。
エドはまだ虐殺や内覧の起きていない唯一のポイントである北方のブリッグズに向かい、要塞を指揮するオリヴィエ少将と会いますが、「お父様」に先手を打たれ隣国との戦闘が始まってしまいます。
エドと会ったオリヴィエは要塞の指揮を解任されてしまいセントラルへと呼び出されます。
マスタングが既に軍の中枢部は全て「お父様」の手先であることを伝えており、オリヴィエはブラッドレイに上手く取り入り幹部に昇進。
その頃、アルはイズミとの電話によってホーエンハイムと再会し、「約束の日」のことを問い詰められたホーエンハイムは全ての真実を話します。
数百年前、クセルクセス国王のもとで奴隷として働いていたホーエンハイムは実験室の掃除中に、ホーエンハイムの血によって産まれた生物と出会います。
「フラスコの中の小人」と名乗る生物の提案でホーエンハイムは奴隷の身分から脱するための知識を彼から教わることになります。
「フラスコの中の小人」の知識によってクセルクセス王に身分を引き上げられたホーエンハイムは王に「フラスコの中の小人」と接見させます。
王は「フラスコの中の小人」に不老不死の術の知識を求め、彼の言うがままに「国土錬成陣」を作り出してしまい、王を含めたクセルクセスの100万人を越える人間は「賢者の石」の代償となり死亡。
錬成陣の中央にいたホーエンハイムと「フラスコの中の小人」は50万人分の賢者の石を体内に宿し、その日以降死ぬことの出来ない身体になっていたのでした・
一方、グリードとなったリンと再会したエドは「ホムンクルス」のリーダーでありブラッドレイの息子を擬態していたプライドと対峙。
影を操る「プライド」の苛烈な攻撃に圧倒されますが、実はエドはアルとホーエンハイムと既に再会しており、ふたりの力を使いプライドを土の壁に閉じ込めます。
「約束の日」、列車で移動中、ブラッドレイの乗る列車が橋の上で爆破されます。
列車の爆破はマスタングの指示であり、セントラル全体を巻き込んだマスタングによるクーデターが始まりました。
映画『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』の感想と評価
原作を再現した壮大なスケールの逆転劇
漫画『鋼の錬金術師』の魅力は単行本全27巻で描かれる、第1話から最終話までに巻き起こる全ての事柄に一本の筋が通った物語にあります。
そんな大人気漫画の実写化に挑んだシリーズの完結編となる本作では、尺の都合でどうしても描くことの出来なかった部分は多くあれど、メインとなる「国土錬成陣」をめぐる物語を完結まで描き切りました。
「イシュヴァール殲滅戦」を含む各地で起きた内乱や虐殺の全てが、「お父様」による「国土錬成陣」へと繋がっていく最終章。
主人公のエドやアル、マスタングやスカーなど「お父様」の手のひらで踊らされていた人間たちが、「国土錬成陣」完成の阻止に人生を捧げて生きるホーエンハイムと共にリベンジを仕掛けます。
原作の持つ全てを管理され生死すら思惑通りに動かされてきた人間たちによる壮大な逆転劇の面白味が再現された本作は、熱いクライマックスを上映時間中楽しめる作品でした。
完結編からの新キャストが見せる原作キャラの完全再現
前作であり完結編の前編でもあった『鋼の錬金術 完結編 復讐者スカー』(2022)からシリーズに参加した山本耕史や舘ひろしなどの名優たちは、他のキャストが考えられないほどの原作再現度で話題となっていました。
中でも主人公たちの父親であり味方となる冗談好きのホーエンハイムと、シリーズ内で巻き起こる惨劇の全てを操っていた「お父様」の両役をひとりで演じた内野聖陽の演技は実写化品としての本作の評価に繋がっています。
後編となる本作には新たに山本耕史演じるアレックス・ルイ・アームストロングの姉オリヴィエが登場。
前評判の段階から完全再現とまで言われていた栗山千明によるオリヴィエは気高さと強さの両方を兼ね揃えた、まさに原作のオリヴィエそのままであり、俳優陣の演技が本作の「実写映画」としての魅力を高めていました。
まとめ
豪華俳優陣を起用して大人気漫画の物語をラストまで描き切った『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』。
完成度の高い原作をそのままベースとしたことで原作の持つ魅力が俳優陣の演技によってより高まり、「鋼の錬金術師」の新たな一面を見せてくれる作品に昇華されていた本作。
原作既読の方は昔を懐かしみながら、そして原作未読の方は壮大なスケールの物語を本作で味わってみてはいかがでしょうか。