連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第32回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第32回は、ディオゴ・モルガド監督が脚本・演出を務めた、映画『1/8 ハチブンノイチ』です。
ディオゴ・モルガドが監督、製作総指揮、脚本を務めた、2019年製作のポルトガルのSFアクション・スリラー映画『1/8 ハチブンノイチ』。
無人島でのサバイバルリアリティーショーに参加した8人の男女は、いつしか宇宙人が主催する、生死をかけた地獄のバトルロワイヤルに強制参加させられていくというのは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
無人島に集められた男女8人の命をかけた、究極のサバイバル・デスゲームを描いた、ポルトガルのSFアクション・スリラー映画『1/8 ハチブンノイチ』のネタバレあらすじと作品情報をご紹介いたします。
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映画『1/8 ハチブンノイチ』の作品情報
【公開】
2019年(ポルトガル映画)
【脚本】
ディオゴ・モルガド、ペドロ・モルガド
【監督】
ディオゴ・モルガド
【キャスト】
カタリーナ・ミラ、ダーウィン・ショウ、ゴンザロ・ラモス、カルロス・カルバリョ、アンナ・ルドミラ、ルイス・ロウレンソ、マリア・ボテーリョ・モニツ、フランシスコ・フローエス、ディオゴ・モルガド
【作品概要】
『サン・オブ・ゴッド』(2015)に出演した俳優ディオゴ・モルガドが、監督、製作総指揮、脚本を務めた、ポルトガルのSFアクション・スリラー作品です。
ディオゴ・モルガト監督自身も、科学者役として出演しています。
カタリーナ・ミラが主演を務め、『サン・オブ・ゴッド』(2015)のダーウィン・ショウや、カルロス・カルバリョら豪華キャスト陣が出演しています。
映画『1/8 ハチブンノイチ』のあらすじとネタバレ
人類の多くが死に絶えた近未来。参加者のサバイバル生活を追う、無人島でのリアリティーショー番組に参加した、8人の男女がいました。
28歳のアメリカ人探検家ジョンと32歳のノルウェー人研修医のサラ、40歳のブラジル人精神科医のエマと30歳のカナダ人講演者スコット、34歳のフィンランド人技師クリストフ、27歳のイギリス人植物学者キャロル。
そして、天文学者のポールと謎の男リアム。
キャロルたち8人は、案内役のエミリアと番組スタッフに連れられ、無人島『ソルム・アイランド』へ向かいます。
大自然に恵まれたソルム・アイランドで行われるサバイバルゲームのルールは、「身を守り健康を保ち、怪我をせず、そして自力で生きること」です。
参加者同士の協力は無しなので、孤立無援の状態でサバイバル生活を送らなければなりません。
頼りになるのは己のスキルと生存本能だけです。食料も寝る場所もない過酷な環境下で争い、最後まで生き残ったたった1人だけが、勝者の栄冠を手に入れられます。
もしサバイバル生活を途中で棄権する場合は、番組から支給された通信機で連絡して助けを呼ぶか、自力で山の頂上にある救援地点へ向かえばいいのです。
そうエミリアの説明が終わった後、キャロルたちはそれぞれ指定された場所で、サバイバル生活をスタートさせます。
湿地帯にはクリストフとサラ、高台にはジョンとリアム、草原が広がる山にはキャロルとエマ、他の場所にジョンとポールがそれぞれ配置につきました。
サバイバル生活1日目、クリストフは斧を使ってイカダを作り、島内どこでも移動できるようにします。
リアムはスコットが眺めていた湖に通信機を投げ捨て、上から島をざっと見まわし、弓矢を持って、島中を駆け回りました。
スコットとキャロルとエマはそれぞれ、自然豊かな島を堪能し、寝床となる場所を探していきます。
ジョンは風よけになる場所を探し、見つけた岩石層の前を陣取り、寝床作りを始めました。
その夜、持ってきたビニールシートを使って1日かけて寝床を作ったエマは、明日こそ食料を見つけようと心に決め、就寝。
リアムは森の中で焚火をし、黙々と木の枝の先を削って、自作の槍を作ります。
サバイバル生活2日目、海岸で一晩明かしたスコットは、支給された小型カメラに向かって、自然の素晴らしさや、普段の生活が恵まれた環境であることへの感謝を雄弁に語っていました。
ポールは岩に小型カメラを打ちつけて壊した後、ナイフを携えて島を散策します。
森の中へ移動したサラは、いくつもの岩が積み重なってできた、岩壁と木の間に寝床を作ったことを小型カメラに向かってレポートしていました。
しかし、調子に乗って岩壁の上を歩いていたサラは、固定されていない岩の上に足を乗っけてしまったため転倒。
骨折してしまって立つこともままならず、サラはやむを得ず助けを呼ぼうと、通信機のボタンを押しました。
するとその瞬間、サラの体に何度も謎の電流が駆け巡ったのち死亡。彼女の遺体は、徐々に消えそうな残像と化していくのです。
海岸で魚を釣る準備をしていたスコットは、リアムと遭遇。彼から突然、弓矢で命を狙われてしまいます。
スコットは突然の事態に戸惑いつつ、慌てて荷物を持ってその場を離れ、森の中を走って逃げました。
地面の窪みに隠れたスコットを見失ってしまったリアムは、そのまま川へ向かいます。
その川の上流では、キャロルが水浴びをしていました。キャロルはその後、「カメラが壊れた」と言うポールと遭遇し、彼に火おこしと料理をお願いします。
キャロルはその様子を、小型カメラに向かってレポートしていると突然、リアムを何とか撒いたスコットが現れたのです。
スコットからリアムに命を狙われているという、事情を聞いたキャロルたち。
ポールはリアムの名前を聞いてから態度が豹変し、何の説明もないままキャロルたちに、ここから早く離れて逃げようと急かします。
キャロルたちはポールに説明を求めましたが、彼は何も話さず、そのままどこかへ行ってしまいました。
一方、食料探しに森に入ったエマは、その道中でサラの遺体を発見。
彼女は、落ちていたサラ用の小型カメラの録画映像を見て、通信機のボタンを押しただけで死んだことを悟ります。
その直後、エマはリアムに見つかり、追いかけてくる彼を木の茂みに隠れてやり過ごしました。
2日目の夜、キャロルとスコットは会った場所から離れず、そこで焚火をして親睦を深めていきます。
その際キャロルはスコットに、幼い頃から人には見えないものが見え、話しかけていたせいでいじめられた過去があることを明かしました。
これに対しスコットは、キャロルにこう言って励まします。
「人生は白と黒で分けきれないほど、分からないものだらけ」「キャロルの感性はきっと、いつか必要になった場面で活かすための、生まれ持った才能だ」
3日目、キャロルは真っ白な空間の中に、2本の木に挟まれた謎の建物に吸い込まれそうになるという、奇妙な夢を見ました。
飛び起きたキャロルは、焚き火用の木の枝を集めてきたスコットと会い、彼からポールが、朝食用の食料を集めに行っていることを教えて貰います。
その話の直後、ポールが慌てた様子でスコットたちの元へ戻ってきて、「今すぐ荷物をまとめてこの場から離れろ」と言ってきたのです。
スコットたちは訳が分からないまま、ポールと一緒にその場から走って逃げます。
リアムはそんなキャロルたちを追いかけ、少ない本数の矢を放っては拾いを繰り返しつつ、彼らの命を執拗に狙いました。
森の外に出て湿地帯に出たキャロルたちは、イカダに乗って移動しようと準備していたクリストフに遭遇。
しかし、リアムに命を狙われている理由が分からず、キャロルとスコットはクリストフに、自分たちの現状を上手く説明できません。
痺れを切らしたスコットは、通信機を使って助けを呼ぼうと提案しますが、物凄い剣幕で止めるよう訴えるポールの姿を見て止め、彼らと一緒に高台へ逃げました。
その道中、キャロルたちは岩石層の前にいるエマと遭遇。彼女はここにいないジョンの荷物を漁っており、サラの小型カメラを持っていました。
エマはジョンの荷物を漁った本当の理由は明かそうとせず、身体を震わせて「まだ死にたくない」と泣き叫び、何かに酷く怯えた様子でした。
キャロルはそんなエマを宥め、彼女を仲間に誘おうとしますが、一刻も早く避難したいポールに反対されてしまいます。
キャロルたちが話し合う中、黙ってサラの小型カメラの録画映像を見ていたスコットは、サラが通信機を使った直後、謎の死を遂げた映像をキャロルたちに見せました。
その頃、荷物を岩石層の前に置き、山の中にある川で湧き水を汲んでいたジョン。その背後に、弓矢を持ったリアムが忍び寄ってきます。
4日目、キャロルたちは霧が立ち込める山の中で身を寄せ合い、眠っていました。
その中でキャロルは、荒廃した街の様子を夢で見たことで飛び起き、気を落ち着かせようと山の中の川へ向かいます。
ジョンが作ったものだろうか、岩の上にちょこんと乗った小さな葉っぱと花で作った船があり、キャロルはそれを手に取って心を和ませました。
気分が良くなったキャロルが詩を詠んでいると、そこへリアムが現れます。
キャロルの詩を絶賛するリアムは、警戒する彼女にこう言いました。
「俺の目的は真実を知ることだ」「君が詠んだ詩のような美しいものは、もう存在しない。俺はこのゲームに勝つ」
「今は君を殺さない、本当なら誰も殺したくなかった」「ただ俺は連中に抵抗しているだけ。本当に殺しているのは連中のほうだ」
リアムはそう話したのち、キャロルを人質に取って、スコットたちに不在のポールの居場所を尋ねます。
ポールはそんなリアムの背後から襲い掛かり、首にナイフを突き立てて、武器を捨てるよう脅しました。
リアムは弓矢を地面に投げ捨てたものの、そこから己の肉体を使って、ポール・スコット・クリストフの攻撃をいなし、ダメージを与えていったのです。
背中に飛び掛かってきたエマを振り落としたリアム。その一瞬の隙を突いて、ポールたち男3人がかりで彼を羽交い絞めします。
続いてキャロルが正面から突撃しようとした瞬間、それに気づかないスコットがリアムを後ろに倒そうとしたため、彼の浮き上がった足がキャロルの顎に直撃。
気を失ってしまったキャロルは、再び奇妙な夢を見ます。今度は、どこかの研究施設のベッドの上で横たわっていたキャロルが、謎の水晶玉を握りしめていました。
そして、目覚めたキャロルが向かった部屋の中央に聳え立つ大きな柱に、こちらに向かって話しかける1人の男のスクリーン映像が映し出されます。
「これを見ている君が、最後に生き残ったのだな」「私の方はもう死んでいるに違いない」
「それか、他の者と一緒に隠れていることだろう。食料と酸素が続いていれば」「既に君の記憶が戻っているかは分からないが、1つ言っておこう」
「外には出るな。世界はもう終わりだ、幸運を祈る」
そう話す男の映像が消えた直後、キャロルは再び現実世界へ戻りました。
急遽木の枝と草で作った担架にキャロルを乗せ、リアムから逃げるポールたち。その道中、槍で身体を貫かれて絶命したジョンの遺体を発見します。
しばらくして降った雨から逃れるため、キャロルたちは雨宿りできる場所に身を寄せ合い、ポールにこの状況を説明しろと問い詰めました。
するとポールは、重い口を開いて皆にこう言うのです。
「全ての生命が絶滅に向かっている。環境汚染や核戦争のせいだ」
「天然資源は枯渇し、もう人類に何も打つ手はない」
「このゲームは、人類の存続をかけた最後のチャンスだ」
「これはサバイバル生活を送る番組でも現実でもない。全てバーチャル映像だ」
「キャロルの本当の体は研究施設にある。君は選別を受けたのだ」
映画『1/8 ハチブンノイチ』の感想と評価
サバイバル生活を送るだけだと思っていたキャロルたちが、リアムに命を狙われたことをきっかけに、宇宙人主催の地獄のバトルロワイヤルに参加させられていたことを知ります。
サバイバル生活を追う無人島でのリアリティーショー番組に出演しているものとばかり思って、楽しそうに無人島生活を送っていたキャロルたちの笑顔が、一瞬にして消え去る場面。
観ているこちらも、思わぬ展開に愕然とします。そんな中、物語の前半から何か知っている様子のポールとリアム。
彼らが物語の後半で語った内容もまた、現実離れしたものばかりで、キャロルたちがすぐに信じられないのも納得できます。
アクション場面と言えば、リアム対キャロルたち7人の死闘ぐらいで、主催者側の宇宙人と戦う場面は一切ありません。
SFアクションとジャンルにあるのだから、宇宙人と戦う場面もあるのではないかと期待した人には、少し物足りなく感じてしまうことでしょう。
ただ、選ばれた人類同士が命懸けの戦いを行い、どう生き延びていくのか。
そのサバイバル要素たっぷりのアクション・スリラーストーリーは、観ているこちらもゲームに参加しているかのような、ドキドキハラハラするスリルを味わえて面白いです。
まとめ
宇宙人によって勝手に選別され、勝手に命懸けのバトルロワイアルに参加させられたキャロルたちの戦いを描いた、ポルトガルのSFアクション・スリラー作品でした。
人類の多くが死に絶えた近未来を舞台に繰り広げられる、極限状態に置かれた参加者同士の戦いは、サバイバルゲームが好きな人には堪らなく興奮する場面ばかりです。
しかも参加者たちの戦う武器が、自作の槍と弓矢、ナイフと、銃がない戦いもまた、無人島ならではの戦いで充分楽しめます。
ただ、本作に出演もしているディオゴ・モルガド監督の登場場面が、ポールの回想するところでしかないのが、少し残念でした。
カルロス・カルバリョ演じるリアムが、弓矢で参加者たちを攻撃する姿は本当に格好良いです。
主催者側の宇宙人がどんな存在なのか、人類滅亡の全容があまり語られていないので、続編が出るのではないかと期待できる物語の最後でした。
主催者の宇宙人に翻弄された人類が、地獄のバトルロワイヤルに挑むSFアクション・スリラー映画が観たい人に、オススメの作品です。
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