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Entry 2019/04/24
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映画『最果てリストランテ』あらすじと感想。村井良大とジュンQの共演で「かけがえのない時間」を歩む姿を魅せる

  • Writer :
  • 加賀谷健

映画『最果てリストランテ』が2019年5月18日(土)より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開!

自分の人生の“最期”は、誰と、どんな瞬間を迎えるのか。これほど想像が膨らむ問いもありません。

松田圭太監督の映画『最果てリストランテ』は、現世では誰も体験することの出来ない“かけがえのない時間”についての作品です。

元々は朗読劇だった本作の味わい深さが、この度の映画化によってより豊かな広がりをみせています。

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映画『最果てリストランテ』の作品情報

(C)2018「最果てリストランテ」製作委員会

【公開】
2019年(日本映画)

【脚本・監督】
松田圭太

【キャスト】
ジュンQ、村井良大、真宮葉月、鈴木貴之、今野杏南、井澤勇貴、酒井萌衣、苅田昇、芳本美代子、山口いづみ、堀田眞三

【作品概要】

写真と朗読を組み合わせ、2018年の初演が話題となった朗読劇の映画化作品。

人生の最期に訪れる不思議なレストランにて、訪問客をもてなすボーイの岬役を『仮面ライダーディケイド』で注目を集めた村井良大、人々に料理を振る舞うシェフのハン役を人気K-POPグルーブ「MYNAME」のジュンQがそれぞれ好演。

監督は、朗読劇版の脚本も担当した「戦国BASARA」シリーズの松田圭太が務めました。

映画『最果てリストランテ』のあらすじ

(C)2018「最果てリストランテ」製作委員会

ここは、三途の川を渡る前に最期の晩餐をとることが出来るレストラン。

人生で一度しか訪れることが出来ず、客側から料理の注文をすることも出来ません。その代わり、亡くなっている人から一人だけ選んで、晩餐を共にすることが出来、その相手との思い出に合わせた一品が出てきます。

毎日現世からやってくる訪問客を、エレガントな出で立ちのボーイ岬(村井良大)が迎え、韓国人のハン(ジュンQ)が料理を振る舞います。

妻に先立たれた老紳士、通学途中の事故で命を落とし彷徨うようにやって来る少女、大切な妹を病気で失ったヤクザの男、一人娘を捜して駆け込んでくる母親、相方に先立たれたお笑い芸人…。

さまざまな過去を抱えた人々がこのレストランで最期のもてなしを受け、旅立っていきます。

しかし、それを見送る側の岬とハンからは過去の記憶が失われているのでした……。

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映画『最果てリストランテ』の感想と評価

(C)2018「最果てリストランテ」製作委員会

生と死が漂う場所

亡くなった人間が三途の川を渡る前に訪れるというこのレストランは、ちょうど“煉獄”に位置しているのでしょうか。

ここでは最期の晩餐をとることが出来、ある訪問客からも指摘されるように仏教もキリスト教もない交ぜになった不思議な場所です。

三途の川などと言うと、ダンテの『神曲』に登場する冥界の渡り守カローンのようなおどろおどろしい番人によって裁きが下るのかとも想像してしまいますが、リストランテの雰囲気に合う落ち着いた店内には、優しい人柄が滲み出たボーイとシェフがやって来る訪問客をもてなします。

(C)2018「最果てリストランテ」製作委員会

このレストランでは、客側から注文をすることは出来ませんが、晩餐のお伴として選んだ相手によって料理も自然と決まってくるのです。

一品の料理は高級であったり、ただ美味しいだけでは何の価値も生まれません。

ボーイの岬が言うようにそれを誰と食べるかが大切なのです。そして思い出の味によって、相手との記憶も鮮明に蘇り始めます。

訪問客たちにとって、このレストランは人生の最期を飾る、“かけがえのない瞬間”を過ごす場としてあるのです。

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誰もがもっている過去

(C)2018「最果てリストランテ」製作委員会

レストランへやって来る訪問客全員が、それぞれに時に悲しく、時に切ない過去を抱えています。

各エピソードごとには、毎回テーマを表したテロップが提示され、ひとりひとりの過去が丁寧に回想されます。

通常、回想場面は物語の進行を一時的に止め、説明的になりがちであるため、映画の手法としては細心の注意と工夫が必要になります。

本作の場合もやや説明的な印象を免れませんが、もともと朗読劇であったことで、俳優たちによる力のこもったナレーションが雰囲気を作り出し、回想場面は有効に機能しています。

興味深いのは、相手の名前や注文は瞬時に分かっても、自分のこととなると名前以外には何も知らず、過去を一切もたない岬とハンが、訪問客たちと過去を共有していくという点です。

彼らは記憶から呼び起こした過去を、過去のままこのレストランに淀ませることなく、“外”の世界、すなわち“未来”へとへ解放していきます。

人間にはしかるべき過去があって、現在を生き、未来へ向かって尚も生きています。

そうしたもの全てを次の未来へ向けてオープンにしていくことが、過去を置き去りして現世からやって来た、訪問客を待つ岬とハンに託された役割でもあります。

かけがえのない時間

(C)2018「最果てリストランテ」製作委員会

しかし考えてみると、訪問客たちが最期の晩餐を共にする相手に選べるのは、なぜ亡くなってしまった人たちだけなのでしょうか。

現世に生きる人を呼び出すことが物理的に不可能であるからか、あるいは訪問客の心の奥にしまわれた過去を呼び起こす必要があるからなのか。

しかしそれにもまして重要なのは、相手がどんなに大切な人であったとしても、その人の死を自分が身代わりになってあげることは決して出来ないという人間の宿命です。

一人の自立した個人として自分は特別であると考えるのが人間の性でしょうが、その心に反して実は“かけがえのある”存在でしかない自分たちは、死の瞬間において、はじめて人間らしく“かけがえのない”自分になることが出来ます。

それは言わば、死を生きているような感覚です。

では、岬とハンの手助けを受けながら、そうして新しい自分を最期に発見していく訪問客たちが扉の外にみる世界はどのようなものなのでしょうか。

(C)2018「最果てリストランテ」製作委員会

この映画の工夫として最も印象的なのは、各エピソードで最初は白黒だった画面が次第に色彩を取り戻していくことです。

いずれの登場人物たちも、自分の過去にとってかけがえのない相手と再会し、美味しい料理を食べながら、心温まるひと時を共有しているうちに画面は自然と活気付き、鮮やかな色彩を帯びていきます。

それがゆったりとした時間の流れを感じさせ、彼らの人生にとって最も大切な人生の瞬間が確実に形づくられていくのです。

人生の最期に臨んで本来的な生き方を全うしようとする訪問客たちの姿のどれもが、自分らしい、“かけがえのない”輝きに溢れています。

そんな自分を見つけられたからこそ、彼らは三途の川を渡る前に何ら物怖じすることなく、堂々と扉を出て外の世界へ向かって、自分自身を投げ出してゆけるのです。

まとめ

人間にとって最も根源的な生と死という深遠なテーマを流麗な朗読劇として仕上げた松田圭太監督は、明確な意図を持って本作の映像化に挑んでいます。

前世にいる間はもちろん三途の川を渡ることは出来ないし、思いがけず自分の元から去っていった大切な人にいくら会いたいと思っても会うことは出来ませんが、そこは人間の特権である想像力を駆使して、最期の世界がどのようなものであるかを想像してみることは許されているはずです。

そうした願望の受け皿として、映画『最果てリストランテ』はあります。

もし、不本意に自分が三途の川を渡ることになっても、現世での罪が恐るべき冥界の王によって裁かされることもなく、岬とハンのような心優しいイケメン二人に励まされるのなら、これ以上のはなむけはなく、言うことなしでしょう。

彼らの「頑張れ」という一言がこの映画を現世でみている観客の心に沁み入るようです。

ならば、まずは現世で頑張ってみよう。それこそが“かけがえのない人生”を歩むんでいくための心構えではないでしょうか。

映画『最果てリストランテ』は2019年5月18日(土)より、池袋シネマ・ロサほか全国で順次公開されます!

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