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映画『THE LAW 刑事の掟』ネタバレ感想と考察評価。ブルースウィリスの“ダイハードを彷彿”させる作品|未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録16

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  • 20231113

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録」第16回

様々な事情で日本劇場公開が危ぶまれた、埋もれかけた映画を紹介する劇場発の映画祭「未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録」。第16回で紹介するのは『THE LAW 刑事の掟』。

相棒を殺された刑事は、その仇を討とうと警察内部に巣食う悪を追求します。そして事件の鍵は、美しき目撃者にあると気付きました。

病院という閉ざされた空間で繰り広げられる、駆け引きを交えた犯人との攻防劇。まさに『ダイ・ハード』(1988)を思わせる設定で、ブルース・ウィリスが活躍する作品です。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020延長戦見破録』記事一覧はこちら

映画『THE LAW 刑事の掟』の作品情報


(C)2019 by Trauma Center, LLC, and Trauma Film Production PR, LLC

【日本公開】
2020年(アメリカ映画)

【原題】
Trauma Center

【監督】
マット・エスカンダリ

【キャスト】
ブルース・ウィリス、ニッキー・ウィーラン、スティーブ・グッテンバーグ、ララ・ケント、ティト・オーティズ、テキサス・バトル、キャサリン・デイビス、タイラー・ジョン・オルソン

【作品概要】
病院を舞台に悪徳刑事から逃れる女目撃者と、彼女を守ろうとする刑事の活躍を描くクライム・アクション映画。2007年に放送されたスティーブン・スピルバーグらが主催した、映像クリエイター発掘リアリティショー番組「On the Lot」の出場者に選ばれ、以降映画監督として活躍してるマット・エスカンダリの手掛けた作品です。

主演はお馴染みブルース・ウィリスと、『ダブル/フェイス』(2017)や清水崇監督作『7500』(2014)に出演しているニッキー・ウィーラン。『ポリスアカデミー』(1984)シリーズで人気となった、スティーブ・グッテンバーグも出演しています。

映画『THE LAW 刑事の掟』のあらすじとネタバレ


(C)2019 by Trauma Center, LLC, and Trauma Film Production PR, LLC

病院の廊下を、意識の無い血まみれの女性患者を、引きずって運ぶ男の姿がありました。男はその女性を激しく殴りつけます…。

とある狭い部屋に、2人の男が入ってきます。ピアース刑事(ティト・オーティズ)とタル刑事(テキサス・バトル)は、この部屋の住人を刺殺していました。

2人は何かを探している様子です。机の引き出しをこじ開けると、中の札束には手を付けず、携帯電話だけを持ち出します。

死体となった男に、紙幣を投げ捨てて立ち去った刑事たち。

ここはプエルトリコの首都、サンファン。マディソン(ニッキー・ウィーラン)は、とあるカフェでウェイトレスとして働いていました。

カフェには客として彼女の妹、エミリー(キャサリン・デイビス)がいました。エミリーは友人から、夜遊ばないかと誘われますが断ります。

2人でこの街で暮らしている姉妹。エミリーは保護者のように振る舞う、姉マディソンの存在を息苦しく感じているようでした。

マディソンも妹に嫌われていると実感していました。同僚のレニー(ララ・ケント)は、エミリーは多感な時期なだけで、あなたは良くやっていると慰めます。

カフェで勉強している妹に、マディソンはパイを持って行き話しかけます。しかし店で嫌な客の相手をする位なら、辞めるべきだと告げるエミリー。

生活のために、働かねばならないとマディソンは答えます。家に帰るという妹に勤務が終わるまで待つよう言いますが、エミリーはもう16歳だから、もっと自由にさせて欲しいと訴えます。

突然、エミリーの呼吸が乱れます。マディソンは吸入器を使うよう言いますが、妹はそれを家に忘れていました。エミリーに落ち着くよう声をかけるマディソン。

その頃タルとピアース両刑事は入手したメモリーカードと、携帯電話を確認していました。アプリを使い携帯のロックを解除します。

その結果殺害した男は、警察関係者に連絡している情報屋だと気付きました。

2人の刑事の不正行為は、男から警察内の人物に知らされていた可能性があります。しかし彼らは、誰がたれ込み屋と通じていたのか判りません。

自分たちで探す必要は無い。携帯を使い情報屋を装って、会いたいと連絡して現れた人物を始末すればいい。2人はそう企みました。

警察に現れたスティーブ・ウェイクス警部補(ブルース・ウィリス)の前に、相棒のトニー刑事(タイラー・ジョン・オルソン)が現れます。

トニーはウェイクスに、情報屋のジミー・ゴンザレスから会いたいとの連絡が入ったと告げました。それを聞いて不審に思うウェイクス刑事。

ウェイクスは今日ゴンザレスと話していましたが、彼は理由を言わず一方的に身を隠すと告げていたのです。その当人が、今度は直接会いたいと連絡を寄こしました。

神経質な性格のゴンザレスですが、今回は助けを求めてきたのかもしれません。トニーを指定された場所に向かわせ、自分は情報屋の隠れ家に向かうことにしたウェイクス。

妹を病院に連れていったマディソンは、担当のジョーンズ医師(スティーブ・グッテンバーグ)と話していました。また妹が吸入器を持たずに発作を起こした、と謝るマディソン。

まだ若いエミリーはストレスなどが原因で、過呼吸を起し喘息の発作を起こしやすい、と話すジョーンズ医師。しかし成長すれば、起きにくくなるだろうと説明します。

それまでは出来るだけ、エミリーを見守って欲しいと語った医師は、2人だけでのプエルトリコ暮らす姉妹を、何かと気にかけていました。

医師に礼を告げると、マディソンは入院した妹の様子を見に行きます。呼吸器を付けベットに横たわるエミリーに、吸入器を持ち歩かねば、と注意するマディソン。

吸入器を持ち歩くと、友人にからかわれて嫌だと言うエミリー。今夜は一緒にいて欲しいと訴えますが、マディソンはそれを断ります。

姉は病院を苦手にしていると、エミリーも知っていました。仕事に戻らねばならないマディソンは、妹を残して病院を後にしました。

車に戻り、ため息をついたマディソンは、今から店に戻るとレニーに連絡します。彼女に病院に残らなくて良いのか、と訊ねたレニー。

マディソンは母の事故以来、病院に来ると心落ち着けずにいました。レニーの配慮に感謝すると、彼女は店の夜のシフトに入ると告げます。

その夜、トニー刑事は情報屋のゴンザレスに指定された場所へ向かいます。一方ウェイクス刑事は、ゴンザレスの隠れ家に到着しました。

電話をかけても、ジミーと名を呼んで玄関の扉を叩いても、ゴンザレスは現れません。玄関の監視カメラの配線が切られていると気付き、ただ事ではないと判断します。

彼は玄関のドアノブを銃で撃ち、強引に中に入ります。そして中で刺殺されたゴンザレスを発見しました。呼び出しは罠だと気付き、トニー刑事に電話をかけるウェイクス。

車にスマホを置いたトニーと連絡がとれません。やむなくウェイクスは、相棒を救うべく指定された場所へと急ぎます。

その場所はマディソンが働くカフェの近くでした。ゴミを捨てに外に出た彼女は何かの物音に気付きます。そして彼女の前に、撃たれて傷付いたトニーがよろよろと現れました。

いきなり現れたトニーが出血していると気付き、悲鳴を上げるマディソン。遠くに2人の人影が現れると発砲し始め、彼女は身を隠します。

トニーを襲撃したのはタルとピアース両刑事でした。銃声を聞いた者が通報したのか、パトカーのサイレン音が迫ってきました。

銃声が止むとマディソンは、トニーの体を安全な場所に動かそうとします。しかし再度発砲が始まり、足を撃たれるマディソン。

警察が到着した、と判断したタルとピアースは引き上げます。そこに現れたウェイクス刑事が発砲しますが、逃げられてしまいます。

彼はトニーとマディソンの元に駆け寄ります。相棒が撃たれたと知り、座り込むウェイクス。

マディソンは妹が入院している病院に搬送されました。同じ病院でトニーの死を聞かされたウェイクスは、マディソンの元に向かいました。

同じ頃逃げのびたタルは先程の襲撃の際、警察から支給された拳銃を、目撃者に使ったピアースを責めていました。発見された銃弾が弾道検査されれば、彼の身元が判明します。

問題を解決するには、目撃者の体に撃ちこまれた銃弾を回収するしかありません。改めて足の付かない拳銃を用意するタルとピアース。

病院でマディソンは、ジョーンズ医師から説明を受けていました。太ももに命中した銃弾は、幸運にも大腿骨や動脈を切断することなく、体内に残っていました。

しかし今夜は外科医が残っていません。明日か明後日に手術を行うまで、この状態で安静にしておくしかないと、ジョーンズは彼女に説明します。

彼女の元にウェイクス刑事が現れます。見た事を聞かせてくれ、と言う刑事に、何も覚えていないと侘びるマディソン。

それでも襲撃者が2人だったと話します。1人しか目撃していなかったウェイクスには貴重な情報でした。彼女の聞いた、鋭く小さい銃声も彼女の体に残る40口径弾と一致するものです。

彼女を信用できる目撃者だと信じたウェイクス。しかし犯人の名など、解決に結びつく証言は得られずに終わります。マディソンは撃たれた人物について訊ねました。

撃たれたのは自分の相棒だ、と彼は告げました。犯人は警官を躊躇なく殺す危険な連中で、君はそれを目撃したと説明するウェイクス刑事。

マディソンの運び込まれた病院に、タルとピアースが現れます。刑事の立場を利用して、撃たれた人物がどこに搬送されたかスタッフに尋ねます。

しかしスタッフは、安全上の理由からどこかに連れて行かれたらしく、どの病室か判らないと伝えます。病院の警備室への案内を頼むタル刑事。

証人である彼女を守ろうと、ウェイクスは病院と相談して、今は誰もいない7階の感染症用の、隔離病棟の病室に連れて行きました。

人目につかず訪問者もいない、この場所が一番安全だと説明するウェイクス。さらに念のため病室の前には、このジェイコブス巡査がいると護衛の警官を紹介します。

病室にいれば安全で、外には武装した警官もいると説明するウェイクスに、同じ病院に入院した妹は安全かと訊ねるマディソン。彼女は自分はダメな目撃者だと侘びました。

役に立っていると慰める刑事に、なぜサンファンに来たのと訊ねたマディソン。

ウェイクスは皆、この島には何かから逃れるために来る、と告げました。その言葉の意味はマディソンにも理解出来るものでした。

必要があればボタンを押せば看護師が来ると説明し、万一の場合は連絡するように、とウェイクスは自分の電話番号を教え、直接かけるよう指示します。

911ではなく、ウェイクス刑事に連絡する。そう口にした彼女に完璧だと告げ、自分の名は今後スティーブと呼んで欲しい、と語りかけたウェイクス。

警備室に現れたタルとピアース両刑事は、責任者から情報を聞き出します。連れて来られた人物はマディソン・テイラーで、妹のエミリー・テイラーも小児病棟にいると知らされます。

そして保安上の理由から閉鎖中の7階隔離病棟の、707号室に連れて行ったと説明されました。タルは彼女を移動させた人物が、ウェイクス刑事だと聞き出しました。

タルは新たな情報の結果、マディソンは事件の容疑者と判明したと嘘の説明をして、7階の病棟を閉鎖するよう依頼します。

警備責任者は7階病棟を閉鎖し、エレベーターはカードキー無しでは動かない設定にしました。

警備員など病院のスタッフは、安全にため7階には近づかず、不審なことは全て自分たちに報告しろと告げるタルとピアース。

2人はウェイクスが重大犯罪班の刑事で、不正行為に手を染めない男だと知っていました。

彼が自分たちの犯罪行為を捜査していると睨んだ2人は、息のかかった犯罪者のマルコスとウィリアムズに、彼を始末させることにします。

7階の隔離病棟にタルとピアースが現れました。ジェイコブス巡査が立ち入り禁止だと告げると、ウェイクス刑事に言われ交代に来たと説明する2人。

交代して良いか、ウェイクスに確認する必要があると答えた巡査を刺殺するピアース。

病院が苦手で、眠れずにいたマディソンは、ドアの外で人が動く気配に気付きます。

タルは配電盤を操作し、7階から階段に出れないように細工し、ピアースは外部と連絡できないように電話線を引き抜きました。

不安を覚えたマディソンは内線電話を取りますが、電話は切れていました。彼女が点滴を引き抜いてドアの外の様子を伺うと、いるはずの巡査の姿がありません。

彼女が廊下の血痕に気付いた時、天井の照明が消えました。慌てて部屋に戻るマディソン。

扉に鍵をかけ、部屋の電気を消し息を潜めるマディソン。707号室に現れたタルとピアースは、入手した鍵で扉を開け中に入ります。

部屋には誰の姿もありません。タルは置かれた私物を調べ、間違いなくここがマディソンの部屋だと確認しました。ピアースは隣室に通じるドアがあると気付きました。

2人が隣の706号室に入ると、誰もおらず扉が開いていました。逃げたマディソンを追って、2人は廊下へ飛び出して行きます。

彼女は部屋の中のドアの影に隠れていました。廊下に男がいると確認すると、部屋に戻り不自由な体で、自分のスマホを手に入れようとしたマディソン。

しかし彼女は点滴スタンドを倒しました。その音を聞き戻って来るタルとピアース。

2人が病室に入った時、彼女は廊下に逃れていました。しかしエレベーターのボタンを押しても反応せず、スマホは電波が通じません。彼女はとっさに火災報知器を鳴らします。

彼女はナースセンターの机の下に隠れました。そこに現れた2人は、設備を操作して火災警報を止めます。2人はマディソンに気付かず去って行きました。

7階病棟以外の病院はいつも通り慌ただしい様子で、不安な一夜を過ごしているエミリー。

彼女は作業室に逃げ込み、扉を施錠しました。彼女に気付いたピアースはドアを開けろと叫び、椅子で扉を壊そうとします。

インターフォンのボタンを押し、誰か助けてと訴えるマディソン。それは廊下の外のインターフォンに通じており、ピアースは誰も来ないと彼女に告げました。

彼女が警察に通報したと告げると、自分が警察だと告げ、扉の窓からバッチを見せるピアース。ドアを開けろと叫ぶ声に、彼女はただ耐えるしかありません。

そこに現れたタルはピアースを下がらせると、マディソンにインターフォンで呼びかけます。自分たちは警官で悪人ではないと説明し、誤解があったと説得するタル。

自分たちが来た時、警護の警官は殺されており、その犯人を捜していたと説明します。彼女を銃を持って追ったのも、それによる誤解だと話します。

巡査を殺したと訴える彼女に、自分の名を名乗り、別に犯人がいると説得するタル。ピアース刑事は彼女を犯人と誤解して追ってしまい、驚かせてしまったと謝りました。

マディソンは少し考えてから、自分を守ってくれていたデビッドソン巡査を、どこで見つけたかを訊ねました。デビッドソンの遺体は、空いた病室で見つけたと語るタル。

警護の警官の名は、ジェイコブスだと教えるマディソン。

彼女はさらにタルにバッチを見せろと要求し、彼がサイレンサー付きの拳銃を持っていると気付きます。警官の持つ銃では無く、外の2人は自分を狙っていると確信します。

それでもタルは、マディソンにいつまでも閉じこもっていられないと告げ、出て来るよう説得します。しかし彼女はドアを開けません。

良い警官役の出番は終わりだと告げ、ピアースが扉の窓に銃弾を撃ちこみます。彼はタルが止めるのも聞かず扉のハンドルを撃ち、跳弾がかすめて怪我をします。

自分は何も見ていない、と訴えるマディソンに、欲しい物は君の体の中にあると告げるタル。

彼女は自分に撃ちこまれた銃弾が、彼らの狙いだと知らされました。このまま出血すれば死ぬだけだと言い、タルは扉を開けろと要求します。

非常用の斧を持ち出すと、ピアースは扉のハンドルを壊し始めます。部屋にあったAED(自動体外式除細動器)を操作し、電気ショックを与えるパッドをドアノブに貼るマディソン。

ピアースがハンドルを掴んだ時に、彼女はボタンを押し電気ショックを与えます。

その隙に台を動かしたマディソン。ようやくタルとピアースが部屋に入った時には、彼女の姿は無く天井のダクトの蓋が開いていました…。

以下、『THE LAW 刑事の掟』のネタバレ・結末の記載がございます。『THE LAW 刑事の掟』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2019 by Trauma Center, LLC, and Trauma Film Production PR, LLC

その頃ウェイクス刑事は、相棒のトニーとマディソンが撃たれた現場にいました。鑑識の者は犯人は、おそらくグロッグ製の拳銃を使用したと説明します。

射撃したのは2人で、1人がもう1人を後方からカバーする位置で射撃しています。様々な証拠が、犯人は警察関係者の可能性を示しました。

もう1つの犯罪現場に向かうウェイクスの車の後を付け、車が動き出します。

ダクトの中を進み、別の部屋に逃れたマディソン。しかし傷口からの出血は激しく、業務用のエレベーターも動かず、非常階段の扉も開きません。

絶望しかけますが、妹エミリーとの会話を思い出して立ちあがるマディソン。

彼女は倉庫に入り、使えそうな器具を手にして廊下に出ます。そこに清掃作業に現れた職員の男がいました。彼女は男に助けを求めます。

作業員は彼女は事件の容疑者で、危険人物と聞かされていたのか、怖がって逃げ出します。やむなくマディソンは、器具で非常階段の扉をこじ開けようとしました。

作業員はタルとピアース両刑事の元に駆け付け、容疑者の女がいたと訴えます。

2人が現れる前に、マディソンは扉をこじ開けました。扉が開いているのを見て、非常階段を駆け下りるタルとピアース。

しかし別の階に出た形跡は無く、下まで降りてもマディソンの姿はありません。

彼女は作業員のカートの中に潜んでいました。作業員が戻ってくると彼のエレベーターカードを奪い、それを使用して別の階に移動します。

焦るピアースに、作業員用カードでは1階にしか行けないと指摘するタル。

その頃ウェイクスは、鑑識官と共に情報屋のゴンザレスが殺された隠れ家に到着します。

彼の殺害を依頼された、マルコスとウィリアムズも現れますが、2人はウェイクスが1人になってから襲おうと考えました。

現場は既に鑑識作業が終えていました。ゴンザレスの死体は無かったと聞かされ、確かに自分は見たと訴えるウェイクス。

鑑識も死体は無かったが、犯罪が無かった訳ではないと考えていました。警察犬はこの場所に、大量のドラッグがあった痕跡を見つけます。

また死体は無かったものの、少量の血液の痕跡を発見しました。これは何者かが、血液反応が出ないよう薬品で現場を掃除した事実を示していました。

ウェイクスがここで死体を見つけ、急いでトニーの元に駆け付けた後に、科学捜査に詳しい何者かが犯行現場に戻り、事件を隠ぺいしたと説明する鑑識官。

現場に残された札束には、追跡捜査用の印がつけられていました。ウェイクスは鑑識に、殺されたゴンザレスは自分の情報屋だったと告げます。

彼はゴンザレスを使い麻薬取引の囮捜査しようと、印のついた札束を渡していました。ところがそれで取引をしたゴンザレスは、危険を感じ姿を隠すと言ってきました。

彼の取引相手は、警察の追跡捜査に使う金に気付く、そして科学捜査にも詳しい、警察関係の複数の人物だと指摘するウェイクス刑事。

病院では1階に降り配膳室に現れたマディソンが、警備員に見つかっていました。

彼女は自分が追われ、殺されると訴えますが、判断しかねた警備員は無線で応援を要請します。しかし警備員は彼女の目前で射殺されます。

慌てて隠れるマディソン。サイレンサー付きの銃を手に、追って来たタルとピアースが姿を現しました。配膳室内を調べ始める2人。

マディソンは消火用のハロンガスを噴出させ、その隙に逃げ出します。その際追手が落したと思われる、メモリーカードを拾いました。

彼女を探していたタルは、入手したメモリーカードを無くしたと気付きます。いよいよマディソンを始末する必要に迫られた2人。

そこで警備室に連絡し、脱走した患者を探すよう放送を流させ、彼女を見かけた者は警備室に連絡するよう周知させます。

マディソンは死体安置所に隠れていました。しかし足の傷口が開き、彼女の歩行はさらに難しくなりました。

立ち上って医療倉庫に入り、包帯を外し消毒すると、自ら傷口を縫うマディソン。

彼女は包帯を巻くと、その部屋にあったパソコンで拾ったメモリーカードの中身を確認します。それには動画が入っていました。

ゴンザレスの隠れ家に現れたタルとピアースは、麻薬取引で支払われた金は、囮捜査に使うものだと彼を追求し、自分たちは警官だと名乗ります。

撮影しているゴンザレスを、自分たちを騙そうとしたと責め立て、最後にピアースがナイフで襲いかかる姿が映っていました。

スマホは今だ使えませんが、登録された電話番号を調べ、机の上の固定電話でウェイクス刑事に連絡するマディソン。

電話に出たウェイクスに、銃を持った男に追われている、と告げたマディソン。彼女は犯人は警官で、タルとピアースと名乗ったと伝えます。

安全な場所に隠れているよう言ったウェイクスに、エミリーを救わねばならないと呟くと、彼女は電話を置き部屋を出ました。

彼女に呼びかけ続けるウェイクス刑事に、マルコスとウィリアムズがサブマシンガンと拳銃で発砲し始めます。必死に車の影に隠れるウェイクス。

不用意に迫ってきた2人を、彼は隙を見て射ち倒します。射殺したと確認すると車に戻り、無線で応援を要請しますが、到着に10分かかると告げられます。

ウェイクスは車を動かし、マディソンの病院へと向かいました。

マディソンは部屋から廊下に出ました。彼女が近くにいると悟り、ピアースは無線でタルに報告します。無線のスピーカを通して、彼女に呼びかけるタル。

彼はマディソンの妹、エミリーの病室にいました。彼女の声を聞かせると、出てくれば妹は解放すると告げます。

これが最後のチャンスだと呼びかけるタル。マディソンが姿を現そうとした時、背後にはピアースが迫っていました。

ピアースは彼女を倒し、足の傷を踏みます。マディソンの悲鳴を聞き、エミリーにこれでいいんだ、と呟くタル。

廊下を引きずられるマディソンは、過去の出来事を思い出していました。彼女の母は事故の後入院しましたが、昏睡状態で延命装置につながれました。

入院費を保険でカバーできるのは30日だけで、妹の前で延命停止の決断を迫られるマディソン。この出来事が、姉妹の心に傷を残します。

マディソンが電気ショックで目覚めた時、ストレッチャーに縛られていました。彼女の前に立っているタルとピアース両刑事。

最初は彼女の体内に残る、証拠となる銃弾が欲しいだけだった、と説明するタル。しかし今は、自分が落したメモリカードも必要だと告げます。

マディソンが妹の事を聞いても答えず、警察を呼んだと言っても、誰も来ないと告げる2人。答えない彼女に対し、まずナイフで銃弾をえぐり出そうとするピアース。

それをタルは止めました。カードのありかを聞き出す前に、彼女が死んでは困ります。

タルはエミリーの元に向かい、ピアースは彼女に心臓の除細動器を使い電気ショックを与え、メモリカードのありかを聞き出そうとしました。

ようやく病院にウェイクス刑事が到着し、入院中のマディソンの行方を尋ねます。

後から現れた刑事から彼女が容疑者だと聞かされ、その指示で多くのフロアを閉鎖したとウェイクスに説明する医師。

電気ショックを与え続けるピアースですが、マディソンは答えようとしません。そこで流す電流を強く設定した時、タルから無線が入ります。

タルはウェイクス殺害を命じた、マルコスとウィリアムズと連絡が付かず、急いで引き上げる必要があると告げました。

その隙に結束バンドから手を抜いたマディソンは、ピアースのナイフを使い拘束を解くと、彼の顔に薬品をかけます。

ピアースがひるんだ隙に、彼女は電気ショックを与え倒します。彼から無線と銃を奪うと、タルにそっちへ向かうと告げるマディソン。

タルは怯えるエミリーを立たせると、人質にして共に移動し始めます。

マディソンはエミリーの元に向かった、と考えたウェイクスは、小児病棟に現れます。そしてエミリーを人質にしたタルを見つけました。

銃を向けられても、タルは動じません。エミリーを放すとウェイクスが持つ銃を払い、2人は格闘を始めます。

その隙に逃げたエミリーは、彼女の元に向かっていたマディソンと再会しました。

格闘の末、ついにタルを殴り倒し、拾った銃で止めを刺したウェイクス。

マディソンとエミリーはエレベーターで逃れようとします。しかし扉が開いた時、そこにピアースが立っていました。

何とか彼から逃れた姉妹。しかしピアースは追ってきます。自分が足手惑いだと悟ったマデシソンは、妹を先に逃がそうとしますがピアースに捕まります。

投げ倒され、銃を手放したマディソン。這って進む彼女に、捕えたエミリーにナイフを突きつけ迫って来るピアース。

「お前が最期に見る光景は、妹が死ぬ姿だ」と叫ぶピアース。銃を掴んだマディソンに、彼はエミリーを盾にしながら撃ってみろ、と挑発します。

エミリーはポケットに入れた吸入器を手にします。それをピアースの顔に吹きかけ、思わず彼が妹を手放した瞬間、銃弾を浴びせたマディソン。

抱き合う姉妹の前に、ウェイクス刑事が現れます。「大丈夫か」と声をかけた刑事に、マディソンは靴下の中に隠したメモリーカードを渡し、証拠品だと告げます。

彼に戻って来てくれた、と礼を言うマディソンに、ウェイクスは自分の胸を叩いて敬意を示し、もう大丈夫だと語りかけました。

助けを呼びにこの場を離れたウェイクス。姉妹はいつまでも抱き合っていました。

映画『THE LAW 刑事の掟』の感想と評価

参考映像:『ハード・ナイト』(2019)

ブルース・ウィリスが出演した、ビルの中での追跡劇を描くアクション映画、といえば誰もが『ダイ・ハード』(1988)を思い浮かべるでしょう。

本作をご覧になった方はニッキー・ウィーランこそ、実質的主役だと気付くでしょう。事実クレジットでも彼女の方が、ブルース・ウィリスより先に表記されています。

ブルース・ウィリスもお歳ですし、逃げ回る役は女性の方が美しいです。そしてダクトを使って逃げるシーンなど、『ダイ・ハード』を意識した場面が多数ありました。

面白いのは『ダイ・ハード2』(1990)の監督、レニー・ハーリンが香港を舞台にして撮った映画、「未体験ゾーンの映画たち2020」上映作品『ハード・ナイト』もまた、『ダイ・ハード』的設定を持つ作品です。

偶然にも『THE LAW 刑事の掟』と『ハード・ナイト』は、「犯人が被害者の体に残した銃弾」が、ストーリーの鍵になっている点でも共通しています。

ともかく現在のアクション映画には、『ダイ・ハード』の遺伝子が脈々と受け継がれている事を、再確認させてもらいました。

微妙な予算規模映画ならではの工夫


(C)2019 by Trauma Center, LLC, and Trauma Film Production PR, LLC

マット・エスカンダリは短編映画『The Taking 』(2004)を監督後、映像クリエイター発掘リアリティショー番組「On the Lot」の出演者に選ばれ、キャリアをスタートさせました。

この番組のファイナリストとなり、現在活躍中のクリエーターが発表した映画が「未体験ゾーンの映画たち2020」で上映された『FREAKSフリークス 能力者たち』(2018)です。

現在インディーズ映画以上大作映画未満の、中規模スケールの映画作りは大変難しくなっています。

低予算での映画作りを余儀なくされてきた、マット・エスカンダリ。彼は映画の予算は、基本的には画面に映し出される、表面的な商品価値に反映されると考えています。

しかし説得力あるストーリーこそが、映画の本質的価値を高めると考える監督。彼にとって今回手に取った本作の脚本は、満足のいく出来栄えでした。

しかし製作には予算的制約がありました。LAやマイアミを設定していた舞台はプエルトリコに変更され、撮影期間は12日しかなく、妥協しながら撮影するしかありません。

そこで脚本は、ストーリーの核となる部分を生かす内容へと、変更が加えられました。

ブルース・ウィリスお気に入りの監督に


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その結果丁寧な登場人物の心理描写に比べると、ミステリー・サスペンスの展開はやや強引、ご都合主義要素もちらほら、といった感があります。

ブルース・ウィリスと初めて仕事をした監督は、彼は”badass”なアクションスターで、喜んでアクションシーンを演じる人物だ、と評しました。

また彼は、映画の登場人物主導で展開するシーンや、そういったタイプの演技を好むとも語っています。そこで彼の演じる人物に合わせ、監督は脚本の手直しを加えます。

ブルース演じる登場人物の存在を膨らませるのは、映画の価値を向上させることになる、と考えた監督。人物描写に重きを置く演出は、ブルースにも高く評価されたのでしょう。

本作の後マット・エスカンダリは、『Survive the Night』 (2020)、『Hard Kill』(2020米公開予定)と、立て続けにブルース・ウィリス主演作を監督しています。

まとめ


(C)2019 by Trauma Center, LLC, and Trauma Film Production PR, LLC

『ダイ・ハード』的な作品『THE LAW 刑事の掟』、お手軽に楽しめるアクション映画を好む人におすすめです。ふと見た人に、きっと掘り出し物感を与える作品です。

ブルース・ウィリスが満足するほど、自由に演じさせた結果でしょうか。妙に彼にセリフ、中には独り言もありますが。それが妙に長く感じられるのは、私だけでしょうか。

これは監督がブルースに忖度した結果でしょうか、それとも彼に物申せなかった結果でしょうか、と追求するのは意地悪かもしれません。

とはいえおかげで、お馴染みブルース・ウィリス節全開の演技が炸裂し、これが大いに楽しめるものですから、彼のファンなら必見です。

ありがちな映画の嘘に、ドアノブを拳銃で撃って鍵を破壊するシーンがあります。本作には犯人がそれを行った結果、鍵は壊せず跳弾が起き、傷付いてしまう現実的なシーンがあります。

良い子はマネをしてはいけません。やるならショットガンを使いましょう。

しかし同じことをブルースが行うと、なぜか鍵は見事に破壊されます。これも忖度シーンでしょうか。きっと映画スターのオーラが成せる、常人には無い特殊能力に違いありません。

ストーリーをしっかり楽しみつつ、製作事情から生まれた(?)ちょっとしたアラを楽しむのも、本作の正しい鑑賞法です。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録」は…


(C)2019 Late Shift, Inc. All Rights Reserved.

次回の第17回は、ホテルの受付で働くアスペルガー障害の青年が、殺人事件に巻き込まれる。斬新な設定のサスペンス・スリラー映画『ナイト・ウォッチャー』を紹介いたします。お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020延長戦見破録』記事一覧はこちら





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星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
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日本映画大学