あれ荒んだ世紀末で、
心が壊れたら残るのは《MAD》だけ。
映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)の前日譚を描く『マッドマックス フュリオサ』。不屈の女戦士・フュリオサの《怒りの原点》が明かされます。
『怒りのデス・ロード』ではシャーリーズ・セロンが演じ、強烈なカリスマ性で人気を博したフュリオサを、本作では大注目の女優アニヤ・テイラー=ジョイが演じています。
水も緑も枯れ果てた地で、ならず者が蔓延る世界。人類は暴力で支配された、まさにこの世は世紀末。
「緑の地」でひっそりと暮らしていた幼きフュリオサは、ある日、バイカー軍団率いるディメンタス将軍に捕えられたことで、故郷や家族、すべてを奪われてしまいます。
成長するフュリオサは、ディメンタスと砦を牛耳るイモータン・ジョーとの覇権争いに巻き込まれ、狂気に溢れた世界を生き抜くことに……。
映画『マッドマックス フュリオサ』の作品情報
【日本公開】
2024年(アメリカ映画)
【監督】
ジョージ・ミラー
【キャスト】
アニヤ・テイラー=ジョイ、クリス・ヘムズワース、トム・バーク、アリーラ・ブラウン、チャーリー・フレイザー、ラッキー・ヒューム、ジョン・ハワード、リー・ペリー、ネイサン・ジョーンズ、ジョシュ・ヘルマン、アンガス・サンプソン、エルザ・パタキー
【作品概要】
ジョージ・ミラー監督によるノンストップカーアクション「マッドマックス」シリーズの第5作目。日本でも大ヒットを記録した『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)の前日譚として、女戦士フュリオサの若き日が描かれています。
フュリオサを演じるのは『ザ・メニュー』(2022)、Netflix『クイーンズ・ギャンビット』(2022)などで人気急上昇中のアニヤ・テイラー=ジョイ。
前作で演じたシャーリーズ・セロンの圧倒的カリスマ性を見せつけたフュリオサを、アニヤ・テイラー=ジョイが、本作ではどのように演じるのか注目です。
暴君・ディメンタス将軍役には『マイティーソー』(2011)をはじめ「アベンジャーズ」シリーズの人気キャラクターであるソーでお馴染みのクリス・ヘムズワース。ヒーローから一転、狂気の悪役ぶりを発揮しています。
映画『マッドマックス フュリオサ』のあらすじとネタバレ
地球温暖化、パンデミック、石油危機、核戦争……世界が崩壊してから、45年。人類は暴力に支配されていました。
そんな荒れ果てた砂漠の地にありながら、水と緑が残るオアシス「緑の地」。生きる知恵と戦闘力を兼ね備えた「鉄馬の女たち」ことババリーニたちの下、幼きフュリオサは育てられます。
ある日、果物を摘みに出かけたフュリオサは、緑の地を荒らすバイカー軍団を発見。懲らしめにバイクのオイル漏れを細工するも、見つかり捕らえられてしまいます。
フュリオサが連れ去られたと知った母メリー・ジャバサは、バイクで後を追います。「われらの地は語るな」という仲間との掟も守るべく、緑の地の場所を知る者を一掃していきます。
しかしあと少しの所で、フュリオサはバイカー軍団を率いる暴君・ディメンタス将軍へと引き渡されてしまいました。
その夜、砂嵐がバイカー軍団のキャンプを襲います。それに紛れて、ジャバサがフュリオサを助けにやってきました。
バイクで逃げる母娘をディメンタスが許すわけがありません。砂漠の岩場に追い込まれたジャバサはフュリオサに、ひとりで逃げるようにいい聞かせます。「星と共にあれ」。
母の想いに応えようとするフュリオサでしたが、磔にされた母の姿を目の当たりにし、泣き叫ぶことしかできませんでした。結局、ディメンタスの下で囚われの身となったフュリオサ。
ディメンタスはフュリオサを檻に入れて連れ歩き、「リトルD」と呼んで自身の亡き娘の代わりに手なづけようとしますが、フュリオサは固く口を閉ざし懐くことはありませんでした。
またディメンタスは、鉄壁の要塞「砦(シタデル)」を仕切るイモータン・ジョーとの覇権争いに乗り出します。ジョーは水や石油、血液や尿とあらゆる水分を牛耳り、民を力と宗教で支配し「ウォー・ボーイズ」と呼ばれる命知らずの軍団も束ねています。
そこでディメンタスたちは、手下の一部を全身白塗りのウォー・ボーイの姿へと変装させ、ジョーの第2の拠点「ガスタウン」に潜入。一気に制圧に成功しました。
ディメンタスはジョーに取引を持ちかけます。ジョーは条件を呑みガスタウンの統治権を与える代わりに、フュリオサを預かると言い出します。
フュリオサを手放すディメンタス。ジョーの元では、女性は子どもを産むための道具でしかありません。フュリオサの身にも危険が迫ります。密かに髪を切りカツラを被り、逃げる準備を進めるフュリオサにチャンスがやってきます。
ジョーの息子リクタスが言い寄って来る隙をつき、橋から身を投げるフュリオサ。それは飛び降りたフリでした。リクタスは自身のミスを隠すため、フュリオサを探すことはありませんでした。
そして、生き残ったフュリオサは、坊主頭でウォー・ボーイに潜伏。メカの修理の腕を見込まれ、ドッグマンとして出世していくのでした。
映画『マッドマックス フュリオサ』の感想と評価
自由を求め革命をおこす女戦士フュリオサが、世界中を熱狂させたMAD映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)から、9年。
囚われの身だった女性たちを引き連れ、改造大型タンクトレーラー「ウォー・タンク」を乗りこなし、砂漠を爆走するフュリオサのかっこ良さ。フュリオサを演じたシャーリーズ・セロンの凛々しい坊主姿に衝撃を憶えたものです。
『マッドマックス フュリオサ』では、そんなカリスマ性を放つフュリオサの幼少期からイモータン・ジョーのもと、護衛隊長にのし上がるまでの15年間が描かれています。
なぜフュリオサは片腕だったのか。なぜ、必死に故郷に帰ろうとしていたのか。フュリオサの不屈の精神がうまれた根源には、壮絶な人生がありました。
フュリオサの故郷は、枯れ果てた世界の中で貴重なオアシス「緑の地」。「鉄馬の女たち」ことババリーニが、その場所を守り暮らしていました。
攫われたフュリオサを助けるため犠牲となった母。敵であるディメンタスを恨みながらも、彼によって育てられます。腕に故郷への道しるべ、星の位置を刻み、母との約束である故郷への帰還を誓うのでした。
それからがまた凄い。ディメンタスとイモータン・ジョーとの覇権争いにまきこまれ、今度は「子産み女」としてジョーの要塞シタデルへ。逃亡したとみせかけて髪を切って姿を変え、ウォー・ボーイの中でも改造車を扱う大隊長にまで出世します。
そこで出会ってしまうのが、最強の男ジャック。なんと淡い恋の予感。フュリオサを故郷に帰そうと命懸けで戦う姿は、母ジャバサと重なります。
MADだらけの世界で、忘れかけていた人の優しさに触れるフュリオサ。彼女の諦めない不屈の精神の源は、ジャックとの愛にあったのかもしれません。
多くのことを語らず冷静沈着なフュリオサですが、彼女の愛情深さが伺えるシーンがあります。幼少期、捕えられたフュリオサを助けにきた母が「自分を置いて逃げろ」と言ったにも限らず、たまらず戻ってしまうフュリオサ。
それは成長し、ジャックが捕まってしまった時もそうでした。結局は、助けることができなかった後悔で、苦しむことになります。
そして、物語は『怒りのデス・ロード』へと続くのです。故郷を求めて走るも、希望の先に待っていた絶望。新たな相棒、マックスとの出会い。ジョーとの決戦。もう一度前作を観たくなるはずです。
そんな主人公フュリオサを演じたのは、アニヤ・テイラー=ジョイ。前作のシャーリーズ・セロンの印象が強かっただけに期待も高まります。
アニヤ・テイラー=ジョイの大きな目が、口ほどにモノを言っていました。マッチョな前作と比べると華奢な感じはありましたが、戦闘の儀式である、坊主に黒塗り姿も似合っていて、新たなフュリオサを堪能できました。
また、「マッドマックス」シリーズの見どころと言えば、イカレタマシンで、狂った者たちによる、ぶっ飛んだアクションシーンです。車やバイクに詳しくない人でも、血がタギルこと間違いなしです。
中でも、最強の車「ウォー・タンク」のビジュアルのかっこ良さ。ギラギラと光沢された外装に、後方になにやらでっかいドリルが設置され、側面にはミサイルも搭載。
車の上には、命知らずのウォー・ボーイズたちが、日焼けすることなく元気に守っています。こんなに、スキンヘッドの白塗り隊にテンション爆上りするなんて!「V8ポーズ」も健在です。
グライダーで攻撃してくる敵や、火炎放射器で迫ってくる敵と戦いながら、砂埃を巻き上げ走り続けるウォー・タンクは、まるで暴走機関車のよう。怒涛の15分越えノンストップカーアクションは必見です。
まとめ
「マッドマックス」シリーズ、不屈の女戦士フュリオサの誕生の物語『マッドマックス フュリオサ』を紹介しました。
荒れ果てた狂気だらけの世界で、悲惨な経験をしながらも、人間の心を失わず、走り続ける戦いの女神。
「私のこと覚えてる?」
いやいや、忘れられる訳がない。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)につながる演出も見逃せません。ぜひ、両方合わせて観てほしい作品です。