映画『a-ha THE MOVIE』は2022年5月20日(金)より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー!
「TAKE ON ME」のヒットは、ノルウェーの3人に何をもたらしたのか?a-haの真実に迫るドキュメント『a-ha THE MOVIE』。
80年代ポピュラーミュージックを席巻したノルウェーのグループ、a-haを構成する3人の生い立ちから80年代のブレイク、そしてその後から現在に至るまでの経緯をつづった本作。3人へのインタビューによる証言を中心に貴重な映像を織り交ぜながら、素顔の彼らを映し出します。
CONTENTS
映画『a-ha THE MOVIE』の作品情報
【日本公開】
2022年(ノルウェー、ドイツ合作映画)
【原題】
A-HA:THE MOVIE
【監督・脚本・撮影】
トマス・ロブサム
【出演】
モートン・ハルケット、ポール・ワークター=サヴォイ、マグネ・フルホルメン
【作品概要】
デビュー曲「TAKE ON ME」が世界的に大ヒットしたノルウェー出身のポップバンド「a-ha」の音楽的な目覚めから出会い、そしてスターダムに駆け上がりながらなおも挑戦を続ける姿を追ったドキュメンタリー。
『母の残像』(2015)『テルマ』(2018)などで製作を手掛けてきたトマス・ロブサムが自ら監督・脚本・撮影を担当。『歌え!フィッシャーマン』(2002)など数々のドキュメンタリーで撮影を担当したアスラウグ・ホルムと共同監督・撮影を行い、a-haの真実に迫ります。
映画『a-ha THE MOVIE』のあらすじ
1982年のノルウェー・オスロ。モートン・ハルケット、ポール・ワークター、マグネ・フルホルメンの3人の若者は、世界を股にかけるスターとなることを夢見てバンドa-haを結成しました。
スターを目指しロンドンへ乗り込み、極貧の生活に苦しみながらも夢を信じて、1984年にデビュー曲「TAKE ON ME」を発表。
翌1985年にアレンジバージョンのリリースを行います。彼らの魅力的な音にレコード会社は注目し、当時徐々に浸透し始めたプロモーションビデオの製作を決定、そのファンタジックな世界観に、世界は魅了されます。
スターダムへ一気に上り詰めた3人。その後も次々とヒット曲を世に送り出す彼らでしたが、表向きの華麗な姿とは逆に、自身の描く理想と世間の認識のギャップに彼らは違和感を募らせていきました。
映画『a-ha THE MOVIE』の感想と評価
スターダムの裏に隠された苦悩
物語はa-haの現在の姿、そして彼らの最大のヒット曲「TAKE ON ME」のライブ演奏にで幕を明けます。大きく前半は彼らの生い立ちから「TAKE ON ME」のヒットで世界から注目を受けるまで、そして後半はその後から現在に至るまでの経緯が、彼らにまつわる貴重な映像でつづられていきます。
グループ結成が1982年、そして「TAKE ON ME」のヒットが1985年。その後現在現在に至るまでは30年の歳月が流れながらいまだに多くの人に親しまれていることを考えれば、彼らのグループとしての歴史の中でこのヒットが彼らにとっていかに重要な出来事だったかを思い知らされます。
そんな事実がありながら、本作で印象的なのは、歴史的大ヒットを成し遂げた一方で、彼らがどのような恩恵を受けたかという部分には直接触れず、むしろ物語終盤のモートンの言葉から、そのことで彼らが大きな不幸を背負わされたのではないかと見えることです。
劇中でも映像として映し出されますが、「TAKE ON ME」のミュージックビデオのラストには現実とアニメーションのはざまで、モートンがもがき苦しむというシーンで終わりますが、そんな彼らの将来を予感させていたようでもあります。
それでも彼らが時に衝突しながら、自分たちの音楽を模索し続けた姿からは、a-haというグループの見え方が変わってきます。
彼らは世界的なグループになった今現在、なんからのポジティブな恩恵を得られたかといえば、そんな言葉や様子は少しも見えてきません。
それでも周りの衝突を恐れず音楽を作り続けた姿からは、利害を超えた彼らの生き様、生きる意味を感じさせられます。
先述のモートンの言葉は大きな成功に対して否定的に語りながら、a-haとして現在を迎えた今、その真意をしっかり悟っています。
周囲を巻き込んで向き合った「音楽の創造」
一方で本作の魅力は、なんといっても当時の音楽シーン、音楽リスナーから見えなかった彼らの素顔が存分に味わえるところにあります。
80年代のミュージックビデオやライブパフォーマンスの映像からは、グループの中心で人当たりのよさそうな笑顔を常に見せるモートン、少し気難しそうにキーボードを弾くマグネ、そして控えめな表情でギターをかき鳴らすポールという表情が見えます。
ところが本編で見られるその裏舞台では、しっかりとグループを引っ張り、時に強すぎるくらいの主張を見せるモートン、口数少ない中で自身の主張を曲げないポール、自分の主張を持ちながらも、彼ら二人を注視していたマグネ、というような、表向きのビジュアルとは違うグループの景観が表されています。
また、非常に印象的なのは、メンバーのコメントとともにマグネ、ポールそれぞれの妻のコメントが多く引用されている点にあります。
スターダムに乗ったアーティストの女性関係における問題などは時によく聞かれるお話で、二人とも若くして出会った伴侶と長く連れ添っているという点も興味深いところでありますが、本作に至っては音楽を作り続けた話にこだわり続けている中で、妻たちの言葉もかなりa-haというグループにこだわった話に限定されています。
この証言は、いかにa-haというグループと、彼らを取り巻く人たちが「TAKE ON ME」に依存せず心底「音楽を作り続けていく」ということに深く向き合っていたことを感じさせます。
まとめ
数多くある彼らのアルバムの中には、「TAKE ON ME」を収録した『Hunting High and Low』、そして『East of the Sun, West of the Moon』『Minor Earth Major Sky』という、ある意味両極端を示す特徴的なタイトルがつけられたものがあります。
この3作は物語中でも、彼らの音楽史の中で大きなターニングポイントでリリースされたものとして示されています。
クリアーで抑え目に見えながら、実は力強く安定した土台感すら醸し出すモートンのボーカルを中心に、a-haというグループのサウンドは一見確立されていたように見えますが、実際このターニングポイントで彼らは自身のイメージを都度大きく変えるような試みを見せています。
それはまさに自分たちの存在意義を明確に示そうとしている姿勢のようなものであり、ある意味「TAKE ON ME」の呪縛から逃れるためにもがいていた光景にも見えてきます。
それはまさにミュージシャンとして、アーティストとして、共通して持つべき意思を彼らだからこそ示せている……。本作の映像はそんな意思を示しているようでもあります。
映画『a-ha THE MOVIE』は2022年5月20日(金)より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー!