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映画『人魚伝説』ネタバレあらすじ感想評価と結末解説。復讐リベンジの“鬼と化す海女”のバイオレンスを白都真理が熱演す!

  • Writer :
  • 松平光冬

夫を殺された海女による、壮絶なリベンジ・バイオレンスドラマ

『太陽を盗んだ男』(1979)の長谷川和彦を中心とする日本の若手監督9人が1980年代初期に発足した、企画・制作者集団「ディレクターズ・カンパニー」(通称ディレカン)。

そのディレカンが本格劇映画第1弾として発表したのが、1984年公開の『人魚伝説』です。

夫を殺された海女の妻が、復讐を果たそうとする情念のドラマを、ネタバレありでレビューします。

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映画『人魚伝説』の作品情報

(C)1984ディレクターズカンパニー/ATG

【公開】
1984年(日本映画)

【英題】
The Revenge of the Mermaid

【監督】
池田敏春

【脚本】
西岡琢也

【プロデューサー】
根岸吉太郎、山本勉

【撮影】
前田米造

【音楽】
本多俊之

【キャスト】
白都真理、江藤潤、清水健太郎、清水宏、青木義朗、宮下順子、宮口精二

【作品概要】
原発建設をめぐる陰謀により夫を殺された妻が、復讐鬼と化す様を描くドラマ。

1982年発足の若手監督による映像制作会社「ディレクターズ・カンパニー」による、本格劇映画制作第1作で、宮谷一彦の同名劇画を『天使のはらわた 赤い淫画』(1981)の池田敏春が映像化しました。

池田の盟友で、ディレカンの共同設立者でもある監督の根岸吉太郎がプロデューサーを担当。

主要キャストは白都真理、江藤潤、清水健太郎、清水宏、宮下順子。

第6回ヨコハマ映画祭において、池田が監督賞、白都が主演女優賞にそれぞれ輝いています。

映画『人魚伝説』のあらすじとネタバレ

(C)1984ディレクターズカンパニー/ATG

漁師である夫の佐伯啓介と妻で海女のみぎわは、船で沖に出てはアワビ漁に精を出す日々を送っていました。

2人が住む港町では、巨大レジャーランド施設の建設が計画されており、それに対し憤る啓介は、スナックで不満をぶちまけます。

そんな泥酔状態の啓介を、友人でカメラマンの宮本祥平がみぎわの待つ自宅まで送り届けます。

祥平の父である輝正は建設会社『宮本土木』を経営する地元屈指の有力者で、件のレジャー施設建設にも深くかかわっていましたが、祥平はそんな父と距離を置いていました。

ある夜、一人で船で沖へ出ていた啓介は、やはり船で夜釣りをしていた男を見かけます。男は啓介同様に、レジャー施設建設に反対していた人物でした。

ところが突然、男の乗った船が爆発、大破してしまいます。

翌朝、啓介は事故の話をするも誰も取り合ってくれず、ニュースにもなりません。

男の死体が上がらないことに疑問を抱く啓介はみぎわと共に、誰もいない海に出て捜索することに。

船が爆発した辺りの海中を潜って調べていたみぎわは、槍で体を貫かれ沈んでいく啓介を目の当たりにします。

自らも水中銃で腕を負傷し、溺死寸前となるも、岩場に打ち上げられたことで意識を回復。

すぐさま警察に連絡するみぎわでしたが、そこで自分が啓介を殺した容疑者であると知り、祥平の手助けで渡鹿野島に逃げることに。

渡鹿野島には飲食店のほかに売春宿も密集した小さな歓楽街があり、祥平はスナックを経営する友人の夏子にみぎわを預けます。

身を隠す日々を送るみぎわは、寂しさから祥平を呼び寄せます。

部屋を訪れた祥平は、突如みぎわの首を絞めて半ば強引に身体を奪った後、自身が抱える葛藤を吐露するのでした。

祥平が去った後、みぎわは夏子から、近日中に祥平の父輝正ら関係者が島を訪れ、宴会を開くと聞かされます。

その宴会はレジャーランド建設業者による接待が目的で、島からも女性コンパニオンを集めると知り、みぎわも志願。

施設建設について話を聞こうと、宴会の席で相手を務めた輝正の部下の男を部屋に誘います。

男は、レジャーランドの計画は表向きで、真の目的は原発建設用地の買収だったこと、また原発誘致に反対していた男を殺害し、その現場を見た啓介も口封じで殺したことを語ります。

さらにみぎわを犯しながら、自分が祥平の差し金でみぎわを殺しに来た者だと明かし、襲いかかります。

しかしみぎわは抵抗の末に、男のナイフを奪ってメッタ刺しにして殺し、部屋を出ました。

逃亡したみぎわは輝正の邸宅に忍び込み、豪雨の中で彼をプールに引き込んで溺死させます。

後日、遺体が見つかぬまま、白装束姿で啓介の供養を行っていたみぎわは、祥平が率いる部下に捕えられ、漁の網にくるまれ崖から海に落とされてしまいます。

もがき苦しみながら、浮かんでいた啓介の死体に絡まっていたロープを掴み、なんとか脱出したみぎわ。

そして啓介を火葬した後、銛の先を鋭利に研いで改造して、身を清め、海辺に埋まっていた地蔵に大嵐が来ることを願掛けし、展望塔で開かれる原発竣工パーティに向かいます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『人魚伝説』のネタバレ・結末の記載がございます。本作をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)1984ディレクターズカンパニー/ATG

タクシーを脅して、パーティ会場入口に車ごと突入したみぎわは、手始めに受付をしていた祥平を銛で突き殺すと、原発を誘致した町会議員や一般参加者など、目についた人間を片っ端から殺していきます。

「ウチの人を殺した原発いうんはどこにおるんや?」、海女の白装束を血で赤く染まらせ銛を振り回すみぎわの姿に、恐れおののく者たち。

ついに機動隊が到着し、会場周辺を包囲。

「何人殺しても、悪い奴が次から次からへと出てきよる…」とつぶやき、みぎわは啓介を思い「あんたー!」と絶叫します。

すると突如として大嵐が吹き荒れ、機動隊はおろか死体の山が一掃されます。

嵐が止み、暗闇の静寂に包まれる中、みぎわは力尽きたかのように海に身を投じます。

やがて水面に顔を出すと、澄み切った晴天が広がり、海上では船に乗った啓介が笑顔で待っていました。

「あんた!しっかり引き上げてや!」、みぎわは喜び勇んで、アワビを採りに再び海深く潜っていきました。

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映画『人魚伝説』の感想と評価

(C)1984ディレクターズカンパニー/ATG

若き才能が集結したディレクターズ・カンパニーの本格始動作

1982年8月、映画監督の長谷川和彦の呼びかけにより、黒沢清、井筒和幸、相米慎二、高橋伴明、根岸吉太郎といった当時の新進気鋭のフィルムメーカーたちによって設立された映像制作会社「ディレクターズ・カンパニー」。

設立時の「マジメで面白くないより、フマジメで面白い映画を作り続けたい」という長谷川の豊富どおり、メジャー会社とは一線を画す新しい邦画を目指したディレカンが、本格的に劇場用映画として発表した最初の作品が、本作『人魚伝説』です。

監督を務めたのは、1981年ににっかつのロマンポルノ『天使のはらわた 赤い淫画』で注目されるも、その後に製作陣と衝突して同社を退社した池田敏春。

不遇の状態にあった池田と、にっかつ時代の同期だった根岸は共にディレカンに参加し、根岸は本作でプロデュースを買って出ています。

ディレカンの船出作にして、アート系映画を手がける「日本アート・シアター・ギルド(ATG)」との提携作、そして久々の劇映画の監督作ということで意気込んだ池田は、それまで溜めていた鬱屈をすべてぶつけることとなります。

エロス&バイオレンスで描く人魚の復讐譚

(C)1984ディレクターズカンパニー/ATG

池田は、1978年に『週刊漫画サンデー』で連載された宮谷一彦の同名劇画を、にっかつ時代に培ったエロス&バイオレンス描写を盛り込んで実写化。

主人公の海女みぎわ役の白都真理は、海中の素潜りやオールヌードでの濡れ場、全身に真っ赤な返り血を浴びてナイフを振り下ろす陰惨な殺人と、数々の体当たり演技を要求されました。

演技指導の厳しさを白都が後年に述懐すれば、プロデューサーの根岸も製作スケジュール調整に苦慮しすぎて白髪が一気に増えたと云われるなど、池田主導の撮影現場は困難を極めた様子。

そんな池田らしさがもっとも表れているのが、クライマックスでのパーティ会場での大殺戮でしょう。

ロングショットを多用し、「どうせキチガイや!」と絶叫したみぎわが次々とパーティ参加者を刺殺していくシーンは、正に鬼気迫るものがあります。

ほかにも、建設会社社長を溺死させるシーンでの水中に入ると無音になる恐怖演出や、中村征夫による海中撮影の美しさ、本多俊之が奏でる物悲しいサックスの劇伴など、印象深い演出は多々あります。

アイルランドの神話に登場する人魚は、姿を現すと嵐を起こすという力がありますが、みぎわも復讐を果たした後、大嵐を起こしてすべてを吹き飛ばし、海に還ります。

タイトル通り、みぎわは人魚として伝説になったのです。

まとめ

(C)1984ディレクターズカンパニー/ATG

2011年3月の東日本大震災直後、反原発を高らかに叫ぶ声が各地で上がった中、原発建設の反発を描いた映画の一本として本作が話題となりました。

しかしその当時はDVDソフトが入手困難だったため、アマゾンなどでは高値が付いていたものです。

震災から10年経った2021年現在ではブルーレイ&DVDも再版されていますし(特典映像の白都のインタビューは必見)、何よりもU-NEXTやAmazonプライム・ビデオなどのVODで“手軽に”鑑賞できます。

ただ残念ながら監督の池田は、震災発生前の2010年12月に、本作のロケ地だった伊勢志摩の海上で遺体となって発見されました。

死後に思わぬ形で注目を浴びた本作ですが、少なくとも彼が描きたかったのは、愛する者を失った人魚の情念と執念でしょう。

池田は自ら命を絶ったのではなく、理想とする人魚を追い求めて自ら海に潜っていった…そう思いたいです。

過激描写を含むので、内容的には“手軽に”観られる作品ではないですが、『人魚伝説』は、間違いなく池田敏春の情念と執念がこもった一本です。

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