Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2024/01/12
Update

『チャロの囀り』あらすじ感想と評価解説。卯ノ原圭吾×東宮綾音主演作は孤独な魂が溢れ落ちた“恋人たちの切ない寓話”

  • Writer :
  • 谷川裕美子

映画『チャロの囀り』は2024年1月20日(土)~26日(金)渋谷ユーロスペースにて劇場公開!

数々のMVや音楽映像・CMなどを手がけてきた末吉ノブ監督による劇場長編デビュー作『チャロの囀り』が、2024年1月20日(土)~26日(金)渋谷ユーロスペースにて劇場公開されます。

記憶と言葉をなくした孤独な男と、現実に翻弄されながらも真っ直ぐに生きたい女の出会いが紡ぐ寓話的な物語です。

数多くのインディーズ映画に出演する卯ノ原圭吾と、ドラマ『東京彼女』に主演した新進俳優・東宮綾音がW主演を務めます。

世の中から決して消えることのない格差と偏見の中で、恋人たちが自分たちの生き方を懸命に模索する本作の魅力をご紹介します。

映画『チャロの囀り』の作品情報

【日本公開】
2024年(日本映画)

【監督・脚本・編集】
末吉ノブ

【主題歌】
LiSA『BEAUTIFUL WORLD』

【キャスト】
卯ノ原圭吾、東宮綾音、芽衣子、米元信太郎、立仙愛理、仲野温、宇佐美彩乃、渋江譲二、木村直樹、松本響、アビルゲン、千藤あずさ、白水帆幹

【作品概要】
LiSA、西野カナ、PENGUIN RESEARCHなどの数々のミュージックビデオやCMを手がけてきた末吉ノブ監督の劇場長編デビュー作。

1980〜90年代の洋画へのオマージュをふんだんに盛り込み、監督自身が普段から信念にしている「人を想うこと」をテーマに脚本を執筆。北九州の抒情的な風景も美しい作品です。また主題歌は、監督が「『チャロ』の脚本を書いた時点で、すぐにこの曲の歌詞が頭に浮かんだ」というLiSA『BEAUTIFUL WORLD』。

記憶と言葉をなくした男・チャロ役の卯ノ原圭吾は、『3653の旅』(2022)『ボクらのホームパーティ』(2022)といった話題の作品が立て続けに公開される注目の俳優。本作の演技が認められ、海外の複数の映画祭では主演男優賞にも輝きました。

ヒロイン役の東宮綾音は、監督たってのオファーで出演が決定した若手実力派俳優。理想と現実の狭間で揺れる中で、戸惑いながらもチャロのひたむきな姿に引かれていく美華を新鮮に演じます。

映画『チャロの囀り』のあらすじ

夜は牛乳配達、昼は大学の清掃員で働くチャロ。5年前の事故で記憶と言葉を無くし、今は浮浪者のたつおとともに平和に静かに生きています。

美華は山の手の住宅地にある大学へ通っています。富裕層の友だちに囲まれ満ち足りた大学生活を送っているように見えますが、実は夜は借金のためスナックでバイトし、姉のように慕う童話作家・エルの家に入り浸っていました。

普段から、大学の友だちの価値観と自分の価値観の差に戸惑い劣等感を抱く美華を、エルは「住む世界が違う」と諭します。

ある深夜、スナックの閉店後に帰ってきた美華の元へ闇金が返済に迫ってきました。その一部始終を、牛乳配達中のチャロが目撃します。

慌てて美華はチャロに固く口止めしますが、言葉が通じません。しかし、彼の一生懸命何かを伝えようとする姿に、美華は好感を持つようになりました。

そして、ある事件をきっかけに二人は急接近します。

チャロと美華の平和な時間が流れるかに見えましたが、ある人物の登場により、エル、たつお、学校の友だちをも巻き込んで思わぬ事態となっていき……。

映画『チャロの囀り』の感想と評価

孤独すぎるふたりの男女の魂が、格差や偏見を越えて自然に引き寄せ合っていく姿を綴る作品です。

5年前に記憶も言語も失ってしまったチャロは、牛乳配達と大学清掃の仕事をかけ持ちでしながらひっそりと暮らしていました。

一方、女子大生の美華は借金を返済するために夜のバイトをしています。しかし、裕福な友人たちの前では真実を隠し、彼らとの間にある格差に苦しんでいました。

現実に疲れ果てた美華は、純粋すぎるチャロにどうしようもなく魅かれていきます。しかし、当然周囲からは奇異の目で見られてしまいます。

それでも多くの壁を飛び越えようとする美華の強い思いや、美華を大切に思うエルの深い愛情は、観る者の心を温めてくれます。真実を見ぬく目を持つエルの言葉には驚かされるに違いありません。

美華が裕福な人間との間に感じる溝。そして美華とチャロの間に横たわる深い溝。人間と人間を隔てる格差や偏見とはいったい何なのかについて、末吉監督はひるまずに迫っていきます

チャロと美華の関係はどんな着地を見せるのでしょうか。どうぞ最後まで見守ってください。

まとめ

記憶と言葉をなくしてしまった男と、裕福な女子大生のふりをする借金苦のヒロインの苦い愛の物語『チャロの囀り』

現代社会に存在する人間のあいだの格差、持たざる者への偏見などが厳しい視線で描かれます。

しかし、その一方で純粋な愛情が確かに存在することを教えられ、心が温かく満たされる一作です。

映画『チャロの囀り』は2024年1月20日(土)~26日(金)渋谷ユーロスペースにて劇場公開です。



関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『トキワ荘の青春』ネタバレあらすじと結末の感想解説。有名漫画家になるために“神様手塚”の住むアパートに集った「豊島区の伝説的聖地」

聖地“トキワ荘”で伝説となった有名漫画家達の青春時代を描く! 映画『トキワ荘の青春』は豊島区に実在したアパート「トキワ荘」を舞台に、漫画の神様手塚治虫を筆頭とする、日本の“漫画”に市民権を与えた多くの …

ヒューマンドラマ映画

映画ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール|あらすじネタバレと感想。ラスト結末も

刹那的な青春時代と淡い恋、そこにはいつも音楽がある。 今回取り上げるのは、2014年にイギリス映画で公開された『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』です。 可愛いファッションと耳に残る心地よい音楽、そして胸を …

ヒューマンドラマ映画

【映画ネタバレ】フラッグ・デイ|あらすじ感想評価と結末ラスト解説。実話でディラン・ペンは父ショーン・ペンと“アメリカの過去と現在”を演じる

愛していた父が犯罪者だった…… “実の父娘”が父娘の物語を演じる! ジャーナリストのジェニファー・ヴォーゲルが2005年に発表した回顧録を元に、ショーン・ペンが映画化した『フラッグ・デイ 父を想う日』 …

ヒューマンドラマ映画

映画『はるヲうるひと』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。タイトルの意味がラストで清々しい人間ドラマを佐藤二朗が描く

閉塞感の溢れる島を舞台に「明日を生きる為の希望」を得る、人々の群像劇。 日本のどこかに存在する架空の島を舞台に、壮絶な過去を背負った兄妹と、その周囲の人達の人間ドラマを描いた映画『はるヲうるひと』。 …

ヒューマンドラマ映画

映画『泳ぎすぎた夜』感想と評価。子役こがわたからは“雪の王子様”

映画『泳ぎすぎた夜』は、2018年4月14日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。 日仏の若手監督の共同監督による文化や国籍を超えた作品は、雪で覆われた山間にある小さな町でおきた、 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学