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孫悟空VS猪八戒|ネタバレあらすじ感想とラスト結末の解説。西遊記外伝を実写映画化|未体験ゾーンの映画たち2021見破録36

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  • 20231113

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」第36回

世界の様々な物語を基にした映画を紹介する「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」。第36回で紹介するのは『孫悟空vs猪八戒』。

人間の能力を超えた超能力。”気”や”スタンド”、”○○の呼吸”などのスゴ技を駆使して、見た目も派手な必殺技で活躍する映画・コミック・アニメに登場するキャラクターたち。

その原点は古来より世界各地で語り継がれる、神話や伝説に登場する神々や英雄です。やがてそれは人々の手で物語化され、登場人物が生き生きと活躍するファンタジー世界が誕生しました。

そんな古典的ファンタジー作品の、東洋の代表的作品が「西遊記」。それは「ドラゴンボール」を筆頭に、現在のサブカルチャーに大きな影響を与えているのはご存じでしょう。

誰もが知っている「西遊記」は、実は膨大なサブストーリーを持つ一大絵巻です。その外伝的エピソードを膨らませた映画が登場しました。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2021見破録』記事一覧はこちら

映画『孫悟空 vs 猪八戒』の作品情報


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【日本公開】
2021年(中国映画)

【原題】
大天蓬 / The Pig King

【監督】
ダイ・イーリン

【出演】
イン・ハオミン、チャン・ユィシェン、ワン・イージャー、ダイアナ、ジェイデン・ワン、ホウ・ティンファン、シュー・トントン、アンドリュー・リン

【作品概要】
天界で暴れる妖猿・孫悟空。それに挑んだ神仙の武将・天蓬こそ、後の猪八戒だった…。「西遊記」の世界を大胆にアレンジし、最新の技術で映画化したファンタジーアドベンチャー。

監督はデビュー以来、歴史ファンタジー作品を手掛ける中国の若手クリエーター、ダイ・イーリン。アクション監督は『イップマン 継承』(2016)などの作品でスタントを務めたチャン・ボー。

天界の武将から馴染みの豚の妖怪、猪八戒になる主人公を演じるのはドラマ『玄門大師(The Taoism Grandmaster)』(2018~)などに出演しているイン・ハオミン。華流ドラマで活躍する俳優が数多く出演した作品です。

映画『孫悟空vs猪八戒』のあらすじとネタバレ


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天上界にある、神仙の住む世界に現れた孫悟空(チャン・ユィシェン)。斉天大聖と名乗り天界の支配者・玉帝に叛乱を企てた悟空に、兵士たちが立ち向かいますが、変幻自在の武器、如意棒を操る妖猿にはかないません。

この危機に玉帝は、天蓬元帥(イン・ハオミン)と護天神将(アンドリュー・リン)に、孫悟空討伐を命じます。孫悟空との戦いで危機に陥った護天神将を、9本の歯を持つ馬鍬のような武器・釘鈀で救った天蓬。

釘鈀と如意棒で激しく闘う2人。「天有天道、因果有道(天に天道あり、因果応報は運命)」と告げる天蓬に、俺様は天に挑むと叫ぶ孫悟空。如意棒の一撃を受け天蓬は武器を手離します。釘鈀は下界へと落ちていきました。

天蓬を襲う孫悟空の前に釈迦如来が現れます。孫悟空を手でつかんだお釈迦様は、そのまま彼を下界に封じました。お釈迦様に「天有天道、因果有道」の言葉は、自らの心に留め置くように告げられた天蓬。

美男である天蓬元帥は、天界の仙女たちの人気の的でした。それでも驕る事のない天蓬に玉帝お気に入りの美女、追月仙子(嫦娥)(シュー・トントン)が声をかけました。

謙虚に答える天蓬ですが、護天神将はそれを玉帝に密告します。彼は帝に対し五指山に封じられた孫悟空が、逃げて世を乱すかもしれないと進言します。

天蓬元帥ならあの妖猿を倒す、そうすれば憂いは絶たれるとの護天神将の言葉に従い、天蓬に悟空討伐を命じる玉帝。

自信に満ちた態度で命に従った天蓬に、新たな武器、上宝沁金鈀を玉帝は与えました。孫悟空を倒しすぐ帰ると約束した天蓬に、お待ちしていると告げてハンカチを渡した追月仙子。

天蓬は下界を目指します。その頃、とある砂漠に若い娘の宝児(ワン・イージャー)をリーダーとする、同じ年頃の4人の男女がいました。

4人は妖魔ハンターで、財児(ダイアナ)・金子(ジェイデン・ワン)・銀子(ホウ・ティンファン)は宝児の指示で術を使い、砂の中から現れた竜を捕らえます。それを封印しようとした時、天蓬が姿を現します。

竜を逃がした天蓬を神仙と知らず叱りつける宝児。理由が判らず戸惑う天蓬ですが、彼らに竜が襲い掛かりました。

慌てて逃げ出す宝児たち。天蓬は竜を簡単に倒すと人の姿に化身し、この地の土地神を呼び出します。戻ってきた4人は土地神の言葉から、この男が神仙の天蓬元帥だと悟ります。

天蓬は五指山の場所を尋ねますが、土地神は答えられません。すると自分は五指山の場所を知っている、と言い出した宝児。

彼女も場所を知らないと知る仲間たちは焦りますが、信じた天蓬は彼女が指差した方向に姿を消します。財児に嘘をついた理由を聞かれ、宝児は神仙と行動し彼が倒した怪物を手に入れれば楽に稼げると答えました。

ところが場所を聞くと天蓬は姿を消し、思惑は外れたとボヤく宝児。その時天蓬が姿を現します。言われた方向に五指山は無かったと怒る天蓬に、宝児は適当な言葉を並べ自分が案内すると訴えます。

神仙と共にあてもなく歩く4人。宝児があれは三指山、などと適当なことを言っていると金子が妖気を嗅ぎつけます。目の前に翼を持つ巨大な一角獣が現れました。

怪物が手強いと見るや隠れ、天蓬に任せる宝児たち。人の姿から鎧を身にまとう天界の元帥姿に変わり、一角獣に立ち向かう天蓬。

闘いの場に子豚が一匹紛れ込みます。子豚を助けた宝児を天蓬が守り、一撃で一角獣を仕留めました。狙い通り怪物を封じる宝児たち。

先を急ぐ天蓬を欺き、子豚を連れた宝児一行はある場所を訪れます。そこは人と妖怪が共存する街でした。そこには封じた妖魔を取引する市場があります。

そこで封じた怪物を売る宝児。手強い怪物を封じた彼女は大金を手にします。しかし天蓬は彼女に利用されたと気付きました。

怒った天蓬は彼女に手を上げますが、辛うじて止めました。そこに蜘蛛の怪物の毒に子供が苦しんでいる、と嘆く女の声が聞こえます。毒蜘蛛の妖魔を退治してくれれば、必ず五指山に案内すると言う宝児。

一行は妖魔を倒しに向かいます。夜になり彼らが野宿した時、人間の超越した神仙に人の生き死には関係ないと告げた天蓬に、自分の育ての親はヘビの妖怪に殺された、と宝児は話しました。

それからは村の人々に助けられながら、必死に生きていたと告げる宝児。家族を失う苦しみはよく知っていると言葉を続けます。

この経験から妖魔ハンターを目指したと話していると、銀子と金子が蜘蛛女の妖魔に捕らえられます。宝児が故郷の村、高家庄について天蓬に語っていると、蜘蛛の糸に覆われた財児が落ちてきました。

財児は糸に引かれ姿を消します。彼女を助けてとの宝児の訴えで、糸の向かった方向へ飛んだ天蓬。

そこには怪しい屋敷があり、中には美しい女がいました。天蓬は彼女が蜘蛛の怪物だと見破ります。蜘蛛妖魔が吐いた毒が天蓬を襲った時、宝児が飛び出します。

毒は宝児に命中します。天蓬は妖魔を倒しますが、宝児は毒で倒れました。助け出された財児が宝児を必死に看病します。

宝児が意識を取り戻した時は、3日が経過していました。その間天蓬は彼女と子供を救う薬草を手に入れようと、苦心したと教える財児。

下界の人々を軽んじていた天蓬元帥も、宝児と語り合う内に優しい表情を見せるようになりました。月の光の下で追月仙子のハンカチを見ていた天蓬は、宝児が来ると慌ててそれを隠します。

神仙の世界に興味を持った宝児は、有名な追月仙子がどれほど美しいか尋ねます。彼女の態度に天蓬は興味を持ち始めていました。神仙と人間を区別して考える彼は、堅苦しい返事しか答えません。

助けてくれた礼を言う宝児に、目的を果たし天界に帰れば2度と会う事はないと言い切る天蓬。

天蓬を好きになった宝児は財児に相談します。彼の関心を引こうと、宝児の顔に化粧を施す財児。しかし腕はお粗末で、雑に化粧された宝児の顔を見た金子と銀子は反応に困ります。

その姿で必死に愛を告白する宝児を鼻で笑った天蓬。大きな考え違いをしていると告げます。自分の下界での目的は五指山に行くことだけだ、と言う天蓬に必死に食い下がる宝児。

天蓬は思わずお前は私を騙した、と声を荒げます。天蓬元帥である私が人間にすぎないお前など愛さない、お前を愛するのは豚くらいだと叫びます。

拒絶された彼女は、立ち去る天蓬の後ろ姿を見つめます。財児たちが打ち上げた花火が空しく周囲を照らしました。

宝児を傷付けたと後悔した天蓬は話しかけようとしますが、財児が現れ姿を隠します。財児に天蓬を騙す悪いことをした、せめて償いに彼のために五指山を見つけようと語る宝児。

彼女は五指山の場所を知るため、占術を操る妖婆の元を訪ねます。妖婆は引き換えにあるものを要求します。それは宝児の赤い糸、結ばれる相手とつながっている運命の赤い糸でした。

それを失うことは、愛する運命の人と永遠に結ばれないことを意味します。その人は天蓬では無かった、どうでもいいと言って宝児は取引を承諾します。

妖婆の占術で天蓬の前に五指山が姿が映し出されます。場所を知った天蓬は五指山に向かい、山を封じる札を剥がします。すると岩山は2つに割れました。

五指山の中では暇を持て余した孫悟空が、自分の分身相手に遊んでいました。そこに現れた天蓬は悟空に挑み、宝児たちも駆けつけます。

しかし悟空の如意棒に玉帝から与えられた武器、沁金鈀は撃ち砕かれ天蓬は破れました。敗北にショックを受けたのか、励まそうとした宝児を怒鳴りつける天蓬。

財児はこの場所を突き止めるために、宝児が何を犠牲にしたか語ろうとしますが、それを止めた宝児。彼らのやり取りを、孫悟空は冷めた表情で眺めていました。

打ちひしがれた天蓬元帥は、黙ったまま五指山から去っていきました…。

以下、『孫悟空vs猪八戒』のネタバレ・結末の記載がございます。『孫悟空vs猪八戒』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


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敗北から立ち直れぬまま天界に戻り、玉帝に謁見した天蓬元帥。勅命を果たせず孫悟空に破れた彼を、皆が陰で中傷します。

彼にハンカチを渡した追月仙子の心も離れていました。必死に彼女に言い寄る姿を、護天神将が目撃し帝に報告します。怒った玉帝は彼から元帥の位をはく奪し、法力を奪いました。

そして天蓬は下界に追放されます。金も無く物乞い同然の姿で酒に溺れ、無銭飲食した店から叩き出される天蓬。

水面に映る自分の姿を見て自嘲する天蓬。そんな彼に同じく物乞いの男が、3年間五指山に棲む怪物に挑み続けている、妖魔ハンターがいると伝えます。

それは豚を連れたハンターだと聞いて、宝児が孫悟空に挑んでいると知った天蓬は五指山に向かいます。物乞いの男は天蓬を黙って見送りました。

財児たち仲間の力も借りずに挑む宝児を、孫悟空は分身であしらいます。お釈迦様にこの地に封印され外に出られない悟空には、宝児の挑戦など暇つぶしに過ぎません。

駆け付けた天蓬に気付いた宝児は、己の姿を恥じて逃げた彼の後を追いました。追いついた彼女は、天蓬が法力を失ったと知ります。

宝児は彼を食堂に連れ食事を振る舞いますが、落ちぶれた天蓬は好意を素直に受け取ることが出来ません。彼を気遣い服を買って来ると言い残し、席を外す宝児。

戻ってきた宝児に、孫悟空に挑むなど無駄だと天蓬は告げますが、彼女は諦めようとしません。それを愚かだとあざ笑う彼に、宝児はあの立派な天蓬元帥はどこに消えたと叫びます。

もう以前の天蓬元帥はいないと答える天蓬。あなたは自暴自棄のあまり、悟空どころが自分自身にも負けたと指摘する宝児。

店の者が料理した子豚を持ってきます。それは宝児が大切に飼っていた子豚でした。宝児は嘆き悲しみますが、それは自分が彼女の心を束縛していると感じた天蓬が、嫌われるために行った行為でした。

怒った財児が天蓬の前に現れ、彼女は天蓬の為に孫悟空に挑み、今も挑戦していると伝えます。また宝児が命を危険にさらしているとと知り、五指山に向かった天蓬。

五指山では悟空が分身に宝児の相手をさせていましたが、飽きたのか現れた天蓬に見せるためか自身が挑戦を受けることにします。力及ばず死んでも、必ず天蓬が仇をとると言う宝児。

悟空は如意棒を出しました。彼が本気と知り宝児をかばおうとした天蓬ですが、宝児と共に砂漠まで吹き飛ばされました。

天蓬は彼女の名を叫びますが、幸いにも宝児は無事でした。2人は互いが相手の身を案じ、愛しく思っていると気付きます。

彼は孫悟空への無謀な挑戦を止めてくれと頼み、今度は自分が闘うと言いました。しかし法力無しで勝つ事はできません。

天蓬は気付きます。最初の天界での孫悟空との闘いの際に下界に落とした武器、釘鈀。それを手に入れれば悟空と互角に渡り合えます。

宝児は釘鈀を探そうと言いますが問題があります。天界の1日は下界の1年。天界で20日前に武器を落としたが、ここでは20年の月日が経っている、見つけるのは困難だと言う天蓬。

そこに土地神が現れます。神器である釘鈀が下界に落ちれば天変地異を引き起こす。20年前に西方で一筋の黄金の光が現れた、4と教える土地神。それは宝児の故郷の村、高家庄の付近だと教えます。

宝児は天蓬と仲間と共に高家庄に向かいます。村に到着し村長を見かけた宝児は声をかけます。人の良い村長と村人たちは宝児と仲間を大歓迎します。

宝児は20年前、この村で天変地異が起きなかったか尋ねますが、それを聞いた人々は何故か一斉に姿を消します。残された宝児と天蓬一行は戸惑いました。

孤児となった宝児を育てた養親も歓迎しますが、20年前の話になると不自然に否定します。改めて村長に話を聞こうと決める宝児と財児。

訪ねてきた宝児と財児に、20年前神器が現れ、恐ろしい妖怪も出たと大げさに話す村長。2人は震えながらその話を聞きます。

その頃天界では天蓬元帥が追放されたのに、自分に元帥の位が与えられないと護天神将は腹を立てていました。天蓬が下界で健在な限り、元帥の地位に就くことはできないと教えられた護天神将。

下界で法力の加護も無く暮らす天蓬の命の火は間もなく尽きる、と言われ我慢することにしました。

宝児は1人で神器である武器、釘鈀を求め妖怪を探しに行きました。残された天蓬は財児と共に、話を確認しようと村長宅に向かいます。

村長の元には村人が集まっていました。現れた天蓬に村長は真実を伝えます。20年前高家庄に落下した釘鈀は、女の赤ん坊に化身しました。

村人たちはこの赤ん坊を育てようと決意します。この子が人と変わらぬ生活が出来るよう、人々は口裏を合わせこの事実を隠しました。この女の子が宝児だったのです。

なぜ真実を見抜けなかったのか、と悔やむ天蓬。宝児の腕の生まれつきの痣は、孫悟空の如意棒で打たれた跡でした。

天蓬は意識を五指山に飛ばし孫悟空と話します。宝児が人としての生を終えれば、元の釘鈀に戻る。お前は武器を得ることが出来るが、宝児を失ってしまう。

お前が俺様に言った「天有天道、因果有道(天に天道あり、因果応報は運命)」の意味をよく考えろ、と告げる孫悟空。

悟空は初めて挑戦してきた時の宝児の姿を天蓬に見せます。彼女の正体と天蓬への想いを見抜いた悟空は、お前がどんな犠牲を払い俺様に挑んでも、天蓬はお前の思いに応えない、賭けても良いと言い放ちます。

それでも天蓬に尽くしたい、その為なら命もいらない、なぜなら彼は未来の夫だからと叫ぶ宝児。孫悟空は呆れながらも、何度でも来るが良いと彼女の挑戦を受けました。その一部始終を目撃した天蓬。

村長からデタラメな話を聞かされた宝児は、妖怪も釘鈀も見つけられず高家庄に帰ってきました。文句を言う彼女に村長も育ての父も、村人まで一緒になり言い訳する始末です。

その言葉を信じ、再度釘鈀を探しに出ようとする宝児の手を握った天蓬。自分は孫悟空を倒し天界に帰ることを望まない、このまま下界で暮らすと告げました。

理由を聞かれ、なぜなら君と共に暮らしたいからだと答える天蓬。意味が飲み込めない宝児の手を取り、彼女の手の痣に赤い布を巻きます。そして人々が見守る前でプロポーズする天蓬。

宝児はそれを受け入れ、皆が歓声をあげました。その頃天界では天蓬の命の火が盛んになり、これでは元帥になれないと護天神将が腹を立てていました。

天界は今日は祝いの日で神仙は皆、都を離れています。この隙に天蓬を亡き者にしようと企てた護天神将。

高家庄では天蓬と宝児の結婚式が開かれます。村長が式を仕切り、財児・金子・銀子そして村人たちが総出で2人の門出を祝います。

式が終わろうとした時、妖しい風が吹きました。何者かが現れ天蓬を飛ばし、銀子を打ち殺しました。黒い面を着けた男に立ち向い、返り討ちにされ息を引き取る財児。

怒りにかられ立ち向かった金子も殺されます。天界からの刺客と悟った天蓬は無力な自分を殺すが良いと、死を受け入れます。

すると孫悟空の元にあった神器、天蓬元帥の武器の釘鈀が独りでに飛び、刺客の攻撃から天蓬を守りました。同時に姿が消えてゆく宝児。

結婚式の直前、密かに五指山の孫悟空を訪ねていた宝児。自分の運命に気付いていた彼女に、悟空は宝児が釘鈀に戻れば人としての生は終わると告げます。

今夜は妙な天気だ、神仙が下界に現れたに違いない。天蓬の命は尽きるだろう、とつぶやく悟空。

宝児は天蓬と結婚したので悟空との賭けに勝った、だから頼みを聞いて欲しいと願います。天蓬を守るために我が身は釘鈀になるが、結婚式をやり遂げる我が身の分身を作って欲しい、それが彼女の願いでした。

天蓬の前で釘鈀の分身である宝児は消えつつあります。占術を操る妖婆に赤い糸を売った宝児は、愛する人とは結ばれません。宝児と結婚できるなら、神仙の身を捨て死を受け入れる覚悟の天蓬も、運命を受け入れます。

素晴らしい時を共に過ごせた、と宝児は別れを告げます。私の心はあなたの心の中で生き、我が身は天蓬元帥の武器、釘鈀として今後常にあなたの傍にいると告げました。

今後きっと良い女性が見つかると言う宝児に、私はかつてあなたを愛するのは豚くらいだと罵った、ならば自分は豚の姿になろうと告げ、自らの容貌を変貌させる天蓬。

豚の妖怪と化した天蓬に抱かれ、宝児の姿は消えていきました。怒りの叫びをあげた天蓬は元帥の鎧をまとい、釘鈀を握り刺客に迫ります。逃げた刺客を追い天界に現れた天蓬元帥。

刺客の正体は護天神将でした。豚の顔を持ち釘鈀を操る天蓬元帥は強く、護天神将の武器を握り砕きます。宝児たちの仇を痛めつけ、とどめを刺そうとした時に釈迦如来が現れます。

彼が下界に転落して身を持ち崩した時、宝児が孫悟空に挑んでいると教えた物乞いはお釈迦様の化身でした。

お釈迦様は天蓬元帥に、天界に戻るなら天の法を守れ、神仙を殺してはならぬと語ります。「天有天道、因果有道」と告げるお釈迦様。

この世の出来事は夢幻と説くお釈迦様。しかし宝児は幻ではない、と護天神将に告げた天蓬元帥は彼を打ち殺します…。

何年の月日が流れたでしょうか。下界の高老荘で暮らす天蓬。子供から慕われていましたが、その容貌を始めて目にする者からは”妖怪”と恐れられていました。

そんな反応にも慣れた様子で気ままに暮らす天蓬は、宝児によく似た女性を目にして驚きます。あれは高翠蘭という娘だと、子供から教えられます。

高老荘に天竺を目指す三蔵法師と、その弟子となった孫悟空が現れます。高老荘に一夜の宿を求めた三蔵と悟空の前に、豚の容姿をした天蓬が現れました。

天蓬は三蔵法師に仏陀の経典を求める方が現れるのを、何年もお待ちしていたと話します。高僧であるあなたこそ、その人とお見受けしたと語る天蓬。

弟子にして供に加えて欲しい、天蓬は願い出ました。三蔵法師はそれを許し、彼に”八戒”の名を与えます。

三蔵法師と孫悟空と共に旅立つ”猪八戒”の姿を、高老荘の人々が見送ります。猪八戒が振り返ると、人々の中に宝児によく似た高翠蘭の姿もありました。

釘鈀を手にした猪八戒は、高翠蘭に近寄り彼女を抱きしめます。自らの法力で高老荘に結界を張り、妖魔の襲撃から村と高翠蘭を守る八戒。

これが宝児への、私からの最後の贈り物だと心の中でつぶやき、彼は三蔵法師と孫悟空と共に出発します。

この日以来、人は私のことを”八戒”と呼んだ。こうして猪八戒の天竺を目指す旅は始まりました…。

映画『孫悟空vs猪八戒』の感想と評価


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あの西遊記の猪八戒誕生秘話の物語はいかがだったでしょうか。いわゆる二次創作の映画ですが、西遊記そのものが二次創作の果てに完成した一大物語と呼ぶことが出来ます。

唐の時代にインドから仏教の経典を持ち帰った玄奘三蔵こと三蔵法師。生前から仏教界のレジェンドとして広く知られ、死後も仏教説話の主人公として語り継がれます。

やがて物語は伝説化し、異国や妖怪の登場する冒険譚として広く語られ、道教や民間伝承と結びつき文学や演芸の世界で発展します。そして明の時代に中国四大奇書の一つ、小説「西遊記」として完成したとされています。

日本でも子供から大人まで知る物語です。近年では漫画・アニメ等に二次創作の題材として活用されていますが、実は原作の詳細を知らない人も多いのではないでしょうか。

『孫悟空vs猪八戒』は原作小説「西遊記」の設定を頂戴しつつ、大胆に創作したオリジナルストーリーで猪八戒を描いた作品です。

“猪八戒”誕生秘話を大胆に描く


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豚の顔を持つ大食感、女性にも誘惑にも弱い間抜けな性格の持ち主、そして憎めないコミカルなキャラクターこそ、誰もが抱く猪八戒のイメージでしょう。

原作では元々は天界の武人、天蓬元帥でした。ところが女癖が悪く、仙女で道教では月の女神・嫦娥にちょっかいを出し、天界から追放されます。

追放された下界で人間になるはずが、人を喰う豚の妖怪になりました。様々な事件を起こしますが、天竺に経典を取りに行く者を探す観音菩薩に出会って改心、菩薩は猪悟能の名を与え天竺に向かう者の弟子になるように諭します。

こうして出家者として生活していた猪悟能ですが、なかなか天竺に向かう者は現れません。暇を持て余し欲望に負けて強引に高老荘に住む高翠蘭の婿になった後に、三蔵法師と孫悟空がやって来ます。

妖怪退治に現れた悟空と闘いますが、三蔵法師こそ天竺に向かう者と知って降参し弟子入りします。三蔵法師は彼に八戒の名を与え、以降彼は”猪八戒”と名乗りました。

映画が原作のポイントを頂きながら、大胆に物語を創作したとお判りいただけましたか。原作の欲望に弱いコミカルなキャラクターを、二枚目のイン・ハオミンが演じその性格も変えています。

「西遊記」こそ元祖アメコミヒーロー物語


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中国で娯楽小説として親しまれた「西遊記」。仏教の経典を求める物語ながら、中国の伝説や道教の世界と融合し、自由奔放な世界観で創造された一大エンターテインメントと評して良いでしょう。

将に日本の漫画やアニメ、マーベルコミックのように面白ければどんな要素でも融合させ、スケールの大きい新たな世界を構築する試みと同じです。

ちなみに「西遊記」を読むと、その壮大な描写の数々に呆れるでしょう。孫悟空がこの世の果てまで行ったと思っても、実はお釈迦様の手のひらの上だった、というのはあまりに有名なエピソードでした。

如意棒が最大の長さになると上は33番目の天上界に達し、下は地獄18番目の最下層に届くなど、人間の想像力を駆使した描写は凄まじく、なるほど中国四大奇書の一つと納得します。

人体破壊描写なども、開いた口が塞がらない表現が登場します(決して詳細なグロ描写ではありません)。ともかく孫悟空は、マーベル作品ならキャプテン・マーベルか、ダーク・フェニックス化したジーン・グレイと同等以上の能力の持ち主でしょう。

そんな「西遊記」の世界を、マーベル映画のように映像化したいと考えるのは当然の帰結です。本作の人と妖怪が共存する街の描写は、『スター・ウォーズ』シリーズの、惑星タトゥイーンの酒場を思わせる作り込まれた世界です。

中華的世界をハリウッド大作映画のスケールで描いた作品、と紹介できれば良いのですが、本作に登場するモンスターを描いたCGのレベルは、はっきり言ってアサイラムの『メガ・シャーク』シリーズや『シャークネード』シリーズと同じレベル。

何とも残念だと受け取るか、広い心で納得するかはお任せします。とはいえ人物VS人物バトル(神仙ですが)は、中々迫力満点です。

まとめ


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スケールの大きな神仙バトルの世界を描き、猪八戒というキャラクターを掘り下げたファンタジー・アクション映画『孫悟空vs猪八戒』。

情に訴える物語も、泣ける映画が好きな方なら気に入るでしょう。この王道ストーリーやや結構人が死ぬのも、中華テイストでしょうか。

本作のヒロインの正体を『映画刀剣乱舞』(2019)か、とツッこむ人もいるでしょうが、「西遊記」などでは神仙の世界に存在する物や小動物が人の世界に現れると、人間の手に負えない怪物や妖怪に変化するのは日常茶飯事です。

日本のアニメやゲームでお馴染みの擬人化も、その根を探ると中国から伝わった「西遊記」など、様々な文学・芸能からの影響があると気付かされます。

映画の製作技術が進歩したお陰で、先人が想像力を駆使して描いたファンタジー世界の映像化が可能になりました。昔話やおとぎ話、神話の世界を新たな視点で描く映画は続々登場するでしょう。

近年「西遊記」の映画化作品も続々登場しています。本作の挫折を経験した悩めるイケメン猪八戒に、実に一途な刀剣女子。2次創作の世界の愛好家なら、中々気に入るはずです。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」は…


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次回第37回は異世界に迷い込んだ少女が、恐ろしい魔女に立ち向かうファンタジー・アドベンチャー映画、『タイム・ガーディアンズ 異界の魔女と時をかける少女』を紹介します。お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2021見破録』記事一覧はこちら





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映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
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星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学