Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2025/11/22
Update

『ラジオ・ダダーブ』あらすじ感想と評価考察。ケニア難民キャンプの中心からラジオ通じて“真の肉声”を伝える|いま届けたい難民映画祭2025vol.6

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

連載コラム『いま届けたい難民映画祭2025』第6回

難民映画祭は、難民をテーマとした映画を通じて、日本社会で共感と支援の輪を広げていくことを目的とした映画祭で、世界各地で今まさに起きている難民問題、1人ひとりの物語を届けています

今年で20回目を迎える難民映画祭。それは、「節目」であると同時に、「続いてしまった現実」を映す鏡でもあります。

2025年11月6日(木)〜12月7日(日)開催の第20回難民映画祭では、困難を生き抜く難民の力強さに光をあてた作品をオンラインと劇場で公開。公開される9作品をCinemarcheのシネマダイバー菅浪瑛子が紹介します。

今回紹介するのは、ケニアの難民キャンプから世界へ!ラジオを通して難民の声を伝えるドキュメンタリー『ラジオ・ダダーブ』。

生まれも育ちもケニアのダダーブ難民キャンプのファルドウサはジャーナリストとして、声なき人の「声」を世界に届けます。

【連載コラム】『いま届けたい難民映画祭2025』一覧はこちら

映画『ラジオ・ダダーブ』の作品情報

【日本上映】
2025年(ケニア映画)

【原題】
Radio Dadaab

【監督】
Environmental Justice Foundation

【作品概要】
ケニアにあるダダーブ難民キャンプ。ファルドウサの母は1990年代のソマリアの内戦で故郷を逃れてきました。ファルドウサは、難民キャンプで生まれ、難民キャンプの外に出たことはありません。

内戦だけでなく、近年は気候変動による干ばつや飢餓により故郷を追われた人が難民キャンプに多くやってきました。そのような人々の声なき“声”をファルドウサはラジオで世界の人々の届けます。

難民キャンプの現状や世界の気候変動を映し出したドキュメンタリー。

映画『ラジオ・ダダーブ』のあらすじ

ケニアのダダーブ難民キャンプ。

そこで暮らす25歳のファルドウサは、キャンプで生まれ、育ちました。

パスポートもなく、ケニアでの出生証明書もありません。父はキャンプで亡くなり、母と暮らしています。

ファルドウサの両親はソマリアの内戦から逃れ、このダダーブ難民キャンプにやってきました。

しかし、近年は内戦だけでなく、気候変動による干ばつ、そして飢餓の影響によって故郷を離れざるを得ない人々がダダーブ難民キャンプにやってきます。

難民キャンプは、そもそも一時的な住まいとして作られているため、丈夫な作りではなくキャンプ全体の設備も十分とは言えません。

故郷の問題やキャンプの問題など、さまざまな声なき声をファルドウサはラジオのジャーナリストとして世界に届けています。

映画『ラジオ・ダダーブ』の感想と評価

1990年代に本格化した内戦により、多くのソマリアの市民が難民となって故郷を逃れました。

ケニアには3つの難民キャンプがあり、中でも最大規模がダダーブ難民キャンプです。

30年も続く難民キャンプの中で、まさに90年代に故郷を流れダダーブにやってきたのが、ファルドウサの両親でした。

ソマリア人の両親を持つファルドウサはソマリア人という意識はありますが、ソマリアには一度も行ったことがありません

また、ケニアでの出生証明書もないファルドウサはパスポートもなく、難民キャンプの外に行ったこともないのです

難民キャンプでの生活が長引いた結果、ファルドウサのような境遇の人は多くいるでしょう。

そんななか、近年難民キャンプにやってくる人々は内戦だけが理由ではなく、気候変動による干ばつや飢餓が原因で故郷を逃れ渡ってきた人が増えていると言います。

どうしても“難民”というと、紛争や戦争により故郷を離れざるを得なかった人をイメージしてしまいますが、それだけではないのです。

先進国のトップは会議でCO2の排出量削減に向け目標を掲げてはいますが、先進国がエネルギーを使いCO2を排出した結果、被害を受けているのはアフリカなどの国々です。

2022年、ソマリアの干ばつで推定4万3000人が死亡し、毎年2100万人が異常気象で避難していると言います。

このまま気温が上昇すれば、2050年までに最大12億人が避難を強いられることになります。

単なる数字だけではない、住む場所を奪われている人々がいることを知ってほしいとファルドウサは難民の声を通して世界に訴えかけているのです。

まとめ

ケニアの難民キャンプから世界へ!ラジオを通して難民の声を伝えるドキュメンタリー『ラジオ・ダダーブ』。

生まれも育ちもケニアのダダーブ難民キャンプのファルドウサは、気候変動による干ばつや飢餓により故郷を追われた難民の声を世界に届けています。

しかし、問題は、気候変動による環境問題だけではありません

30年と続くダダーブ難民キャンプは、ケニアで最大の難民キャンプですが、難民キャンプにやってくる人は途絶えることなく、これ以上難民を受け入れることは厳しい状態に陥っています

そもそも難民キャンプは一時的な住居とされていたため、頑丈な作りではなくインフラなどの設備も十分ではありません。

また、水や食料、医薬品なども足りていない状況で人々の生活は深刻な状況です。

そのような状況に置かれた人々がいることを私たちは知るべきなのです。

第20回難民映画祭は2025年11月6日(木)〜12月7日(日)までオンラインにて開催されます。

難民映画祭詳細はHPにて

【連載コラム】『いま届けたい難民映画祭2025』一覧はこちら


関連記事

連載コラム

『ウーマン・トーキング 私たちの選択』あらすじ感想と評価解説。ボリビアで起きた実際の事件を基にルーニー・マーラらで描く女性たちの対話劇|山田あゆみのあしたも映画日和11

連載コラム「山田あゆみのあしたも映画日和」第11回 今回ご紹介するのは映画『ウーマン・トーキング 私たちの選択』です。 本作は『ノマドランド』(2020)のフランシス・マクドーマンドが原作にほれ込み、 …

連載コラム

映画『アンダードッグ』あらすじと感想評価レビュー。武正晴監督が最新作でキャストと見せたボクシング活劇!|TIFF2020リポート2

『アンダードッグ』は、東京国際映画祭2020のTOKYOプレミア2020にてワールド・プレミア上映! 2020年実施の東京国際映画祭。そのオープニングを飾った作品が、森山未來・北村匠海・勝地涼をキャス …

連載コラム

映画『ブラック・ボックス』ネタバレ結末あらすじと感想評価。”怪物の正体”と記憶障害の後遺症で悩むシングルファザーの真相|Amazonプライムおすすめ映画館19

連載コラム「Amazonプライムおすすめ映画館」第19回 エマニュエル・オセイ=クフォーJrが脚本・監督を務めた、アメリカのホラーサスペンス映画『ブラック・ボックス』。 交通事故で妻を亡くし、自分も記 …

連載コラム

『サッドヒルを掘り返せ』感想と解説。「続夕陽のガンマン」のロケ地を映画マニアたちが聖地へと甦らせる|だからドキュメンタリー映画は面白い9

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第9回 荒れ果てた名作西部劇のロケ地を、俺たちの手で復活させる! 『だからドキュメンタリー映画は面白い』第9回は、2019年3月8日に日本公開の、『サッ …

連載コラム

映画『大綱引の恋』感想評価と内容解説レビュー。三浦貴大と知英で描く伝統行事と恋愛模様の“青春”|OAFF大阪アジアン映画祭2021見聞録4

第16回大阪アジアン映画祭上映作品『大綱引の恋』 毎年3月に開催される大阪アジアン映画祭も今年で16回目。2021年3月05日(金)から3月14日(日)までの10日間にわたって、アジア全域から寄りすぐ …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学