映画『THE CAVE サッカー少年救出までの18日間』は2020年11月13日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー!
ある事故で洞窟に閉じ込められた少年たちと、彼らを救うべく世界から集まった人たちの奮闘を描いた『THE CAVE サッカー少年救出までの18日間』。
本作はタイとアイルランドのハーフであるトム・ウォーラー監督が、2018年に実際にタイで起きた事故をもとにその緊張感あふれる事件現場の模様を映像化。
キャストにはアイルランド人の洞窟ダイバー、ジム・ウォーニーをはじめ、実際の現場で救助に当たったダイバーたちが本人役で登場、現場の光景とともにリアルな人々の心情を描いています。
CONTENTS
映画『THE CAVE サッカー少年救出までの18日間』の作品情報
【日本公開】
2020年(タイ・アイルランド合作映画)
【英題】
THE CAVE(原題: นางนอน (Nang Non))
【監督・脚本】
トム・ウォーラー
【キャスト】
ジム・ウォーニー、エクワット・ニラトウォラパンヤー、ジュンパー・センプロム、ノパドル・ニヨムカ、エリク・ブラウン、タン・シャオロン、マギー=アーパー・パーウィライ
【作品概要】
2018年にタイの洞窟で発生した、あるサッカー少年たちの遭難事故と困難を極めた救出の模様を描いたサバイバルドラマ。
チームメイトの誕生日を祝うため洞窟を訪れていたサッカーチームの少年たちとコーチが、豪雨による増水より洞窟内に取り残される事故が発生。地元住民や世界中から集まった洞窟ダイバーらが懸命の救助に挑みます。
『ニンジャ・アベンジャーズ』(2013)などの製作を担当したトム・ウォーラーが監督を務めました。またキャストには、事件の現場で実際に救助に参加したダイバーたちが本人役としてドラマに出演しています。
映画『THE CAVE サッカー少年救出までの18日間』のあらすじ
2018年、タイのチェンライ。サッカーチームのコーチに連れられて、選手の子どもたちはチームメイトの誕生日を祝うために立ち入り禁止の看板があるにもかかわらず山の奥にある洞窟を訪れます。
ところが豪雨により増水。彼らは洞窟の奥深くに閉じ込められます。
幸い自然公園の警備員に彼らが洞窟を訪れたことを見つけられ、遭難して9日後に発見されます。ところが彼らから洞窟の出口までの経路には数か所が水没するなどいくつもの難所に阻まれていました。
少しでも水を減らせればと排水ポンプを設置するもなしのつぶて、かといって救出のための洞窟ダイブは非常に危険を伴う難しいものであり容易に実行を決断できず、脱出は困難を極めていました。
そして彼らの無事を村人たちが懸命に祈る中、世界中から洞窟潜水士が集められ、決死の救出活動が始まりました。
映画『THE CAVE サッカー少年救出までの18日間』の感想と評価
大きな目標達成の困難さと、使命達成の尊さを描く
本作のモデルとなった事件はここ日本でも国際的なニュースとして伝えられました。本作ではその全容を描いています。
物語は事件発生後、現場に大臣まで現れるという大騒ぎに発展。そしてこの窮地を乗り切るには洞窟の中を潜る洞窟ダイバーが必要で、海外からのヘルプが必要と助けを求め、さらに水を汲みだすためのポンプを提供するというポンプ会社の社長までが現場に訪れることになります。
しかし少年たちの命を救うべくやってきた彼らの前には、その現場に直面する以前にさまざまな壁が立ちはだかります。
その壁はあまりにも不条理に見えますが、後に救出作業の中で発生する一つの大きな事件は見るものに大きな衝撃を与え、その不条理感を思わぬ方向に曲げていきます。
実際の事件現場での成り行きと、本作のドラマ展開は必ずしも一致しているわけではないかもしれませんが、非常に筋道の立て方に流れがうまく作られており、その人々の複雑な心境に共感しやすい構成でもあります。
単にこの事件があった事実を伝えていこうとするのであれば、事件の当事者と現地を取材しドキュメンタリーという形でおさめることもできたでしょう。
むしろ事実を伝えるということであれば、その方が後々には貴重な資料ともなります。
しかし本作では、世界的に注目を浴びたこの事件を物語として映像化することで、クローズアップすべき点があることを、描いているのです。
もちろん子どもたちの命を守る、救い出すという行為自体も大切なことではありますが、このドラマからはその「人助け」すら今の世界ではさまざまな壁が伴うものだと思えたりと、現世界の複雑な関係事情への提言を行っているようにも見えます。
だからこその、人間の命を尊重する、救うという行為の尊さを改めて実感できるものとなっています。
この構図からは、そんな広範囲にわたった関係の中で困難に立ち向かうことの難しさ、そしてそれでもその対極にある目的、使命を達成することの素晴らしさが実感できるでしょう。
ドキュメンタリー性を狙ったキャスティング
またこのドラマでは撮影を行ったロケーションの臨場感も大きな見どころである一方、キャスティングに大きな特徴があります。
劇中に登場する海外からの助っ人ダイバーたちは、みな実際の事件当時に救助にあたった当事者が、本人役でそのまま登場しています。
また本人でなくとも、事件にかかわったポンプ製造会社創始者のノパドル・ニヨムカ、少年たちを心配する村の女性役を務めたジュンパー・センプロム(タイのベテラン歌手。本作が俳優デビュー)らが、本職の俳優陣に交じって印象的な姿を見せています。
劇中では彼らの姿がある種ドキュメンタリー的な見え方をしているを新鮮に見せ、同時に非常に劇中の事件を真に迫ったものとして見せてきます。
多くの当事者、役者以外のキャストを起用するという手法は、エンタテインメント性を追求した作品ではまず見られないことですが、だからこそ逆にタイという国でできた作品という印象を合わせて、物語の主題を強くアピールするものとなっています。
まとめ
例えば本作の事件とは全く違うものではありますが、来年1月に核兵器禁止条約が発行されることが近日決定しました。しかし日本の政府は「日本政府として条約には参加しない」と明言しています。
その理由としては、現在の米中関係など現在世界様々に存在する、対立による緊張した状態の影響からそう判断せざるを得なかったのかもしれません。
しかし日本は世界唯一の被爆国であり、反核を主導して世界に訴えてきた場所にもかかわらず、反核に対してこのように積極的な行動をとれないことは非常にもどかしいものです。
さまざまな事情で常識的に「正しい」と思えることすら跳ね返されてしまうこのような状況は、本作の冒頭で描かれる献身的な人々と、国が持つ建て前論との対立にダブって見えます。
本作の物語は、こうした種々の問題に対して「達成すべき目標を忘れてはならない」と、さまざまな軋轢に悩む人たちを導いてくれる一つの指針やきっかけにもなるかもしれません。
映画『THE CAVE サッカー少年救出までの18日間』は2020年11月13日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開されます!