映画『平坦な戦場で』はカナザワ映画祭2023特集企画「期待の新人監督」にて、2023年9月10日(日)13:15〜に上映!
カナザワ映画祭2023の特集企画「期待の新人監督」にて、遠上恵未監督の映画『平坦な戦場で』が9月10日(日)に上映されます。
まだ発見されていない才能を発掘する、同映画祭の恒例企画「期待の新人監督」。応募作品153本の中から10作品が選ばれ、上映後には監督による舞台挨拶も予定しています。
ENBUゼミナール在学中に『遠上恵未(24)』でPFFアワード2020に入選した遠上監督の、初の長編監督作である『平坦な戦場で』。
初々しい高校生カップルがある日突然思いもかけない事態に遭遇し、新たな関係を築いていかざるを得なくなる姿を、繊細に描き出します。
【連載コラム】『カナザワ映画祭2023厳選特集』一覧はこちら
映画『平坦な戦場で』の作品情報
【公開】
2023年(日本映画)
【監督・脚本】
遠上恵未
【キャスト】
櫻井成美、野村陽介、玉りんど、佐倉萌、竹下かおり
【作品概要】
20歳の頃にたまたま観た『鬼龍院花子の生涯』(1982)の衝撃が忘れられず、映画制作を始めた遠上恵未監督が手がけた作品。
ENBUゼミナール在学中に手がけた『遠上恵未(24)』がPFFアワード2020に入選した遠上監督の初の長編監督作である本作は、ごく普通の高校生カップルが思わぬ形で性的搾取を受けたことから苦悩と向き合い、乗り越えていくさまを描き出します。
出演は櫻井成美、野村陽介。
映画『平坦な戦場で』のあらすじ
父とふたり暮らしの高校2年ののぶえは、村木と仲睦まじいカップルでした。写真が趣味の村木はのぶえを撮り、大事にアルバムに貼っています。
ある夜、村木は路上で泣いていた女性に出会いました。家まで送り届けてあげると、女性は最近死んだペットのうさぎのことを話してから泣き出し、「抱いてほしい」と村木に縋りつきます。
場の空気から断れなくなった村木は、金を受け取り女性を抱いてしまいました。
しかし、この経験がトラウマになった村木は学校を休むようになります。
のぶえは村木のいない日常に孤独を募らせていき……。
映画『平坦な戦場で』の感想と評価
高校生の恋人たちが恋と性に翻弄されるさまを繊細に描いた『平坦な戦場で』。無言で進むシーンがとても多く、ゆっくり過ぎていく時間を丁寧に撮った1作です。
冒頭、女子高生ののぶえが、ひとり朝食のシリアルを食べ始めるシーンから物語ははじまります。裕福そうな一軒家の美しいキッチンですが、あまりにきれい過ぎて生活感を感じさせません。やがて、彼女は父とふたり暮らしで、会話らしい会話もないまま過ごしていることがわかります。
ひとりでも手を合わせて「いただきます」を言って食べ始めるのぶえの姿からは、純粋な気立てのよさが伝わってきます。
のぶえは同じ高校に通う同級生の村木と付き合っており、仲睦まじく過ごしていました。村木の親も夜遅くまで働いており、ふたりとも親の存在感が薄く、きちんと守られていない子どもだという様子が感じ取れます。
のぶえと村木の孤独な魂は、自然にお互いを強く求めあっていました。
そんなある日、村木は母親と同じ年代の女性が路上で泣いているところに遭遇し、抱いてほしいという女性の懇願に同情心からこたえて金を受け取ってしまいます。その経験は彼の心に大きな傷を残し、のぶえを含む女性への恐怖心を呼び起こすこととなりました。
その後もさまざまな形で、若者が性を搾取される恐ろしい現実が丁寧に描かれます。心と尊厳を踏みにじられる怖さ。金で済ませようとする傲慢な大人に、性を搾取される悲しみと怒りに胸が引き絞られます。
それでも若すぎる主人公らは本当の意味で怖さをわかっておらず、あまりにも無防備な姿をさらし続けます。
のぶえの抱える孤独の深さが後半思わぬ形で強く現れ、予想外のストーリーへと導いていきます。どうぞ最後まで彼らの姿を見守ってください。
まとめ
初々しい高校生カップルが、思わぬ形で性的搾取を受けて傷つき、もがく姿を繊細に見つめた作品です。彼らはまさにタイトル通り、突然戦場に放り込まれたも同然だったといえるでしょう。
日常生活も実はサバイバルであり、誰もが生き延びるために闘い続けなければならないことが強く伝わってきます。
映画『平坦な戦場で』はカナザワ映画祭2023特集企画「期待の新人監督」にて、2023年9月10日(日)13:15〜に上映!
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