連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第85回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」。第85回はランドール・エメットが監督を務めた、2021年製作のクライム・サスペンス映画『ミッドナイト・キラー』です。
性的人身売買組織の摘発を間近に控えたFBI捜査官のカールと彼の相棒レベッカは、その捜査が若い女性を狙う連続殺人鬼による犯行の足跡と一致していることに気づき、その犯人を長年追い続けているフロリダ州警察殺人課の刑事パイロンとチームを組むことに。
3人は協力して連続殺人鬼を追い詰めるも、レベッカが囚われの身となってしまう物語とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
全米を震撼させた連続殺人事件をもとに描いた映画『ミッドナイト・キラー』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
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CONTENTS
映画『ミッドナイト・キラーの作品情報
【公開】
2021年(アメリカ映画)
【脚本】
アラン・ホースネイル
【監督】
ランドール・エメット
【キャスト】
ミーガン・フォックス、ブルース・ウィリス、エミール・ハーシュ、ルーカス・ハース、ケイトリン・カーマイケル、オリーヴ・アバクロンビー、コルソン・ベイカー、リディア・ハル
【作品概要】
『ドント・サレンダー 進撃の要塞』(2021)の製作総指揮・脚本担当のアラン・ホースネイルの脚本をもとに、本作で映画監督デビューとなるランドール・エメットが監督を務めた、アメリカのクライム・サスペンス作品。
アメリカ・テキサス州で最も危険な連続殺人犯の実話をもとにした作品です。
「トランス・フォーマー」シリーズのミーガン・フォックスが主演を務め、「ダイ・ハード」シリーズのブルース・ウィリスと共演しています。
映画『ミッドナイト・キラー』のあらすじとネタバレ
2004年、アメリカ・フロリダ州ペンサコーラ。FBI捜査官のカール・へルターと相棒のレベッカ・ロンバルディは、未成年の売春婦を狙う性的人身売買組織を摘発するべく、ハイウェイにあるモーテルを中心に囮捜査を行っていました。
まずレベッカが囮となり、ネットでターゲットの男と知り合い、10号線沿いにあるロクスリーのモーテル「ロクスリー・パイパーイン」で会う約束をしました。しかし、地元警察による手入れ(公的治安組織が犯罪捜査のために現場に踏み込むこと)がよって台無しになります。
そのため、同じ10号線沿いにある別のモーテル「オアシスモーテル」で再度会う約束をしたのですが、今度はポン引き(街頭での売春斡旋者)に「約束の男は追い払った」と邪魔をされ失敗。
レベッカは3回目の約束を取りつけましたが、ターゲットは会う場所となっている「マスタングモーテル」に現れることはありませんでした。駐車場に車を停めて張り込んでいたカールたちは、仕方なくその場から引き上げることにしました。
ところが翌朝、マスタングモーテルには規制線が張られていました。カールたちは現場にいたフロリダ州警察の警官に何があったか尋ねました。
警官は「20歳の売春婦が何者かに頭を6ヶ所殴られて死んだ」と答えます。殺された女性は、カールたちの囮捜査に協力していた売春婦でした。しかもオアシスモーテルの外で、16歳の少女が失踪したというのです。
囮捜査をしていたモーテルで、若い女性を狙った連続殺人事件が立て続けに起きていたことを知ったカールたち。しかもカールは、失踪した少女を目撃していました。
もしかするとカールたちが狙っているターゲットと、連続殺人犯は同一人物なのかもしれない。そう考えたレベッカは、そのことを教えてくれたフロリダ州法執行省(FDLE)の執行官バイロン・クロフォードに詳しい話を聞いてみることにしました。
バイロンは薬物中毒の売春婦が殺害された二つの事件を担当していました。道路脇に捨てられていた被害女性は、いずれも首を絞められ頭を殴られており、犯人に噛まれた痕がありました。さらにこの事件後、同様の手口で殺された4人の女性の遺体が発見されました。
これを受け、バロックたちFDLEは、6人の売春婦を殺害した犯人は同一人物で、シリアルキラーだと推測。
FBIもこの連続殺人事件を捜査し分析官がプロファイルを作成しますが、「30代半ばの白人男性、トラックドライバー」という情報は、既にFDLEが知っている情報でした。
今では誰もこの事件に触れず、捜査することもできません。中には「被害者は皆、売春婦やジャンキーだから自業自得だ」と言う人も………。
ですがバロックは、「境遇なんか関係ない。誰にもやり直すチャンスがある」と思い、上司に捜査をやめるよう言われても諦めず、2年間この事件を追い続けてきました。
そして数日前、ペンサコーラの州道で26歳の女性サラ・ケロッグの遺体が発見されました。サラも、マスタングモーテルで殺された売春婦も同様の手口で殺されていたため、連続殺人犯による犯行なのは間違いありません。
ですが、売春婦の遺体が発見されたのは、マスタングモーテルの浴室のバスタブの中でした。
衝動的に犯行に及んだのは、犯人の本当の狙いは別の女性だったからではないかと推測したバイロン。それを聞いたレベッカは、犯人の狙いは会う約束をしていた自分だったと気づき、犯人ともう一度会う約束をしてみることにしました。
その前にまず、レベッカは失踪した少女トレイシー・ウォールズの捜索願を出した彼女の姉ヘザーに話を聞くことにしました。
ヘザーの話によると、友達と思っていた連中に借金をしたら、オアシスモーテルに連れてこられ「金は体で返せ」と言われたといいます。ヘザーは「妹には手を出すな」と言うも聞き入れてもらえず、事件当日の夜、売春を斡旋するオアシスモーテルの経営者カルビンに姉妹ともども薬を飲まされてしまいました。
男たちに囲まれたヘザーは、トレイシーを部屋から追い出しました。それっきり、トレイシーの姿は見ていないといいます。
レベッカはトレイシーの行方を捜す前に、オアシスモーテルの一番端の部屋にいるカルビンに会いにいきました。
実はカルビンは、レベッカたちの囮捜査を邪魔したポン引きでした。レベッカはカルビンに銃を突きつけ、自分が約束した男に関する情報を吐くよう迫ります。
尋問した結果、カルビンが男を追い返したのは、他の売春婦が彼に手錠をかけられたことを知ったからであること。男は何回か売春婦を買いに来ていること。車体に稲妻が描かれているトラックを運転する白人男性だということが判明します。
その後、レストランにいるカールと合流したレベッカは、自分の身の上話を打ち明けました。
レベッカが大学1年生の時、上級生と一緒に酒を飲んだ彼女は、内出血が残るほど酷い目に遭わされました。レベッカの親友の母親が、レベッカの父親にそのことを伝えて家族問題に。警官だった彼はその上級生と家族を追い失職しました。
そして両親は離婚。レベッカは共通の話題を作ろうと思い、父親と一緒にテコンドーを習い始めました。
レベッカの過去を知ったカールは、「君にこの仕事は重すぎる。現場を離れろ」と言い転属を勧めました。ですがレベッカは、「私は好きでやってる。(女に平気で手を上げる)クズ連中を捕まえたい」と言って聞く耳を持ちませんでした。
映画『ミッドナイト・キラー』の感想と評価
囮捜査を行うFBI捜査官のコンビ愛
性的人身売買組織の摘発を間近に控えていたFBI捜査官のカールとその相棒レベッカは、協力者であった売春婦が殺害されたことをきっかけに、自分たちの囮捜査が若い女性を狙う連続殺人犯の犯行の足跡と交差していることに気づきました。
レベッカは過去に自分自身も性的暴行を受けたこともあり、何としてでも犯人逮捕につながる指紋や煙草の吸殻などの証拠を手に入れるべく、ターゲットもとい連続殺人犯のピーターに接触を試みようとします。
一方カールは、そもそもレベッカが囮役をすること自体、あまりいい顔をしていませんでした。相棒であるレベッカを危険な目に遭わせたくないという、仲間想いのカールの気持ちは彼女には届かず、彼女は囮捜査を続行し囚われの身に………。
1日離れていただけで相棒が殺されそうになっていたことを、バイロンから知らされたであろうカールの気持ちは言葉では語られませんでしたが、意識を取り戻したレベッカを見て安堵の涙を浮かべる彼の表情から、死ぬほど心配していたことが窺えて思わずウルっとします。
バイロン・レベッカのコンビによる囮捜査はもちろん、これまでともに視線を潜り抜けてきたであろうカール・レベッカのコンビによる囮捜査もとても格好良いです。
連続殺人犯を追い続けたFDLEの執行官
若い女性を狙う連続殺人犯を追い続けたFDLEの執行官バイロン。彼は本来、被害者の遺族に彼らの死を伝えることが仕事でした。
ですが正義感が強く情に厚いバイロンは、上司や妻に制止されても、FDLEが売春婦殺害事件を捜査しなくなってもなお、諦めずに捜査を続けていました。
その理由は、作中でバイロン自身が言っていたように「もうこれ以上遺族に彼らの大事な人の死を伝えに行きたくない」からです。
しかも2年間捜査しても一向に犯人を捕まえることができず、被害者が続出していく中でのその仕事は、バイロンでなくても精神的にくるものがあります。
そんなバイロンの執念の捜査が実り、遺族と涙を流しながら抱き合う彼の姿を見ているだけで、嬉しさやら悲しさやらが一気に込み上げてきて涙が止まりません。
まとめ
性的人身売買組織の摘発のために囮捜査を行っていたFBI捜査官のコンビと、2年間若い女性を狙う連続殺人犯を追い続けてきたFDLEの執行官が事件現場で知り合い、一緒に捜査していくことで動き出した未解決事件。
カールたちとバイロンの出会いは、もはや被害女性とその遺族が早く犯人を捕まえてほしいという願いからくる運命的な出会いだったように感じます。
3人が追う連続殺人犯のピーターは、行くあてがない少女や売春婦をなぶり殺すことに快楽を見出すシリアルキラーでした。
シリアルキラーとしての顔と、仕事にも家族にも恵まれた幸せな一般男性としての顔、そして娘のべサニーに常軌を逸した愛情を抱く父親の顔。それらを上手く切り替え演じるピーターは背筋が凍りつくほど怖いです。また、そんな狂気的なピーターを演じるルーカス・ハースの演技力に圧倒されます。
シリアルキラーとFDLEの執行官、FBI捜査官の手に汗握る攻防が描かれたクライム・サスペンス映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。
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