極限状態に置かれた兵士たちの絆と生き様を描いた戦争ドラマ。
スティーヴン・スピルバーグが製作・監督を務めた、1998年製作のアメリカの戦争ドラマ映画『プライベート・ライアン』。
第二次世界大戦時の1944年。フランス・ノルマンディーに上陸した連合軍のミラー大尉は、中隊から7人の精鋭を選抜し、最前線で行方不明になった兵士1人の救出に向かいます。
ノルマンディー上陸作戦を題材に、極限状態に置かれた兵士たちの絆と、その生き様を描いた戦争ドラマ映画『プライベート・ライアン』のネタバレあらすじと作品情報をご紹介いたします。
CONTENTS
映画『プライベート・ライアン』の作品情報
【公開】
1998年(アメリカ映画)
【脚本】
ロバート・ロダット、フランク・ダラボン
【製作・監督】
スティーヴン・スピルバーグ
【キャスト】
トム・ハンクス、トム・サイズモア、エドワード・バーンズ、バリー・ペッパー、アダム・ゴールドバーグ、ヴィン・ディーゼル、ジョヴァンニ・リビシ、ジェレミー・デイヴィス、テッド・ダンソン、デニス・ファリナ、ポール・ジアマッティ、デイル・ダイ、マット・デイモン、ハリソン・ヤング、シェーン・ジョンソン、リーランド・オーサー、マクシミリアン・マーティーニ、ネイサン・フィリオン、ディラン・ブルーノ、アンドリュー・スコット、ジョン・シャリアン、ライアン・ハースト、ハーヴ・プレスネル、キャスリーン・バイロン、ロブ・フリーマン、ブライアン・クランストン、ロルフ・サクソン、ジョーグ・スタドラー、イアン・ポーター、ゲリー・セフトン、デヴィッド・ヴェーグ、ニック・ブルックス、デヴィッド・ウォール、アマンダ・ボクサー
【作品概要】
「ジュラシック・パーク」シリーズや『E.T.』(1982)、『シンドラーのリスト』(1994)などのスティーヴン・スピルバーグが製作・監督を務め、実話にインスパイアされた脚本を映画化した戦争ドラマ作品。アカデミー賞で11部門にノミネートされ、監督賞など5部門受賞した、今なお語り継がれる名作でもあります。
主演を務めるのは「トイ・ストーリー」シリーズや『ダ・ヴィンチ・コード』(2006)、『ハドソン川の奇跡』(2016)などに出演するトム・ハンクスです。
映画『プライベート・ライアン』のあらすじとネタバレ
ある老人が家族と孫を連れて、ノルマンディー米軍英霊墓地を訪れるところから、物語は始まります。
老人は数ある墓の中から、1人の墓を見つけると感極まり、その場に座り込んでしまいます。駆け寄ってきた家族や孫が心配する中、老人は戦時中のある出来事を思い出します。
時は遡り、第二次世界大戦中の1944年6月6日、オマハ・ビーチのDグリーン区。連合軍はドイツ占領下の北西ヨーロッパ、フランス・ノルマンディーへ侵攻する作戦「ノルマンディー上陸作戦」を実行。
上陸の第1波を担うアメリカ軍は、ノルマンディー上陸作戦を成功させたものの、ビーチではドイツ国防軍から激しい迎撃を受け、多くの死傷者を出してしまいます。
浅瀬は死んだ兵士たちと魚たちの血で赤く染まり、ビーチには手足や体の半身を爆撃で吹き飛ばされ、銃撃されて死んでしまった兵士たちの死体が所狭しと横たわっています。幾多の戦場を駆け抜けてきたアメリカ軍とて、その光景は一生忘れることがないであろう惨状でした。
そんな中、アメリカ陸軍参謀総長のジョージ・マーシャル将軍の元に、同時期にビーチで死んだある兵士たちの戦死報告が届きます。
それは、ライアン家の4兄弟のうち3人が、戦死したというものでした。ライアン家の長男ショーンはオマハ・ビーチで、次男のピーターはユタ・ビーチでそれぞれ戦死。三男のダニエルもまた太平洋戦争のニューギニアで命を落としていました。
残る末っ子で、第101空挺師団第506落下傘歩兵連隊第1大隊に所属する一等兵であるジェームズ・フランシス・ライアンは、ノルマンディーでパラシュート降下したものの、彼の師団は半島にバラまかれてしまい行方が分かっていません。
既に3通の訃報が届いているライアン家に、これ以上の訃報を届けるわけにはいかない。そう思ったマーシャルは、敵地で行方不明になったライアンの救出を命じます。
ノルマンディー上陸作戦から3日目。アメリカ軍は、制圧したドイツ国防軍の砦に前線指揮所を設け、ノルマンディー内の地区に兵士を派遣。敵に占領されたノルマンディーの制圧にかかりました。
アメリカ陸軍中佐であり、第2レンジャー大隊指揮官のウォルター・アンダーソンは、アメリカ陸軍大尉であり、第2レンジャー大隊C中隊指揮官を務めるジョン・H・ミラーにある任務を与えます。それは、マーシャルから直々に命令が下った「ライアンを救出し本国に帰還させる」という任務でした。
上官のアンダーソンから任務を受けたミラーは、7人の精鋭を選抜。空輸部隊がライアンたちを降下させたという村ヌーディルに向かいます。
選抜された7人の内、1人目はミラーの右腕的存在である、熟練の下士官マイケル・ホーバス一等軍曹。2人目は自動小銃手として、分隊の火力支援を担任するリチャード・ライベン一等兵。3人目は卓越した技術を持つ狙撃手のダニエル・ジャクソン二等兵。
4人目はミラーやホーバスと最も付き合いが長い衛生兵であるアーウィン・ウェイド四等技能兵。5人目は通訳として第29歩兵師団から引き抜いた、ドイツ語とフランス語が話せるティモシー・E・アパム五等技能兵。ミラーの部下で通訳を担当していたビーズリーとタルボットが戦死した代わりです。
6人目は、ヨンカーズ出身のユダヤ系の小銃手スタンリー・メリッシュ二等兵。7人目は、イタリア系の大柄な人物であり、シカゴ出身の小銃手エイドリアン・カパーゾ二等兵。
7人の精鋭のうち、アパム以外は6人全員、ミラーが率いる中隊のメンバーでした。しかしアパムは、今まで師団で地図作成と情報処理を担当しており、実戦経験がありませんでした。
ゲリラ豪雨が降り注ぐ中、ミラーたち救助隊はヌーディルに到着。村では、アメリカ陸軍大尉であり、第101空挺師団502空挺歩兵連隊に所属する指揮官でもあるフレッド・ハミルとその部隊が、ドイツ国防軍の2個連隊と交戦中でした。
ミラーたちはハミル率いる部隊と合流し、彼らと協力してドイツ国防軍の2個連隊と戦うことに。ドイツ兵がいる西側へ移動中、彼らは保護を求めるフランス人家族と遭遇します。
ミラーは安全が保障できないことを理由に、アパム経由で保護を断ろうとしますが、カパーゾが「フランス人家族の娘が、姪に似ているから」という理由で保護しようとします。
フラン人家族の保護で揉める一同。その時カパーゾが、鐘楼に隠れているドイツ兵に狙撃されてしまいます。信心深いカトリック教徒であるジャクソンは、神への祈りを捧げたのち、カパーゾを撃ったドイツ兵を射殺。
「神よ、あなたを信じます。私を恥から救い、勝利をお与えください」……しかし、胸を撃たれて重傷を負ったカパーゾは、そのまま息を引き取ってしまいました。
カパーゾが保護しようとしていた娘は、無事家族の元に戻ります。ミラーはカパーゾの死を受け、部下たちに彼らの保護をしないよう厳命。その後、思わぬハプニングで見つけたドイツ兵たちを、小銃を構えたライベンとハミル他3人の米兵が集中砲火を浴びせ、射殺しました。
戦闘が収束した後、ミラーはハミルの部隊からライアンを見つけ「お前の兄弟たちは戦死した。お前はこのまま我々と一緒に戻って、帰国する」と伝えます。しかしそのライアンは、小学生の弟たちがいるジェームズ・フレデリック・ライアン二等兵であり、捜しているライアンとは別人でした。
ミラーたちは、捜しているライアンと同じ部隊にいた兵士に情報を聞き出してから、出発前に村の教会で休息をとります。
教会で休息をとった際、ミラーはホーバスに、自身の部下が戦死してしまった時に、自身に言い聞かせていることがあると話します。
「俺は自分の部下が1人死ぬと、その10倍の数の部下を救うためだったと自分に言い聞かせ、割り切るようにしている」
「死んだカパーゾ10人分の価値が、ライアン1人にあるのだろうか?」
映画『プライベート・ライアン』の感想と評価
「地獄」を生き抜いてもなお続く戦争
第二次世界大戦、アメリカ軍は当時のヨーロッパ戦線の命運を分けた「ノルマンディー上陸作戦(正式作戦名:ネプチューン作戦)」を成功させましたが、それは多大なる犠牲を払ってもたらされた成功でもありました。
映画作中でも描かれた、戦死した兵士たちの死体と流血で溢れかえったビーチ。その光景はまるで、戦争が作り出す「地獄」そのものと言える惨状です。
ミラー率いる中隊が、ドイツ国防軍の砦を制圧したものの喜ぶに喜べず、大勢の味方の死に愕然とするしかなかったのも頷けます。
過酷な戦場を部下たちと共に戦い、生き抜いたミラーは心休まる暇もなく、7人の精鋭たちを連れて、ライアンの救出任務に旅立つことに。しかし「地獄」を生き残ったはずのその先でも、ミラーたちは再び戦争が作り出す残酷と無情に苦しめられることになるのです。
困難を極めたライアンの救出任務
ミラーたちに課せられた、敵地で行方不明になったライアン一家の四兄弟の末っ子ジェームズ・フランシス・ライアン一等兵の救出任務。それはたった1人の兵士のために、仲間が犠牲になっていくという、葛藤を余儀なくされる任務となっていきます。
フランス人家族の娘を保護しようとして、敵に狙撃されたカパーゾ。ドイツ国防軍の警備陣地を制圧する際、掩蔽壕にいたドイツ兵に撃たれてしまったウェイド。
そして最後の市街地戦にて、ミラーたち4人もまた戦死。物語の終盤まで観続けてきたミラーたちの仲間同士の強い絆を想うと、涙が止まらなくなります。
しかし作中では同時に、彼らが任務を全うし続けるのは、戦場にて敵兵であれど他者を傷つけ、時には死に至らしめてしまう自分たちが、それでも戦争の残酷さに抗う「人間」としての意志を全うするためでもあることが描かれるのです。
まとめ
敵地に行方不明になった1人の兵士を、ミラーたち8人の精鋭が救出に向かう姿を描いたアメリカの戦争ドラマ作品でした。
本作の見どころは、ライアンの救出任務と、戦争の「地獄」の光景の先にあった更なる戦い、そしてそれでも「人間」の意志を全うしようとする人々の想いが描かれた場面です。
ミラーたち救助隊の活躍のおかげで、ライアンは無事本国へ帰還。映画の序盤とラストにて、年老いたライアンは家族や孫を連れて、ノルマンディー米軍英霊墓地に眠るミラーの墓にやって来ます。
ミラーとライアンが最後に交わした会話と、年老いたライアンが戦死したミラーたちへ感謝を告げる場面では、ライアンが捧げた敬礼と共に、観ているこちらまで思わず敬礼を捧げたくなるほどの感動が訪れます。
死と残酷がはびこる戦場で、それでも「人間」として意志を貫こうとする人々に敬意を表したくなる戦争ドラマ映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。