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Entry 2019/02/09
Update

映画『ファーストマン』ネタバレ感想と評価。結末でニールと妻ジャネットが下した決断とは

  • Writer :
  • もりのちこ

アポロ11号で、人類が初めて月面に降り立ってから50年。

人類初の月面着陸を成功させたファースト・マンこそ、アポロ11号の船長「ニール・アームストロング」です。

宇宙飛行士ニール・アームストロングの、月面に降り立つまでの道のりを描いた映画『ファースト・マン』

危険なミッションに立ち向かう男の苦悩と、それを支える家族の心情。多くの犠牲を払ってもなお、彼らを宇宙へ駆り立てたものは何か。

たどり着いた先で彼らが手にしたものは何だったのでしょうか。映画『ファースト・マン』を紹介します。

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映画『ファースト・マン』の作品情報


(C)Universal Pictures
【公開】
2019年(アメリカ)

【原作】
ジェームズ・R・ハンセン「ファーストマン」

【監督】
デイミアン・チャゼル

【キャスト】
ライアン・ゴズリング、クレア・フォイ、ジェイソン・クラーク、カイル・チャンドラー、コリー・ストール、キアラン・ハインズ、パトリック・フュジット、ルーカス・ハース、イーサン・エンブリー、シェー・ウィガム、パブロ・シュレイバー、クリストファー・アボット、スカイラー・バイブル、コリー・マイケル・スミス、オリビア・ハミルトン、クリス・スワンバーグ

【作品概要】
人類で初めて月面に降り立ったアポロ11号の船長、ニール・アームストロングの月までの道のりを描いた映画『ファースト・マン』

原作のジェームズ・R・ハンセン「ファーストマン」を映画化したのは、『セッション』『ラ・ラ・ランド』とアカデミー賞受賞で評価を確立させたデイミアン・チェゼル監督。

主役のニール・アームストロングを演じる、ライアン・ゴズリングとは『ラ・ラ・ランド』に続き再タッグとなりました。


映画『ファースト・マン』のあらすじとネタバレ


(C)Universal Pictures
轟音とともに激しく揺れる機内。パイロットの目線から見える景色は空も地上も判らないほどブレ、三半規管が悲鳴をあげます。

とうとう大気圏、突破。さっきまでの揺れが嘘のように止み、静寂が訪れます。線を引いたような暗闇が現れます。

ニール・アームストロングは大学卒業後、空軍にて新型機の試験飛行パイロットとして働いていました。

テスト中の新型機はコントロールを失ったまま高度を上げ、大気圏に突入してしまいます。ニールは何とか下降させ、無事着陸することが出来ました。

どこか自暴自棄なニールに、周りも掛ける声もありませんでした。

ニールには、妻、息子、娘の家族がいました。娘のカレンには悪性腫瘍があり、X線療法に苦しんでいました。

小さいながらも懸命に治療を受けるカレンの姿に、胸を痛めるニールは、仕事にもどこか集中できません。

家族の願いも空しく、カレンは亡くなってしまいます。

行き場のない悲しみに暮れるニールは、仕事へと逃げ込むように、NASAのジェミニ計画の宇宙飛行士に応募します。

(C)Universal Pictures
「新たな出発、冒険ね」と、背中を押す妻ジャネットもまた、拭えない死の匂いに怯えていました。

NASAに選ばれたニールは、有人宇宙センターで宇宙飛行士の訓練をスタートさせます。

1961年の「マーキュリー計画」で有人宇宙飛行に成功した、時のアメリカ大統領ケネディは、10年以内に人類を月に送るという「アポロ計画」を掲げます。

当時の宇宙技術では、宇宙船が重すぎたため母船と小型船に分け2機を同時に打ち上げ、宇宙空間でドッキングするという手法が用いられました。その訓練が「ジェミニ計画」でした。

宇宙飛行士として、過酷な訓練に耐える日々。身体能力はもちろん、専門的な知識、忍耐力や順応性、そして仲間とのコミュニケーション、宇宙飛行士は多くのスキルを求められます。

近所に住む同じ宇宙飛行士エド・ホワイトとは家族ぐるみの付き合いです。家族や仲間たちと過ごす穏やかな時間は、かけがえのないものでした。

1965年、ニールはいつものように仲間たちとエドの家で過ごしていました。そこにソ連の宇宙開発のニュースが飛び込んできます。

ソ連のウォスホート2号が、宇宙飛行士が宇宙で船外活動を行う「EVA」を成功させたというニュースでした。

当時、アメリカとソ連は、国のプライドをかけ宇宙開発で競い合っており、ニールにとっても悔しい知らせとなりました。

そんな政治的な力も加わり、ニールたち宇宙飛行士の負担は相当なものでした。まったなしで進められる計画にプレッシャーの日々。

事態は悲劇へと向かっていました。

ニールとは、同じ民間人からの宇宙飛行士として仲良くしていたエリオット・シーが、訓練機の事故で亡くなります。

常に死と隣り合わせの仕事。家族も仲間も覚悟はしているつもりです。しかし現実は耐えられない悲しみが襲うばかりです。

エリオットの葬儀の日。亡くなった娘カレンの姿を見るニール。この世とあの世の境目が曖昧になる恐怖にかられます。

計画は多くの犠牲を払い進んで行きます。ニールは、ジェミニ8号の船長を命じられました。

いよいよ打ち上げの日。コップピットはまるで死刑台のよう。閉じ込められた窓から見える空に、鳥が1羽横切ります。カウントダウンです。

ギシギシ機体が音を上げ、激しい揺れと轟音が響きます。ジェミニ8号は無事宇宙へと舞い上がりました。

任務の目的機とのドッキングに挑むニール。一瞬成功したかに見えたドッキングでしたが、その後機体が回転しだします。

過度な回転に耐え兼ね、ドッキングを解くも止まらず。ニールたちは気絶寸前に陥ります。

何とかニールの冷静な対処で帰還することが出来ました。

しかし、度重なる失敗にNASAは人命を危険にさらし多大な税金を無駄にしている、と世間の批判が強まります。命は助かったものの沈むニールに、妻ジャネットは懸命に寄り添います。

ジェミニ8号の生還はアポロ計画の大きな前進に繋がりました。そして記念すべき「アポロ1号」の船長にエドが選ばれました。ニールも心から祝福します。

月へと近づくに連れ、アポロ計画最大の悲劇が迫っていました。

以下、『ファースト・マン』ネタバレ・結末の記載がございます。『ファースト・マン』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)Universal Pictures

エドと乗組員2人は、アポロ1号の最終テストを行っていました。通信の不備に冗談を言い合う船員たち。「ここで繋がらなかったら、月からの通信は無理だな」

突然、コックピットに火花が散ります。その火は瞬く間に広がり、密封空間で爆発を起こしました。

3人の宇宙飛行士の命が失われました。原因究明のため現場は40分も放置され、3人は助け出されることはありませんでした。

民衆の宇宙開発に対する批判は高まるばかりです。貧困問題、人種差別、人権問題が深刻化する世の中にあって宇宙開発は多額な費用のムダ使いとされました。

加速するバッシングに家族たちも被害を受けます。結果を出さなければと追い詰められるニールは、狂ったように仕事にのめり込み、家族を顧みる余裕もありません。

離れていく家族との心の距離。ニールは孤独でした。

1969年、アポロ11号の打上が決定します。史上初の月面着陸に期待が高まる中、船長はニール・アームストロングに決まりました。

打上の前日、ニールは家族と向き合うことが出来ず逃げていました。妻のジャネットに「どうか子ども達に今回の任務のこと、戻らない可能性があるということを話して」と懇願されます。

父親を亡くした家族の苦しみを間近で見てきたジャネットだからこそ、父親として最後にちゃんと子供たちと向き合って欲しかったのです。

1969年7月16日、アポロ11号、打上当日。

乗組員は船長のニール・アームストロング。月面着陸船操縦士バズ・オルドリン。指令船操縦士マイク・コリンズの3名でした。

発射台に向かうニールたち。緊張感が漂います。コックピットに乗り込みます。窓からは綺麗な三日月が見えていました。

打上は成功。ドッキングも成功。宇宙に浮かぶ月はアポロ11号を歓迎するかのように、表面の美しさを披露します。

いよいよ人類初の月面着陸の瞬間です。静寂に包まれた神の領域。ニールは最初の1歩を踏み出します。

(C)Universal Pictures
その様子は世界中の人々に映像として届けられました。そして、無線を通しニールは語り掛けます。

「人間にとっては小さな1歩だが、人類にとっては大きな飛躍である」

月面に残された自分の足跡を大事そうに見るニール。そこからは、三日月のような地球が見えました。

月面を弾むように歩きながらニールは、亡くなった娘カレンのことを思っていました。月の窪みにカレンの形見を投げ入れるニール。不思議とそれは地に落ちていくかのようでした。

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映画『ファースト・マン』の感想と評価


(C)Universal Pictures
1969年のアポロ11号打ち上げから50年。

この半世紀、人類は宇宙開発を進めてきました。中国の無人探査機が、人類史上初めて月の裏側に着陸成功し、民間人を乗せて月に向かう宇宙船の開発にまで至っています。

「マーキュリー計画」「ジェミニ計画」「アポロ計画」と最も危険なミッションに挑戦し続けた男たち。

その偉大な功績の裏には多くの犠牲があり、失われた命があることを忘れてはいけません

映画『ファースト・マン』は、一見華やかな表とは対照的な、悲しみにあふれた裏側も丁寧に描かれています。

宇宙飛行士の夫を死を覚悟していながらも、憔悴する妻。減っていく仲間。死の恐怖。そんな犠牲を払ってまで月を目指さなければならなかったのだろうか。宇宙を前に人間の何と無力なこと。

無事生還したニールと妻ジャネットが、ガラス越しに対面するラストシーンでは、嬉しさの中にもどこか疲れ切った2人の様子が印象に残ります。愛するが故に心配で身が持たない妻の苦悩が伝わってきます。

その後の実生活で、ニールはジャネットと離婚するのですが、それを暗示しているかのようなシーンでした。

それでも人類のために挑戦していく宇宙飛行士の姿に、敬意を払わずにはいられません。その努力と勇気と情熱の賜物が、現在そして未来に繋がっているからです。

また、本作はリアルな宇宙体験が出来る映像にも注目が集まっています。

上映映画館によっては、映像・音声に合わせて座席が稼働し臨場感を味わえる4DX上映も体験できます。

IMAXカメラと35ミリ、16ミリカメラを駆使し、宇宙飛行士の視点で撮影された映像は、リアリティの興奮と緊張感が伝わってきます。また、ダイナミックな映像と音響は、まるで一緒に宇宙空間を旅しているかのような臨場感を味わえます。

まとめ


(C)Universal Pictures
1969年、人類で初めて月面に降り立ったアポロ11号の船長、ニール・アームストロングの月までの道のりを描いた映画『ファースト・マン』を紹介しました。

宇宙飛行士の目線で撮影された映像は、まるで一緒に宇宙へ飛び立っているかのような臨場感です。

「人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である」

この言葉の裏に秘められた思いをあなたは知ることになります。

人類史上、最も危険なミッションに命をかけて挑んだ男たちの苦悩と情熱。そして、それを支える家族の心情。成功の裏にある犠牲の数々を忘れてはいけません。

地球から384,400km、月。人類初の一歩をぜひご覧ください。



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