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Entry 2021/05/30
Update

映画『逆光』あらすじ感想と評価レビュー。尾道を舞台に須藤蓮×渡辺あやのタッグが描いた官能的な世界

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『逆光』は2021年7月17日(土)より広島・シネマ尾道でロードショー!

映画の街、広島・尾道にて、人気脚本家の渡辺あやと、才能あふれる新鋭監督・須藤蓮のタッグで作り上げられた映画『逆光』。

70年代の田舎町を舞台に、二人の青年の情愛を描いた官能的な物語。ドラマ、映画と幅広いフィールドで活躍する渡辺と、昨年『ワンダーウォール 劇場版』で主演を果たし、頭角を現した須藤というフレッシュなタッグで製作されました。また須藤は主演も兼任、監督・役者それぞれの立場で才能の高さを示しています。

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映画『逆光』の作品情報


(C) 2021 『逆光』FILM

【公開】
2021年(日本映画)

【共同企画・監督】
須藤蓮

【共同企画・脚本】
渡辺あや

【音楽】
大友良英

【キャスト】
須藤蓮、中崎敏、富山えり子、木越明

【作品概要】
真夏の尾道を舞台に二人の青年の情愛と二人を取り巻く様々な人間との関係を描いた物語。

映画『ジョゼと虎と魚たち』や『メゾン・ド・ヒミコ』やNHK連続テレビ小説「カーネーション」などの脚本を手掛けた脚本家の渡辺あやと、NHKドラマ『ワンダーウォール』で主演を務めた須藤蓮が共同企画し作り上げたオリジナル作品です。

またNHK連続テレビ小説『あまちゃん』や、2021年の『花束みたいな恋をした』などで音楽を手掛けた大友良英が本作でも音楽を担当しています。

須藤が監督とともに主演を担当。さらに「ワンダーウォール」で共演した中崎敏、実力派の富山えり子、オーディションにより選ばれた新鋭・木越明と、個性あふれる布陣がメインキャストを構成しています。

【須藤蓮監督プロフィール】
1996年生まれ、東京都出身。2017年秋より俳優として活動を開始。

2018年に1,500人の応募者によるオーディションで選出され、京都発地域ドラマ『ワンダーウォール』(2018)に主役として出演。2019年にはドラマ『JOKER×FACE』『なつぞら』『いだてん〜東京オリムピック噺〜』や映画『よこがお』『生理ちゃん』『いのちスケッチ』など多くの話題作に出演しています。

映画『逆光』のあらすじ


(C) 2021 『逆光』FILM

1970年代、真夏の尾道。22歳の晃(須藤蓮)は大学の先輩である吉岡(中崎敏)を連れてここに帰郷しました。

少年時代から都会に憧れ、田舎の生活にウンザリしていた晃は、久々に対面した幼馴染みの文江(富山えり子)の表情にもふさぎ込んだ様子を見せていました。

一方、漢気のある吉岡に好意を抱いていた晃は、ある日尾道でのひと時を飽きさせないようにと文江とその友人で変わり者のみーこ(木越明)を誘い、四人で出掛けていきました。

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映画『逆光』の感想と評価

同性の先輩に憧れる一人の青年の視点を中心に描かれた本作。一見、その物語にある大きなテーマはLGBT的な論点を有していると思われますが、実際に作品を見るとまた別のところにある本質がうかがえます。

都会の生活に憧れ、リベラルな性格の先輩・吉岡に憧れた主人公・晃は一方で田舎の生活に不満を覚え、幼馴染みの文江にすら嫌悪感を覚えます。その性格には、ある種現代の人たちの象徴的な要素も見えてきます。

一方、久々の帰郷に最初はウンザリするも、同郷の文江やみーこ、そして吉岡らと時を過ごしていくうちに、その最初に持っていた都会派指向の信念のようなものが揺らいでいきます。

この晃の心理変化は、常に新しい思想を求め続けるリベラルな方向に対する矛盾や葛藤のようなものも見えてきます。

物語はリベラル至上主義的な晃と、どちらかというと保守的な文江という二つの対極的な存在が、物語の大きなポイントを現しています。

一方、吉岡とみーこという存在は、どちらかというとそれぞれリベラル的、保守的な存在の象徴いう位置づけであり、二人が物語中において晃が想像もしなかった展開に進むことで、彼自身の思想に大きな影響を及ぼしていきます。

物語では三島由紀夫の文学に言及したエピソードもたびたび現れますが、ある意味三島の存在もこの物語ではリベラルの象徴の一つとして扱われ、都会の生活に青年たちを引き込む要素の一つとして非常に印象的に描いています。

そしてこれとは対照的に、作品が広島・尾道で作られた作品であるという点に大きな意味がうかがえます。

近年、移住者の受け入れに積極的であったりと、町の再生化の動きが全国的にも目立っているこの地である一方、近年のSDGsなどといった新しいものを取り入れていく思想、いわばリベラルな思想を何もかも正しいと盲信してしまうことへの危惧も考えさせられます。

こういったことは、作品が言及するテーマに対してより強いイメージを作り上げているともいえ、まさしく昨年広島・尾道を訪れて様々なその空気の本質に触れた須藤蓮監督、渡辺あやだからこそ描けた作品であり、単にどちらの思想が正しいという結論ではなく、こうした思想のぶつかり合いで見えてくる別の視点があることを説いているともいえるでしょう。

映画『逆光』試写会 舞台挨拶


提供:尾道フィルムラボ

3月24日、広島・尾道にて映画『逆光』の関係者試写会が実施され、脚本の渡辺あやと監督・主演を務めた須藤蓮が登壇し舞台挨拶を行いました。

映画『ワンダーウォール 劇場版』で主演を務めた須藤は昨年、街の映画館『シネマ尾道』で行われた映画イベントの登壇のため来場、その際にこの街の魅力にすっかり魅せられたといいます。

また映画監督を志していた須藤は、昨年自主映画を撮影する予定が、コロナ感染拡大の影響で延期、その後尾道で作品を作ることとなりました。そして『ワンダーウォール 劇場版』で脚本を担当した渡辺とともにこの街で映画を作ることとなりました。


提供:尾道フィルムラボ

たびたび広島に訪れている渡辺は、この街の映画文化に対する理解の深さ、クリエイティビティやエネルギーの高さを挙げ「そこにすごく勇気づけられてそもそもこの自主映画を大変なさなかに作りたいと思ったんです」と、製作に至った経緯を振り返ります。

一方で須藤は同じく尾道の魅力を挙げ、「東京中心」という現状の映画界の構図をとは違う方向を目指したと振り返りながら、配給宣伝会社から興行として反対されつつも、尾道の可能性に賭け本作の製作、そして尾道からの発信を敢行したとその経緯を回想します。

また渡辺はこの尾道からの発信を「多分『自然農法』みたいなもの。その土地の風土や土の力を信じる、そしてそこに作物を植える、ということだと思うんです」とコメント。

須藤も「低予算で作った映画が、街の魅力と共に広がり、『広島、尾道に、こんなにも可能性が広がっている』ということが、クリエイターの中で、共通認識として育っていかないだろうか、ということにも期待しているんです」と、本作をアピールしました。

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まとめ


提供:尾道フィルムラボ

この映画の見どころは、主人公を務めた須藤、そしてその幼馴染み・文江を務めた富山の表情にあります。今作で監督を務めながらも、非常に印象的なたたずまいで作品のイメージを強烈に表現しています。

特にクライマックスシーンにある文江とのシーンで見られる表情は、まさしく俳優としての存在感を強く覚えさせます。

どちらかというと全編で悶々とした晃の表情を見せている須藤が、このシーンではそれを一気に覆すほどの秀逸な表情を見せます。

この表現力は役者としての力量の高さを感じさせるとともに、物語全体を支配した感覚さえ覚えさせます。

一方、富山の役柄にはそれほどセリフもなく、大きなインパクトのある演技もありません。そんな中、どちらかというと「美人ではない」という役柄にありながらもふと「美しい」と思わせる表情を見せています。

これはもちろん撮影の構図にも大きな要因はありますが、キャスティングの的確さという点は言うまでもありません。

作品としては短いながら非常に繊細に展開する物語で、街並みの美しさと役者陣のバランスの良さも相まって非常に印象深い作品として仕上がっています。また様々な論点を想起させるところも大きなポイントであります。

映画『逆光』は2021年7月17日(土)より広島・シネマ尾道で先行ロードショー

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