連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第51回
日本公開を控える新作から、カルト的に評価された知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を時おり網羅してピックアップする連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』。
第51回は、2025年1月10日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開の『FPU 〜若き勇者たち〜』。
中国を代表する若手俳優ワン・イーボー主演で贈る、超本格アクション巨編の見どころを解説します。
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映画『FPU 〜若き勇者たち〜』の作品情報
【日本公開】
2025年(中国映画)
【原題】
維和防暴隊(英題:Formed Police Unit)
【製作・監督】
リー・タッチウ
【製作総指揮】
アンドリュー・ラウ
【脚本】
ウー・メンジャン、キャリアンヌ・リー
【撮影】
ファン・ユェンマン
【編集】
ウォン・ホイ
【アクション指導】
シャ・シアロン、チェン・ジュンジー、フー・シャオガン
【キャスト】
ホアン・ジンユー、ワン・イーボー、チョン・チューシー、オウ・ハオ
【作品概要】
中韓ボーイズグループUNIQのメンバーとしてデビューし、テレビドラマ『陳情令』(2019)、『熱烈』(2023)、『無名』(2023)など映画でも活躍するワン・イーボー主演のアクション大作。
高校生青春BLドラマ『ハイロイン』(2016)で鮮烈デビューを飾ったホアン・ジンユー、『ナイト・オブ・シャドー 魔法拳』(2020)のチョン・チューシー、『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』(2018)のオウ・ハオなど人気俳優が脇を固めます。
アメリカ映画『マトリックス』(1999)でアクションコーチを担当したリー・タッチウが監督を、「インファナル・アフェア」トリロジー(2002~03)の監督・製作・撮影で知られるアンドリュー・ラウが製作総指揮をそれぞれ担当。
中国本土では、週間興行収入No.1ヒットを記録しました。
映画『FPU 〜若き勇者たち〜』のあらすじ
2018年、反政府武装集団と政府軍の武力紛争が続くアフリカへ、国連の要請を受けた中国の国連平和維持部隊「Formed Police Unit(FPU)」が派遣されました。
チームワークを重んじる分隊長ユーや人一倍正義感が強い狙撃手ヤンらメンバーたちは、一触即発の雰囲気が漂う最も危険なエリアに。
大量虐殺、テロ攻撃、暗殺、大暴動、人質事件など、幾度となく危機に直面するFPUは、人々に平和な日常を取り戻すため命がけの任務に邁進するなか、予期せぬ凶悪事件が勃発し…。
知られざる国連平和維持警察部隊の活躍
本作『FPU 〜若き勇者たち〜』は、国連での平和維持活動(PKO)のために組織された特殊部隊の活躍を描きます。
PKOでは、主に軍人で編成される国際連合平和維持軍 (PKF)のほかに、警察官で編成される国連警察(UNPOL)の武装警察隊であるFPUなどが任務にあたっており、本作では後者に属する中国の警官隊が主人公。
主要国としてパキスタン、バングラデシュ、インドなどがFPUに警官を派遣していますが、2000年から中国でも世界13地域に2,700人を派遣。対ゲリラ作戦、外交援助、紛争当事者の調停、戦争犯罪の調査、戦犯被疑者の逮捕、避難民の移動など、活動内容は多岐にわたります。
平和維持のため日々活動する、知られざるFPUの精鋭を描くにあたり、実際の中国平和維持警察に取材を敢行。撮影現場ではキャスト陣に演技指導も施しています。
リアルにこだわった臨場感あふれるバトル
反政府武装集団と政府軍の戦闘が続くアフリカ大陸のサンタリオン共和国(架空国)に、国連の要請を受けFPUとして派遣された隊長のユー・ウェイトン以下、新人で狙撃手のヤン・ジェンら精鋭が集まる中国の部隊が現地入りします。
逃げ場をなくした人々の安全確保に尽力するなか、虐殺容疑で反政府グループリーダーのアミールが逮捕。アミールを有罪にする証人の護送にあたったFPUですが、リーダーを奪還すべく、無数の手下たちが襲い掛かります。
本作の見どころは、大量のロケット弾や爆弾、一斉射撃で迫りくる反政府グループとFPUのバトル。カーチェイス、パルクールによる追走劇、迫力ある大爆破に加えて、『アメリカン・スナイパー』(2015)を彷彿とした狙撃手同士の銃撃戦など、スリリングな展開が満載。
小道具も、序盤でのホアン・ジンユー扮するユー隊長が広場で暴徒に襲われるシーンで飛び交う炎や発煙弾、そしてガソリンの瓶などはCGではなく本物を使用。
ホアンも、「火傷防止クリームを全身に塗ってはいたけど、やはりものすごく熱かった。カットがかかるとスタッフはすぐさま二酸化炭素で俳優を冷やしてくれた」と撮影時の苦労を語ります。
2、3ヶ月間念入りにリハーサルを重ねた上で撮影したという暴動シーンも含め、緊迫のアクションを手がけたのは、『マトリックス』でユエン・ウーピン率いるアクションチームに属し、主演のキアヌ・リーヴスのコーチを担当したリー・タッチウ監督。『孫文の義士団』(2010)で香港電影金像奨・最優秀アクション設計賞を受賞した実績の持ち主です。
アクションもさることながら、ユーとヤンとの因縁も並行して描かれます。隊長と新人という立ち位置ながら、過去のある事件をきっかけに生じた憎しみと罪悪感の交差。両者の間に何があったのか?
そして絶体絶命の危機の中、FPUは無事任務を遂行できるのか?
手に汗握る、精鋭たちのドラマにご期待下さい!
次回の『すべての映画はアクションから始まる』もお楽しみに。
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松平光冬プロフィール
テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。
ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューの他、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219)