『台湾巨匠傑作選2024』は2024年7月20日(土)より新宿K’s cinemaほかにて全国順次公開!
『村と爆弾』はかつて日本の統治に置かれた台湾において、とあるハプニングをモチーフに不条理な生活を送っていた台湾の人々をユーモラスに描いたドラマです。
監督は台湾ニューシネマを代表する映画監督の一人であるワン・トン。本作は『バナナパラダイス』『無言の丘』と併せて、ワン監督が手掛けた「台湾近代史三部作」といわれており、本作はその一作目の作品であります。
本作は「台湾巨匠傑作選 2024」で上映される作品のひとつとして、デジタルリマスター版が2024年7月20日(土)~8月30日(金)の間、K’s cinema ほか全国で順次公開、日本では初公開となります。
映画『村と爆弾』の作品情報
【日本公開】
2024年(台湾映画)
【原題】
稻草人(英題:Strawman)
【監督】
ワン・トン
【出演】
チャン・ボーチョウ、ジョウ・シェンリー、リン・メイジャオ、ウェン・イン、ヤン・クイメイ、コー・ジュンション、チャン・チュエンファン、ウー・ビンナン、インインほか
【作品概要】
戦時下に、日本による植民地政策のもとにあった農民たちの日常を、田んぼに立つ案山子の視点より理不尽な境遇についてスポットを当て、コメディータッチで描いたストーリー。
ワン・トン監督が手掛けた「台湾近代史三部作」の第1作となります。
映画『村と爆弾』のあらすじ
日本統治時代末期、太平洋戦争下の台湾。農村で暮らしていた小作人兄弟のアファとコウヅエは、夫を戦争で亡くして精神を病んだ妹や、耳の遠い母親とともに貧しいながらも明るく毎日を送っていました。
ある日、彼らのもとへ日本から客人が訪れます。客人は兄弟らの土地の地主で、田畑を製糖会社に売り払うと彼らに告げます。
さらに徴用のためと、日本人たちは一家の唯一の財産である牛までも取り上げてしまいます。
途方に暮れた兄弟たち。そして翌日、村は米軍の空襲を受け、兄弟の畑に1発の不発弾が残されてしまいます。
日本人たちの通達により不発弾を届けると褒美がもらえると聞いた兄弟と村の巡査は、褒美目当てにその不発弾を、隣町の駐在所へ届ける旅路につきます……。
映画『村と爆弾』の感想と評価
本作は台湾ニューシネマ初期の時期に当たる1987年に発表されたもので、映像はどこか粗削りながらも焦点の絞り方が特徴的で、非常に印象深いテーマイメージを残しています。
戦時下における台湾の人々の日常。
戦争という非常事態、さらに日本の統治下という、不本意な状況での生活。その日常の中、彼らは地主の土地返却を納得し、牛まで連れていかれてしまいます。
挙げ句に、「落ちてきた爆弾の破片を駐在に届けると褒美がもらえる」という日本人の言葉を真に受け、駐在員とともに隣町まで爆弾を運ぶという危険な旅に出る兄弟。
山間の村で平穏に暮らしていた彼らは、恐らくこの事件がなければ、海辺の隣町まで出向くこともなかったでしょう。
現代で考えればすべてが不条理ともいえる状況を、どこか不満に思いながらも受け入れてしまう人々の姿は、この時代における台湾の立場の難しさを示しているようでもあります。
人々の表情や言葉はどこかユーモアの中に温かさを感じさせながらも、明らかに心に抱えたであろう苦悩をも感じさせます。
ワン・トン監督の「台湾近代史三部作」の中で第一作となった本作は、映像的にはまだ黎明期であったこともあり、どこか映像のポイントが絞りにくい見づらさのようなものも見えてきます。
しかしその中でも人々の芯の部分を映し出すべく懸命に表情をとらえようとする様子はうかがえ、本作に続くのちの作品につながる要素も感じられるものであります。
まとめ
エンディングに見られる物語の構成、展開には、ワン・トン監督の三部作において一貫して描かれているポイントのようなものが感じられます。
それは、希望のようなイメージにあります。
物語では結果的に人々の生活に大きな変化が現れることはなく、不遇の時代に置かれる現実はそのままであると言えます。
それでもエンディングに見られる、どこかほっこりするような空気感、人々の温かさを感じるような表情に絶望的な未来は感じられず、辛い日常を力強く生きていくような力も感じられるでしょう。
かすかに感じられるポジティブな導線は、シリーズを通してのものとも思われてくるものです。
『台湾巨匠傑作選2024』は2024年7月20日(土)より新宿K’s cinemaほかにて全国順次公開!