連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第113回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第113回は、マーク・ネヴェルダイン監督が演出を務めた映画『リーサル・バレット』です。
1989年、パナマ国軍最高司令官のマヌエル・ノリエガの独裁により、政治的混乱に陥るパナマ。凄腕の元海兵隊員ジェームズ・ベッカーは妻を亡くして以来、彼女が眠る墓地で毎日酒におぼれる生活を送っていました。
そんなベッカーの悲しみの日々は、彼のかつての指揮官スタークの訪問によって終わりを告げます。麻薬カルテルとの関係が噂されるノリエガ将軍を排除するべく、パナマへ潜入し“ある取引”を完了するように命じられたのです。
しかしその任務には、ベッカーの想像もつかない陰謀が動き出していた………映画『リーサル・バレット』のネタバレあらすじと作品の魅力をご紹介いたします。
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CONTENTS
映画『リーサル・バレット』の作品情報
【公開】
2022年(プエルトリコ、アメリカ、イギリス合作映画)
【脚本】
ダニエル・アダムズ、ウィリアム・バーバー
【監督】
マーク・ネヴェルダイン
【キャスト】
メル・ギブソン、コール・ハウザー、ケイト・カッツマン、チャーリー・ウェバー、ネストル・ロドゥルフォ
【作品概要】
『アドレナリン』(2006)のマーク・ネヴェルダイン監督が、『レプリカズ』(2018)で禁断のクローン技術を見事に映像へ落とし込んだ特殊効果スタッフや、『ブラック・パンサー/ワカンダ・フォーエバー』(2022)のスタントチーム陣とともに制作したプエルトリコ・アメリカ・イギリス合作のハードアクション作品。
『マッドマックス』(1979)や『リーサル・ウェポン』(1987)などに出演するメル・ギブソンが主演を務め、『エンド・オブ・ホワイトハウス』(2013)のコール・ハウザーや、『カムバック・トゥ・ハリウッド!!』(2020)のケイト・カッツマンら豪華キャスト陣と共演しています。
映画『リーサル・バレット』のあらすじとネタバレ
1989年。パナマ国軍最高司令官のマヌエル・ノリエガ将軍の独裁により、パナマは政治的混乱に陥っていました。
アメリカ・テキサス州ダルハート。元凄腕の海兵隊員ジェームズ・ベッカー(本名はジェームズ・マクラウド)は1年以上前に妻のサラを亡くして以来、彼女の墓の前で酒に溺れるという日々を送っていました。
そんなベッカーの悲しみの日々は、彼のかつての指揮官スタークの訪問によって突如終わりを告げます。
その翌日、ネバダ州ネリス空軍基地。スタークはベッカーに、ベッカーと同じ海兵隊出身であるCIAの特殊作戦軍のハンク・バーンズを紹介しました。そしてスタークは、バーンズと一緒にベッカーに与える任務の内容を説明しました。
イラン・コントラ事件以来、アメリカの対外情報機関「中央情報局(CIA)」はパナマの米軍基地を拠点に、太平洋とカリブ海の間にある中央アメリカの国「ニカラグア」の反共産勢力(コントラ)に武器を提供していること。
いつもコカインとウィスキーに溺れているノリエガに代わり、気さくで友好的な人物であるマルコス・フスティネス大佐が実務を仕切っていること。アメリカはコントラに直接武器を売ることはできないため、CIAは新しい支援方法を常に模索していることを。
そしてスタークは、互いに利害が一致しているコントラと協力してノリエガを排除するべく、ベッカーにパナマに潜入してソ連製のヘリの取引を完了する極秘任務を命じるのです。
バーンズは海兵隊レベル1(3等軍曹~2等兵、基本管理業務。「0141」とも呼ばれる)ですが、ソ連の軍装備品に詳しいエキスパートで、ベッカーは海兵隊レベル3で機密情報にアクセスできるため、この取引にうってつけの人物だとスタークはいいます。
なお「イラン・コントラ事件」とは、アメリカのロナルド・レーガン政権が、レバノンでシーア派テロリスト集団に捕らえられているアメリカ人の解放を目的としてイランと裏取引をした上に、アメリカ国家安全保障会議からイランへ武器を売却。さらにその代金をコントラの援助に流用していた事件のことです。
長期滞在となる可能性が高いため、ベッカーは観光ビザではなく「コンサルタントとしてパナマのカジノ『カジノ・ナショナル』に行く」という“設定”でパナマへと飛びました。
パナマ・パナマ市に到着後、ベッカーはスタークの指示に従い、ヘリの取引の仲介役エンリケ・ロドリゲスに会いに行きました。
エンリケの父親は元政府高官でしたが、エンリケが12歳の時に死亡。エンリケは人脈が広く、ハーバード大卒で頭も良い男、フスティネスは彼の名付け親だとスタークは言います。そしてエンリケの叔父ビリー・フォードは、ノリエガと対立する政治家でもありました。
宿泊先でありエンリケと会う場所でもあるホテルに到着後、ベッカーは早速部屋で待っていたエンリケに仕事の話をしようとしました。
ですがエンリケは麻薬と娼婦に溺れており、ベッカーに複数の婚約者を紹介したり、「日が傾くような時間に仕事の話はしない」「パナマを楽しめ、取引はそのうちやろう」などと言ったり、なかなか仕事の話をしようとしません。
その日の夜、カジノ・ナショナル。ベッカーはコントラのメンバーであるブルックリン・リベラに声をかけられ、ヘリの取引の話はコントラの司令官ステッドマン・ファゴス・ミュラーと話すよう指示されます。
それなら自分が泊まっているホテルの部屋に来てくれないかとベッカーが言うと、「彼とバーンズはマイアミにいるから、アメリカ国防総省のご厚意で用意された飛行機で今すぐ移動する」とブルックリンは言うのです。
フロリダ州マイアミ。ベッカーはブルックリンと一緒に二人が待つコントラの隠れ家へ向かい、ヘリの取引の話をしました。
ミュラーはベッカーに、左翼ゲリラ(サンディニスタ)によって両親を射殺され、さらにノリエガの命令で妻と娘が殺されたと話します。
当時12歳だった彼の娘は、母親の目の前で兵士に強姦されました。さらに二人は顔を撃たれ、その死体はドブに捨てられたと………。
サンディニスタ(正式名称はサンディニスタ民族解放戦線)とは、ニカラグアで発生した左翼(急進的・革命的な思想傾向がある)政治運動または政党のことをいいます。
ミュラーはベッカーに、「ホンジュラスの山中に3000人の部下がいる。俺たちが戦う目的はサンディニスタを殺すこと、復讐をしたいだけだ」と言いました。そしてベッカーに、「明日ブルックリンと一緒にホンジュラスへ行き、難民キャンプを訪れてみろ」と命じました。
翌日、ホンジュラスのルス・ルス。ベッカーはブルックリンと一緒にコントラの難民キャンプを訪れ、サンディニスタやノリエガの命令によって家族を殺された難民たちの実情を知りました。
ブルックリンはベッカーに「悪人退治に付き合え」と言って銃を手渡し、彼を連れてミュラーとその3000人の部下と合流。ロックの音楽をかけて山中にあるサンディニスタの拠点を襲撃します。
敵ならば誰であろうと容赦なく殺す彼らの姿を見て、言葉を失くすベッカー。ミュラーは、「ソ連の通信機器がほしければ、ソ連製のヘリを持ってこい」と命じました。
映画『リーサル・バレット』の感想と評価
元凄腕の海兵隊員の恋と戦いにドキドキ!
物語の序盤と作中で、1年以上前に亡くした最愛の妻サラを思い悲しみに暮れるベッカーの姿は、何とも痛ましく見ていてとても辛いです。そんな彼がやっと、カミラという美女に出会って恋に落ちたことで、彼の心に平穏と幸せが訪れました。
カミラもコロンビアのギャングに脅されてベッカーを騙していたとはいえ、彼と過ごしていくにつれて本気で彼を好きになったのでしょう。
再会した二人が愛を確かめ合う姿は微笑ましく、このまま二人の関係が続いて、任務が終わった後にも幸せな時間を過ごしてほしかったです。
しかし運命は残酷で、カミラはベッカーが知らぬところで殺されてしまいました。
大事な人を2人も失ってしまったベッカー。彼が復讐心に燃えつつ、冷静さをギリギリのところで保ってフスティネスとバーンズを追い詰めていく様は終始ハラハラドキドキさせられますし、とても格好良かったです。
メル・ギブソン演じる、頼れる指揮官スターク
ベッカーに極秘任務を命じて以降、スタークは物語の後半まで登場しません。
ですがフスティネス・エンリケ・バーンズによるベッカー暗殺と、エンリケに支払った手付金の100万ドルの奪還を目論んでいることが明らかになった時、ついにスタークがパナマに降り立ちます。
窮地に陥った主人公のバーンズを、スタークが華麗に救っていく様はどれも最高に格好良いです。
特にバーンズとの取引前、スタークが素手で見張りの男を殺し、その男が持っていたスコープをバーンズに投げ渡す場面は、男女問わず観ている人は黄色い悲鳴をあげることでしょう。
まとめ
最愛の妻を亡くして以来、彼女の眠る墓の前で自堕落な生活を送っていた元凄腕の海兵隊員が、かつての指揮官から極秘任務を命じられ、パナマに巣食う巨悪を撃ち抜いていくプエルトリコ・アメリカ・イギリス合作のハードアクション作品でした。
ベッカーが危険な任務のために、エンリケとジャングルでのバイクレースにまで挑む姿は、オフロードやバイクが好きな人はもちろん、知らない人でも楽しめるほどのスリルが満載です。
味方かと思われていたフスティネスとエンリケの裏切りには衝撃を受けますし、バーンズまで敵になるとは誰も予想だにしていなかったことでしょう。
そして何といっても、作中ではハリウッドの第一線を走り続けるトップ俳優メル・ギブソンが、頼れる指揮官スターク役を熱演。年齢を感じさせないキレのあるアクションを披露してくれます。
エンドロール中、実際にノリエガがDEA捜査官に拘束された姿を映した映像が流れています。
また、フスティネスに殺されたエンリケの遺体が、フスティネスの豪邸の庭に掘られた穴の中に入れられている場面が描かれていました。
メル・ギブソン×『アドレナリン』(2006)のマーク・ネヴェルダイン監督が仕掛けるハラハラドキドキの超絶ハードアクション映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。
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