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『教皇選挙』あらすじ感想と評価レビュー。英アカデミー賞4冠のレイフ・ファインズ主演作ミステリーは宗教界の闇を描く|映画という星空を知るひとよ249

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第249回

レイフ・ファインズ主演で贈る、新ローマ教皇の座をめぐる極上のミステリー『教皇選挙』。

映画『教皇選挙』は、2025年3月20日(木・祝)TOHOシネマズ シャンテ他で全国ロードショー!

ローマ教皇の突然の死去により、新教皇を決める教皇選挙「コンクラーベ」を執り仕切ることになったローレンス枢機卿。公正かつ円満な選挙実施に務めますが、幾人もの候補者に票は割れ、なかなか新教皇は誕生しません。

投票の舞台裏で蠢く陰謀、差別、スキャンダルの数々にローレンス枢機卿は悩みます。やっと新教皇が決まったと思いきや、驚愕の事実が待っていたのです。

宗教の裏の世界を除く『教皇選挙』の映画公開に先駆けて、本作をご紹介します

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『教皇選挙』の作品情報


(C)2024 Conclave Distribution, LLC.

【日本公開】
2025年(アメリカ・イギリス合作映画)

【原題】
Conclave

【原作】
ロバート・ハリス

【監督】
エドワード・ベルガー

【脚本】
ピーター・ストローハン

【キャスト】
レイフ・ファインズ、スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴー、イザベラ・ロッセリーニ

【作品情報】
『教皇選挙』は、ローマ教皇選挙の舞台裏と内幕に迫ったミステリーです。第95回アカデミー賞で国際長編映画賞ほか4部門を受賞した『西部戦線異状なし』(2022)のエドワード・ベルガー監督が手がけました。

主役のローレンス枢機卿を『シンドラーのリスト』(1993)『イングリッシュ・ペイシェント』(1996)の名優レイフ・ファインズが演じます。

脇を固めるのは『プラダを着た悪魔』(2006)のスタンリー・トゥッチ、『スキャンダル』(2020)のジョン・リスゴー、『ブルーベルベット』(1986)のイザベラ・ロッセリーニらです。

第77回英国アカデミー賞で作品賞をはじめ、英国映画賞・脚色賞・編集賞の4部門を受賞。第97回アカデミー賞では作品賞・主演男優賞・助演女優賞・脚色賞など計8部門にノミネートされました。

映画『教皇選挙』のあらすじ


(C)2024 Conclave Distribution, LLC.

全世界に14億人以上の信徒を有するキリスト教最大の教派・カトリック教会。その最高指導者にして、バチカン市国の元首であるローマ教皇が、死去しました。

悲しみに暮れる暇もなく、ローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)は新教皇を決める教皇選挙「コンクラーベ」を執り仕切ることになります。

世界各国から100人を超える強力な候補者たちが集まり、システィーナ礼拝堂の扉の向こうで極秘の投票が始まります。

選挙の舞台裏では得票数の多い枢機卿を陥れようと陰謀が蠢き、突如としておこる差別や、飛び交うスキャンダルの数々にローレンスの苦悩は深まっていきます。

そして新教皇誕生を目前に、厳戒態勢下のバチカンを揺るがす大事件が勃発します……。

映画『教皇選挙』の感想と評価


(C)2024 Conclave Distribution, LLC.

物語が語るコンクラーベの裏

カトリック教会の最高指導者である新教皇を決める選挙は「コンクラーベ」と呼ばれ、カトリックの長い伝統に根差した神聖なる一大行事となっています。

ですが、教皇候補者たちも生身の人間でした。ありとあらゆる出来事が起こり、選挙の行方は二転三転します。

本作『教皇選挙』は、神聖な選挙の裏にある、教皇候補者たちのエゴイスティックな野心や嘘・自惚れ、派閥争いなどを色濃く炙り出しています

神に仕える身の教皇候補者たちにおいても、公正な選挙は難しいものでした。選挙を執り仕切ることになったローレンス枢機卿の元へ、候補者たちの身辺情報や噂話が集められます。

候補者たちの事情を知るローレンス枢機卿の眼を通して、教皇選挙の一部始終がスクリーンに映し出されていきます。

次々と脱落していく、複数人の候補者たち。彼らを陥れる綿密に用意された罠は誰が仕組んだものなのでしょうか。

そして、選挙を勝ち抜いて新教皇になるのは誰なのか。次から次へと巻き起こるミステリアスな謎は、本作の最初から最後まで続いていきます。

ラストに用意された驚愕の事実に、「神の悪戯か」または「神の試練か」と叫びたくなることでしょう

見応えたっぷりのセットと衣装


(C)2024 Conclave Distribution, LLC.

本作のストーリーは、ほとんどがシスティーナ礼拝堂内で展開します。何回も行われる教皇選挙の様子を、ローレンス枢機卿視線で描き出しました。

礼拝堂に集まった、同じ法衣を身に付けた候補者たちから発せられる「赤色」に染まる異様な雰囲気を、大がかりな教会内部のセットが厳かなものにしています。教皇選挙はそんな中で秘密のうちに行われました。

「“閉ざされた扉の向こう側”のセットには、調査と想像力と創意工夫が必要だった」と、エドワード・ベルガー監督は語りますが、そんな監督の努力がにじみ出る撮影現場となっていました。

一方キャスト陣に目を移せば、主役のローレンス枢機卿を演じるレイフ・ファインズは「007」や「ハリーポッター」シリーズから歴史もの、文芸ものまで幅広いキャリアを誇る実力派です。

二転三転する選挙の行方とともに深まるローレンス枢機卿の苦悩を、彼は取りこぼすことなく一挙一動に表現しています。衝撃的な秘密が明かされるエンディングでのレイフ・ファインズの表情をお見逃しなく。

まとめ


(C)2024 Conclave Distribution, LLC.

秘密主義のベールに覆われた、新教皇を決めるコンクラーベを描いた映画『教皇選挙』をご紹介しました。

新教皇の候補者たちの野心とお互いへの疑惑が渦巻く選挙戦の開幕です。果たして選挙を勝ち抜いて新教皇に選ばれるのは誰か。

思いも寄らない事実もラストに用意され、新教皇を迎えるにあたって新たな認識が生まれるのではないかと考えさせられることでしょう

映画『教皇選挙』は、2025年3月20日(木・祝)TOHOシネマズ シャンテ他で全国ロードショー

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星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。




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