連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第244回
鬼才・城定秀夫監督が、気付けば抜け出せない「村の掟」にはまり込んだある夫婦の物語、ヴィレッジ《狂宴》スリラー『嗤う蟲』を生み出しました。
映画『嗤う蟲』は2025年1月24日(金)より、新宿バルト9ほか全国公開!
スローライフで、笑顔溢れる理想の田舎移住をする夫婦を深川麻衣と若葉竜也が演じます。理想的なその楽園には決して抗えない禍禍しい“掟”があり、気が付けばそこから抜け出せなくなって……。
社会的な落とし穴とも言えるヴィレッジ《狂宴》スリラーとは、どんな罠が仕掛けられているのでしょうか。映画公開前に『嗤う蟲』をご紹介します。
映画『嗤う蟲』の作品情報
【日本公開】
2025年(日本映画)
【監督】
城定秀夫
【脚本】
城定秀夫、内藤瑛亮
【音楽】
ゲイリー芦屋
【キャスト】
深川麻衣、若葉竜也、松浦祐也、片岡礼子、中山功太、杉田かおる、田口トモロヲ
【作品情報】
本作は『性の劇薬』『女子高生に殺されたい』(2022)などで知られ、『アルプススタンドのはしの方』(2020)で第42回ヨコハマ映画祭監督賞、第30回日本映画プロフェッショナル大賞監督賞を受賞した鬼才・城定秀夫監督が手がけました。
脚本は、実際に起きた事件を描いた初長編『先生を流産させる会』(2011)が話題を呼び、『許された子どもたち』(2020)『ミスミソウ』(2018)でも高評価を受けた、社会派作品に定評のある内藤瑛亮。
主役の夫妻は、『まんぷく』(2018)『青天を衝け』(2021)『特捜9』(2018)など数々のドラマや映画に出演している深川麻衣と、『アンメット ある脳外科医の日記』(2024)や『街の上で』(2021)『市子』(2023)などの話題作への出演が相次ぐ若葉竜也が演じます。共演には、松浦祐也、片岡礼子、中山功太、杉田かおる、田口トモロヲなど豪華キャストが脇を固めます。
映画『嗤う蟲』のあらすじ
田舎暮らしに憧れるイラストレーターの杏奈(深川麻衣)は、脱サラした夫・輝道(若葉竜也)と共に都会を離れ、麻宮村に移住しました。
麻宮村の村民たちは、自治会長の田久保(田口トモロヲ)のことを過剰なまでに信奉していました。
杏奈と輝道は、村民たちの度を越えたおせっかいに辟易しながらも、新天地でのスローライフを満喫。
そんな生活のなかで杏奈は、麻宮村の村民のなかには田久保を畏怖する者たちがいる、と不信感を抱くようになっていきます。
一方、輝道は田久保の仕事を手伝うことになり、麻宮村の隠された「掟」を知ってしまいます。
それでも村八分にされないように、家族のため「掟」に身を捧げることに……。
映画『嗤う蟲』の感想と評価
都会の喧騒から逃れて、のんびりと自然を満喫しながら自由気ままに生きるライフスタイルにあこがれて、地方へ移り住む方が増えているようです。
この作品の主人公夫婦も、そんな田舎暮らしがしたくて、ある村へ移住しました。村人たちの歓迎を受けて村に溶け込んでいく2人ですが、妻は次第に村人たちの約束事に違和感を覚えるようになります。
実は、先住の村人にはそれまで生活してきた‟村の掟”がありました。
村は一つの共同体であり、地域コミュニティともいえる存在ですから、そこに住むからには‟掟”を守らねばなりません。
村人たちは、自分たちが生きていくために、護るべきものは護る覚悟で生活しています。そのため、一度その村に移住してきたら、自分たちの仲間として迎え入れると共に、‟掟”を押し付けてくるのは当然なことでしょう。
‟掟”を護る者は村での満ち足りた生活ができ、護らない者は、村八分という村でののけ者扱いにされてしまいます。
この良いのか悪いのかわからない村の掟が、本作では底なし沼にはまり込む恐怖を伴って薄気味悪く描かれました。
自治会長の田久保に扮する田口トモロヲの「ありがっさま!」と不気味に嗤う怪演も、作品が放つダークなコンセプトを見事に現しています。
村八分の怖い仕打ちを避けるため、‟村の掟”に縛られつつある杏奈と輝道の行く末はどうなるのか? 2人の決断に注目です。
まとめ
田舎でのスローライフを満喫するはずだった杏奈と輝道夫婦。
移住した村での生活は、一見面倒見が良く親切な村人たちのおかけで何不自由なく暮らせるようでした。しかし、そこにはとんでもない掟が潜んでいたのです。
社会の裏に潜む怖い‟村の掟”を、鬼才・城定秀夫監督と脚本家の内藤瑛亮がタッグを組んで描き出した『嗤う蟲』。
田舎暮らしの裏の怖い現実、そしてタイトルの「嗤う蟲」が意味するものとは……。本作では、日本各地で起きた村八分事件をもとに、実際に存在する“村の掟”の数々をリアルに現します。
現代日本の闇ともいえる“村社会”の実態に恐怖を覚えることでしょう。
映画『嗤う蟲』は2025年1月24日(金)より、新宿バルト9ほか全国公開!
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。