過去から未来へ。
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2021年発行のビジネス小説『もしも徳川家康が総理大臣になったら』の実写映画化。コロナ禍で疲弊した日本に、歴史上の偉人たちが蘇る。
2020年。総理官邸でクラスターが発生し、日本の総理大臣が急死。国民の不安が高まる中、政府は最新のAIホログラムを駆使し、歴史上の偉人たちを復活させ最強内閣を設立させます。
総理大臣の徳川家康を筆頭に、それぞれの偉人たちの業績をいかした働きぶりとカリスマ性に、国民の徳川内閣への支持率は大きく上昇。
そんな中、アナウンサー志望の新人テレビ局員・西村理沙は、内閣官房長官の坂本龍馬に接近し、新生内閣のスクープを狙います。
徳川家康、織田信長、豊臣秀吉に加え、北条政子や聖徳太子まで。AIによりこの世に蘇った偉人たちの世直しまつり、映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』を紹介します。
CONTENTS
映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』の作品情報
【日本公開】
2024年(日本映画)
【原作】
眞邊明人
【監督】
武内英樹
【キャスト】
浜辺美波、赤楚衛二、GACKT、髙嶋政宏、江口のりこ、池田鉄洋、小手伸也、長井短、観月ありさ、竹中直人、野村萬斎、音尾琢真、山本耕史、梶原善、足立英、小籔千豊、酒向芳
【作品概要】
2021年発行され、ビジネス小説としては異例の大ヒットを記録した眞邊明人の『もしも徳川家康が総理大臣になったら』の実写映画化。
監督は、『今夜、ロマンス劇場で』(2018)、「テルマエ・ロマエ」シリーズの武内英樹監督。脚本は『翔んで埼玉』(2019)で武内監督と組んだ徳永友一が本作も担当。
AIによりこの世に蘇った総理大臣・徳川家康を演じるのは、野村萬斎。新生内閣のスクープを狙うテレビ局新人記者・理沙役に、浜辺美波。さらに内閣官房長官・坂本龍馬役に赤楚衛二、織田信長役にGACKT、豊臣秀吉役に竹中直人など豪華俳優陣が勢揃い。
主題歌は、新しい学校のリーダーズの「Change」。映画のストーリーに合わせたメッセージ性のある歌詞と、中毒性のあるメロディーが癖になります。
映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』のあらすじとネタバレ
時は2020年。世界中でコロナウィルスが猛威を振るう中、日本では首相官邸でクラスターが発生。あろうことか、総理大臣が急死してしまいました。
国のトップが不在のまま、このパンデミックを脱することは困難です。国民の不安は増幅し、パニック寸前となっていました。
そこで政府が最終手段として実行したのが、AIホログラムにより歴史上の偉人たちを復活させ、最強内閣をつくるというプロジェクトでした。
総理大臣には、あの265年続いた江戸幕府の創設者・徳川家康が君臨。そして、次々と10名の日本史における大スターたちが蘇ります。
各々のプログラムには、それぞれのプロフィールや業績はインプットされつつ、過去の因縁は取り除かれるという、まさに現代の政治を行うために作られたドリームチーム内閣なのでした。
内閣官房長官・坂本龍馬は、現代で己が人気があることに驚くも、内閣と国民の間に立ち交渉ごとを進めていきます。
テレビ局の新人記者・西村理沙は、今回のドリーム内閣の取材を命じられ現場に向かいますが、アナウンサー志望の理沙は、まったく乗る気じゃありません。
最後の質疑応答で、先輩に無理やり手を上げさせられた理沙は、坂本龍馬に「ぜよ。って何ですか?」と質問し、その場を凍りつかせました。
「ぜよは、ぜよぜよ!」坂本龍馬の答えも合わせて、SNSは大賑わい。「鉄矢に聞けよ」思わぬバズリとなりました。これをきっかけに、理沙は政府のスポークマンである坂本龍馬に近付くことに。龍馬もどこか理沙には遠慮がありません。
まず、政府が出したコロナ対策は、都市封鎖でした。今日から1カ月のロックダウン。早急なうえ長期に渡るロックダウン宣言に、国民は不満を言い出します。
動き出したのは、「鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギス」の豊臣秀吉。財務大臣に就任した秀吉は、10日以内に国民全員に一律50万円の太閤給付金を支給すると宣言。
「一体どうやって!」と詰め寄るマスコミに「知らん!あとは部下に任す。トップは責任をとるだけじゃ」。驚異の人たらしを持って、石田三成はじめ現代の財務省局員の士気を高めました。
ロックダウンの取り締まりを新選組が行うなか、厚生労働大臣の徳川綱吉は、緒方洪庵による国産ワクチンの開発を進めます。
そして、金の亡者である外務大臣・足利義満は、得意の外交手腕を活かし、世界中に日本のワクチンを売り出します。
ホームステイで遅れてしまう教育に乗り出したのは、世界最古の女流作家、文部科学大臣・紫式部。リモートによる『源氏物語』授業は大注目に。「勉強いつやるの?いまでしょ!」。
早急とされた法改正にあたったのは、法務大臣・聖徳太子。一度に10人の声を聞き分け、記者の質問にもスピーディーに答えていきます。
政府のイメージアップには、鎌倉幕府を守った尼将軍、北条政子。総務大臣として、テレビ番組『政子の部屋』を立ち上げ、国民に広く政策を伝えていきました。
ロックダウン明けの対策として、職を失った者のために農業の見直し、拡大に力を入れていた農林水産大臣・徳川吉宗は、さらに大農場を建設し「享保の改革2.0」を打ち出します。
これまでの政策の資金集めには、経済産業大臣に就任した、史上最強にして最凶の革命家・織田信長が力を発揮します。
財界の企業トップたちを集め、凄みの聞いた演説と、情に訴える演出で、見事資金調達に成功。さらに、バーチャル世界での商い、令和版「楽市楽座」は、若い者を中心に盛り上がりをみせます。
いまや国民は、ドリーム内閣に夢中です。アイドル並みの人気は、推し大臣の追っかけ、ファンクラブもできるほど。内閣の支持率は85%となっていました。
そんな日本国民の姿に危機感を抱く者がいました。坂本龍馬です。
「おまんら、目を覚ませぇ。このままでいいのか日本。他人に期待する前に、自分に期待する時じゃろ。自分で動かんと、何も変わらんぜよ」。
龍馬の言葉は、熱狂の渦の中にいる国民の耳には届きませんでした。
映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』の感想と評価
「人任せではなく、自分に期待せよ」
2021年にビジネス小説として発行された『もしも徳川家康が総理大臣になったら』。このたび実写映画化され、公開日はまさに自民党総裁選を控えたタイミングとなりました。
昨今の日本の選挙投票率は低く、特に若年層の政治離れが問題視されています。さらに、内閣の派閥と政治資金問題、相次ぐ不祥事に内閣支持率は減少し続けています。
国民の大半は、自分の生活で精一杯。「国の政治は誰がやっても一緒」「何となく景気が上ればいいな」と、政治に対して無関心な人が多いのではないでしょうか。
そんな現状の日本において、過去の偉人たちが蘇り内閣を発足するというストーリーは、とても興味深く、誰がどんな政策をするのか楽しみな内容となっています。
なぜこの偉人がこの役職なのか、まさに適任と言える政策にあっぱれな気持ちになります。例えば、コロナ禍でロックダウンした世の中、リモートで行われる紫式部の『源氏物語』学習。こんな授業なら受けてみたい。
そして、実は暴れない暴れん坊将軍・徳川吉宗の「享保の改革2.0」。職を失った民のために共同農業システムを開発し、日本の自給率もあげる取組みは、現代においても適用できそうです。
また、徳川綱吉のワクチン開発や、足利義満の外交手腕、聖徳太子のスピーディーな法改正、織田信長のバーチャル世界での楽市楽座など、どの政策も国民が求めていたものです。
それぞれの偉人たちが、圧倒的な決断力とリーダーシップのもと、サクサクと進められる政治に国民は熱狂。こんなリーダーを待っていた。ドリーム内閣万歳!
しかし、物語はここからが確信をつく部分となっていきます。国民は、完璧なリーダーに全てをまかせ、SNSでの評判を鵜吞みにし、自分たちでは何も考えない「愚かな民」となっていました。
徳川家康と坂本龍馬は、そんな国民の様子に危機を憶えます。こんな状況であれば、愚かな国民をだまし、己の欲だけに走る者も出てきます。
今の腐敗した政府を作り出したのは、我々国民にも責任があり、国を作るのは政治家ではなく、国民ひとりひとりだということを改めて考えさせられました。
徳川家康が日本を現代の国民に返すという大政奉還の際、「立ち上がれと言ってるのではない。人任せではなく、自分に期待せよ」といった言葉が印象に残ります。
また、本作では政治の在り方や国民の関心について考えさせられる他にも、マスコミの情報の伝え方についても追及しています。
情報番組『ズバっと!』では、司会の島川が声高らかに世間の問題をズバッと言っています。偉人内閣発足時には「信用できませんよね~」と言っていたにも関わらず、世間で盛り上がりを見せると「この人たちはやってくれると思っていました」と。
《歴史的コラボ》を豪華キャストが彩る!
さらに、徳川VS織田の政権争いの際は、面白おかしくエピソードを盛り込みながら争いをあおります。
いま何を伝え、どう動くべきか、真実はどこにあるのか。世論に踊らされ、盛り上がる話題に便乗し、不安を煽る報道は、SNSの使い方にも通じるものがあると感じました。
本作の見どころのひとつに、本当の歴史ではあり得なかったコラボレーションがみれるという点があります。
坂本龍馬と新選組が手を組み、徳川家康を助けるシーンは、天照大神も君臨し、まさに歴史好きにはたまらない夢の共演となっています。
そんな夢の共演をさらに面白くしているのが、偉人たちを演じた俳優陣のハマり具合にあります。実写映画化でもまた豪華俳優陣の夢の共演が楽しめます。
家康役の野村萬斎、信長役のGACKT、秀吉役の竹中直人と、戦国3武将のキャスティングの説得力はもちろんですが、赤楚衛二が演じる坂本龍馬もとても魅力的でした。
そして何と言っても、本当に現代に蘇ったのでないかと思わせるほどのハマり役、クールなようでサービス精神旺盛な北条政子を演じた江口のりこが、最高でした。
まとめ
歴史上の偉人が現代に蘇り、最強ヒーロー内閣として現代の日本のピンチを救う、アルティメットヒーローエンターテインメント『もしも徳川家康が総理大臣になったら』を紹介しました。
笑いあり涙ありだけじゃない、現代日本の現状を考えさせられる深い作品でした。まさに現代を生きる日本国民に見て欲しい。
こんな政治家がいてくれたら良いなぁと思う反面、自分があまりにも政治に無関心だったことに気付きました。
国造りをするのは、偉人でも政治家でもありません、私たち国民ひとりひとりなのです。
選挙は、自分の思いを託す代表を選ぶ場です。もしも、自分が総理大臣になったら……。もう、政治は他人事ではないと思えるはずです。