Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ドキュメンタリー映画

映画『セルティックソウル』あらすじと感想。ヨコハマ・フットボール映画祭2018にて

  • Writer :
  • 西川ちょり

来たる2月11日(日)、12日(休・月)、8回目となる「ヨコハマ・フットボール映画祭2018」が開催されます!

会場は、1917年に建造された国の重要文化財である横浜開港記念会館。歴史ある会場にちなんで、サッカーにまつわる様々な「歴史」をテーマにした4作品と、ワールドカップや、パラリンピック関連作品3作品の合計7作品に加え、クロージング作品として植田朝日監督の『ジョホールバル1997』の上映が決定!


© YFFF

会期中にはサッカーを様々な角度から楽しむイベントも多数開催されます。

今回は上映作品の中から、2016年制作のカナダ映画『セルティックソウル』をご紹介します。

1.映画『セルティックソウル』の作品情報

【公開】
2018年(カナダ映画)

【原題】
Celtic Soul

【監督】
マイケル・マクナマラ

【キャスト】
ジェイ・バルチェル、オーエン・オキャラハン

【作品概要】
中村俊輔の活躍も記憶に新しいグラスゴーを本拠地とするセルティックFC。このクラブは世界中に多くのサポーターを抱えていることでも有名でアイルランド系カナダ人俳優ジェイ・バルチェルもその一人。ファン仲間のオーエン・オキャラハンとふたり、祖先のケルト文化に触れつつ、憧れのセルティックバークを目指す。

2.映画『セルティックソウル』のあらすじ


© 2016 Celtic Soul, Markham Street Films

アイルランドと同じ緑と白がチームカラーのセルティックFCは世界中にサポーターがいます。アイルランド系カナダ人で俳優のジェイ・バルチェルもその一人。

彼はアイルランド出身のスポーツ記者、オーエン・オキャラハンとSNSで知り合いました。やり取りをしているうちにどちらもセルティックの大ファンであることが判明。二人は実際に会い、セルティックの試合を生で観ようと計画を建てます。

まずオーエンのダブリンの実家に行き、ハーリングを観戦。ついで、ジェイの祖先の家探し、そしてスコットランドに船で渡り、セルティックの試合をみるというもの。

ジェイは言います。「母方の祖先はアイルランドの移民。祖国を出て新しい土地でやっていくことは大変なことだっただろう。

その時、スコットランドに渡った人もいた。ジャガイモ飢饉を機に移住し、セルティックを作ったんだ。俺の家族に通じるところがあるんだ」。

こうして二人の聖地巡礼の旅が始まりました。

1日目 アイルランド、ダブリン。二人がやってきたのは聖地クロークパークです。

8万2000人を収容できるアイルランド最大のスタジアムで、主にゲーリック・フットボールやハーリングに使用されます。

ジェイはその広大さに驚きを隠せません。

ゲーリック・フットボールとハーリングはアイルランドの国民的2大スポーツ。

ハーリングは木製のスティックとボールを使う競技で、二人はハーリングの女性選手から指南を受け、速度を測ってもらいます。

思っていた以上に難しく二人は大苦戦。特にジェイはスティックにボールがあたりません。

2日目はハーリング観戦。試合はオーエンの応援するチームが惜しくも破れてしまいますが、試合後、ファンのサイン攻めに応えていたゴールキーパーが、ジェイがわざわざカナダから来たと聞いてユニフォームをプレゼントしてくれました。

3日目はクリフデンへ。オーエンはアルコック・ブラウン記念碑をジェイに見せたくて、車を走らせますが、どうしてもたどり着けません。

結局あきらめ、標高764メートルの山、クロー・パトリックへ。

500年前、聖パトリックが断食に来た場所として知られ、毎年多くの巡礼者がやってくる山です。二人はよれよれになりながら、なんとか頂上まで登りきることが出来ました。

4日目はクルーベイのヘリテージセンターを尋ねます。いよいよジェイのご先祖様の家探しです。

母方の名字はオマリー。歴史学者の女性の調査の結果、グレース・オマリーという人がいて、なんと海賊の船長だったそうなのです。イギリス史的にも有名な女性とのこと。

しかし、オマリー氏族が長年統治していた周辺地帯は、英国のブラウン氏の手に渡ります。

ピータ通りにオマリー家が住んでいた記録があり、ジェイの祖母のウオルシュさんもいたらしいとのこと。実際出向いたところ、家があったとされる一画は整備されてしまっていました。

でも、この旅の目的の一つは達成することができたのです。

5日目、ラーンから船に乗ってスコットランドのケイルンライアンへ渡り、車でグラスゴーへ。いよいよセルティックをめぐる旅に突入。

二人はグラスゴー、カルトンのセント・メリー教会を訪ねます。1

1887年、ここでセルティックは慈善団体として発足しました。グラスゴー東部の貧しい人々(特に子どもたち)に寄付を募るのが目的でした。ウオル・フリード修道士はフットボールが子どもの成長に役立つと考えていました。

セルティックは1887年以降、1000万ユーロを超える募金を集めているといいます。

若い修道士が二人にセルティックのユニフォームをプレゼントしてくれて、ジェイとオーエンは恐縮しつつ、大感激するのでした。

早速ユニフォームを身につけて、レノックス・タウンのトレーニングセンターへ。選手とクロスバー対決をしたり、オーエンが幼い頃、握手してもらったというジョン・コリンズ氏と対面したり、夢のような時を過ごす二人。

そしていよいよ念願のセルティック・パークでの試合を観る時がやってきました!

2.映画『セルティックソウル』の感想


© 2016 Celtic Soul, Markham Street Films

セルティックを巡るジェイとオーエンの旅は、二人のキャラクターのせいもあり、ほのぼのとした、どこか笑いを誘う珍道中風でもあります。

大好きなものが待っているという二人のわくわく感がこちらにも伝わってきて、観ていて心地の良いドキュメンタリーとなっています。

それにしても、好きなものが共通するっていうことはなんと凄いことかと思わずにはいられません。

というのも、ジェイとオーエンは、SNSで、比較的最近知り合った友人なのですが、もう旧知の友にしか見えないほど、息もぴったりですし、良いコンビぶりをみせてくれているからです。

冒頭、世界の各地で、セルティックを応援するサポーターの映像が登場します。

セルティックのファンということで、世界中の気持ちがつながる様が見て取れます。

好きなものがあるって素晴らしいことだな、と改めて思うのでした。

セルティックという名称は「ケルト人」あるいは形容詞「ケルトの」を意味し、チームカラーもアイルランドと同じ緑と白

映画の前半、アイルランドを巡る旅が続きますが、ゲーリック・フットボールやハーリングなど、恥ずかしながら、ほとんど知らなかったので、ケルト文化を知るという意味でも貴重な作品となっています。

こんな旅をしてみたい!とこの作品を観た、ほとんどの人が思ってしまうのではないでしょうか!?

3.まとめ

ジェイことジェイ・バルチェルは、ハリウッドで活躍するハリウッドスター。

キャメロン・クロウ監督の『あの頃ペニー・レインと』(2000)で映画デビュー。『ルールズ・オブ・アトラクション』(2002 ロジャー・エイヴァリー監督)、『ミリオンダラー・ベイビー』(2004 クリント・イーストウッド監督)などにも出演、

その後はジャド・アパトーの『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』(2007)、ベン・スティラーの『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』(2008)、セス・ローゲン&エヴァン・ゴールドバーグの『ディス・イズ・ジ・エンド 俺たちハリウッドスターの最凶最期の日』(2013)などのアメリカンコメディ映画に多く出演しています。

それほどのスターなのですが、まったくスター気取りしていないところが、また好印象。なんでも祖国カナダをとても大切に思っていて、カナダの映画にも積極的に出演するようにしているそうです。

一方、相棒のスポーツ記者、オーエンはどこか風貌がイギリス人俳優のサイモン・ペグを思わせ、親しみを感じさせます。

そして、映画に登場する多くのアイルランドの人々や、グラスゴーの人々、そしてセルティックの選手たちの暖かさが伝わってきて、観終えたあと、清々しい気分になること間違いありません!

是非是非、映画をご覧になって、サッカー愛と、そこに集う人々の暖かさに触れて観てください!

本作は、2月12日(休) 15:55~より上映されます。

また、「フットボール映画祭」は全国で開催されます。

詳細は「ヨコハマ・フットボール映画祭 2018」公式ホームページでご確認ください!

*ヨコハマ・フットボール映画祭 2018公式:HP:http://2018.yfff.org

関連記事

ドキュメンタリー映画

映画アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン|感想評価と内容解説。代表曲を収めた幻のライブドキュメンタリー

映画『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』は2021年5月28日(金)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー予定 映画『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』は、ソウル …

ドキュメンタリー映画

映画『オキナワ サントス』感想評価と内容あらすじ解説。ブラジルであった日系移民強制退去事件を取材しながら明らかと隠された史実

映画『オキナワ サントス』は2021年8月7日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかにて全国ロードショー! 1943年にブラジル・サントスで日系移民たちに何が起きたのか?大きな戦争の裏に隠れた真実 …

ドキュメンタリー映画

『天のしずく辰巳芳子いのちのスープ』あらすじ感想と評価解説。料理研究家が食とレシピを通して“今の人間の尊厳”を見つめ直す

勇気をくれる伝説の人間記録『天のしずく 辰巳芳子“いのちのスープ”』は2024年9月10日(火)〜23日(月・祝)に東京都写真美術館ホールで上映! 長寿の伝説の偉人たちを撮ってきた河邑厚徳監督が、料理 …

ドキュメンタリー映画

ホドロフスキー映画新作『サイコマジック』。クラウドファンドを開始!!

1969年に発表された『エル・トポ』や 1973年の『ホーリー・マウンテン』で一躍カルト映画の筆頭に躍り出たアレハンドロ・ホドロフスキー。 2017年に日本公開された『エンドレス・ポエトリー』をご覧に …

ドキュメンタリー映画

映画『ディエゴ・マラドーナ 二つの顔』感想レビュー。サッカー界のレジェンド、または問題児とも呼ばれた男に迫った130分のドキュメント

映画『ディエゴ・マラドーナ 二つの顔』は2021年2月5日(金)全国ロードショー 映画『ディエゴ・マラドーナ 二つの顔』は、アルゼンチンの伝説的サッカー選手デネィエゴ・マラドーナのドキュメンタリー。 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学