原節子がごく平凡な主婦の悩みを体現
映画『めし』は、林芙美子による長編小説を『浮雲』(1955)の成瀬巳喜男監督が映画化した作品です。

(C)1951 東宝
主演を『東京物語』(1953)の原節子が務めます。
淡々と続く日常を通し、平凡な幸せの大切さを映し出す人間ドラマです。共演は『愛染かつら』(1938)の上原謙、島崎雪子、杉村春子、杉葉子。
映画『めし』の作品情報
【公開】
1951年(日本映画)
【原作】
林芙美子
【監督】
成瀬巳喜男
【脚本】
田中澄江、井出俊郎
【キャスト】
上原謙、原節子、島崎雪子、進藤英太郎、瀧花久子、二本柳寛、杉村春子、杉葉子、小林桂樹、花井蘭子、風見章子、立花満枝、谷間小百合、中北千枝子、浦辺粂子、大泉滉、音羽久米子、田中春男、山村聰
【作品概要】
朝日新聞連載中絶筆となった林芙美子原作小説を、『浮雲』(1955)の成瀬巳喜男監督が映画化。後に『稲妻』『浮雲』『放浪記』と続く、林芙美子原作・成瀬巳喜男監督映画作品の第1作目にあたります。
大阪を舞台に、平凡なサラリーマン夫婦を描いたヒューマンドラマです。日々の結婚生活に疲れたヒロインが、さまざまな経験を通して本当の幸せの意味を考えるようになる様を描きます。
主人公夫婦に『愛染かつら』(1938)の上原謙と『東京物語』(1953)の原節子。島崎雪子、杉村春子、杉葉子らが共演します。
映画『めし』のあらすじとネタバレ

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大恋愛の末に結婚をした岡本初之輔と三千代は、大阪で慎ましい生活を送っています。
世間からは美男美女の幸せな家庭と思われていますが、5年が過ぎ、倦怠期を迎えたふたりはいつしかぶつかりあうことも増えていました。
そんなある日、初之輔の姪の里子が家出をして東京からやってきます。
家事に追われ、家計のやりくりに頭を悩ましている三千代は、奔放な性格の里子と初之輔が楽しそうに過ごす姿を見ていらだちを覚えるようになります。
映画『めし』の感想と評価

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本当の幸せを探して
倦怠期を迎えた夫婦の姿を温かな視線で描くヒューマンドラマです。大恋愛の末に結ばれた初之輔と三千代でしたが、三千代は毎日食事の支度と掃除洗濯に追われ、家計のやりくりに頭を悩ます日々に疲れていました。
自分の顔を見れば「めし」「腹減った」くらいしか言わなくなった夫に対して、いらいらは募るばかり。自分の存在価値がまるで「めし」にだけしかないように感じられ、やりきれない思いになっていきます。
「おいしい」「ありがとう」という言葉があればまったく事態は変わったことでしょう。出されたものを無言で食べ、食事が出てこないとせっつくというのでは、愛想を尽かされても仕方ありません。
その後、縁談が気に入らないという理由で突然転がり込んできた自由奔放な姪・里子と、楽しそうにしている夫を見て、三千代の我慢は限界に達します。
家計のやりくりに苦労しているというのに、姪に小遣いを渡すために会社から前借りする夫を見て、三千代は失望します。
母のもとに帰郷し、気絶したようにこんこんと眠り続ける三千代。彼女には確かに羽を休める必要があったのでしょう。
帰郷して三千代が再会した旧友は、夫を戦争で亡くして女手ひとつで幼い息子を育てていました。彼女が歯を食いしばって生きる姿が、三千代に大きな影響を与えます。
わがまま放題の里子の存在も、三千代の心を揺さぶります。夜遅くに三千代の東京の実家に突然やってきたずうずうしい里子を、厳しく叱る義弟。
彼の言葉は、自分に向けて放たれたように三千代の胸に突き刺さります。居候している自分と里子の間にたいした違いはないと、三千代はやっと気づくのです。
今の自分の居場所は夫のもとにしかないことを三千代は痛感します。
あるいは、未亡人のシングルマザーの友のように、必死で自分を養うための茨の道を見つけるしかないという現実を理解したのです。
初之輔は善人ですが、恐ろしく鈍感です。妻の寂しさを本当に理解して、自ら態度を改めてくれることはないでしょう。そうとわかっていても、三千代は夫と幸せを見つけて生きていこうと考えるようになります。
妹夫婦が力を合わせて店を営んで生きる姿を見たり、夫を亡くした旧友の辛さを目の当たりにしたことで、本当の幸せとは決してドラマチックなものではなく、日々の積み重ねにあることを理解したに違いありません。
原節子の圧倒的な美しさ

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原節子の圧倒的な美しさに見惚れる作品です。日本人離れした顔立ちとスタイルに改めて驚かされ、魅了されます。
夫役は二枚目俳優として知られる上原謙です。作中でも美男美女夫婦として世間からうらやまれている様子が描かれます。大恋愛の末に結ばれたという設定にも納得です。
そんな原節子が、小さな部屋で家事に追われる疲れた主婦を見事に演じています。家庭ですり切れていく女性の哀しみが、胸に迫ることでしょう。
しかし、スーツを着てすっくと立った途端、誰もが振り返る美女となります。
町の誰もが「美人の奥さん」と呼び、「お幸せそう」と言わずにはいられなくなるオーラに満ちているのです。
その美しい大きな瞳が、悲しみにそっと伏せられると、長い睫が映えます。憂いの表情にぐっと引きつけられた後、ふわっと浮かぶ笑顔から目が離せなくなります。原節子こそ真の銀幕のスターなのだと思わずにはいられません。
まとめ

(C)1951 東宝
ごく普通の主婦が悩みもがきながら、本当の幸せに向かって歩み出す姿を描く『めし』。
夫婦問題を描くと同時に、今の時代に通じる女性の生きづらさにもスポットを当てた作品です。
戦争で夫を亡くした女性、親が決めた縁談、女性が引き受けるべき家事労働、独身の肩身の狭さ。
この時代だからこその苦しみもありますが、今の時代でもやはり家事のほとんどは女性が担っていますし、女性の方が独身への風当たりは強いのではないでしょうか。当時より仕事を得やすくはなったものの、給与は男性より低いままです。
ヒロイン・三千代の、夫と幸せを見つけていきたいという生き方にエールを送りつつ、彼女が一歩外に出て広い世界を見て、自分の才を活かしながら生きてほしいと願わずにはいられません。



































