Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Dear Stranger/ディア・ストレンジャー|あらすじ感想と評価考察。西島秀俊とグイ・ルンメイ演じる夫婦の“愛”と“疑念”が絡み合う|映画という星空を知るひとよ269

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第269回

映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』は、ニューヨークで暮らすアジア人夫婦が主人公のサスペンス。

息子の誘拐事件をきっかけに、夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編ニューヨークロケで描き出します。

本作の監督は、『ディストラクション・ベイビーズ』(2016)『宮本から君へ』(2019)の真利子哲也。

主演夫婦として、『ドライブ・マイ・カー』(2021)の西島秀俊と『薄氷の殺人』(2014)『鵞鳥湖の夜』(2020)のグイ・ルンメイが初共演しています。

映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』は、2025年9月12日(金)TOHOシネマズ シャンテほか 全国ロードショー

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』の作品情報


(C)Roji Films, TOEI COMPANY, LTD.

【日本公開】
2025年(日本、台湾、アメリカ合作映画)

【英題】
Dear Stranger

【監督・脚本】
真利子哲也

【出演】
西島秀俊、グイ・ルンメイ

【作品概要】
本作は、日本・台湾・アメリカ合作によるヒューマンサスペンス。『ディストラクション・ベイビーズ』(2016)『宮本から君へ』(2019)の真利子哲也が監督・オリジナル脚本を手がけました。

『ドライブ・マイ・カー』(2021)の西島秀俊と『薄氷の殺人』(2014)『鵞鳥湖の夜』(2020)のグイ・ルンメイが夫婦役で初共演を果たしました。

映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』のあらすじ


(C)Roji Films, TOEI COMPANY, LTD.

ニューヨークで暮らす日本人の賢治(西島秀俊)と、台湾系アメリカ人の妻ジェーン(グイ・ルンメイ)。

賢治は、日本人助教授としてニューヨークの大学で廃墟の研究をし、ジェーンは、人形劇団のアートディレクターとして夢を追いながら、老いた父のかわりに地域密着型ストアを切り盛りしています。

一人息子のカイとの3人家族ですが、2人は仕事や育児、介護と日常に追われ、余裕のない日々を過ごしています。

そんなある日、賢治は自分の職場である大学にカイを連れていきました。ですが、賢治が仕事の話をしていて目を離したすきに、大学の構内でカイが行方不明に……。

警察は誘拐事件として捜査を開始。夫婦それぞれから事情聴取をはじめます。

悲劇に翻弄される中で、口に出さずにいたお互いの本音や秘密が露呈し、夫婦間の溝が深まっていきます。

映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』の感想と評価


(C)Roji Films, TOEI COMPANY, LTD.

本作『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』の監督は、社会問題を鋭くえぐり、予測不可能な展開で観客を魅了する真利子哲也。6年ぶりの最新作となる本作でもその手腕は光ります。

『ドライブ・マイ・カー』(2021)の西島秀俊と『薄氷の殺人』(2014)『鵞鳥湖の夜』(2020)のグイ・ルンメイを主演夫婦に起用し、平凡な日常生活がふとしたことで崩壊していく様を、スリリングに描き出しました。

息子の突然の失踪によって、夫婦が抱える秘密が徐々に明かされていきますが、その秘密とは一体何なのでしょうか。

一緒に暮らしていても、相手の心の中までわからないから、自然と猜疑心が芽生えます。それを表に出したとき、相手はまさしく見知らぬ人(ストレンジャー)になるのに違いありません。

人形劇団の人形に夢を託す妻は夫が息子の管理を怠ったと怒り、廃墟の研究に没頭する夫は妻の不倫を疑います。

お互いの仕事も趣味もわかり切っているはずなのに、息子の失踪をきっかけに夫婦の間に亀裂が生じます。

すれ違う夫婦の気持ちを、国際的な活躍の場を拡げる実力派の西島秀俊と、人気と実力を兼ね備えた台湾を代表する国民的女優のグイ・ルンメイが見事に表しています。

撮影は、多国籍のスタッフが集結し、オールニューヨークロケを敢行。ブルックリンを中心に、チャイナタウンやハーレム等、リアルなニューヨークの日常が映し出されるのも魅力の一つです。

また、ジェーンが操る着ぐるみ形式の大きな人形は、あどけなさの中にも少し不気味さのある独特の表情をしています。愉快な人形劇のシーンもありますが、この大きな人形が、本作のサスペンス感を煽っているようです。

人形にも人間関係の危うい感情のもつれが反映する本作、事件に遭遇して徐々に崩壊する夫婦の絆をじっくりとご覧ください。

まとめ


(C)Roji Films, TOEI COMPANY, LTD.

『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』は、ニューヨークで生活するある夫婦の息子の誘拐事件を発端に、破綻していく家族の物語。

本作は、大都会の片隅で生きる上で体験する見えない人種の壁、コミュニケーションが上手く撮れないゆえの孤独、人と人が分かり合うことの困難さなど、全世界に向けて各々の文化圏の人々に届くテーマを描いた、濃密な138分のヒューマンサスペンスです。

“しあわせな家族”を目指している夫婦なのに、なぜ妻と夫はこうも食い違っていくのでしょう。これまで抱えてきた秘密の思いを一度に吐露する西島秀俊の悲壮感漂う演技にご注目ください。

映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』は、2025年9月12日(金)TOHOシネマズ シャンテほか 全国ロードショー!

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。




関連記事

連載コラム

映画『ダイヤルMを廻せ』ネタバレあらすじと感想解説。ヒッチコックが小道具を活かした完全犯罪の行く末にあるものとは|電影19XX年への旅11

連載コラム「電影19XX年への旅」第11回 歴代の巨匠監督たちが映画史に残した名作・傑作の作品を紹介する連載コラム「電影19XX年への旅」。 第11回は、『めまい』や『白い恐怖』など、多くの名作を映画 …

連載コラム

映画『アリサカ』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。有坂銃(日本のボルトアクション式の軍制小銃)を用いた女性警官VS暗殺者|Netflix映画おすすめ77

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第77回 2021年12月9日(木)にNetflixで配信された、ミカイル・レッドが監督を務めた2020年製作のフィリピンのR15+指定のア …

連載コラム

映画『フォックストロット・シックス 』あらすじネタバレと感想。デストピア近未来SFアクションをインドネシアから発信せよ!|未体験ゾーンの映画たち2020見破録11

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第11回 世界各地の映画が大集合の「未体験ゾーンの映画たち2020」は、今年もヒューマントラストシネマ渋谷で開催しています。2月7日(金)からはシネ・ …

連載コラム

『未来への警鐘 原発を問う』あらすじ感想と評価レビュー。ドキュメンタリー映画で監督オリヴァー・ストーンが原子力エネルギーについて提議する|映画という星空を知るひとよ267

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第267回 映画『未来への警鐘 原発を問う』は、原子力エネルギーを見直すドキュメンタリー映画です。 監督は、自身のベトナム戦争体験をもとに描いた『プラトーン』( …

連載コラム

【ネタバレ感想】ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの無名キャラクターがもたらした奇跡の大ヒットを解説|最強アメコミ番付評18

こんにちは、野洲川亮です。 『キャプテン・マーベル』『アベンジャーズ/エンドゲーム』『ヘルボーイ』と続々と予告が公開され、楽しみも増えてきています。 今回はマーベル・シネマティック・ユニバース「MCU …

『還り花』
Cinemago|想像力の海へ、シネマダイビング。
ACT1|次の物語は、人からはじまる。
Cinemagoオンラインショップ|DVD・鑑賞チケット・オリジナルグッズ
『血を吸うスマトラオオコンニャク』
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学