世界を魅了した歌姫ホイットニー・ヒューストンの半生を描いた伝記映画。
ケイシー・レモンズが監督を務めた、2022年製作のアメリカの伝記映画『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』。
THE VOICEと称される圧倒的な歌声で世界を魅了したアメリカの人気歌手ホイットニー・ヒューストン。
いかにしてスターダムを駆けあがり、グレイテストソングを生み出したのか。
ジャンルも人種も超え、「歌いたい曲を、自分らしく歌う」ことに命を燃やした先に彼女が見たものとは…。
映画『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
CONTENTS
映画『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』の作品情報
【公開】
2022年(アメリカ映画)
【脚本】
アンソニー・マクカーテン
【監督】
ケイシー・レモンズ
【キャスト】
ナオミ・アッキー、スタンリー・トゥッチ、アシュトン・サンダーズ、タマラ・チュニー、ナフェッサ・ウィリアムズ、クラーク・ピータース
【作品概要】
『ボヘミアン・ラブソディ』(2018)の脚本を手掛けたアンソニー・マクカーテンが本作の脚本を、『ハリエット』(2019)のケイシー・レモンズが監督を務めた、アメリカの伝記映画です。
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019)のナオミ・アッキーが、世界を魅了した歌姫ホイットニー・ヒューストン役を演じます。
映画『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』のあらすじとネタバレ
1983年、アメリカ・ニュージャージー州。カトリック系の女子校に通うホイットニー・ヒューストンは、歌手の母親シシーの歌唱指導のもと、幼い頃からニュー・ホープ・バプティスト教会の聖歌隊とともにゴスペルを歌っていました。
さらにホイットニーは、シシーのバックコーラスも務めていました。
しかし私生活では、シシーのツアー中はいつも子供達の面倒を見ていたジョンの浮気が発覚し、大喧嘩の末に離婚。シシーはホイットニーの養育権を得ました。
そんなある日、ホイットニーに人生最大のチャンスが訪れます。
シシーの機転により、敏腕の音楽プロデューサーのクライヴ・デイヴィスの目の前で、オープニング・ソロを務めることとなったのです。
ホイットニーは美しい歌声で、「Greatest Love Of All」という曲を披露。観客とクライヴから拍手喝采を浴びます。
さらにホイットニーはクライヴの目にとまり、彼が社長を務めるアメリカのレコード会社「アリスタ・レコード」と契約。歌手デビューを果たし、瞬く間にトップ歌手の座をつかみます。
ホイットニーはデビュー前に出会った親友のロビン・ロックフォードと交際しており、マネージャーである父親のジョンに、彼女を故人秘書として正式に雇いたいとお願いしました。
しかし、会ってすぐに2人の関係を察したジョンから、「男とデートすること」という条件を提示されるのです。
ロビンはこれを拒むも、ホイットニーは自身のデビューアルバム『そよ風の贈りもの』の中の2曲デュエットしたアメリカの歌手ジャーメイン・ジャクソンと関係を持ってしまいます。
理由は、家族と子供が欲しいから。それまで怒りのままに家中のものを壊して暴れていたロビンは、静かに涙を流し「愛しているの」と告げます。
ホイットニーもそれに答え、ロビンに「親友になってほしい」とお願いしました。ロビンは最初は拒むも、しばらくすると彼女の頼みを受け入れるように手を握り返しました。
ロビンが正式にホイットニーの個人秘書となった後、ホイットニーのデビューアルバムは爆発的な大ヒットとなり、アメリカン・ミュージック・アワード(AMA)とグラミー賞を受賞。
さらに2曲目のシングル「すべてをあなたに」から7曲連続で全米チャート1位の記録を打ち立てました。
アメリカの心をつかみ爆発的な人気を得た一方で、「ホイットニーの音楽は黒人っぽくない。黒人アーティストの魂を売った」と、ホイットニーとその音楽を批判する人も少なからずいました。
出演したラジオ番組でそのことを知ったホイットニーは、「歌い方に黒人も白人もない」「私は歌うだけ。音楽には人種も国境もない」と言い、これからも自分らしく歌うことを宣言しました。
さらにホイットニーは女性実業家となり、「ニッピー社」という自分の会社を設立。両親、兄弟やその家族を養うボスとなりました。
映画『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』の感想と評価
世界を魅了した歌姫ホイットニー・ヒューストン。その輝かしい栄光の影に、娘として1人の女性として、そして人気歌手としての苦悩の日々がありました。
ホイットニーを心から愛していた父親のジョンと夫のボビーは、最初こそホイットニーに寄り添い守ろうとする良き父・良きパートナーでした。
しかし次第に彼らは本性をあらわし、父親や夫としての立場からホイットニーを抑えつけ、彼女の自由や尊厳を奪っていきます。
挙げ句の果てに、ジョンは病に倒れてもなおホイットニーの金に執着し、ボビーは結婚前も後も懲りずに浮気を繰り返し、裁判沙汰まで起こす始末。
それだけでも十分、ホイットニーを苦しめていました。なのにホイットニーが何度精神的に限界を迎えて「もうメディアに出たくない」「やめたい」と口にしても、彼女の恩恵を受けている家族やボビーは誰も「やめてもいいよ」とは言わず、続けなくちゃダメだと言ったのです。
家族や夫からの期待とプレッシャー、極度の緊張とストレスにより身も心もボロボロになってしまったホイットニー。ついに一時の安らぎを求めて麻薬に手を出してしまいました。
ホイットニーの美しい歌声に魅了される一方で、彼女も自分たちと同じ1人の人間であったことを痛感し、彼女の心情を思うと胸が苦しくなります。
もしあの時、ホイットニーが助けを求めた時に誰かが「やめていいよ」と言ってくれたら、シシー・ロビン・クライヴから差し伸べられた救いの手をホイットニーが受け取っていたなら、ホイットニーは死なずにすんだのかなとたらればの話をしたくなるほど、視聴者の誰もがホイットニーに感情移入しファンになることでしょう。
まとめ
エンドロール前、こんなテロップが流れました。
「ホイットニーが叩き出した、”7曲連続1位”は世界記録となり、黒人で唯一、アルバム3作が1000万枚以上売り上げた」
「ホイットニーは全米音楽アワードで最多部門を受賞。ポピュラー音楽に多大なる影響を与えた人物のうちの一人であるアメリカのシンガーソングライター、マイケル・ジャクソンの記録に並んだ」
「女性歌手の総受賞数では史上最多。この時代のホイットニーは、最高に魅力的で豊かな歌声の持ち主”ザ・ヴォイス”だった」と。
最後まで自分らしく歌うこと、不仲の両親とは違ってあたたかい家庭を築くという理想の家族像を追い求め続けたホイットニーの歌声やパフォーマンス、苦悩の日々を送る彼女の心情を完璧に演じきったナオミ・アッキーは本当に素晴らしい女優です。
ホイットニー・ヒューストンのファンはもちろん、彼女を知らない人でも、その歌声と人柄に魅了されることでしょう。
ジャンルも人種も関係なく、歌いたい曲を自分らしく歌うことに命を燃やし続けた人気歌手ホイットニー・ヒューストンの半生を描いた感動の伝記映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。