硫黄島の戦いをアメリカ側と日本側の視点から描いた映画史上初の2部作第1弾。
クリント・イーストウッドが製作・監督を務めた、2006年製作のアメリカの戦争ドラマ映画『父親たちの星条旗』。
太平洋戦争最大の激戦だったといわれる「硫黄島の戦い」にて、死闘を繰り広げた硫黄島の摺鉢山の山頂に星条旗を打ち立てた6人の兵士たちの「その後」とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
星条旗を打ち立てた6人の兵士が写った写真の真実、そして戦場を生き残りアメリカ本土へ帰還した者たちのその後の人生を描いた戦争ドラマ映画『父親たちの星条旗』のネタバレあらすじと作品情報をご紹介いたします。
映画『父親たちの星条旗』の作品情報
【公開】
2006年(アメリカ映画)
【原題】
Flags of Our Fathers
【原作】
ジェームズ・ブラッドリー、ロン・パワーズ『硫黄島の星条旗』
【監督】
クリント・イーストウッド
【キャスト】
ライアン・フィリップ、ジェシー・ブラッドフォード、アダム・ビーチ、バリー・ペッパー、ジョン・ベンジャミン・ヒッキー、ジョン・スラッテリー、ポール・ウォーカー、ジェイミー・ベル、ニール・マクドノー、メラニー・リンスキー、ロバート・パトリック、トム・マッカーシー、クリス・バウアー、ジュディス・アイヴィ、スコット・リーヴス、スターク・サンズ、ジョセフ・クロス、ベンジャミン・ウォーカー、マイラ・ターリー、アレッサンドロ・マストロブーノ、ジョージ・グリザード、ハーヴ・プレスネル、ジョージ・ハーン、レン・キャリオー、クリストファー・カリー、ベス・グラント、コニー・レイ、アン・ダウド、メアリー・ベス・ペイル、デヴィッド・パトリック・ケリー、ジョン・ポリト、ネッド・アイゼンバーグ、ゴードン・クラップ、カーク・B・R・ウォーラー、トム・ヴェリカ、ジェイソン・グレイ=スタンフォード、ブライアン・キメット、デヴィッド・ホーンズビー
【作品概要】
『許されざる者』(1993)や『ミリオンダラー・ベイビー』(2005)、『ハドソン川の奇跡』(2016)、『運び屋』(2019)などのクリント・イーストウッドが監督を務めたアメリカの戦争ドラマ作品です。
ジェームズ・ブラッドリーとロン・パワーズによるノンフィクション本『硫黄島の星条旗』と、ジョー・ローゼンタールが撮影した報道写真をもとに、カナダの映画監督・脚本家・プロデューサーであるポール・ハギスらが脚色。イーストウッド率いるマルパソ・カンパニーと、スティーヴン・スピルバーグ監督が率いるドリームワークスらが製作した作品でもあります。
『ラストサマー』(1997)や『誘拐犯』(2000)、『デルタフォース』(2020)などに出演するライアン・フィリップが主演を務め、共演は『ロミオ&ジュリエット』(1997)や『猟奇的な彼女 in NY』(2008)のジェシー・ブラッドフォードです。
映画『父親たちの星条旗』のあらすじとネタバレ
アメリカ・ウィスコンシン州で葬儀屋を営む老人ジョン・“ドク”・ブラッドリーは、ある日突然倒れ、「あいつはどこだ、どこに行ったんだ?」とうわ言を口にします。
ドクの息子ジェームズ・ブラッドリーは、そんな父親を救急車に搬送させた後、父親のことを知るために、父親の戦友たちを訪ねてみることに。
まずは元米海兵隊の大尉デイヴ・セベランスから、ジェームズは父親が米海兵隊の衛生下士官として参加した、太平洋戦争最大の激闘だったといわれる「硫黄島の戦い」について、戦争当時の話を聞きました。
「戦場で撮られた劇的な写真は、時に戦争の勝敗すら決める」「あの日、撮られた写真の中のたった1枚が、歴史を変えた」
1944年12月。米海兵隊の衛生下士官ドクは、米海兵隊のフランクリン・スースリーとハーロン・ブロック、海兵隊の一等兵ラルフ・“イギー”・イグナトウスキーとアイラ・ヘイズらと共に、ハワイのタラワ基地にて訓練を受けていました。
タラワ基地での訓練後、米海兵隊の第28海兵連隊と第5海兵師団は、1万2000人の日本軍の兵士が死守している領地、硫黄島に侵攻するために出航。
セベランス大尉率いる第28海兵連隊と補給部隊は、硫黄島に上陸後、島全体を攻撃できる小さな丘、摺鉢山の山頂を陥落させることが与えられた任務でした。
硫黄島までの道中、マイク・ストランク軍曹が、セベランス大尉から第2小隊を率いる隊長に任命されました。同時にマイクは「海兵隊のレイニー・ギャグノンは前線に向いていない」と言うと、セベランスは自身の伝令係にすると言いました。
硫黄島へ上陸する日の前夜、兵士たちをリラックスさせようと、艦隊のラジオからジャズが流れますが、かえってそれが兵士たちの不安を煽ることになってしまいました。
翌日、1945年2月19日。3日間に及ぶ海兵隊の砲撃が始まり、ドクたちは、車両人員揚陸艇LCVPや水陸両用トラクターのLVTで、硫黄島の海岸に上陸。
思ったよりも海岸が静かだったため、イギーはドクに「防衛する日本軍の兵士たちは全滅したのでは?」と話していました。
しかし、それは日本軍が仕掛けた罠だったのです。イギーやドクたち第2小隊が前進した直後、掩蔽豪に待ち伏せしていた日本軍の機関銃が一斉射撃を開始。
さらに上陸間近の海兵隊の船にも、日本軍は掩蔽豪から重砲を発射しました。海兵隊もすぐさま機関銃や戦車などを使って迎撃しましたが、掩蔽豪に潜む敵の位置をすぐに把握できず、犠牲者が続出する一方でした。
機関銃と重砲が絶え間なく火を噴く海岸は、やがて虐殺された海兵隊員の死体で埋め尽くされていきます。そんな中、ドクとイギーは負傷者の救助に当たっていました。
それから2日後。海兵隊は、日本軍の重砲や機関銃での攻撃を受けながらも前進し、摺鉢山の陥落を目指します。ドクは激しい銃撃戦が続く中、戦場を駆け抜け、数名の海兵隊員の命を救いました。
2月23日。日本軍からの攻撃が落ち着いたところで、海兵隊の軍曹ハンク・ハンセンの小隊が摺鉢山の山頂に到着し、星条旗を掲げ、海岸や艦船から海兵隊の声援を受けます。しかしその直後、ハンクたちは山頂付近に登ってきていた、日本兵からの攻撃を受けるのです。
ハンクたちが無事敵を倒した後、海岸に海兵隊の長官ジェームズ・フォレスタルが到着。彼は摺鉢山の山頂に掲揚された星条旗を見て、「今後500年の海兵隊の象徴となり、将来いい値打ちになるあの星条旗を手に入れたい」と言いました。
その伝令を受けたセベランスは、レイニーとマイク率いる第2小隊に、別の星条旗と交換するべく、摺鉢山の山頂に向かわせます。
従軍カメラマンのジョー・ローゼンタールは、レイニー・ドク・マイク・フランクリン・ハーロン・アイラの6人が、2枚目の星条旗を掲揚した瞬間を撮影しました。
3月1日。第2小隊は塹壕で待ち伏せをしていた日本兵から、機関銃による攻撃を受けます。第2小隊が激しい銃撃戦を制したと思ったその瞬間、先頭にいたマイクは、海兵隊の砲弾に見舞われ、瀕死の状態に陥ってしまうのです。
すぐさまドクが治療に駆けつけるも、マイクは胸の傷が元となり、死んでしまいました。その後、ハンクが機関銃で胸を撃たれ戦死。その直後に、ハーロンも味方の誤射によって戦死してしまいました。さらにフランクリンが撃たれ、駆けつけたアイラの腕の中で息を引き取りました。
それから二晩経った後、ドクが負傷した海兵隊員を助けている間に、一緒にいたイギーが日本兵に拉致されてしまいます。
そしてその数日後、ドクは塹壕内で日本兵に拷問され、虐殺されたイギーの遺体を発見。これで8人いたドクたち第2小隊は、ドク・フランクリン・アイラの3人だけになってしまいました。
さらに数日後。摺鉢山で勝負がついたと思っていた海兵隊は、迫撃砲や機関銃の弾が四方八方から飛んでくるため、立ち往生してしまいます。
そんな中、ドクは首に被弾した仲間の衛生兵を助けようとしますが、懸命な治療もむなしく、彼は治療中に死亡。
その直後、ドクも砲撃によって右足を負傷。それでもドクは、衛生兵を呼ぶ海兵隊員の治療に当たりました。やがてドクは野戦病院に送られ、アイラたちと一緒に戦場を生き残りました。
映画『父親たちの星条旗』の感想と評価
硫黄島の摺鉢山の山頂に立てられた星条旗と、それを立てた6人の米海兵隊員たち。その姿を撮影したローゼンタールの写真が、アメリカ国内に希望をもたらしたのですが、写真に収められたドクたちの心情は複雑です。
レイニーが誤って、最初の旗を立てたハンクを6人目として挙げてしまったため、ハーロンの名前は新聞に載っていません。
しかも、ドクたちが山頂に立てた星条旗は、軍の上層部が最初に立てた旗を欲しがったため、急遽交換した2枚目の旗だったのです。
しかし、その真実をバド・ガーバーに伝えたものの、戦場に必要な資金調達ができなくなると説得され、やむを得ず3人の心に秘めておくしかありませんでした。
特にアイラとドクは、“真実”を伝えられないもどかしさと、硫黄島での地獄の戦いがフラッシュバックすることで、戦債ツアー中も戦後も苦しみ続けてしまいます。
アイラはハーロンの父親に真実を告げたのち、アルコール依存症に苦しみ屋外で死亡。レイニーは就職活動が上手くいかず、用務員として一生を終えてしまいます。ドクもまたイギーの笑顔を思い浮かべながら、息子に看取られこの世を去りました。
苦しみ続けた末に真実を伝えられたアイラの最期と、ずっと戦争のことも星条旗のことも、誰にも真実を話せなかったドクの最期は、観ているのが辛くなるほど悲しいものです。
まとめ
硫黄島の摺鉢山の山頂に、星条旗を立てた6人のアメリカ兵の「その後」を描いた、アメリカの戦争ドラマ作品でした。
本作の見どころは、太平洋戦争最大の激戦だったといわれる、米海兵隊と日本軍による硫黄島の戦いと、星条旗を立てた男たちの“真実”です。
ドクの戦友たちが語る硫黄島の戦いは、和やかに行われたタラワ基地での訓練とは打って変わり、激しい銃撃戦が繰り広げられ、凄惨な光景が広がっています。四方八方から飛んでくる機関銃や重砲の攻撃を掻い潜り、日米の兵士たちが命を懸けて戦う姿に胸が熱くなります。
いつどこで、何が起こるか分からない戦争の恐ろしさを、大戦後に「英雄」へと祭り上げられたドクたちの苦悩する姿から知ることが出来ます。
摺鉢山の山頂に立てられた星条旗と、それを立てた6人のアメリカ兵の姿を撮影したローゼンタールの写真。そこに秘められた真実が、のちに亡くなった戦友の代わりに英雄扱いされる、ドク・レイニー・アイラを苦しめることになるとは、予想外の展開でした。
仲間のために命懸けで戦った米海兵隊員たちの姿、そして彼らに待ち受けていた思いがけない苦しみと哀しみを描いた映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。