Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2018/10/03
Update

映画『スカイライン 奪還』感想と評価。ラスト結末は前作のモヤモヤを収束させる熱い完結|SF恐怖映画という名の観覧車17

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile017

このコラムで取り上げたSF映画の多くは、「社会とのリンク」や「人類の進化の先」など、深いメッセージ性を汲み取ることで、より楽しみが増える作品が多く、映画ジャンルとしての「SF」がどのような立ち位置にあるのかを垣間見る部分もあったと思います。

しかし、今回ご紹介する、2018年10月13日(土)公開の映画『スカイライン -奪還-』は、今までご紹介したどの映画とも違う、過ぎ去った夏を惜しむような「ド派手」で「熱い」映画となっています。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『スカイライン -奪還-』のあらすじ


(C)2016 DON’T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD

ロサンゼルス市警のマーク(フランク・グリロ)は、問題ばかりを起こし拘置所に入れられた1人息子トレント(ジョニー・ウェストン)を拘置所から連れ戻します。

しかし、地下鉄に乗り帰路につく途中、突如宇宙から襲来した、特殊な光を放って人間を「回収」する宇宙生物からの襲撃を受け、ロサンゼルスは崩壊。

騒然となる街の中で逃げ場所を探す2人は、生き残りの女性オードリー(ボヤナ・ノヴァコヴィッチ)と合流し、街からの脱出を試みますが…。

前作のモヤモヤにケリをつける、完璧な完結篇

本作は、エリック・バルフォー主演で作られた映画『スカイライン -征服-』(2010)の続編です。

前作はロサンゼルスに遊びに来ていた主人公のジャロッドを中心に、宇宙人そのものへの「恐怖」と、宇宙人が人を集める「目的」に焦点が当てられている作品でした。

一般人であるジャロッドには、ハイテクな宇宙生物に対抗する術は無く、人類がただただ「征服」されていく様子が描かれています。

参考映像:スカイライン -征服-』(2010)

しかし、本作『スカイライン -奪還-』は同じ時系列を描いた作品でありながら、主人公のマークや、中盤から登場するスアに至るまで、登場人物は皆、宇宙人や敵に対してとても好戦的かつ戦闘能力が高いのです。

また、逃げるだけではなく、誰かを守るために「立ち向かう」ことを選択肢に入れ、「存亡」と「奪還」をかけた宇宙人との戦いに挑んでいきます。

どのような結末を迎えるのかは、この場でお伝えするわけにはいきませんが、お茶を濁すような中途半端なオチではなく、しっかりと物語を収束させる壮大な「完結篇」です。

「前作はあまり自分には合わなかったな」と感じた人こそ、本作を一番楽しめる人であると断言できます。

前作を鑑賞済みだと更に熱くなる「クロスオーバー」


(C)2016 DON’T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD

前作から登場人物が変更となった続編映画の作中で、最も熱くなるのは「過去作人物の登場」ではないでしょうか。

本作では、『スカイライン -征服-』の登場人物がマークたちの前に姿を現し、短時間ではありますが熱い「クロスオーバー」を展開させます。

その後の展開で前作の登場人物の存在が非常に重要な鍵となり、『スカイライン -征服-』の物語が『スカイライン -奪還-』に受け継がれていきます。

クロスオーバーによって、1つの映画シリーズ「スカイライン」が、同じ時間軸を複数の視点から描いた「群像劇」であるという面白さを生み、物語の中に「視点」と言う深みも加わっています。

一般人を含んだ「人類」全体と、侵略を目論む「宇宙人」との壮大な戦いの行方は、前作が未鑑賞でも面白く、鑑賞済みだと更に「熱い」、究極のSF映画最新作と言えます。

「漢気」と「バトル」に溢れた地球奪還の戦記(クロニクル)


(C)2016 DON’T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD

本作の最大の見どころは、「熱さ」の一言に尽きます。

主人公のマークを演じたフランク・グリロは、以前紹介した「パージ」シリーズの2作目『パージ:アナーキー』(2013)以降で主演を務めたワイルドな俳優です。

今作でも持ち前のハードボイルドな魅力で全編を引っ張っています。

そして、この映画を語る上で避けて通ることの出来ない俳優が、物語の中盤から登場するスアを演じたイコ・ウワイスと、警察でありながら略奪を繰り返す悪徳警官を演じたヤヤン・ルヒアンと言う2人の「アクションスター」です。

イコとヤヤンは、ギャングの巣窟とされるビルの中で奮闘するSWAT隊員を描いた『ザ・レイド』(2012)で、キレのある圧倒的なアクションシーンを見せつけ、世界的に有名になりました。

その後も『ザ・レイド GOKUDO』(2014)や『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)に2人揃って出演するなど、ハリウッドでも活躍の場を広げており、本作でもまた相まみえることとなります。

宇宙人とガチンコで戦え!


(C)2016 DON’T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD

そんな対「地球外生命体用のフルキャスト」と言った面々が揃う終盤では、宇宙人との壮絶な戦いが繰り広げられます。

フランクが宇宙人の武器を使い、イコとヤヤンがナイフや剣でスーパーテクノロジーを駆使する敵に立ち向かい、あるものは巨大な宇宙人の兵器を利用する、決戦と言うにふさわしいド派手なバトル。

『インデペンデンス・デイ』(1996)や『バトルシップ』(2012)のように人類が存続のために戦う「熱い」宇宙人侵略映画でありながら、その2作とは違い、対抗する手段がまさかの「近接武器」と言う「男」のロマンに満ち溢れた作品です。

まとめ


(C)2016 DON’T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD

アクション映画ファンにも、SF映画ファンにも自信を持ってオススメ出来る映画『スカイライン -奪還-』。

「熱い」だけではなく、「家族愛」や人間同士が争った「戦争の爪後」など、様々なメッセージが込められた本作。

そのメッセージを読み解こうとするも良し、純粋なエンターテイメントとして楽しむも良し、と楽しみ方は様々です。

連続して日本の各所を襲った台風の影響もあって、涼しくなったり暑くなったりと気温のはっきりしない今日この頃。

完全に寒くなる前に、今年最後の「熱い」思い出として、10月13日(土)公開のこの作品に足を運んでみてはいかがでしょうか。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile018では、『ゾンビ』や『28日後…』などのゾンビ映画から探って観ることの出来る、怪物を越える恐ろしさを秘めた「人の狂気」に迫ります。

10月10日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら


関連記事

連載コラム

『マリウポリの20日間』あらすじ感想と評価解説。ロシアの侵攻開始から壊滅までの経過を捉えたアカデミー賞受賞作|だからドキュメンタリー映画は面白い82

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第82回 今回紹介するのは、2024年4月26日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほかで緊急公開される『マリウポリの20日間』。 ロシアによるウクライナ東 …

連載コラム

映画『ムイト・プラゼール』あらすじ感想と評価解説。在留外国人の立場を言葉や表情で描き“未来へ”と綴る|銀幕の月光遊戯 78

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第78回 ブラジル人学校を訪問することになった国際交流部の部員たち。しかし、彼らを迎えたブラジル人学校の生徒たちの反応は思いもよらないものでした。 在留外国人と日本人の間に …

連載コラム

『パイプライン』あらすじ感想と評価解説。韓国映画お得意のコミカルな犯罪集団がスリリングなケーパー・ムービーを魅せる|コリアンムービーおすすめ指南28

映画『パイプライン』は2022年2月04日(金)よりシネマート新宿他にて全国順次公開! 送油管に穴を開けて石油を盗む「盗油師」たちを描く、新たなケーパー・ムービー『パイプライン』。 『君に泳げ!』以来 …

連載コラム

『戦国自衛隊』ネタバレ結末あらすじと感想考察の評価。タイムトラベル活劇で千葉真一が戦術と現代兵器で戦に挑む|映画という星空を知るひとよ115

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第115回 角川映画の名作をUHD化する「角川映画UHDプロジェクト」。この度このプロジェクトが本格始動することになりました。 第1弾は、千葉真一が主演とアクシ …

連載コラム

映画『さくら』感想評価レビュー。キャスト北村匠海×⼩松菜奈×吉沢亮に共通する演技力の秘密|映画という星空を知るひとよ33

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第33回 映画『さくら』は、直木賞作家・西加奈子の同名小説を、その世界観に惹かれた矢崎仁司監督が映画化した作品です。 長男・次男・長女と両親の5人家族の長谷川一 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学