映画『マイ・ダディ』は2021年9月23日(木・祝)より全国ロードショー!
「人生、愛があればうまくいくなんて誰が言った?」(宣伝パンフレットのコピーより)
愛する娘を救うべく、究極の選択に決断する父親の姿を描いた『マイ・ダディ』。
男手ひとつで娘を育ててきた牧師が、娘を病気から救うべく奮闘する姿を描いた本作は、映像クリエイター支援プログラムTSUTAYA CREATORS’ PROGRAM(TCP) で2016年に準グランプリに輝いた企画『ファインディング・ダディー(仮)』を映画化した作品です。
『さよならケーキとふしぎなランプ』(2014)『ちょき』(2016)などの金井純一が監督・脚本を担当、テレビドラマ脚本で評価の高い及川真実と共同で物語を構築しました。そして近年コミカルな演技で高い評価を得ているムロツヨシが主演を務めます。
映画『マイ・ダディ』の作品情報
【日本公開】
2021年(日本映画)
【監督・共同脚本】
金井純一
【脚本】
及川真実
【キャスト】
ムロツヨシ、中田乃愛、奈緒、毎熊克哉、臼田あさ美、徳井健太、永野宗典、光石研
【作品概要】
妻に先立たれ男手ひとつで一人娘を育ててきた牧師が、娘の病気発覚という事態に直面、彼女を救うべく奔走する姿を描きます。
『ファインディング・ダディー(仮)』を企画した金井純一が監督・脚本を担当、テレビドラマ『ST 赤と白の捜査ファイル』などの及川真実とともに物語を紡ぎました。
キャストにはドラマ『親バカ青春白書』、映画『新解釈・三國志』(2020)などのムロツヨシを中心に、『みをつくし料理帖』(2020)などの奈緒、映画『WE ARE LITTLE ZOMBIES』(2019)でデビューを飾った中田乃愛、映画『AI崩壊』(2020)、『サイレント・トーキョー』(2020)などの毎熊克哉など実力派の役者が名を連ねています。
映画『マイ・ダディ』のあらすじ
小さな教会の牧師・御堂一男(ムロツヨシ)。ガソリンスタンドのアルバイトをしながらの生活と厳しい毎日を過ごしている彼でしたが、8年前に妻を失くしながらも懸命に娘を育ててきました。
優しく誠実である一方でユーモラスでお人好しな彼は、教会に集まるさまざまな人たちから慕われ、中学生になり反抗期を迎えた娘も心根は素直な子に育ち、平穏な日常を送っていました。
しかしそんな中、一男は娘が病に侵されていることを知ります。一男の懸命な説得で一時病気は回復するも、その先には彼らにとって非常に過酷な試練が待ち構えていたのです……。
映画『マイ・ダディ』の感想と評価
この物語の起点となるのは主人公である一男の娘の病です。物語はこの障害をいかに克服していくかというところが大きなテーマへとつながっていきます。
ストレートに障害を乗り越えようと奮闘する人々を描いた作品としては『ロレンツォのオイル/命の詩』などがありますが、作品として意外に思い当たらないという人も多いのではないでしょうか。
つまり映画作品としてこの「ストレートに」という命題は意外に描くのが難しいのではないかと考えられます。
その一方で本作の物語はどちらかというと意外に「ストレート」ではなくひねりを利かせたものとしており、「こういった展開の方が、実は実際の場面に遭遇したときに発生する状態に近いのではないか」と考えさせられます。
本作では娘の難病に対峙する主人公が、娘を救うためにある一つの大きな決断を迫られます。それは金銭などの物理的、単純明快な壁ではなく、自身の精神状態に大きく影響し自身に大きなダメージを受ける恐れすらあるものです。
本作の展開は現実性を考えると少し極端な印象もありますが、「人を救う行為」は単に真っすぐな思いだけを貫くだけでは成し遂げられない、そんな現実にうごめくさまざまなケースを想起させます。
こうしてみると、壁を乗り越えるために「思いに沿って実直に突き進む」という意向に対して、近年ではそれに対し異議を唱えるかのように現実的な面を物語にからめるというが増える傾向があるとも見られます。
例えばかつてパニック映画などでは天才、障害が発生した際に、その解決に向けて人々が真っすぐに向き合っていく姿を描くというものが多く描かれてきました。
しかし近年では映画『シン・ゴジラ』や8月27日より公開される映画『白頭山大噴火』のように、障害への対処を行うに際して、それ自身にしがらみなどのさまざまな障害があり、その中で人々がどのように向き合っていくかを描くものも増えてきました。
こうした傾向は、今後さらにさまざまなジャンルの物語づくりの傾向として、いろいろな手法へと展開していくことも考えられます。
一方で一男の職業が「牧師」という設定も、この一筋縄ではいかない障壁との闘いの心理に大きな効果を示しています。
一男の決断は並々ならぬものですが、絶対的な信仰を要する「牧師」という職業は、その「娘を救うための」決断すら揺らがせている、と考えられるところでもあります。
はたして一男が下す究極の選択に対して、見る側としては「同じような状況に置かれたとき、自分ならどう決断するのか?」と、人それぞれの人生で必ず対面するであろう困難な選択をつい一男の物語と重ねてしまうに違いありません。
まとめ
近年役者として大きな評価を得ているムロツヨシとしては意外にも、本作は初主演作映画となりました。また物語はムロが演じる主人公・一男の心理の変化によって描かれています。
その意味で本作には多くの印象的な役者陣が名を連ねていますが、群像劇というよりも、ムロの一人芝居を見ているような錯覚すら覚えます。
従来のムロのキャラクターとしては、どちらかというとコメディー色の強いものが印象としてありますが、本作は一人の牧師、そして一人娘の父親という役柄を真摯に演じています。
コメディー性を期待される人にとっては物足りなさを感じられるかもしれませんが、逆にムロが持つ役者としての力量の高さを改めて知らされる作品ともいえます。
一男が見せる、どんなことがあっても冷静な「牧師」の顔、そして子を思う「父親」の顔、という二つの表情は、物語の序章ではどこか距離のある表情となっていますが、展開が進んでいくに従い徐々に距離を短くしていき、大きな感情の揺れを伴ってきます。
作中の人物の心理変化を探っていくことは役者にとって非常に重要な作業ですが、ムロの演技にはその展開ごとのバランス感覚の絶妙さがはっきりと感じ取られ、改めて彼が役者として高いスキルを持ったものであると評価できるでしょう。
映画『マイ・ダディ』は9月23日(木・祝)より全国ロードショー!