戦国時代を駆け抜けた織田信長と彼を支えた濃姫の誰も知らない物語
日本中が戦火に包まれた動乱の戦国時代。
裏切りや虐殺が日常であった戦国の世で、天下を統一し平和に導いた「戦国三英傑」の一人として「織田信長」の存在と偉業は現代にまで語り継がれています。
多くのエピソードが残る戦国武将でありながらも、妻の濃姫もまた人間性も含め謎に包まれており、創作物に登場する織田信長は製作者によるさまざまな解釈がなされて来ました。
今回はそんな織田信長と濃姫の出会いと死までに焦点を当てた映画『THE LEGEND & BUTTERFLY』(2023)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
CONTENTS
映画『THE LEGEND & BUTTERFLY』の作品情報
【公開】
2023年(日本映画)
【監督】
大友啓史
【脚本】
古沢良太
【キャスト】
木村拓哉、綾瀬はるか、宮沢氷魚、市川染五郎、斎藤工、北大路欣也、伊藤英明、中谷美紀
【作品概要】
大人気漫画を実写化し大ヒットを記録した映画「るろうに剣心」シリーズを手がけた、大友啓史が監督を務めた伝記映画。
日本のエンターテインメント界を牽引し続け、『検察側の罪人』(2018)や「マスカレード」シリーズで主演を務めた木村拓哉が織田信長を演じたことで話題となりました。
映画『THE LEGEND & BUTTERFLY』のあらすじとネタバレ
1549年、尾張の国を治める織田信秀は「マムシ」と呼ばれる美濃の斎藤道三と和平を結ぶため、嫡男の信長に斎藤道三の娘・濃姫との縁談を行わせます。
婚姻の日、礼儀に欠ける信長は妻となった濃姫に酌や肩を揉むことを命じますが、濃姫は毅然とした態度で断り、自身が織田家と婚姻を結んだのはあくまでも斎藤道三が尾張を乗っ取るためだと言い張ります。
怒る信長は濃姫を手打ちにしようとしますが、濃姫は信長よりも武芸に長けており、逆に信長を組み伏せてしまいました。
ふたりの関係が険悪なまま進んだある日、信長が鷹狩りへと向かう際に濃姫が同行し、獲物の大きさでふたりは競い合うことになります。手柄に焦る信長は足を踏み外し崖から落ちてしまいますが、駆けつけた濃姫が信長の腕を掴み彼の命を救いました。
崖上で美濃には無かった海を初めて見た濃姫は、いずれ海の向こうにある異国「南蛮」に行ってみたいと信長に気持ちを吐露。
1556年、斎藤道三は息子の斎藤義龍に謀反を起こされ長良川の戦いで討ち死にします。その知らせを聞いた濃姫は織田家に「人質」として惨めな扱いをされるくらいならばと自刃を試みますが、信長は彼女を止め「人質」ではなく「妻」であると言い聞かせました。
1560年、駿河一帯を治める今川義元の尾張への侵攻が始まり、織田家は混乱の渦中に陥ります。
濃姫は侍女の各務野から城を捨て落ち延びるようにと勧められていましたが、濃姫はひとり信長のもとを訪れ、あまりの戦力差に自身の命を諦める信長に喝を入れます。
濃姫はマムシならば勝つ見込みが少なくとも相手の急所を突くと言い、今川が狙う丸根砦や鷲津砦への救援を提案。信長は救援は今からでは間に合わないとその案を切り捨て、ふたりはさまざまな案を出し合います。
信長は濃姫の提案する今川の進軍路「桶狭間」での奇襲作戦を実行することを決め、濃姫は侍従の貞家に今回の作戦はあくまでも信長がひとりで決めたことにするように命令。
信長は桶狭間で今川を討ち取り、勢いのままに美濃へと攻め込み斎藤義龍を討ち取ると濃姫に所領を与えました。
美濃を岐阜と改めると信長は今川を倒す快進撃から室町幕府再興を目指す足利義昭に目をつけられ、共に上京し足利義昭を「将軍」に擁立することで大きな権力と利益を得る「道」を見つけます。
一方でその道は日本中の多くの大名を敵に回す「道」であり、逡巡する信長に濃姫はかつて斎藤道三が夢見た「道」の先を見せて欲しいと言い、信長は上京を決意。
上京を成し遂げた信長は濃姫を連れ京の街を歩き、濃姫は置物を購入し、信長は初めて食べた金平糖を購入しますが、スリに金平糖を奪われてしまい、追っていった先で濃姫が浮浪者に襲われたことで殺害してしまいます。
ふたりは襲い来る浮浪者を次々と殺害しその場から離れ小屋へと隠れると、濃姫は信長に惹かれその場でふたりは初めて結ばれました。
1570年、敵対する朝倉義景を攻める信長は、妹のお市の方を妻として差し出した浅井長政が裏切ったことで窮地に陥り、家臣の羽柴秀吉と明智光秀の奮闘で、何とか生き延びたものの多くの犠牲者を出しました。
同時期に濃姫は信長との子供を流産していましたが、信長は窮地に追い詰められており、濃姫に優しい言葉をかけることはしませんでした。
1571年、朝倉や浅井と手を組み織田家を攻撃する比叡山延暦寺に痺れを切らした信長は比叡山の焼き討ちを決意し、女子供を含めた皆殺しを家臣団に命令。
人のすることではないと家臣の丹羽に忠言を受けた信長は自身を「魔王」と名乗り、「魔王」である信長に惹かれた光秀は、女子供を含めた比叡山に立て篭る仏教徒を虐殺しました。
映画『THE LEGEND & BUTTERFLY』の感想と評価
「濃姫」を物語の中心に据えた新たな戦国物語
織田信長の妻として実在したとされる「帰蝶」こと濃姫の存在。
実は斎藤道三の娘であることや政略結婚の目的で織田信長を婚姻を結んだことははっきりとしているものの、濃姫はその後の信長の記録には殆ど登場することはなく、死のタイミングすら定かではありません。
そのため、戦国時代を題材とした作品では織田信長の命を狙う存在であったり、または織田信長に付き従う存在であったりとさまざまに自由な描かれ方がなされて来ました。
大友啓史が手がけた『THE LEGEND & BUTTERFLY』では、綾瀬はるかが演じる濃姫が織田信長の覇道を導き彼の人生に大きく関わる人物として物語を牽引しており、織田信長を描く作品の中でも珍しい切り口の映画となっていました。
想像を越える「信長の最期」
織田信長は天下統一を目前にした1582年に、配下の武将である明智光秀に謀反を起こされ死亡します。
「本能寺の変」と呼ばれるこの出来事は小学校の教科書にも載っているほどに有名であり、織田信長を知る誰もが知っている最期であると言えます。
本能寺での出来事は他の合戦に比べ詳細に記録に残っており、多くの映像作品で同じ流れの「本能寺の変」が描かれ、「織田信長の最期」と聞くだけで概ねの想像すらついてしまいます。
しかし、本作で描かれる「織田信長の最期」は直前と直後の演出と木村拓哉による演技が合わさり、想像を遥かに超える壮絶さとなっていました。
序盤の軽めなノリからは想像も出来ないほど悲愴なエンドロールに、きっと誰もがその胸を打たれること間違いなしです。
まとめ
戦国時代を駆け抜け、後の世に間違いなく強い影響を与えた戦国武将・織田信長。
彼の偉業は決して彼一人の力によるものではなく、多くの家臣や大名に影響を受けて成し遂げたものに違いありません。
その中で織田信長に影響を与えた人間のひとりに濃姫の存在があったとしても不思議ではなく、『THE LEGEND & BUTTERFLY』ではそんな新たな解釈を見せてくれる歴史ファンとしても見どころの多い映画でした。