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Entry 2020/11/14
Update

映画『100日間のシンプルライフ』感想レビュー評価。実話を大胆に脚色し超ミニマリスト生活へ挑戦する男たちを描く

  • Writer :
  • 咲田真菜

2020年12月4日(金)映画『100日間のシンプルライフ』がヒューマントラストシネマ渋谷・有楽町、シネマート新宿ほかにて全国順次公開。

幼なじみでビジネスパートナーのパウル(フロリアン・ダーヴィト・フィッツ)とトニー(マティアス・シュヴァイクホファー)が、ある出来事をきっかけに「裸一貫で所持品ゼロの状態から1日1つずつ必要なモノを取り戻し100日間生活する」という前代未聞の勝負に挑むシンプルライフエンターテインメントです。

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映画『100日間のシンプルライフ』の作品情報

© 2018 Pantaleon Films GmbH / Erfttal Film & Fernsehproduktion GmbH & Co. KG/ WS Filmproduktion / Warner Bros. Entertainment GmbH

【日本公開】
2020年(ドイツ映画)

【監督・脚本】
フロリアン・ダーヴィト・フィッツ

【キャスト】
フロリアン・ダーヴィト・フィッツ、マティアス・シュヴァイクホファー、ミリアム・シュタイン、ハンネローレ・エルスナー、ヴォルフガング・シュトゥンフ、カタリナ・タルバッハ

【作品概要】
フィンランドで一大ムーブメントを起こしたドキュメンタリー映画『365日のシンプルライフ』をベースに、価値観の異なる男たちの財産を賭けた勝負へと大胆に脚色。ドイツ・ベルリンを舞台に、二人の細マッチョイケメンがテンポの良い掛け合いを見せるエンターテインメントとして昇華させました。

主人公のパウル役を監督・脚本も手がけたフロリアン・ダーヴィト・フィッツ、親友でありビジネスパートナーのトニー役をマティアス・シュヴァイクホファーと、ドイツの人気俳優が競演しています。

映画『100日間のシンプルライフ』のあらすじ


(C) 2018 Pantaleon Films GmbH / Erfttal Film & Fernsehproduktion GmbH & Co. KG/ WS Filmproduktion / Warner Bros. Entertainment GmbH

好きなモノに囲まれ、自由気ままな独身生活を謳歌するプログラマーのパウル。5年前に開発した人工知能搭載アプリ「NANA」との甘い生活に心は満たされ、パウルにとってNANAは大切な存在になっていました。一方、幼い頃からの親友で共同経営者のトニーは、デジタルに依存しているパウルを心配しつつも、自身の外見を磨くことに必死です。

ある日二人は、アメリカのIT実業家に「NANA」を売り込むためプレゼンを行うことに。「人を幸せにするために作った」と説明するパウルに対し、トニーは金儲けが真の目的であると主張。売り込み自体は成功しましたが、「NANA」で金儲けをしようとするトニーが許せないパウルは、トニーに「ある勝負」を持ちかけました。

それは、自分たちが所有している持ち物全てを倉庫に預け、裸一貫・所持金ゼロの状態から1日1つずつ必要なモノを取り戻し100日間生活する、という勝負でした。

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映画『100日間のシンプルライフ』の感想と評価

ドイツの人気スターが裸でベルリンの街を駆け抜ける


(C) 2018 Pantaleon Films GmbH / Erfttal Film & Fernsehproduktion GmbH & Co. KG/ WS Filmproduktion / Warner Bros. Entertainment GmbH

必要最小限のもので暮らす「ミニマリスト」に憧れる人が多い昨今ですが、本作のメインキャラクターであるパウルとトニーは、洋服も着ない真っ裸で、所持金ゼロの状態から100日間を過ごすという「超ミニマリスト」生活に挑みます。

しかしパウルもトニーも、ミニマリストとは縁遠い生活をしてきました。パウルはスマホ依存症で、似たようなスニーカーを何足も買ってしまうほどの買い物好き。トニーは外見を磨くことに必死で、部屋の中にトレーニング機材があり、身体を鍛えるのに余念がなく、最近少し薄くなってきた髪の毛が気になり、育毛剤が手放せません。

二人はビジネスパートナーであり、幼なじみの親友でもあります。一時期はパウルの実家にトニーが居候し、今も同じマンションに住むほど仲が良い二人。しかし、パウルが開発したアプリ「NANA」を金儲けに利用しようとするトニーに腹を立て、酔った勢いでパウルはある賭けを申し出ます。それは、「裸一貫で所持品ゼロの状態から、1日1つずつ必要なモノを取り戻し続け100日間生活する」という無謀な挑戦です。


(C) 2018 Pantaleon Films GmbH / Erfttal Film & Fernsehproduktion GmbH & Co. KG/ WS Filmproduktion / Warner Bros. Entertainment GmbH

「自身が持っているモノをすべて倉庫に預ける」「倉庫から1日1つだけモノを取り戻せる」「会社の食料は食べてOK」「買い物は禁止」というルールを設け、負けたほうはアプリ売上のうち、自身の手取りの半分を従業員に配分しなければなりません。

二人が住んでいる部屋からはすべてのものが倉庫へ運び出され、パウルもトニーも「全裸」になってしまいます。酔っていたとはいえ、とんでもないことを言ってしまったと後悔する二人ですが、戦いの火ぶたは切って落とされます。

物語の冒頭、まずは服を着なければ……と、雪の降るベルリンの街を全裸で倉庫に向かって駆け抜けるパウルとトニーには大爆笑してしまいます。

パウルを演じるフロリアン・ダーヴィト・フィッツとトニーを演じるマティアス・シュヴァイクホファーは、ドイツでは知名度のあるスター。そんな二人がスタントマンなしで一般人が見守る中、裸でベルリンの街を駆け抜けていくシーンは、ここからさらに物語と笑いが膨らんでいくのだろうという期待を一気に高めてくれます。

パウルとトニーをめぐる女性たち


(C) 2018 Pantaleon Films GmbH / Erfttal Film & Fernsehproduktion GmbH & Co. KG/ WS Filmproduktion / Warner Bros. Entertainment GmbH

本作はパウルとトニーのやりとりを軸に話が進んでいきますが、パウルの母・レナーテ(ハンネローレ・エルスナー)、パウルの祖母・オマ(カタリナ・タルバッハ)、そして倉庫で出会った謎の女性・ルーシー(ミリアム・シュタイン)といった女性陣も存在感を出しています。

パウルの母・レナーテは愛情深くパウルを見守り、かつて居候をしていたトニーに対しても同様に接しています。レナーテ自身は愛着を持ったモノを大切に使い続けるタイプなので、買い物好きで、無駄なモノに囲まれて過ごしているパウルを心配しています。しかしおせっかいなことは言わず、一歩離れたところからさりげなくパウルやトニーに助言をする姿がとても好ましいです。

パウルの祖母・オマも、若干記憶力と理解力が落ちているようですが、孫のパウルに対して優しく接してくれます。この二人の前では、パウルもトニーも少年の頃の気持ちになるようで、それを印象づける心温まるシーンに注目です。

またトニーが一目ぼれをするルーシーも謎めいた雰囲気を上手く醸し出しています。倉庫の中には数多くの洋服が保管されており、それを着こなす魅力的な女性としても描かれています。ミステリアスだけれど、何かに救いを求めている女性・ルーシーがトニーにどんな影響を与えるのかも見どころの一つです。

モノがなくなったパウルとトニーが気付いたこと


(C) 2018 Pantaleon Films GmbH / Erfttal Film & Fernsehproduktion GmbH & Co. KG/ WS Filmproduktion / Warner Bros. Entertainment GmbH

公私ともに身近な存在として生活してきたパウルとトニーですが、しばしば言い争いになります。30代後半となり、お互いに対して抱く思いに複雑なものがあるからです。

かつて愛した女性をトニーに奪われ、その時の痛手から立ち直れないパウルと、幼い頃から何でもできる優秀なパウルに対してコンプレックスの塊となっているトニー。こうした複雑な思いをなんとなく自身の中で処理してきた二人ですが、自分のまわりにあったモノがなくなったことで何もすることがなくなり、逆にこれまで抱いてきた思いに向き合うようになります。

そして二人にとって大きなきっかけを作るのが、ルーシーです。ルーシーに猛アタックしたトニーの思惑どおり、二人は上手くいくのですが、パウルがルーシーの秘密を知ってしまいます。それをきっかけにトニーに放った一言で、二人は殴り合いの大げんかをしてしまいます。

一度は「もう親友じゃない」とその場を立ち去ってしまうのですが、その瞬間から二人は、「これまで考えないようにしていたこと」に目を向け、お互い本音で話し合います。

モノに囲まれて暮らしていた時は、自分の本音を心の奥深くに押し込んでいたパウルとトニーですが、モノがなくなったことによって、そうした思いを吐き出すことができたのです。自分の身の回りだけでなく、心もデトックスできたのです。

モノがない生活が始まった当初は、「スマホがないから、することがない。いろいろ考えてしまうので1日が長い。耐えられない!」と絶叫していたパウルが、モノがない生活にだんだん慣れて、表情が明るくなっていく様子もとても興味深い変化でした。

そしてラストに外見重視でカッコをつけてきたトニーが、自分自身にとって必要な5つのものを迷うことなく選択する姿にも胸が熱くなります。

まとめ


(C) 2018 Pantaleon Films GmbH / Erfttal Film & Fernsehproduktion GmbH & Co. KG/ WS Filmproduktion / Warner Bros. Entertainment GmbH

本作の見どころは、パウルとトニーのテンポの良い軽妙な掛け合いですが、二人が時折見せる滑稽な表情も見逃せません。

モノがない生活が始まった初日、部屋から一切のものがなくなり、裸になっている自分に焦り、トニーの部屋へ向かう時のパウルの表情。「眼鏡をかけたらアホ面になる」と何日も同じコンタクトレンズをしていたために、目が充血してしまうトニーの衝撃の表情。お腹を抱えて笑ってしまうシーンは盛りだくさんです。

しかしこの作品は、笑いだけでなく、さまざまな気付きを与えてくれます。モノに囲まれて生活することで、本当に心が満たされているのか、モノに支配されて大切なことを見逃していないか……など、実に奥の深い物語でもあるのです。

そして本作を観終わったあと、思わず部屋を片付けたくなる衝動にかられる人も多いのではないでしょうか。



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