Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2021/06/08
Update

映画『ブラックバード 家族が家族であるうちに』あらすじ感想とレビュー評価。ケイト・ウィンスレット×スーザン・サランドンが演じる母娘から安楽死問題を問う

  • Writer :
  • 山田あゆみ

映画『ブラックバード 家族が家族であるうちに』は2021年6月11日(金)からTOHOシネマズシャンテほか、全国順次ロードショー

映画『ブラックバード 家族が家族であるうちに』は、デンマーク映画『サイレントハート』をハリウッドリメイクした作品です。

オスカー女優である、スーザン・サランドン、ケイト・ウィンスレットによる初共演が注目を集めていますが、サム・ニールやミア・ワシコウスカなど脇を豪華俳優陣が固めています。

母の安楽死を見送るために集まった家族たちが、彼女の決断を通して互いを見つめ直す物語となっています。

映画『ブラックバード 家族が家族であるうちに』の作品情報


(C)2019 BLACK BIRD PRODUCTIONS, INC ALL RIGHTS RESERVED

【公開】
2021年

【監督】
ロジャー・ミッチェル

【キャスト】
スーザン・サランドン、ケイト・ウィンスレット、ミア・ワシコウスカ、リンゼイ・ダンカン、サム・ニール、レイン・ウィルソン、ベックス・テイラー=クラウス、アンソン・ブーン

【作品情報】
監督は『ノッティングヒルの恋人』(1999)、『ウィークエンドはパリで』(2013)のロジャー・ミッチェルです。
ビレ・アウグスト監督によるデンマーク映画『サイレント・ハート』(2014)を、その脚本家クリスチャン・トープが自ら脚色しています。

病を患う母のリリー役は、カルトクラシックの名作『ロッキー・ホラー・ショー』(1975)で注目を集め、『テルマ&ルイーズ』(1991)、『ロレンツォのオイル/命の詩』(1992)などでアカデミー賞主演女優賞に輝いた名女優、スーザン・サランドンが務めています。

もう1人オスカー女優としては、スーザン・サランドンと初共演になるケイト・ウィンスレットが娘のジェイニファー役を務めています。『タイタニック』(1997)や『愛を読むひと』(2008)、『アンモナイトの目覚め』(2021)など数々の映画に出演している言わずと知れた演技派女優です。

もうひとりの娘アンナ役に、ミア・ワシコウスカがキャスティングされています。ティム・バートン監督の『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)にアリス役として抜擢されてから「ピアッシング』(2018)などに出演している注目の若手女優の一人です。

夫のポール役は、『ジュラシック・パーク』でお馴染みのサム・ニールが務め、円熟した演技を見せています。

また、家族以外の役柄として登場したクリスはベックス・テイラー=クラウスが務めています。自身のジェンダーをノンバイナリーだと公表し、LGBTQ+の団体などで活動をしています。Netflixの『ダンプリン』やTVシリーズの「THE KILLING」のシーズン3などに出演して注目を集めました。

映画『ブラックバード 家族が家族であるうちに』のあらすじ

(C)2019 BLACK BIRD PRODUCTIONS, INC ALL RIGHTS RESERVED

病気を抱え、歩行が少しづつ難しくなり、手にも麻痺を感じるようになったリリー(スーザン・サランドン)は夫のポール(サム・ニール)と2人で暮らしていました。

医者である夫と話し合い、自ら安楽死をすることに決めたリリーは、2人の娘と親友のリズ(リンゼイ・ダンカン)を家へと呼び寄せます。

長女のジェニファー(ケイト・ウィンスレット)は夫のマイケル(レイン・ウィルソン)と息子のジョナサン(アンソン・ブーン)を連れています。

次女のアンナ(ミア・ワシコウスカ)は恋人のクリス(ベックス・テイラー=クラウス)を連れてやってきました。

マイペースで家族に心配をかけがちなアンナに対して、以前から不満を持っていたジェニファーは衝突し、アンナが連れてきた恋人に対しても暴言を吐いてしまいます。

思春期のジョナサンは両親に対して心を閉ざしていて、父子の関係も良好とは言えませんでした。

それぞれに葛藤がある中、リリーの安楽死の時は近づきます。そんな時、家族の思いもよらぬ秘密が明らかになり、ジェニファーとアンナは母の安楽死を止めようと動きはじめます。

映画『 ブラックバード 家族が家族であるうちに』感想と評価

(C)2019 BLACK BIRD PRODUCTIONS, INC ALL RIGHTS RESERVED

人生の終わりを自分で決める強さ

本作は「死」がテーマですが、本質は「どう生きるか」ということを描いています。

病気によって自由を奪われるくらいなら、愛する者たちと幸せなときを過ごして人生の終わりを自分で決めたいというのは確かに正論です。

ですが、少し自分勝手な印象も受けます。残される人の悲しみはどうなるのか、と考えずにはいられません。

しかし、「どう生きるのか」というのは自分が決めるべきことで、誰のためでもなく自分の幸せを優先していいはずなのです。

「終活映画」と呼ばれる映画は昨今よく目にしますが、本作はとても凛としたリリーの強さが印象的な作品だと言えるでしょう。

自分の心の整理ができているリリーは、残される家族が自分の死後も前を向いて生きていってほしいという思いを込めて、全員で集まる場を準備したのでしょう。

夫のポールは彼女の決断を支持してはいるものの、隠れて悲痛な表情を浮かべていました。リリーの意思を決して否定せず受け入れたのは、深い愛があってのことなのだと伝わってきます。

ポールがひとりで悲しみに耐えるシーンや、ほかにももちろん涙を誘うシーンはありましたが、本作は「死」を避けられない悲劇ではなく、選択肢の中の人生の終着点として位置付けているように感じられます。

なので、絶望感ではなく穏やかな感動に包まれるのでしょう。

いつか来る両親との別れや、自分自身の最期についてもふと考えてしまうような映画となっています。

残される者たちの新たな人生のはじまり

(C)2019 BLACK BIRD PRODUCTIONS, INC ALL RIGHTS RESERVED

リリーのもとに集まった家族たちのそれぞれの思いが揺れ動き、物語がラストに向かうにつれて次第に秘密が明らかになっていく様子が丁寧に描かれています。

夫婦のあり方、姉妹関係の修復、親と子どもの関係、そして未来への夢。97分の間になんとも奥深く、細やかに人間模様が描かれているところが見どころだと言えます。

特に、はじめからギスギスしていたジェニファーとアンナの関係が少しづつ露見していく部分からは、血が繋がっていても必ずしも上手くいくわけではない、というリアルな家族関係を感じさせます。

そして、家族以外の登場人物が大きな鍵を握っていると言えるでしょう。

まず、アンナが付き合ったり別れたりを繰り返していたクリスです。彼女は、自由奔放そうに見えてアンナのことをよく理解しています。

ジェニファーとアンナの関係を取り持つのに重要な役割を果たしていました。

そして、リリーの昔からの親友であるリズ。家族ではないリズがこの局面に家族の中にいるのは、はじめ違和感がありましたが、リリーと思い出を語るところから、昔から家族全員と仲が良かったことが伺えます。

回想シーンはありませんが、若いころの2人が旅行に行ってはしゃぐ姿が目に浮かぶような会話がありました。

リリー役のスーザン・サランドンは勿論のこと、リズ役のリンゼイ・ダンカンの味わい深い演技は見事です。

まとめ

(C)2019 BLACK BIRD PRODUCTIONS, INC ALL RIGHTS RESERVED

安楽死という重いテーマながら、別れの悲しみだけではなく幸せとは何かと考えさせられる作品となっています。

悲しみの涙が溢れてきますが、映画を観終わるころには不思議と心が穏やかになることでしょう。

舞台となる家族が住む海辺の邸宅がとても洗練されたデザインなので、その部分も楽しんでみてはいいかがでしょうか。

『ブラックバード 家族が家族であるうちに』は2021年6月11日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国順次公開


関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『ロダン カミーユと永遠のアトリエ』あらすじ感想評価と美術的考察の比較解説。歴史的アーティストの真実をジャック・ドワイヨン監督が描く

弟子入りを熱望した女性彫刻家カミーユ・クローデルと師匠オーギュスト・ロダンの関係を解く 2017年11月に没後100年を迎える“近代彫刻の祖”オーギュスト・ロダン。映画『ロダン カミーユと永遠のアトリ …

ヒューマンドラマ映画

映画『あの日のオルガン』あらすじネタバレ感想とラスト結末評価。実話に挑んだ平松恵美子は山田洋次の秘蔵っ子で松竹2人目の女性監督

映画『あの日のオルガン』は、2019年2月22日(金)より全国ロードショー! 東京も安全ではなくなった1944年に、実際に行われた保育園の疎開。 その難題に挑んだ保母たちの闘いを、朝の連続テレビ小説の …

ヒューマンドラマ映画

映画『旅のおわり世界のはじまり』ネタバレ感想とあらすじ。前田敦子歌唱三部作の続行を黒沢清監督に切に願う!

雄大なシルクロードの風景の中で、私の心は迷子になった。 黒沢清が、『Seventh Code』(2013)、『散歩する侵略者』(2017)でもタッグを組んだ前田敦子を主演に迎え、一ヶ月に渡るウズベキス …

ヒューマンドラマ映画

映画『月と雷』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も【初音映莉子×高良健吾の代表作】

直木賞作家・角田光代の小説『月と雷』が映画化され、監督を『海を感じる時』の安藤尋監督が務めたヒューマンドラマとして公開されました。 主演には初音映莉子、高良健吾を向かえ、田舎町で起こる「普通ではない」 …

ヒューマンドラマ映画

ネタバレ映画『流浪の月』あらすじ感想評価とラスト結末の考察解説。更紗/広瀬すずと文/松坂桃李が流れ着く“型の生きづらさ”への問い

かつて「誘拐犯」と「被害女児」として扱われた 〈許されない〉ふたりの物語。 2020年の本屋大賞を受賞した凪良ゆうのベストセラー小説を原作に、『怒り』(2016)の李相日が脚本・監督を務めた映画『流浪 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学