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映画『タイガー・スクワッド』あらすじネタバレと感想。アクションスリラーを極限の状況下での会話劇で描く|未体験ゾーンの映画たち2019見破録18

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  • 20231113

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第18回

1月よりヒューマントラストシネマ渋谷で始まった“劇場発の映画祭”「未体験ゾーンの映画たち2019」では、ジャンル・国籍を問わない貴重な58本の映画が続々公開されています。

第18回はイラクの戦場を舞台にしたアクション・スリラー映画『タイガー・スクワッド』を紹介いたします。

イラクの荒れ果てた砂漠に現れたジョーとパディ。2人はこの地で傭兵として生計を立てています。

ボスから請け負った今回の仕事は、地元有力者の娘を誘拐でした。しかしその娘シャダはパディの元恋人でした。

傭兵のジョーを『ファントム・スレッド』に出演のブライアン・グリーソン、仲間のパディをイギリスのテレビドラマ、舞台で活躍する演技派デイミアン・モロニーが演じます。

そしてシャダを演じるのは『キングスマン』で、義足の暗殺者ガゼルを演じ人気急上昇、その後大作映画に続けて出演しているソフィア・ブテラが熱演。

この3人による、極限の状況を舞台として描かれた作品です。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2019見破録』記事一覧はこちら

映画『タイガー・スクワッド』の作品情報


(C)Dixon Baxi Evans

【公開】
2019年(イギリス・アイルランド合作映画)

【原題】
Tiger Raid

【監督】
サイモン・ディクソン

【キャスト】
ブライアン・グリーソン、デイミアン・モロニー、ソフィア・ブテラ

【作品概要】
イラクの砂漠に現れた傭兵のジョーとパティ。彼らがボスから請け負った仕事は地元有力者の娘の誘拐。しかし傭兵コンビが予期せぬ事態に陥る状況を描いたアクション・スリラー。

目的地までの道中で会話を交わすジョーとパティ。任務を前に打ち解けつつも、互いに相入れない部分を感じとります。共にボスから異なる指示を受けた2人は、緊張をはらんだまま行動を共にします。

首尾よく有力者の娘シャダの誘拐に成功した2人。しかしシャダがパディの元恋人と判明し、状況は思わぬ展開を見せていきます。

『ファントム・スレッド』のブライアン・グリーソンがジョー、『マッド・ドライヴ』のデイミアン・モロニーがパディ、『キングスマン』のソフィア・ブテラがシャダを演じます。

ヒューマントラストシネマ渋谷とシネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2019」上映作品。

映画『タイガー・スクワッド』のあらすじとネタバレ


(C)Dixon Baxi Evans
軍用トラックに乗るジョー(ブライアン・グリーソン)とパディ(デイミアン・モロニー)の2人組。トラックは延々と砂漠を走り続けます。

傭兵である2人は、ここイラクの地で様々な汚れた仕事を請け負い生計を立てていました。

ボスであるデイブの指示で、今回初めて組んだアイルランド系の2人は、IRAの武装闘争の歴史を話題に会話を交わします。

砂漠の中の夜の街を通り抜けるトラックは、武装したアラブ人が守るチェックポイントにさしかかります。

他愛のない会話に終始していた2人は、武装したアラブ人を無言で機械的に、次々と射殺していきます。

チェックポイントを制圧すると、トラックは何事も無かったように進み、2人は会話に戻ります。

今回2人の任務は、地元権力者の娘の誘拐です。デイブからの報酬は5万ドル。簡単で割のいい仕事に思われました。

ジョーはパディに、俺の相棒はルビーだが、今回はデイブの指示でお前と組んだと語ります。

人に使われるのを好まないパディは、いずれ自分のチームを持つと語り、ジョーの態度はデイブの言いなりではないかと指摘します。

俺はデイブと対等だ、と返すジョー。彼はパディに、デイブの悪口は言うなと告げます。

日が昇る中、トラックは砂漠のオアシスに到着しました。

車から降りて辺りを警戒した後、2人は休憩しながら会話を続けます。

デイブの忠誠を試すテストを受けたのかと聞くジョー。受けていないと返事したパディを、まだ半人前と決めつけます。

お前はテストを受けたのかというパディの問いに、ジョーは受けたと答えます。

会話は続きパディはジョーにウイスキーを勧めますが、彼は禁酒しているとそれを断ります。

叔父がアルコール依存症だったパディは、ジョーの姿勢に素直に感心します。

ジョーから離れた位置にいたパディに、ボスであるデイブからの無線が入りました。

無線の会話がジョーに聞こえない事を確認すると、デイブはパディに指示を伝えます。

それは任務終了後に、ジョーを殺せとの指示でした。

今の会話に気付かぬジョーに、パディは今までにどんな奴を殺したかを尋ねます。

その質問にジョーはひどく怒り、なぜそんな事を聞く、と言ってパディに銃を突きつけます。

ただ単に聞いただけだ、と答えるパディ。一触即発の状態が過ぎると2人はトラックで出発しました。

車の中で2人は改めて言葉を交わします。

ジョーはパディに「丘」にいたのか、と尋ねます。「丘」とは傭兵に訓練を行う場所です。

それを認めたパディに、ジョーは「丘」に送られるのは訳ありの連中だと指摘し、何故送られたのかを尋ねます。

パディは地元の若い女性と付き合っていたが、それが彼女の父親にバレて制裁を加えられたと話しました。

そのトラブルをボスのデイブに知られたパディは、「丘」に送られます。

彼女はピュアだったと語るパディ。いつか再会して必ず結婚するつもりだと告白します。

砂漠の中にある目的の邸宅付近に到着した2人は、無線でデイブに報告します。

邸宅か監視し、身を隠して迫りながら2人は会話を交わしました。

パディに相棒のルビーついて聞かれたジョーは、もう1か月も姿を見ていないと告げます。ジョーは信頼できる彼と、また仕事をしたいと語ります。

邸宅に忍び込み、簡単に警備員を殺害した2人。遺体をプールに運びこむと、ジョーは遺体を解体するようバディに指示します。

バディが断わると、ジョーは淡々と遺体を解体しながら、彼が出会った女の話をパディに聞かせます。

マリリンという赤毛の美しい女が、荒んだ俺を救おうとしてくれた。

そして彼女と過ごした時間だけが、何物にも代えがたいものだったとジョーは語りました。

話題は報酬の使い道に移ります。ジョーはかつて競馬で関係者、ガンジーと呼ばれる男から情報を得て、大金を賭けた体験を話します。

結果は大負け。ガンジーは胴元とグルで、ジョーは騙されたのです。

その報復にガンジーの歯を抜いてやったと語るジョー。これが失敗でした。ガンジーはボスであるデイブの従兄弟だったのです。

その結果どうなったかを尋ねるパディに、ジョーは埋め合わせにデイブの仕事を5つ引き受けたと答えます。

そしてこの仕事が、その最後の仕事だと説明しました。

それを聞いて、あんたはパートナーと信じているデイブに利用されているだけだと、バディは指摘します。

ジョーはそれを否定しつつ、マリリンとの思い出を語ります。彼女との体験は人生最高のひと時だった。あの体験は墓場にもってゆくとパディに伝えます。

邸宅でターゲットの到着を待つ2人。ジョーはパディを信用したのか、彼をルビーのようなパートナーにしたいと告げます。

そこにターゲットの女(ソフィア・ブテラ)が現れます。彼女は2人に簡単に捕えられ、口をふさがれ覆面を被せられます。

彼女の写真を撮り、デイブに身柄の確保を報告するジョー。デイブは彼女を父親との交渉材料にするつもりです。

ジョーが口をふさいだテープを取ると彼女は叫びます。その声を聞いてパディは動揺します。

ジョーが離れるとパディは彼女に近づき、負傷した彼女に水を与えました。また君に会えるとは。今日ここにいるのは君ではないはずだ、と語りかけます。

彼女はかつてパディの恋人であったシャダでした。

私に接近したのはやはり有力者である父が目的だったと責めるシャダに、パディは本当に愛している、2人でやり直そうと訴えます。

騒ぐシャダをパディは必死になだめます。

その頃シャダの携帯を見たジョーは何かに気付き、怒鳴り声を上げます。私を逃がしてと訴えるシャダの口をふさぎ、パディはジョーの元へと向かいます。

パディの目の前でウイスキーを飲んでいるジョー。禁酒はどうしたと尋ねるパディを彼は無視します。

回転式拳銃を持ち、これで26人殺したとうそぶくジョー。そして彼は、デイブの指示で自分がルビーを殺したと告白します。

あんたはデイブに従い過ぎだと語るパディを無視して、この壊れた銃は引き金を3度引くと発射するんだ、とジョーは拳銃をもてあそびます。

3度目に引き金を引くと銃は発射されました。これであの女を殺そうとジョーは言います。

彼女を傷付けては報酬がもらえないとパディは説得。すると、なぜお前はムキになって反対するとジョーは言い放ちます。

ジョーは彼女の携帯の中に、パディと女が一緒に映った写真を見つけたのです。

彼女の名はシャダだと伝えるパディ。彼の別れた恋人が今回のターゲットだったのです。

シャダを残し、外で話そうとジョーはパディに提案します。

建物から出るとジョーは、俺たちは彼女を殺すことになったとパディに伝えます。

以下、『タイガー・スクワッド』ネタバレ・結末の記載がございます。『タイガー・スクワッド』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)Dixon Baxi Evans

シャダを愛している、彼女を殺すなとパディは食い下がります。

ジョーは彼女は俺たちの正体を知っている、デイブはリスクを嫌うから彼女を殺すしかないと伝えます。

自分はデイブの命令で26人も殺したと語るジョー。彼はパートナーと信じるデイブへの忠誠を語ります。

そんな態度は、デイブの下働きをしているに過ぎないとパディはジョーに訴えます。

反抗するパディをジョーはスタンガンを使用し気を失わせ、彼とシャダを連れ場所を移動します。

移動した先の一室で、ジョーはシャダにパディとの関係を尋ねます。

パディとはもう10ヵ月も連絡していないと、シャダは答えました。

彼はお前を愛していると言ったぞと尋ねるジョーに、シャダは言葉を続けます。パディは最初私をお姫様のように扱い、周囲に見せびらかした。そして薬で意識を失わせてから体を奪った。

彼は行為の最中に首を絞め、私を暴力的に支配したとシャダは訴えました。

驚いたジョーは彼女を水責めにして、パディはお前を愛しているぞ、真実を言えと迫ります。

シャダはあの男を、パディを殺してと叫びます。その強い態度にジョーは言葉を失います。

意識を取り戻したパディにジョーは、お前はデイブに試されているんだと告げ、力なく笑います。

彼女を殺さなければデイブに疑われ、俺たちが危ないとジョーは説明。それを聞いてもパディは、彼女を愛していると殺害に反対します。

ジョーが彼女はお前を憎んでいると告げても、態度は変わりません。

忠誠を試すテストなど無い、と言うパディにジョーは告げます。俺はデイブの指示で、マリリンを殺すしかなかった。彼女は俺を恨んでいなかった。

ジョーは続けます。その日俺は泣いた。自分の中で何かが死んだ。それでもやるしかなかったとパディに告白します。

ジョーは自爆ベストを身に着けると、パディにシャダを殺さなければ皆が死ぬぞと脅します。

そこでデイブからの無線が入ります。作戦は失敗した。交渉は決裂し、シャダの父は殺されました。それを聞いて彼女は泣き叫びます。

デイブがここに向かっている、彼女はお前を殺したがっているとジョーはパディに告げ、決断を迫ります。

それでもパディは彼女を愛していると叫び、シャダを殺そうとするジョーに抵抗します。

パディはジョーに、デイブから自分に与えられた命令を伝えます。俺は任務が終わったら、ジョーを殺せと指示されている。

ガンジーの件を恨んでいるデイブは、ジョーが指示した仕事をやり遂げたら始末するつもりだと伝えます。

パディがジョーを殺害すれば、お前を次の側近にするとデイブは語っていました。それがパディに与えられた指示でした。

デイブが来たら俺が殺してやる、と言うパディに対し、俺はデイブが好きだと告げ、ジョーは泣き出します。

マリリンなんて女はいない、俺が愛した唯一の人はルビーだった、そのルビーを俺が殺したとジョーは告げます。

今まで語っていたマリリンとは、実はルビーだったのかと、パディは聞き返します。ジョー、俺がデイブを殺すとパディは改めて彼に伝えます。

しかしジョーの返事は、デイブに見限られたら受け入れる、たった1人汚いベットで死にたくない。そう言って自爆ベストのスイッチを握りしめます。

ジョーはパディに、シャダは殺さない、俺なら彼女を1人でここから去らせると語ります。それでもパディは、俺は彼女を愛している、彼女は俺のものだと言います。

パディはジョーに対して、お前は大丈夫だと声をかけます。ジョーはパディに対して、お前を愛している。もっと時間があればいいのに、と答えます。

突然、銃声が鳴り響き、パディは崩れ落ちます。銃を手にしたシャダが射殺。その場に立ちつくすジョーは、ルビーの姿を目にします。

ジョーはルビーと過ごした日々を思い浮かべていました。人生最高のひと時だった。あの体験は墓場にもってゆく…。

ジョーを残し、シャダは1人砂漠の中を歩いて去って行きます。

映画『タイガー・スクワッド』の感想と評価


(C)Dixon Baxi Evans

砂漠の戦場を舞台にしたソリッド・シチュエーション・スリラー

本作『タイガー・スクワッド』のタイトルやチラシのデザインを見て、激しいアクション映画をイメージした方も多いでしょう。

この映画の主要な登場人物は3名のみ。

舞台は移動し転々としますが、実際はアクションよりも、濃厚な会話劇で構成された物語になっています。

厳密な意味での密室物ではありませんが、戦場という限られた空間が舞台と考えれば本作は、ソリッド・シチュエーション・スリラーと呼んでも差しつかえないでしょう。

全編の大部分がジョーとパディの会話で成り立つ構成で、実はあらすじでは膨大な内容の全てを紹介しきれません。

映画をご覧になれば様々な会話を通して、2人の“愛”への執着と、心の壊れてしまった部分が、より明確に感じられます。

舞台的な会話劇で見せる映画がお好きな方には、ぜひお薦めしたい作品です。

映画における“叙述トリック”


(C)Dixon Baxi Evans

ミステリー小説におけるトリックの一種に“叙述トリック”があります。

読者の先入観や思い込みを利用して、登場人物の設定や時系列、場所を誤認させる手法で、映画でも観客に対して仕掛けられる事があります。

本作のパディとシャダの関係、ジョーの語るマリリンとルビーの物語は“叙述トリック”の技法を駆使して描いています。

参考映像:『クライング・ゲーム』(1993)

そしてジョーとルビーの関係に、ニール・ジョーダン監督作品『クライング・ゲーム』の公開時に話題になった仕掛けを思い出した方もいるでしょう。

本作の冒頭にIRAの話題が登場するのは、アイルランド紛争を背景にした映画『クライング・ゲーム』を意識した、観客に向けたヒントだったとも受け取れます。

本作の監督・脚本を手掛けたサイモン・ディクソン、色々仕掛けた映画を完成させたのです。

まとめ


(C)Dixon Baxi Evans

戦場を舞台にしたアクション映画と思わせてながら、ソリッド・シチュエーションを利用したスリラー映画である『タイガー・スクワッド』。

一方でリアルに描かれたアクションシーンや、乾いた暴力描写はハードボイルドな雰囲気を味あわせてくれます。

この映画の一番の注目ポイントは、何と言ってもジョーとパディの描写です。

互いに相手の壊れた部分に気付き、救いの手を差し伸べながらも、自分自身の壊れた部分には気付かない悲しさ。

同じタイプの犯罪映画なら騙し合いで描かれるべき展開が、本作では最後まで悲しいすれ違いとして描かれています。

2人の男は共に歪んだ愛ゆえに、身も心も滅ぼしてしまう…という男泣き映画。こんな映画がお好きな方は見逃せません。

参考映像:『The Current War(原題)』(2019)

映画の出演は少ないものの、パディを演じたデイミアン・モロニーはイギリスで実績を積んでいる俳優で、本作でもその演技力を披露しています。

映画『The Current War(原題)』でベネディクト・カンバーバッチ、ニコラス・ホルト、トム・ホランドと共演しているデイミアン・モロニー。

イギリスの男優ファンには、これからの注目株として目の離せない人物です。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」は…


(C)福本伸行 (C)Ruyi Films & Fire Dragon Guo. All Rights Reserved.

次回の第19回は人気コミック「賭博黙示録カイジ」を中国で映画化した作品『カイジ 動物世界』を紹介いたします。

お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2019見破録』記事一覧はこちら

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