連載コラム「邦画特撮大全」第105章
今回の邦画特撮大全は、映画『仮面ライダーオーズWONDERFUL 将軍と21のコアメダル』(2011)を紹介します。
2022年3月12日から期間限定上映されるVシネクスト『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』。放送から10周年を迎えた『仮面ライダーオーズ』(2011~2012)の復活作品です。
2021年11月5日(金)、東京国際映画祭で本作『仮面ライダーオーズWONDERFUL 将軍と21のコアメダル』が上映された際に、『仮面ライダーオーズ』の復活が発表されました。
それに先駆けて、今回の邦画特撮大全では『仮面ライダーオーズ』の劇場版である『仮面ライダーオーズWONDERFUL 将軍と21のコアメダル』を解説していきます。
CONTENTS
『仮面ライダーオーズWONDERFUL 将軍と21のコアメダル』の作品概要
【公開】
2011年(日本映画)
【原作】
石ノ森章太郎
【脚本】
小林靖子
【監督】
柴﨑貴行
【キャスト】
渡部秀、三浦涼介、高田里穂、岩永洋昭、君嶋麻耶、有末麻祐子、山田悠介、橋本汰斗、松本博之、未来穂香(現:矢作穂香)、神尾佑、甲斐まり恵、酒井美紀、荻野可鈴、根岸泰樹、ゆかな、大友龍三郎、中田譲治、福士蒼汰、宇梶剛士、松平健
【作品概要】
平成仮面ライダー第12作目『仮面ライダーオーズ』の劇場用オリジナル作品。
渡部秀、三浦涼介らテレビシリーズのキャスト総出演したほか、敵役・錬金術師ガラに『Love Letter』(1995)の酒井美紀、時代劇「暴れん坊将軍」シリーズの松平健が徳川吉宗として客演。
脚本はアニメ『進撃の巨人』(2013)『ジョジョの奇妙な冒険』(2012)の小林靖子。監督は『仮面ライダーリバイス』(2021)を手掛ける柴崎貴行。
『仮面ライダーオーズWONDERFUL 将軍と21のコアメダル』のあらすじとネタバレ
2011年6月、ドイツ・テューリンゲン州の森の奥にある遺跡には、800年前にコアメダルを創り出した錬金術師のひとりとコアメダルが封じられており、鴻上ファウンデーションの研究チームはその発掘の最中でした。
しかし石板の封印を解くと、大地がメダルのように裏返り、テューリンゲンの森が東京に出現。そして封じられていた錬金術師ガラが復活します。現場にいた鴻上会長と秘書の里中はガラに囚われてしまいました。
火野映司/仮面ライダーオーズ、伊達明/仮面ライダーバースは変身して戦いますが、ガラは映司たち、さらには敵怪人のグリードたちから力の源であるコアメダルを奪ってしまいます。
映司たちは何故かその場に居合わせた少年・若葉駿を助けますが、森には結界が張られ、変身することもガラに手出しすることも出来なくなってしまいました。
ガラは使い魔ベルを人間社会に放ちます。ベルは「チャンスタイム」と称する2択クイズを迫り、人々の欲望を叶える代りにその欲望をメダル化していきます。
メダル化された欲望はガラの元に貯まっていきます。そしてまた町がメダルのようにひっくり返り、現代の東京の町に江戸の町が出現しました。映司と相棒アンク、泉比奈、駿、多くの現代の人々は江戸の町の中に閉じ込められてしまいます。
ガラの目的はこの世界を破壊した後、新たな世界の王となることだったのです。
『仮面ライダーオーズWONDERFUL 将軍と21のコアメダル』の感想と評価
『仮面ライダーオーズWONDERFUL 将軍と21のコアメダル』は当時、2011年3月11日に東日本大震災が発生したこともあり、「絆」をテーマにした明るく楽しいファミリー映画として製作されています。
『仮面ライダーオーズ』のテレビシリーズのテーマは「欲望」で、主人公サイドと怪人がその欲望の象徴である「メダル」の争奪戦を繰り広げる物語です。
シリーズ終盤では主人公の火野映司が異形の怪人へ変貌していく様とその葛藤を描いており、シリアスな要素も多分に含んだ作品となっています。……とは言え、物語の根幹である要素を簡単に外すことはできません。
「メダル争奪戦」は主人公たちとゲストキャラクターのガラの戦いに集約され、テレビシリーズの敵グリードたちは本作では映司たちに協力する展開となっています。「欲望」という要素自体も全く扱わないのではなく、映画のテーマである「絆」と併せることで終盤に大きな展開を起こします。
そもそも『オーズ』という作品は欲望そのものを否定する作品ではありませんでした。
本作で非常に巧みなのがテーマである「絆」の描き方です。目には見えない「絆」は、登場人物の関係性で見せていく訳ですが、本作では「手を繋ぐ」という動作に集約して描かれています。
中盤で主人公の火野映司とゲストの少年・駿が手を繋いでいるのを見て、ヒロインの泉比奈が「親子みたい」と言い比奈も駿と手を繋ぎます。
ここで「手を繋ぐ」ことが家族、つまり「絆」と明言することでテーマを明確にすると同時に終盤の展開の伏線にもなっているのです。
火野映司/仮面ライダーオーズの相棒・アンクは、本体が右腕のみで肉体は比奈の兄・泉信吾の体に憑依しています。この点から「手」とテーマをリンクさせる発想となったのでしょう。
松平健が代表作である『暴れん坊将軍』の徳川吉宗役で登場するのは大きな話題となりました。
『暴れん坊将軍』は連続ドラマが2002年に終了、その後スペシャルが3本製作されましたが、それも2008年で終了していました。
およそ3年ぶりの『暴れん坊将軍』の復活がまさか『仮面ライダーオーズ』になるとは誰も予想していなかったでしょう。また有名な『暴れん坊将軍』のテーマ曲も本編用にアレンジされたものが使用されています。
まとめ
『仮面ライダーオーズ』が本来描いていた「欲望」というテーマを損なうことなく、映画そのものの「絆」とリンクさせて見事に“ファミリー映画”として成立させた本作『仮面ライダーオーズWONDERFUL 将軍と21のコアメダル』。
松平健演じる“暴れん坊将軍”の登場や、次作『仮面ライダーフォーゼ』のキャラクターたちの顔見世など、さまざまな要素が1時間ほどの上映時間に詰め込まれています。
しかし本作は『仮面ライダーオーズ』の映画作品としても、またファミリー映画としても過不足のない仕上がりとなっています。
エンターテインメントの作り手として仮面ライダーシリーズのスタッフたちの手腕に感服します。